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一巡目(二〇二二)
第110匙 モチはモチ家、パスタはイタリ屋:デニーロ神田店(C17)
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「神田カレー街スタンプラリー」において、ここまで、百軒以上ものカレー提供店を巡ってきて、その中には、変わり種として、お好み焼きや豆腐、あるいは、蕎麦をカレーに合わせている、そんな店も幾つか認められた。
だが、やはり最も多かったのは、主食として、米やナンを提供している店である。
そして、米やナンの次に多かった主食は、ラーメンやうどんといった麺類であった。
実際、普通の定食屋の麺メニューや、市販されている即席麺においても、カレーうどんなどは普通に存在するし、いわば、ラーメンやうどんといった麺類は、米の次に、カレーと合う炭水化物として考えられている、と言っても、それは過言ではないかもしれない。
ナンやパンと同じように、ラーメンやうどんは、小麦を原料にしている。
いささか強引なもの言いを許していただきたいのだが、こう言ってよければ、小麦を水と塩で捏ねた後に、細長く切って、茹でるという概念の料理があって、それを中華風にアレンジしたものがラーメンで、日本風にしたものがうどんな分けだ。
そして、ここで、小麦と塩と水を捏ねて細長く切って茹でた料理として、我々が忘れてはならないのは、イタリヤにおけるパスタ、あるいは、スパゲッティである。
ちなみに、元々、イタリヤは都市国家の集合体で、それぞれの都市に、いわんや料理にも、〈地方色(食)〉と呼ぶべき特性があって、それを、ひとくくりに〈イタリヤ料理〉とみなしてしまう事は、短慮の誹りを受けても致し方ない事なのだが、ここでは、中華のラーメン、日本のうどん、イタリヤのスパゲッティという大雑把な分類を許していただきたい。
とまれかくまれ、同じ小麦を原料とするラーメンやうどんがカレーに合うのならば、パスタもまた、カレーに合う可能性が高いという発想は、おそらく誰しもが抱く考えであろう。
実際、パスタは様々なソースと実に合うので、カレー・ソースもまた御多分に洩れずなのだ。
事実、ここまで訪問したカレー提供店の中にも、例えば、「日乃屋」の御茶ノ水店では、カレー・スパゲッティが提供されていたし、神保町のイタリアン・レストラン「Cuore d’oro」では、店独自のアレンジメントを為して、ショートパスタという形で、カレー・パスタを提供していた。
そして、この日、書き手が昼時に訪問した、小川町のイタリヤ料理店、「DE NIRO(デニーロ)」においても、もちろん、カレー料理が提供されている。
このデニーロの開店は〈一九九〇年〉、二〇二二年時点において創業三十二年を誇る、神田・神保町界隈でも老舗のイタリヤ料理店である。
店の入り口に置かれていたイーゼルに書かれていたのだが、この店のスペシャリテは、「ズワイガニのトマトクリームパスタ」であるらしい。
このズワイガニのパスタ以外にも、代表的料理として掲示されていたのは、「塩味」の「ベーコン、キャベツ、キノコ、カボチャ、枝豆のスパゲッティ」、「トマトソース」の「プリップリのエビと野菜の煮込みのスパゲッティ」、そして「カレーパスタ」である。
もちろん、ズワイガニはいわんや、塩味やトマトソースのスパゲッティも実に魅力的だったのだが、スタンプラリー目的で訪れたこの日の書き手の選択肢は、カレーパスタ一択である。
店前に置かれていた掲示物の説明書きによると、「デニーロ」のカレーパスタは「鶏挽肉と野菜のキーマカレースパゲッティ」で、「S&Bの赤カンをベースにホールスパイス、生ハーブを加え、自家製のフルーツチャツネで旨味付けして」いるそうだ。
開店時刻が十一時十五分、入店が十一時二十五分、注文後、前菜としてのサラダが提供されてから十分ほど経った、十一時三十五分頃にスパゲッティが提供された。
この約十分間は、もしかしたら、この店におけるパスタの茹で時間なのかもしれない。
とまれ、デニーロのカレーパスタは、麺は茶色で、その上に、ここではキーマカレーと呼ぶべきであろうが、カレー味のミートソースがかかっていた。
パスタが茶色ということは、そもそも、麺がカレーで味付けされているのであろうか。
例えば、これまで自分で作ったカレー・スパゲッティは、茹でた麺に、前夜の残りモノのカレーや、レトルトのカレーをぶっかけただけの、〈カレーパスタ〉では決してない代物であった。
しかし、デニーロのカレーパスタは、もちろんプロの手によるものだから、レベチなのは当たり前なのだが、ただ単にパスタにカレーを掛けただけの、麺に、元々、別物であったカレーを足しただけでは決してなく、〈カレーパスタ〉という完全に一個の料理になっていたのである。
モチはモチ屋とよく言うが、パスタに関しても、パスタはイタリ屋、やはり、自分で似たような代物をこさえることができたとしても、真に美味い物は専門店においてこそ味わうべき、改めてそう思わされた、この日の書き手であった。
〈訪問データ〉
デニーロ神田店;神保町・小川町
C17
十二月一日・金・十一時半
カレーパスタ:一二〇〇;円(QR)
〈参考資料〉
「デニーロ神田店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十二ページ。
だが、やはり最も多かったのは、主食として、米やナンを提供している店である。
そして、米やナンの次に多かった主食は、ラーメンやうどんといった麺類であった。
実際、普通の定食屋の麺メニューや、市販されている即席麺においても、カレーうどんなどは普通に存在するし、いわば、ラーメンやうどんといった麺類は、米の次に、カレーと合う炭水化物として考えられている、と言っても、それは過言ではないかもしれない。
ナンやパンと同じように、ラーメンやうどんは、小麦を原料にしている。
いささか強引なもの言いを許していただきたいのだが、こう言ってよければ、小麦を水と塩で捏ねた後に、細長く切って、茹でるという概念の料理があって、それを中華風にアレンジしたものがラーメンで、日本風にしたものがうどんな分けだ。
そして、ここで、小麦と塩と水を捏ねて細長く切って茹でた料理として、我々が忘れてはならないのは、イタリヤにおけるパスタ、あるいは、スパゲッティである。
ちなみに、元々、イタリヤは都市国家の集合体で、それぞれの都市に、いわんや料理にも、〈地方色(食)〉と呼ぶべき特性があって、それを、ひとくくりに〈イタリヤ料理〉とみなしてしまう事は、短慮の誹りを受けても致し方ない事なのだが、ここでは、中華のラーメン、日本のうどん、イタリヤのスパゲッティという大雑把な分類を許していただきたい。
とまれかくまれ、同じ小麦を原料とするラーメンやうどんがカレーに合うのならば、パスタもまた、カレーに合う可能性が高いという発想は、おそらく誰しもが抱く考えであろう。
実際、パスタは様々なソースと実に合うので、カレー・ソースもまた御多分に洩れずなのだ。
事実、ここまで訪問したカレー提供店の中にも、例えば、「日乃屋」の御茶ノ水店では、カレー・スパゲッティが提供されていたし、神保町のイタリアン・レストラン「Cuore d’oro」では、店独自のアレンジメントを為して、ショートパスタという形で、カレー・パスタを提供していた。
そして、この日、書き手が昼時に訪問した、小川町のイタリヤ料理店、「DE NIRO(デニーロ)」においても、もちろん、カレー料理が提供されている。
このデニーロの開店は〈一九九〇年〉、二〇二二年時点において創業三十二年を誇る、神田・神保町界隈でも老舗のイタリヤ料理店である。
店の入り口に置かれていたイーゼルに書かれていたのだが、この店のスペシャリテは、「ズワイガニのトマトクリームパスタ」であるらしい。
このズワイガニのパスタ以外にも、代表的料理として掲示されていたのは、「塩味」の「ベーコン、キャベツ、キノコ、カボチャ、枝豆のスパゲッティ」、「トマトソース」の「プリップリのエビと野菜の煮込みのスパゲッティ」、そして「カレーパスタ」である。
もちろん、ズワイガニはいわんや、塩味やトマトソースのスパゲッティも実に魅力的だったのだが、スタンプラリー目的で訪れたこの日の書き手の選択肢は、カレーパスタ一択である。
店前に置かれていた掲示物の説明書きによると、「デニーロ」のカレーパスタは「鶏挽肉と野菜のキーマカレースパゲッティ」で、「S&Bの赤カンをベースにホールスパイス、生ハーブを加え、自家製のフルーツチャツネで旨味付けして」いるそうだ。
開店時刻が十一時十五分、入店が十一時二十五分、注文後、前菜としてのサラダが提供されてから十分ほど経った、十一時三十五分頃にスパゲッティが提供された。
この約十分間は、もしかしたら、この店におけるパスタの茹で時間なのかもしれない。
とまれ、デニーロのカレーパスタは、麺は茶色で、その上に、ここではキーマカレーと呼ぶべきであろうが、カレー味のミートソースがかかっていた。
パスタが茶色ということは、そもそも、麺がカレーで味付けされているのであろうか。
例えば、これまで自分で作ったカレー・スパゲッティは、茹でた麺に、前夜の残りモノのカレーや、レトルトのカレーをぶっかけただけの、〈カレーパスタ〉では決してない代物であった。
しかし、デニーロのカレーパスタは、もちろんプロの手によるものだから、レベチなのは当たり前なのだが、ただ単にパスタにカレーを掛けただけの、麺に、元々、別物であったカレーを足しただけでは決してなく、〈カレーパスタ〉という完全に一個の料理になっていたのである。
モチはモチ屋とよく言うが、パスタに関しても、パスタはイタリ屋、やはり、自分で似たような代物をこさえることができたとしても、真に美味い物は専門店においてこそ味わうべき、改めてそう思わされた、この日の書き手であった。
〈訪問データ〉
デニーロ神田店;神保町・小川町
C17
十二月一日・金・十一時半
カレーパスタ:一二〇〇;円(QR)
〈参考資料〉
「デニーロ神田店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十二ページ。
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