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序章
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「さあ、楽しいお茶の時間よ。リディ、ミルクと砂糖はどれくらいかしら?」
場所を公爵家の庭園に移し、叔母様と私はティーセットとお菓子が並んだ席に座った。辺りは色とりどりの薔薇が咲いておりいつ見ても綺麗で心地良い空間だ。
ミルクは半分くらいで、砂糖を2つ下さいと伝えるとすかさずターニャが用意してくれた。本当は好みを知り尽くしているターニャだが、今日は私がお茶会に呼ばれた体で進んでいるので、指示された後に準備したのだ。
「そうそう、ティースプーンはカップの奥に置いてね。その方が飲むときに邪魔にならないわ。」
時々、作法を教えてくれるがテーブルマナーはお母様から毎日教わっていたのでなんとかなるだろう。満足気に頷いている叔母様を見てもなんとかなっている筈。
「リディももう明日で7歳になるのね。明日は他の家門だけではなく、第二王子殿下もいらっしゃることは聞いているかしら?」
「はい、他にも同じ年頃の子達が来ると聞いています。」
「そうね、リディと同じ年頃というと………第二王子殿下はもちろん、ランティウス公爵家、ダラス侯爵家、ラスター侯爵家、あとはリエンディスク伯爵家ね。全員御子息だからよりどりみどりよ!」
指折り数えながら来客予定の家門を言う叔母様はとても楽しそうだ。私は予想が的中してしまったせいで紅茶の味がいつもより薄く感じる。やはりゲームの攻略対象が明日、この庭園に揃ってしまう。ターニャに砂糖をもう一つ頼もう。
そして、殿下と公爵家は簡単に選べないのでは無いか、と今なら感じ取れるが叔母様はよりどりみどりと言った。もう既に婚約者探しを始めたいのだろう。叔母様なら誰を選んでも婚約できるよう根回ししそうだ。なにか話を切り替えなくては。
「叔母様………女の子はいないのでしょうか?私、女の子の友達も居なくて………」
「ああ、ごめんなさい。リエンディスク伯爵家には息女もいたわ。確か、リディの一つ年下よ。あの家はほとんど領地で育ているようだから明日来られるかは分からないけど。」
叔母様が慌てて教えてくれたことに一瞬の光を見た。できれば、攻略対象よりその子と仲良くなりたいのだけど明日来てくれるのだろうか。
あともう一つ気になる事が。
「そういえば、第一王子殿下は………」
こうなったら全員との距離感を聞いてしまおうと思ったが、叔母様の空気がもう一段階、熱気を帯びた気がしてすぐさま後悔した。叔母様、そんなに目を輝かさないで。違う、大きくなったらお姫様に!とか子供ながらの野望なんて全くないから。
「あらあらあら、リディ。第一王子殿下が気になるの?流石はハウルムト家に生まれただけあるわ。でも残念ね………第一王子殿下は長い間、他国に留学中なのよ。」
なるほど、だから第二王子だけなのか。他にもそれぞれの家の関係性だとか聞きたかったけどそこまで踏み込んで聞くにはまだ幼すぎる。それに、家に呼ぶくらいだから親しくしている家同士なのだろう。
叔母様は、それでも第一王子殿下に近付く手段がないのよね、と小さく漏らすとしばらく思案し始めた。叔母様に聞いたのは軽率だった。この人は本気で策を練るかもしれない。
「………まあ、ここだけの話だけどね。第二王子殿下と仲良くなった方が今後貴女のためになると思うわ。」
なにやら含みのありそう、というのは直感だが、叔母様の真意はまだ私にはわからない。そうなのですか、と素直に言葉を返すしかなかった。
叔母様とのお茶会は長いようで短く感じた。明日のパーティーも楽しみにしてるわね、と叔母様に告げられながら別れ、自室に戻る。今になってようやく気付くが、いろんな汗をかいていたようでどうも着心地が悪い。そんな時、ターニャからいつもより少し早めの湯浴みを勧められ、心を読み取られてしまったと目が点になる。
「本日は天気が良かったですから。暑さを感じるのも仕方ありません。」
「ターニャ完璧か」
心の中の声が外に出てしまったけど、仕方がない。完璧以外言いようがないんだもの。15.6歳位の完璧な侍女を見て、私も見習えることが多いと改めてそう思った。
場所を公爵家の庭園に移し、叔母様と私はティーセットとお菓子が並んだ席に座った。辺りは色とりどりの薔薇が咲いておりいつ見ても綺麗で心地良い空間だ。
ミルクは半分くらいで、砂糖を2つ下さいと伝えるとすかさずターニャが用意してくれた。本当は好みを知り尽くしているターニャだが、今日は私がお茶会に呼ばれた体で進んでいるので、指示された後に準備したのだ。
「そうそう、ティースプーンはカップの奥に置いてね。その方が飲むときに邪魔にならないわ。」
時々、作法を教えてくれるがテーブルマナーはお母様から毎日教わっていたのでなんとかなるだろう。満足気に頷いている叔母様を見てもなんとかなっている筈。
「リディももう明日で7歳になるのね。明日は他の家門だけではなく、第二王子殿下もいらっしゃることは聞いているかしら?」
「はい、他にも同じ年頃の子達が来ると聞いています。」
「そうね、リディと同じ年頃というと………第二王子殿下はもちろん、ランティウス公爵家、ダラス侯爵家、ラスター侯爵家、あとはリエンディスク伯爵家ね。全員御子息だからよりどりみどりよ!」
指折り数えながら来客予定の家門を言う叔母様はとても楽しそうだ。私は予想が的中してしまったせいで紅茶の味がいつもより薄く感じる。やはりゲームの攻略対象が明日、この庭園に揃ってしまう。ターニャに砂糖をもう一つ頼もう。
そして、殿下と公爵家は簡単に選べないのでは無いか、と今なら感じ取れるが叔母様はよりどりみどりと言った。もう既に婚約者探しを始めたいのだろう。叔母様なら誰を選んでも婚約できるよう根回ししそうだ。なにか話を切り替えなくては。
「叔母様………女の子はいないのでしょうか?私、女の子の友達も居なくて………」
「ああ、ごめんなさい。リエンディスク伯爵家には息女もいたわ。確か、リディの一つ年下よ。あの家はほとんど領地で育ているようだから明日来られるかは分からないけど。」
叔母様が慌てて教えてくれたことに一瞬の光を見た。できれば、攻略対象よりその子と仲良くなりたいのだけど明日来てくれるのだろうか。
あともう一つ気になる事が。
「そういえば、第一王子殿下は………」
こうなったら全員との距離感を聞いてしまおうと思ったが、叔母様の空気がもう一段階、熱気を帯びた気がしてすぐさま後悔した。叔母様、そんなに目を輝かさないで。違う、大きくなったらお姫様に!とか子供ながらの野望なんて全くないから。
「あらあらあら、リディ。第一王子殿下が気になるの?流石はハウルムト家に生まれただけあるわ。でも残念ね………第一王子殿下は長い間、他国に留学中なのよ。」
なるほど、だから第二王子だけなのか。他にもそれぞれの家の関係性だとか聞きたかったけどそこまで踏み込んで聞くにはまだ幼すぎる。それに、家に呼ぶくらいだから親しくしている家同士なのだろう。
叔母様は、それでも第一王子殿下に近付く手段がないのよね、と小さく漏らすとしばらく思案し始めた。叔母様に聞いたのは軽率だった。この人は本気で策を練るかもしれない。
「………まあ、ここだけの話だけどね。第二王子殿下と仲良くなった方が今後貴女のためになると思うわ。」
なにやら含みのありそう、というのは直感だが、叔母様の真意はまだ私にはわからない。そうなのですか、と素直に言葉を返すしかなかった。
叔母様とのお茶会は長いようで短く感じた。明日のパーティーも楽しみにしてるわね、と叔母様に告げられながら別れ、自室に戻る。今になってようやく気付くが、いろんな汗をかいていたようでどうも着心地が悪い。そんな時、ターニャからいつもより少し早めの湯浴みを勧められ、心を読み取られてしまったと目が点になる。
「本日は天気が良かったですから。暑さを感じるのも仕方ありません。」
「ターニャ完璧か」
心の中の声が外に出てしまったけど、仕方がない。完璧以外言いようがないんだもの。15.6歳位の完璧な侍女を見て、私も見習えることが多いと改めてそう思った。
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