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第三章 『溜め込んだ魔力でスローライフを』

第三章7 突然の訪問者

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 部屋で魔導書を読んでいる間に、外は暗くなっていた。

 一階へ降りると、相変わらず豪華な夕飯が机に並べられていた。
 みんなが決まった席に座っている。

 
「……なんですか、アイラさん」

 そんなに見ないでくれ。照れる。

「別に何もないけど?」

 おそらくアイラは昼のことを心配しているんだと思う。ラグナさんに学校サボってることをバラされないのか、俺を監視しているのだろう。
 心配しなくても、元々告げ口は好きじゃない。

 とはいえ、毎日のようにサボってたら、いつかはバレそうだけど。


 そういえば家に帰ってきてから一度もリィラを見てない。
 体調が悪いから部屋で寝ているのか?

「ステラさん、リィラは部屋ですか?」
「そうよ。頭が痛いって言ってたから寝かせてるの。あとでポーションを飲ませるから大丈夫よ」
「そうですか……」

 大丈夫、と言われても心配だな。あとでリィラの部屋に行ってみるか。

 それにしても、やっぱりこの世界にもポーションってあるんだな。
 作れるようになったら商売ができるんだけど。さすがに十二歳でお店は無理か。建てる資金がまずないからな。

 冒険者で少しお金を稼ぐってのも手だが。モンスターと言っても、魔精霊がいた迷宮よりはレベルが低い気もするし。
 でも戦いはなるべく避けたいな。疲れるし。


「ラグナさん、冒険者って稼げるんですか?」
「どうした、冒険者に興味出てきたのか?」
「いや、そういうわけじゃないんですけど……」
「そうだなー、依頼主によるな。例えば同じモンスターが相手だとしても、そのモンスターの被害の規模で報酬は変わってくる」

 そんな感じなのか。
 同じゴブリンでも被害が大きかったら報酬はたんまりもらえるってことか。

 考えてみたら、俺十二歳じゃねーか。本来戦闘はおろか、魔力さえ備わっていない歳。
 子供が冒険者登録はできないな。冒険者として稼ぐは却下だな。

「あ、ポーション。ポーションってどうやったら作れますか?」
「ポーションは光魔法だ。そこらへんはステラに聞いてくれ」

 もしかしてステラさん、ポーション作れたりするのか?

「レイくん、回復術師になるの!?」
「回復術師?」
「うん! お母さんも回復術師なんだよ!」

 シイラは嬉しそうにそう言った。
 回復術師か。冒険者のパーティーに一人はいるイメージがある……。

「そうなんですか? ステラさん」
「大したことないんだけどね。回復魔法とポーションを少し」
「ポーションの作り方を僕に教えてください!」
「いいわよ。でも光魔法の適正は持ってるの?」

 …………適正?

 そうだった。ポーションを作るには光魔法が必要なのか。

「確かめてあげるわ」

 ステラさんはそう言うと、目を瞑り、何か詠唱を始めた。

「炎、風……よかったわね、光もあるわ」

 お、今ので俺の適正が分かったのか?
 これも光魔法の一つかな。

「よかったなレイ。三つも適正あるじゃねぇか」
「ふっ」

 アイラは鼻で笑った。
 三つの適正は少ない方なのか? だとしても笑うなよ!

 そういえば、アイラやシイラさんには俺が魔力を持ってることを伝えてなかったな。
 つまりは、儀式をしてない子供でも適正が何かわかるってことか。

「こら、アイラ笑わないの。アイラだって適正一つしかないでしょ」
「私は水魔法だけで十分だから」

 その実、俺も水以外の適正より、水魔法だけでいい気がする。
 適正がたくさんあることに越したことはないが。

「シイラさんはいくつ持ってるんですか?」
「私は……アイラ、私いくつだった?」
「水以外の五つです。自分の適正くらい覚えておいてください、姉さん」

 シイラもシイラで天才だったのか。千人に一人しか持っていない水魔法を持つ妹に、水以外の適性を持つ姉。
 さすが、ハーヴェイさんと同期だった元騎士の娘だ。

 天才姉妹に感心していると、玄関のドアを叩く音が聞こえた。

「誰だ、こんな時間に」
「あ、僕が出ますよ。ラグナさんは食べててください」

 ラグナさんの代わりに、俺が玄関のドアを開けた。

「はーい、どちらさ……ま」
「何をしているのかしら、こんなところで」
「ひ、人違いです。お引き取りくださいませ」

 重いドアをゆっくり閉める。

 確かにドアの前にいたのは姫様だ。でもなんでこんなところに……。
 シリウスのやつ、姫様に俺の居場所言ったのか?

「どうした、レイ。誰だったんだ?」
「家を間違えたみたいです。もう帰ったと思うので」

 ――ドンドン。ドンドンドン。

 やばい、ラグナさんが玄関まで歩いてきた。
 姫様はいつまでドアを叩いてるんだよ!


「レイ、そこをどけ」
「あ」

 俺はラグナさんにその場から押しのけられた。
 そして、ドアを開けた。


「姫じゃねぇか! 久しぶりだな!」
「ら、ラグナさん!?」

 先に驚いたような声を上げたのはラグナさんの方だ。
 
 え、なに知り合い? ラグナさんはエゼルガルドの元騎士……あぁ、顔見知りか。
 

「姫がこんな村にどうした」
「ほんとですよ、こんなところになんで来たんですか?」

 姫様は俺を睨みながら言った。

「なんでって、私の専属騎士いなくなったのよ。追いかけるに決まってるでしょ?」

 スローライフの前に、この人から逃げきろう。
 姫様が浮かべた笑みを見て、俺はそう心に誓った。
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