フェイタリズム

倉木元貴

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出会いの形は最悪だ 28

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 選択肢はたったの二択なのにその二択が決めきれない。ただ、今は昼休みだ。妄想に浸る時間は裕にある。ここは得意な妄想で先のことを考えてみるか。まずは、如月さんの問いに僕が否定した場合。ありとあらゆる文句が飛んできて僕は心を病みそうな。そんな未来しか想像できない。次に、如月さんの問いに僕が肯定した場合。あの如月さんのことだ僕と山河内をあらゆる手使って付き合わせようとするはず。厳しいノルマもありそうだ。但し、これに関しては僕には利益しかない。僕が一番恐れていることはそこだ。如月さんには何の徳があって僕と山河内さんをくっ付けようとしているのか。そもそも僕は本当に山河内さんを好きなわけではない。確かに山河内さんは可愛いし、優しい。あんな子を好きにならない人はいないと思う。だけど、僕には全く釣り合わないことぐらい自分が一番知っている。いや逆か。山河内さんの隣に僕が似合わないか。山河内さんも僕みたいな根暗を好きなわけない。勝負は初めから決まっている。告白したところで一言で振られるに決まっている。それなのに如月さんは山河内さんとの恋愛を手助けすると。本当何がしたいのか。ここは一つ訊いてみないことには何も解決しない。
 
「き、如月さん……」
 
 僕の蚊の鳴くような声は、周りの声にかき消され如月さんには届かなかった。でも僕は諦めたわけではない。同じ教室にいるとは言え僕らは現代人。文明の力を無駄にはしない。如月さんにどうしてそこまでしてくれるのかメッセージを送った。その返信は早かった。だけど、答えが返ってきたわけではない。

(話があるのでしたら次の休み時間に体育館前の自動販売機の前まで来てください)
 
 僕一人が自動販売機の前に行くのは難しくない。だけど、如月さんは休み時間になる度に、誰かと話しているのに一人になんてなれるのか。誰かと一緒なんて本当にごめんだぞ。
 そんなん僕の不安とは裏腹に、如月さんは一人で自販機の前までやって来た。
 
「そんな不思議な顔をしなくても私だって一人になりたい時ぐらいありますよ。言い訳はいくらでもできますから」
 
 そこまで顔に出していないつもりだったけど、一体僕はどんな顔をしていたのだろう。でも今はそんなことはどうでもいい。僕は如月さんに訊きたいことがあるのだ。
 
「ずっと疑問に思っていた。如月さん……君が“初めて”会ったばかりの僕にそこまで肩入れする理由は何なの? 確かに、僕の恋の手伝いをしてくれるのなら本当にありがたいことだよ。でも、如月さんがそこまでする必要はないはず……」
 
 僕が話している最中だと言うのに如月さんは、僕の声をかき消すように力のこもった声で反論した。
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