カレイなる日々

隠井迅

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二巡目(二〇二三)

第07(131)匙 昭和二十九年、優しき〈うなぎの寝床〉:カロリーカレーハウス(A03)

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 〈神保町デルタゾーン〉を後にし、「JR神田駅」にてスタンプを押してから、川崎での用事を済ませ、東京にUターンした書き手が、「JR御茶ノ水駅」で押印した後に向かったカレー専門店こそが「カロリーカレーハウス」である。

 この店名に、「カロリー」というワードが入っている事からも察せられるように、この店は、書き手が同日の正午前に訪れた「キッチンカロリー駿河台下本店」に連なる店である。

 駿河台界隈において、「キッチンカロリー」は、いわば、エリア・チェーン店のようになっている。
 ここで、キッチンカロリーのネットワークを整理してみると、〈神保町デルタゾーン〉である〈神田小川町三丁目〉、すなわち、〈お茶の水橋〉方面に続く〈明大通り〉の麓付近にあるのが、一九五三年開業の「キッチンカロリー駿河台下本店」である。
 そして、明大通りの右側の歩道を取って、〈お茶の水橋〉方面に向かって、坂道を上ってゆき、〈JR御茶ノ水駅〉前の信号の一本手前の路地を右折した〈神田駿河台二丁目〉の〈紅梅通り〉に面しているのが、一九五四年開業の「キッチンカロリー駿河台店」である。
 それから、JR御茶ノ水駅前の、神田川と平行して走っている〈茗渓通り〉に面しているのが、〈神田駿河台四丁目〉に在る「キッチンカロリーお茶の水駅前店」(旧店名・キッチンカロリー満ぷく洋食)で、建物の二階に入っている。
 最後に、その「お茶の水駅前店」の一階に入っているのが、キッチンカロリーのカレー専門店、一九五四年、昭和二十九年創業の「カロリーカレーハウス」なのだ。

 この駿河台のカレー専門店、一言で言えば、建物そのものの様相が、まさしく、ザッツ〈昭和〉で、つまり、その建物の古さも然る事ながら、特徴的なのは、その建物の形状である。
 JR御茶ノ水駅前の〈茗渓通り〉の線路側に面している店の幾つかは、駅の線路の方に建物が張り出したようになっており、さらに、それらの建物は、間口が狭く、そのように横幅が無い代わりに奥行きが深い、いわゆる、細長き〈うなぎの寝床〉になっているのである。
 したがって、店の座席は、二個の小さなテーブル席以外は、横並びなのだ。

 書き手は、入口に置かれている、古くて味のある券売機で食券を買おうとしたのだが、その時ポケットの中に入っていたのが硬貨のみ、百円玉四枚と新五百円玉だけで、つまるところ、券売機非対応だったのである。
 手持ちのお札も万札しか無かったので、申し訳ない思いを抱きながら、老店主に、券売機が新五百円玉を受け付けてくれない事を申し出たところ、マスターは、「悪いねぇ~、何もかも古くって」っと言いながら、丁寧に対処してくれた。おかげで、書き手は、「ハムカツとカニクリームコロッケカレー」を注文できたのであった。

 ここのカレー・メニューは、何らかの揚げ物が付くトッピング・カレーが基本で、値段も、そのほとんどが〈六九〇〉円と非常に安く、二枚のカツを付けた最も高い品でも〈九二〇〉円なのだ。
 そして、その揚げ物も、おやっさんが、注文後に揚げてくれるので、熱っ熱なのだ。

 そして、このカレー店を、老店主が独りで切り盛りしている。

 かくの如く、ワンオペ運営という多忙な中での丁寧な調理、さらに、新五百円玉しか持っていなかった間抜けな書き手の注文対応までしてくれて、おやっさんには、頭が下がる思いである。

 創業六十九年の駿河台の〈うなぎの寝床〉で、店を独りで元気に切り盛りしている、優しい老店主が提供してくれる揚げ物カレーを、また、折を見て食べに来たい、と思う書き手であった。

〈訪問データ〉
 カロリーカレーハウス:駿河台エリア
 A02
 八月三日・金・十四時
 ハムカツとカニクリームコロッケカレー:六九〇円(現金)
 『北斗の拳』カード:No.19「リハク」

〈参考資料〉 
 「カロリーカレーハウス」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2023』、五十六ページ。
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