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第二章 『神の印』
第二章7 魔法学校〈イクシード〉
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「…………」
「話を進めて、アルカナ」
姫様は一度ネムを言葉で抑えると、再び話を再開させた。
いや、俺が承諾してねぇんだから進めんなよ!
ここから逃げていいかな……。
「魔法学校にまだ在籍している子ですが、魔力の量と魔法の知識に関しては、現時点で騎士と同レベルと言われているほどの天才がいます……」
「いいわ、その子を呼んでもらえるかしら」
もういっそのこと、そいつを専属騎士に任命しろよ。
姫様は考えた素振りをみせたが、この様子は絶対何も考えていない。
「近いうちに姫様の屋敷に連れて参ります。」
「明日よ。明日連れてきて」
魔法学校の生徒を連れてきていいのか、甚だ疑問だが、アルカナはそれを了解してしまった。いや、展開が早い。まずそいつの予定を確かめろよ。
というか、さっき魔法学校の存在をリィラに聞かされたばっかりなんだけど。
「せめて、魔法学校のことだけでも教えてもらえませんか?」
「リィラ、あなた魔法学校の卒業生でしょ。教えてあげなさい」
説明も人任せかよ。つい心の中で突っ込んでしまった。
リィラ、さっきまでパニック状態に陥ってたけど大丈夫か? さっきよりは少し落ち着いたようだが。
「は、はい。魔法学校というのは、その名の通り魔法を教える学校のことです。この街から一番近い魔法学校で言いますと、イクシードと呼ばれる学校です」
リィラの口ぶりから察するに、この世界にはいくつか魔法学校があるのだろう。
それほど魔法はこの世界で浸透しているようだ。
ちなみに、と姫様はリィラの説明に口を挟んだ。
「イクシードの卒業生にハーヴェイさんとアレクがいるわ」
「そ、そうなんですか。リィラさんもイクシードの卒業生?」
「いえ。私はイクシードの入学試験落ちてしまったので……」
高校とか大学みたいなもんか。つまるところ、イクシードは入りにくいってことか?
「アルカナ? もちろんレイに付ける魔法使いはイクシードの生徒よね?」
アルカナは姫様の質問に対して、首をゆっくりと縦に振って肯定した。
イクシードの中でも優秀な生徒が来るって、俺より余裕で強いんじゃないのか?
待てよ……考えてもみろ。そいつが俺より強いことを見せつけたら、姫様はそいつを専属騎士に任命するんじゃないのか?
「そう、それならいいわ」
「僕もそれで構いません」
明日から俺は解放されるはずだ。屋敷に来た魔法使いと戦って、ボコボコにされれば姫様はきっと俺に呆れる。
俺な考えた作戦にしては、完璧なんじゃないか?
「レイ、魔法学校についてわかった?」
「あ、一つ聞いてもいいですか?」
「なに?」
長話に姫様は少し不機嫌になっていらっしゃる。
でもそんなの俺には関係ない。
不機嫌そうな表情を浮かべる姫様に、俺は遠慮なしに質問をぶつけた。
「入学って何歳からできるんです――」
「十三歳よ」
食い気味に即答……。相当腹が立ってるな。ネムはまだ姫様の状態に気付いてないようだ。
リィラは気づいたのか、「やめなよやめなよ」みたいな顔をしてる。
だが、ここで俺は引き下がるわけにはいかない。
これも俺の作戦の一つだ。これだけ腹を立てれば、俺のことが嫌になるはずだ。
「姫様姫様、もう一つ質問いいですか?」
「なに」
「十三歳って魔力を持ってないですよね?」
「そうね。入学から二年間は魔法の基本的な知識の授業。で、残りの二年間は実技を踏まえた魔法の授業よ」
そうか。十三歳に入学して、二年経てば十五歳。魔法を使える歳になるってわけだな。
魔法学校って四年制なのか。
元いた世界で十三歳は、中学生か?
結構早い段階で魔法を覚え始めるんだな……って感心してる場合じゃなかった。
姫様をもっとギリギリまで怒らせないといけない。
「姫様、魔法学校詳しいんですね。姫様っていくつなんですか?」
「十五歳よ。文句ある?」
「いえ。ありません……」
姫様の細い腕がぷるぷると震え始めている。
これ以上言ったら、俺の身に危険が生じる。質問攻めはもうやめておこう……。
「アルカナ、今日はありがとね。明日、屋敷にしっかりイクシードの生徒連れてくるのよ」
「わかっております」
姫様はそれだけ言うと、さっさと部屋から出て言った。やはり我慢の限界だったみたいだ。
「また何か分からないことがあれば」
「わかりました。リィラさんを頼ります」
「そ、そうね。それでいいわ」
そんなことを話しながら、俺たちはギルドの外へと出た。
最初に騒いだせいか、帰りは完全に注目の的だ。
ギルドの外へ出ると、、姫様は宿と逆方向を向いた。
「私は疲れたからもう帰るわ」
やり過ぎたかな……はは。
とはいえ、騎士になるのは御免だ。どうにかして、阻止しないと。
「ネムも姫様のお部屋までお供しますぅ!」
「来ないで」
「せめてお風呂までは一緒にぃ!」
「嫌よ」
……あいつの方が絡み方うざくないか?
耳に入った会話に心の中で突っ込んでる間に、姫様とネムは見えなくなっていた。
「リィラさんは今からどうします?」
「今日はもう帰ります。兄様にも心配をかけるわけにもいかないので」
「わかりました。気をつけて帰ってくださいね」
俺はリィラさんを見送る。方向は姫様たちと同じみたいだ。
「では……」
リィラは小さく手を振った。俺はそれに手を振り返した。
そういや、まだ昼になったばっかりだよな。暇になってしまった。
悩んだ末、俺は一人で『光の街』エゼルガルドを観光することにした。
「話を進めて、アルカナ」
姫様は一度ネムを言葉で抑えると、再び話を再開させた。
いや、俺が承諾してねぇんだから進めんなよ!
ここから逃げていいかな……。
「魔法学校にまだ在籍している子ですが、魔力の量と魔法の知識に関しては、現時点で騎士と同レベルと言われているほどの天才がいます……」
「いいわ、その子を呼んでもらえるかしら」
もういっそのこと、そいつを専属騎士に任命しろよ。
姫様は考えた素振りをみせたが、この様子は絶対何も考えていない。
「近いうちに姫様の屋敷に連れて参ります。」
「明日よ。明日連れてきて」
魔法学校の生徒を連れてきていいのか、甚だ疑問だが、アルカナはそれを了解してしまった。いや、展開が早い。まずそいつの予定を確かめろよ。
というか、さっき魔法学校の存在をリィラに聞かされたばっかりなんだけど。
「せめて、魔法学校のことだけでも教えてもらえませんか?」
「リィラ、あなた魔法学校の卒業生でしょ。教えてあげなさい」
説明も人任せかよ。つい心の中で突っ込んでしまった。
リィラ、さっきまでパニック状態に陥ってたけど大丈夫か? さっきよりは少し落ち着いたようだが。
「は、はい。魔法学校というのは、その名の通り魔法を教える学校のことです。この街から一番近い魔法学校で言いますと、イクシードと呼ばれる学校です」
リィラの口ぶりから察するに、この世界にはいくつか魔法学校があるのだろう。
それほど魔法はこの世界で浸透しているようだ。
ちなみに、と姫様はリィラの説明に口を挟んだ。
「イクシードの卒業生にハーヴェイさんとアレクがいるわ」
「そ、そうなんですか。リィラさんもイクシードの卒業生?」
「いえ。私はイクシードの入学試験落ちてしまったので……」
高校とか大学みたいなもんか。つまるところ、イクシードは入りにくいってことか?
「アルカナ? もちろんレイに付ける魔法使いはイクシードの生徒よね?」
アルカナは姫様の質問に対して、首をゆっくりと縦に振って肯定した。
イクシードの中でも優秀な生徒が来るって、俺より余裕で強いんじゃないのか?
待てよ……考えてもみろ。そいつが俺より強いことを見せつけたら、姫様はそいつを専属騎士に任命するんじゃないのか?
「そう、それならいいわ」
「僕もそれで構いません」
明日から俺は解放されるはずだ。屋敷に来た魔法使いと戦って、ボコボコにされれば姫様はきっと俺に呆れる。
俺な考えた作戦にしては、完璧なんじゃないか?
「レイ、魔法学校についてわかった?」
「あ、一つ聞いてもいいですか?」
「なに?」
長話に姫様は少し不機嫌になっていらっしゃる。
でもそんなの俺には関係ない。
不機嫌そうな表情を浮かべる姫様に、俺は遠慮なしに質問をぶつけた。
「入学って何歳からできるんです――」
「十三歳よ」
食い気味に即答……。相当腹が立ってるな。ネムはまだ姫様の状態に気付いてないようだ。
リィラは気づいたのか、「やめなよやめなよ」みたいな顔をしてる。
だが、ここで俺は引き下がるわけにはいかない。
これも俺の作戦の一つだ。これだけ腹を立てれば、俺のことが嫌になるはずだ。
「姫様姫様、もう一つ質問いいですか?」
「なに」
「十三歳って魔力を持ってないですよね?」
「そうね。入学から二年間は魔法の基本的な知識の授業。で、残りの二年間は実技を踏まえた魔法の授業よ」
そうか。十三歳に入学して、二年経てば十五歳。魔法を使える歳になるってわけだな。
魔法学校って四年制なのか。
元いた世界で十三歳は、中学生か?
結構早い段階で魔法を覚え始めるんだな……って感心してる場合じゃなかった。
姫様をもっとギリギリまで怒らせないといけない。
「姫様、魔法学校詳しいんですね。姫様っていくつなんですか?」
「十五歳よ。文句ある?」
「いえ。ありません……」
姫様の細い腕がぷるぷると震え始めている。
これ以上言ったら、俺の身に危険が生じる。質問攻めはもうやめておこう……。
「アルカナ、今日はありがとね。明日、屋敷にしっかりイクシードの生徒連れてくるのよ」
「わかっております」
姫様はそれだけ言うと、さっさと部屋から出て言った。やはり我慢の限界だったみたいだ。
「また何か分からないことがあれば」
「わかりました。リィラさんを頼ります」
「そ、そうね。それでいいわ」
そんなことを話しながら、俺たちはギルドの外へと出た。
最初に騒いだせいか、帰りは完全に注目の的だ。
ギルドの外へ出ると、、姫様は宿と逆方向を向いた。
「私は疲れたからもう帰るわ」
やり過ぎたかな……はは。
とはいえ、騎士になるのは御免だ。どうにかして、阻止しないと。
「ネムも姫様のお部屋までお供しますぅ!」
「来ないで」
「せめてお風呂までは一緒にぃ!」
「嫌よ」
……あいつの方が絡み方うざくないか?
耳に入った会話に心の中で突っ込んでる間に、姫様とネムは見えなくなっていた。
「リィラさんは今からどうします?」
「今日はもう帰ります。兄様にも心配をかけるわけにもいかないので」
「わかりました。気をつけて帰ってくださいね」
俺はリィラさんを見送る。方向は姫様たちと同じみたいだ。
「では……」
リィラは小さく手を振った。俺はそれに手を振り返した。
そういや、まだ昼になったばっかりだよな。暇になってしまった。
悩んだ末、俺は一人で『光の街』エゼルガルドを観光することにした。
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