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15話 彼の手口

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「あ、この坂が神楽坂って言うの?」 
「そう。この辺来た事ないの?」 
「人生初だね。この駅で降りたことも初めてだし。」 
「ふーん。」 
「結構坂だね。傾斜何度くらいかな?」 
「12、3度くらいじゃない?」 
「そう?あの辺めっちゃ急じゃん!3、40度ありそう!」 
「そんなないよ。俺スキーやってたから角度わかるもん。」 
「そっか。」 
「この辺は飲食店が多いの。」 
「そーだね。お店いっぱいあるね。」 
 
しばらくメイン通りの坂を登った後、脇道に逸れた。 
 
「この辺も高級な店が多くてさ。」 
「なんか隠れ家的な佇まいのお店多いね。」 
「そうでしょ。高くて入れないの。」 
「ふーん。」 
「一人2、3万するんだよ。」
「へー。調べたの?」
「うん、ググってみた。」
「ふーん。」
 
しばらく歩くと住宅が点在し始めた。 
 
「ここ俺の住んでるマンション。」 
「ふーん。行かないよ。」 
「コーヒー飲んでってよ。」 
「やらないよ。」 
「わかってるって。俺がそんな風な男に見える?」 
「そう言っても大体誘ってくるんだよ。男ってのは。」 
「大丈夫俺を信じて。」 
「じゃあ襲われたら防○省に駆け込むから。」 
「うん。いいよ。」 
 
そう言って彼の部屋について行った。 

かつてのチャラ男のような見た目ではなかったし、
防衛省所属という肩書きにもすっかり油断してしまっていた。」

 
マンションは7階建ての平成初期風の造りだった。 
セキュリティは正面玄関の自動ドアのみで、
エレベーターも玄関のドアも旧式の造りだった。 
 
彼の部屋は最上階で、普通の単身者用の賃貸マンションの部屋だった。 

玄関を入ると、廊下の右側には洗濯機置き場、簡易コンロと流し台が続き、
左側にはユニットバスらしき扉があった。
廊下を進むと8畳ほどのクローゼット付きの部屋があり、 
突き当たりのベランダからの日当たりはよく、
セミダブルのベッドが横たわっていた。 
 
ベッドの足元にはテレビが置いてあり、 
小さな2人がけのソファとキャンプ用の折りたたみ椅子が置いてあった。 

「どうぞ、かけて。」

さちこがソファに座ると
彼はコーヒーメーカーをセットし、キャンプ用の椅子に座った。

ソファの横に座ってこなかったので安心していた。

「結構綺麗に片付いてるね。」
「そうでしょ?」
「物少ないけど家電製品多いね。
調理器具っていうか、うちにないものいっぱいあるわ。笑」
「そう?」
「で、ここに何人連れ込んだの?」
「さっちゃんが初めてだよ。」
「はいはい。で、何人目?」
「本当に初めてだよ。」
「ここに来て何年目?」
「1年半くらいかなあ。」
「その間彼女いなかったの?」
「うん。」
「でもアプリでやったりしてたでしょ?」
「アプリも登録してるけど全然ヒットしないし、
たまにいても信用できる人じゃないと自宅には入れないよ。」
「まあそりゃそうだろうけど。じゃあ私のことは信用したんだ。」
「うん。」
「へえー。信用していただいてありがとうございます。」

彼は立ち上がり、コーヒーを淹れてテーブルに運んできてくれた。
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