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6話 ジローラモ予備軍

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「こんにちは。デニーロ?」
「あー、えっちゃん!こんにちは!」

第一印象としては、可もなく不可もなかった。
ガタイはいいがデブほどまでには見えなかった。
体が分厚い分、176cmの身長はそれほど高く感じなかった。

「やっぱダメだった。どこもお酒提供してないって。」
「そーなんだ。」
「ちょっと早めに来て思いつくところ全部回って聞いたんだけど。
ごめんね。」
「ううん。しょうがないよ。
色々聞き回ってくれたんだね。ありがとう。優しいね。」
「うん。仕方ないからコーヒーでいい?」
「うん。もちろん。」

彼について迷路みたいな狭い路地を傘をさしながら歩いた。

女性もののランジェリーのお店の前で立ち止まった。
あまりにもセクシーなランジェリーが店頭に並んでいて、
立ち止まるのも恥ずかしいくらいだった。

「この上なの。」
「え?そうなの?こんなとこにカフェあるの?」
「うん。」

店の中にツカツカと入っていく彼に唖然としたがついて行った。
階段を上ると美術作品が壁一面に飾られており、
アートギャラリー兼用のカフェスペースという感じだった。
その壁の前にソファが4つほど置かれており、
1組のカップル客がコーヒーを楽しんでいた。

「ほんとだ。カフェなんだね。」
「ここはイタリアの有名なコーヒーチェーン店なんだよ。
店の名前聞いたことある?」
「へえー、そーなんだ。ううん、初めて聞いた。
それにしても入るのに勇気がいるところだよね。笑」
「そーでしょ?!だから穴場なんだ。」
「確かに。こんなところにカフェがあるとは思わないもんね。
でも素敵なところだね。」
「そーでしょ?!僕はよく来るんだ。」
「ふーん。一人であの下着屋さん通って来るの緊張しない?」
「大丈夫だよ。」
「さすがだね。笑」

初めてのデートで行きつけの店に連れてきてくれるのは
心を開いてくれている気がして悪い気はしなかった。
鞄と傘をソファに置いて、カウンターに行き、
バーテンダー風の外国人の男に注文した。

「私、アメリカーナ。」
「じゃあ僕はエスプレッソ。」

さちこが財布から小銭を出そうとすると
「いいよ。」と制して支払ってくれた。

ただ彼はコーヒー好きなイタリア人の血を受け継いでいるから
イタリアのコーヒーチェーン店でわざわざアメリカーナを注文したさちこに
<ありえない!>
と言いたげな空気は注文した瞬間少し伝わってきた。

淹れたてのコーヒーが
カウンターでトレイに並べられたので彼が席まで運んだ。

彼はすでに汗だくだった。

「今日めっちゃ暑いね。」
「うん。湿気がすごいね。」
「ごめん、ジャケット脱いでいい?」
「いいよ。いいよ。暑いでしょ。」

白いシャツ姿になった彼が真っ直ぐにさちこの目を見つめてきた。
実際に会ってもやはり年下には見えなかった。
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