フェイタリズム

倉木元貴

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出会いの形は最悪だ 13

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 朝から彼女の影響でいいことが一つも起きていない。ここまでの厄日は初めてだ。このまま穏便にことを済ませたいけどそうはいかないらしい。
 
「もう一度そこのユー。ユーは、宇宙の星の中でどの星が一番好きかね?」
 
 乃木先輩は、適当な理由でこちらに来た僕を見透かしているのか、僕が何よりも答えづらい質問を繰り出した。
 適当にあしらいたいけど、僕が知っている星の名前なんて高が知れている。有名どころを答えるだけじゃなんとなくこの部に来たことがバレる。適当だけどテキトーじゃない回答。
 
「シ、シリウスで、です……」
 
 夏の大三角はどれも有名だから避けたとはいえ、それ以外に知っている星なんて冬の大三角しかなかった。
 テキトーに言ったことがバレるのも時間の問題だと思ったけど、乃木先輩の反応はそうではなかった。
 
「おおいぬ座のシリウスか~。君案外いい線をつくね! シリウスいいよね! やっぱり星を見るなら季節は冬だよね! 冬の大三角と言えば、みんなオリオン座のベテルギウスのことばかり語るけど、太陽を含めなければシリウスが一番明るい星なんだよね! ベテルギウスとプロキオンに比べると小さい星だけど、太陽よりも大きくて何より名前がかっこいいよね!」
 
 乃木先輩の話は早口で、しかも語尾に“ね”がつきすぎて碌に頭に入ってこなかった。だけど、僕を注視しながらすごく同意を求めるような視線を送ってくるから、首を上下に相槌は細やかに打っていた。
 乃木先輩の真剣な話を笑う奴は流石にいなくて、今回ばかりは火傷を受けずに過ごすことができた。だけど、僕のことを揶揄うのは乃木先輩だけではなかったのだ。
 
「へえー、シリウスが好きなんだ。一番明るくて綺麗な星だもんね。やっぱりロマンチストなんだね」
 
 しっかりと聞こええていたけど、あたかも聞こえていないような反応をとって山河内さんのセリフは無視した。そのことに関して。山河内さんは何か行動を起こすことはなく、地学部の部活紹介も無事に終わったのであった。
 地学部の部活紹介が終わった途端、僕の隣の席の山河内さんの席には人だかりができていた。そんなこともあって僕はわざわざこの人だかりをかき分けて地学部の部室から出たのだ。何かに巻き込まれる前にさっさと帰ってしまおう。そう思っていたけど、今日の僕は何かと絡まれる運命のようで、どうやら僕は彼女に待ち伏せされていたようだ。地学部の部室を出てすぐの角を曲がったところに彼女はいたのだから。
 
「同じクラスの中田大智さんですよね。ちょうどいいところに、少しお話がしたいので途中まで一緒に帰りませんか?」
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