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2話 職業を偽る男

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翌朝、彼からメッセージが来た。

「おはようございます。
これから仕事行ってきます。」
「おはようございます。
お仕事楽しんできてくださ~い!
気をつけて行ってらっしゃい~」

さちこは巷の女性と違って、
お相手と会う日まで連絡がなくても
割と平気な方である。

もうすぐ会うんだから世間話は
その時すればいいというスタンスである。

何度もラインマジックに引っかかった結果
実際会うまでは余計な先入観を持たない方が
冷静に判断できるということが身に染みて
わかったからである。

でもそれはどうやら無礼だと受け取る方も
一定数いるようである。
出会い系サイトの相談コーナーを閲覧すると
会う約束をしてからも
コンタクトをとり続けることを礼儀とし、
それを強く望む女性の意見が多かった。

だいたい連絡が来なくなったという愚痴を
そんなところに書き込む女性達だから
それを女性の一般論に置き換えてほしくはないのだが
きっとそれを読んだ男性陣は鵜呑みにして
一般的に女性には会うまではこまめに連絡した方がいい
と思うのかもしれない。

彼はそれを読んでのことか、
元々そっち派の寂しがりやの性格なのか、
単にさちこに興味があってのことか、
はまだわからないがその晩もラインしてきた。

最近はお相手とは主に会うための業務連絡以外
ラインをしないスタイルが多かったせいか
マメな男は新鮮だった。

「お疲れ様です。お仕事終わりました。」
「お仕事お疲れ様でした~。」
「悦子さんはお仕事されてますか?」
「扶養控除内で仕事しています。
友介さんは何系のお仕事されているんですか?
私は事務です。」
「おれは役所に勤務しています。
案外真面目なお仕事です。」

(げ~地方公務員かよ。
プロフに会社員って書いてくせに。。。
公務員苦手だから
わざわざプロフ見て避けてきたのに。。。
そこ嘘つかれると防ぎようないよな。
しかも地方公務員の年収ってこんなに高いの?
これも嘘なのか?)

「公務員はNGなんです。」
と言ってブロックするか悩んだが
稀に見る若いイケメンであるし、
評判の悪い公務員の職種No.3ではないので
とりあえず会うことにした。

とはいえ、さちこのテンションは急降下し、
この時点で彼は恋人候補ではなくなった。

「あら!公務員の方なんですか?
会社員ってプロフに書いてらっしゃったから超意外!」
「公務員なんです。
だから平日夜か土日が暇なんです。」
「なるほどね~
区役所勤めなのに△△市にお住まいなのも意外。笑」
「だから通勤に少し時間かかるんです。」
「B型なのに公務員ってのも意外。笑」
「B型でも公務員務まりますよ。笑」
「公務員なのに
性感マッサージ得意なのは逆に納得。笑」
「どんな納得ですか。笑」
「公務員って変態多いでしょ?笑
私も変態だから変態は悪い意味じゃないよ。笑
変態っていうか性に対してポジティブな人
っていうのかしら。
そういう人が多いイメージ。」
「公務員って性にポジティブなのかな?
これまでにそういう経験あり?笑
おれは変態というよりエロい。笑」

(ポジティブっていうかヤリチンが多いってこと。
特に体力勝負の国家公務員は
女性に評判悪いの知らないのかな。)

「(地方)公務員と付き合ったことないけど
周りの話を聞くとね。笑
そうだね、友介さんはエロいんだね。
むっつりではなさそうだもんね。

(まあ大抵自分のことをエロいという男は
私から見れば全然エロくないし、
私の変態ぶりにドン引きする場合が多いんだけど、
彼は大丈夫なのかなあ。。。
あとは公務員男特有の
割り勘思考でなければいいけど。)

「なるほど~。」
「公務員のお仕事ってリモートではないのかな?
通勤時間長いのって嫌だよね~
私、満員電車苦手。」
「リモートは全くないね。
そういえば、
性感マッサージ動画見てるって言ってたじゃない?
そんなんあるんだ。」

(ほらな、ちゃんと網に引っかかったな。笑
まあそんなこと質問してくる時点で
素人丸出しだけどね~笑。)

「ははは。笑
ほぼ毎日AV観てるから
その中にそういう設定のがあるって意味。笑」
「ほぼ毎日!それはすごいな。笑
そんなに好きなのね。笑」
「好きっていうかもう日課だね。笑
だから早送りして観てるよ。笑」
「へえ。笑
それ観ながら一人でするの?」
「うん。」
「エッチだね。」
「うん。笑
エロい女好き?」
「めっちゃ好き!笑」
「だよね~。笑 良かった。
友介さんは毎日するの?」
「いや、おれは毎日はさすがにしないかな。
一人でするより実戦派!笑」

(ほらな、オナニーしない男は
基本エロくないんだよ。)

「そっか~
そんだけ相手がいるってことなんだね~
さすがだね~。笑」

さちこはここで引っ掛け問題を出した。
なんと返してくるか見ものだった。

「そんな相手はいないんだけどね~。」
「奥さんとはしてる派?
あらセフレがいるのか。」
「奥さんとは全くしない派です。笑
そして、今はセフレもいない。笑」
「そうなんだ~良かった。」

もう彼は恋人候補から外れたのだから
奥さんとはしてようがしてまいが
セフレがいようがいまいがどうでも良かったが
どう返信してくるか、
人間性に興味があったから質問した。

今のところ
さちこ的に悪い気はしなかったので合格とした。

「なので、おれとたくさん会ってください。笑」

ズキューン!
思わぬ返しに久々に胸にキュンとくる言葉だった。

しかも今まで漢字だった「俺」を
わざわざひらがなにしているところ、
母性本能をくすぐる技に感服した。

「うんうん!
久々にきゅんしちゃった。笑
お主なかなかやるな!
さすがイケメン!笑」
「そう言ってもらえるとうれしいです。」
「ますます日曜日お会いできるの楽しみになったわ。
もうそろそろ寝る時間かな?今日もありがとう。」
「そろそろ寝ましょう。
おやすみなさい。」
「はい。おやすみなさい。」
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