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10.カミングアウト

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前日に夜景の見える窓側の席は予約いっぱいで
カウンター席になると店から連絡があったことをあらかじめ聞いていたので、
なぜか一番奥の窓側の席に案内されたことに驚いた。

「カウンターじゃなかったね。ねじ伏せたの?笑」
「いや何もしてないよ。笑 なんでだろうね。」
「きっとこのご時世でキャンセルになったんじゃない?笑」
「またそういうこと言う~」

(あ、ブラックさちこが出てしまった。こういうジョーク嫌いなのかなあ?)

「きっと日頃の行いが良かったからだね。」

(はい、挽回したぞ。)

「そだね。」

彼は夜景が正面に見える席を譲ってくれて、夜景を背にした席に座った。

コートを脱いで壁のハンガーにかけた。
椅子に座ると深いVネックから除く胸元が間接照明に照らされた。

好みのタイプの顔の女がマスクを外して微笑むと
もう彼が半勃ちになっているのが手に取るようにわかった。笑

彼はまじまじとこちらの顔を見て嬉しそうに言った。

「やっぱ素敵。実際見るともっと素敵だった。」
「ありがとう。そんなに見られると恥ずかしいです。」

ここで前回学んだ持ち前の武器である永作博美スマイルで念を押した。笑

シャンパンとワインで乾杯した。
ラインで話していた酒の好みも
ちゃんと覚えていてくれていたこともうれしかった。

ただ彼の顔はマスクを外すと思いのほかしもぶくれの顔が残念であった。
頬から首のあたりに広がる肉が気になる。
あと20KGくらい痩せてたらモテるだろうに残念である。

(これは筋肉質ではない。デブだ。絶対おなか出てるはず。嫌だ。)

ただ料理もワインもおいしくて会話は弾んだ。
彼は年下を感じさせない落ち着きがあり、聞き上手な感じであった。

「どうですか?実際会ってみて。だめですか?」
「だめじゃないけど。。。まだわかんない。」
「また会ってくれますか?」
「うん。。。っていうかさ、私、既婚なの。」
「うん。」

ここで言うしかないと思った。

すると意外なことに彼は表情ひとつ変えなかった。

「聞こえてる?私、既婚なんだ。それでも大丈夫?」
「うん。大丈夫。」

彼は全く動じなかった。

「ごめんね。
いつ言ったらいいかすごく考えたんだけどついつい言いそびれちゃって。
でもちゃんと言っとかなきゃって思って。」
「うん、大丈夫。既婚ってだけでしょ?大丈夫。」
「うん、子供はいないけど。
だって、結婚願望あり、子供欲しいってプロフに書いてたから、
真剣にそういう人捜してるのかと思って、
いいね返す時も迷ったんだけど。。。」
「大丈夫。そんな希望してないから。」
「え、そうなの?
なんか真剣交際求めてる人だったら悪いなあって思ってたから。
既婚者とつきあったことあるの?」
「うん、あるよ。」
「そっか、じゃあ大丈夫だね。」

肩の荷が下りた。
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