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第1章
19話
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竹筒で飲むのは初めてで、水がいつもとは違う味に感じていた。
「美味しいでしょ! それ、ムーちゃんが淹れてくれたハーブティーなんだ!」
勝瑞が突然喋り出したから、いや、ムーのことをムーちゃんと呼んでいたからだろう、俺は笑いを耐えられずハーブティーを吹き出してしまった。
それと同時に、盛大にむせた。
「がっくん大丈夫?」
この様子を見て大丈夫だと思うのか?
何も大丈夫じゃない。
「そろそろ行こうか、仕事探し。いいのが見つかるといいね」
勝瑞は俺に手を差し伸べることもなく、何事もなかったかのように先に歩き出した。
他人事なんだろうけど扱いがどんどん雑になっている。
学生時代もこんな友人関係があれば、ここに来ても話ができずに苦しむことはなかったのかも……。
違う違う。後悔は敵だ! 後悔する暇があるなら次失敗しないように考えるのだ。
そうやって、できないことに言い訳してきては、無理にする必要はないと勝手に思い込み、不必要だと信じ込んでいた。
「しょ……プラ・ゾール……俺にできそうな仕事はここで見つかるのか?」
後ろから話し掛けたが、まさか立ち止まるなど想像もしてなかった。
それに、顔の様子が険悪なムードを醸し出していた。
俺、何か悪いことでも言ったのか?
こっちの名前じゃなくて、向こうの世界での名前を言いかけたからか?
それとも、高校時代のクラスメイトだから、俺が何もできないの知っているからそれでも探してやっているのにって怒っているのか?
分からん。さっぱり分からん。
それでも、俺にだってできる手段はある。
それは……
「ラベ・プラ・ゾールさんすみませんでした。何もできない人間が仕事を探すなんて厚かましかったです」
只管頭を下げて謝罪をする方法しか思いつかなかった。
たが、そうではなかったようだ。
「ぷっ。あっははっ。いや~がっくん、昔に比べて随分と変わったね」
俺の誤算、早とちりだったのか勝瑞は怒っている様子はなかった。
混乱してしまった俺は、脳内で右往左往しながら言葉を見繕った。
結果として、あやふやな言葉を発していた。
「そうだよ! がっくん。俺の名前はプラ・ゾールじゃない!」
ここに来てようやく勝瑞は怒り出した。
“俺の名前はプラ・ゾールじゃない”と言われても……どうゆうことだ?
「……勝瑞大和だろ?」
「違う! そうじゃなくて!」
“違う!”と言われてもどう言う意味だか余計に分からなくなってしまっていた。
「だから! こっちの世界じゃ海外と同じで1番最後のがファミリーネームなの!」
1歩踏み込んだ勝瑞と、微動だにせず立ち止まっていた俺との距離は数10センチまで近付いていた。
……近い。取り敢えず近い。
それと、俺はおかしなことは言っていなかったはずだ。
「俺の何が間違っている? お前はあっちの世界での名前が勝瑞で、こっちでは別名義のプラ・ドールと名乗っている。だから、俺はプラ・ドールと呼ぶのに何か不思議な点でもあるのか?」
おかしなことを言ったつもりはなかったけど、勝瑞は、俺の肩に手を置き呆れた顔をしながら俯いていた。
……何故か余計に近い。肩持たれているから逃げることもできないし……。
「忘れていたよ。がっくんって昔っからそうだったよな。そんなんだから友人ができないんだよ!」
熱く語られても、友人を欲しいとは思ってもいないから。
「友人が要らないと思っているのは勝手だけど、これだけは言わせてくれ、こっちの世界では、ファーストネームで呼ぶのが普通なんだぞ!」
それくらい俺でも何となく察しはついている。
それくらいの区別はとっくにしているさ。
「でも、それじゃ変なんだよな?」
何が? 何が変だと言うんだ?
「何でムーちゃんだけファーストネームで呼んでいるんだ? まさか! ムーちゃんのことす、好きなのか?」
「そ、そんな訳ないだろ!」
「おっと、怪しいな。一瞬言葉に詰まる当たり怪しいな~」
こいつの頭は中学の時からから変わっていないのか?
言いたい。ファミリーネームで呼んでいるのはお前だけだと言ってあげたい。
だけど、何で? と訊かれてもいい答えが今は思い付いていないから言えない。
「しょ……プラ・ゾール仕事探しはどうなったんだ? 危うく忘れる所だった」
焦っていた俺とは裏腹に、勝瑞は余裕の表情を見せて何事もなかったかのようにまた歩き出した。
「大丈夫だよ。初めからできなさそうなものは退けているから! 第1候補から第2候補まであるけどどっちを先に行きたい?」
どっちでもいいけど、と言いたいところだが、それ以上にツッコむ所がある。
俺のできそうな仕事、こっちでは2種類しかないのかよ。
俺はかなりの精神的ダメージを自分勝手に受けていた。
「大丈夫だよ。どっちも向いていると思うから。心配しないで!」
こういう時、明るすぎる人間の励ましは、眩しすぎて余計に自分が陰湿に見えて余計に落ち込む。
完全に口を閉ざしてしまった俺の様子を見て、勝瑞は近い方からと第2候補の方から先に行くと言い、舗装された道を歩き出した。
「美味しいでしょ! それ、ムーちゃんが淹れてくれたハーブティーなんだ!」
勝瑞が突然喋り出したから、いや、ムーのことをムーちゃんと呼んでいたからだろう、俺は笑いを耐えられずハーブティーを吹き出してしまった。
それと同時に、盛大にむせた。
「がっくん大丈夫?」
この様子を見て大丈夫だと思うのか?
何も大丈夫じゃない。
「そろそろ行こうか、仕事探し。いいのが見つかるといいね」
勝瑞は俺に手を差し伸べることもなく、何事もなかったかのように先に歩き出した。
他人事なんだろうけど扱いがどんどん雑になっている。
学生時代もこんな友人関係があれば、ここに来ても話ができずに苦しむことはなかったのかも……。
違う違う。後悔は敵だ! 後悔する暇があるなら次失敗しないように考えるのだ。
そうやって、できないことに言い訳してきては、無理にする必要はないと勝手に思い込み、不必要だと信じ込んでいた。
「しょ……プラ・ゾール……俺にできそうな仕事はここで見つかるのか?」
後ろから話し掛けたが、まさか立ち止まるなど想像もしてなかった。
それに、顔の様子が険悪なムードを醸し出していた。
俺、何か悪いことでも言ったのか?
こっちの名前じゃなくて、向こうの世界での名前を言いかけたからか?
それとも、高校時代のクラスメイトだから、俺が何もできないの知っているからそれでも探してやっているのにって怒っているのか?
分からん。さっぱり分からん。
それでも、俺にだってできる手段はある。
それは……
「ラベ・プラ・ゾールさんすみませんでした。何もできない人間が仕事を探すなんて厚かましかったです」
只管頭を下げて謝罪をする方法しか思いつかなかった。
たが、そうではなかったようだ。
「ぷっ。あっははっ。いや~がっくん、昔に比べて随分と変わったね」
俺の誤算、早とちりだったのか勝瑞は怒っている様子はなかった。
混乱してしまった俺は、脳内で右往左往しながら言葉を見繕った。
結果として、あやふやな言葉を発していた。
「そうだよ! がっくん。俺の名前はプラ・ゾールじゃない!」
ここに来てようやく勝瑞は怒り出した。
“俺の名前はプラ・ゾールじゃない”と言われても……どうゆうことだ?
「……勝瑞大和だろ?」
「違う! そうじゃなくて!」
“違う!”と言われてもどう言う意味だか余計に分からなくなってしまっていた。
「だから! こっちの世界じゃ海外と同じで1番最後のがファミリーネームなの!」
1歩踏み込んだ勝瑞と、微動だにせず立ち止まっていた俺との距離は数10センチまで近付いていた。
……近い。取り敢えず近い。
それと、俺はおかしなことは言っていなかったはずだ。
「俺の何が間違っている? お前はあっちの世界での名前が勝瑞で、こっちでは別名義のプラ・ドールと名乗っている。だから、俺はプラ・ドールと呼ぶのに何か不思議な点でもあるのか?」
おかしなことを言ったつもりはなかったけど、勝瑞は、俺の肩に手を置き呆れた顔をしながら俯いていた。
……何故か余計に近い。肩持たれているから逃げることもできないし……。
「忘れていたよ。がっくんって昔っからそうだったよな。そんなんだから友人ができないんだよ!」
熱く語られても、友人を欲しいとは思ってもいないから。
「友人が要らないと思っているのは勝手だけど、これだけは言わせてくれ、こっちの世界では、ファーストネームで呼ぶのが普通なんだぞ!」
それくらい俺でも何となく察しはついている。
それくらいの区別はとっくにしているさ。
「でも、それじゃ変なんだよな?」
何が? 何が変だと言うんだ?
「何でムーちゃんだけファーストネームで呼んでいるんだ? まさか! ムーちゃんのことす、好きなのか?」
「そ、そんな訳ないだろ!」
「おっと、怪しいな。一瞬言葉に詰まる当たり怪しいな~」
こいつの頭は中学の時からから変わっていないのか?
言いたい。ファミリーネームで呼んでいるのはお前だけだと言ってあげたい。
だけど、何で? と訊かれてもいい答えが今は思い付いていないから言えない。
「しょ……プラ・ゾール仕事探しはどうなったんだ? 危うく忘れる所だった」
焦っていた俺とは裏腹に、勝瑞は余裕の表情を見せて何事もなかったかのようにまた歩き出した。
「大丈夫だよ。初めからできなさそうなものは退けているから! 第1候補から第2候補まであるけどどっちを先に行きたい?」
どっちでもいいけど、と言いたいところだが、それ以上にツッコむ所がある。
俺のできそうな仕事、こっちでは2種類しかないのかよ。
俺はかなりの精神的ダメージを自分勝手に受けていた。
「大丈夫だよ。どっちも向いていると思うから。心配しないで!」
こういう時、明るすぎる人間の励ましは、眩しすぎて余計に自分が陰湿に見えて余計に落ち込む。
完全に口を閉ざしてしまった俺の様子を見て、勝瑞は近い方からと第2候補の方から先に行くと言い、舗装された道を歩き出した。
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