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一巡目(二〇二二)
第101匙 苦くて辛い、たんたん・ダッタン・カレーおそば:蕎麦ダイニング 煉 神田店(B23)
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月曜の昼は、午前と夕方の仕事までの間に、他の曜日よりも少しだけ時間が取れるので、この日の書き手は、カレー店をハシゴする事にしていたのであった。
そして、短い時間の中でカレー提供店を〈連荘〉するために、一軒目は軽めにしようと考え、岩本町のお蕎麦屋さん「煉(れん)」を訪れる事にした次第なのである。
実は、このお蕎麦屋さんにおいて、カレー・メニューが提供されているのは、ランチ・タイムだけなのだ。
スタンプラリーもコンプリートまで残り二十四店、漏れなく訪店する上でも、カレーの提供が昼だけの店は、行ける時に行くのが、スタンプラリー・コンプのポイントなのだ。
件のガイドブックによると、「ランチタイムは近所の会社の人で賑わう」という情報が書かれていたのだが、書き手が「煉」に到着したのは十三時半頃、時間帯的に、会社員の昼休みが終わっている時間帯だったので、書き手は待つ事なく、すんなりと入店できた。ちなみに、後日、正午に訪問した時には、店の外で待つことになった事を、ここに書き添えておくとしよう。
さて、店の入口には、ランチ・メニュー表が貼り出されていて、それを見てみたところ、通常のランチ・メニュー一覧の他、カレー・メニューだけをピックアップしたカレー専用の一覧表もあって、そこには、「豚バラカレーそば・うどん」、「肉タンタンカレーそば・うどん」、「肉タンタン納豆カレーランチ」、「肉タンタンカレーランチ」といったメニューが認められた。
特に、「肉タンタンカレーランチ」には赤で下線が引かれており、この事は、おそらく、「肉タンタンカレーランチ」が、店のオススメだという事をを意味しているように書き手には思われた。
このランチメニューは、「ごはん系ランチ ミニそば・サラダ・香物付」によって構成されていて、ミニそばが付いてはいるものの、メインは、ライスカレーである。
なるほど確かに、「煉」はお蕎麦屋さんなので、注文すべきは〈カレー蕎麦〉であるように思われる。
だがしかし、店のメニューの赤線でも、ガイドブックでも、「肉タンタンカレーランチ」が推されている。
それゆえに、ハシゴするので軽く蕎麦をと考えていたというのに、書き手は、入り口で大いに悩んでしまったのだが、結局、店の推されメニューであった、この「肉タンタンカレーランチ」を注文する事に決めて、店に足を踏み入れたのであった。
やがて、注文後しばらくして、赤いお盆に載せられた品が提供された。
そこには、四つの器が置かれており、その内容物は、小皿に赤い福神漬け、小さい椀にサラダ、同じく小さい椀に蕎麦、そして、大きな平皿にライスカレーが盛られていた。
ライスカレーは、平たく盛り付けられたご飯を覆い尽くすようにカレー・ソースが掛けられており、皿の縁に、カレーが半分かかった、白味が強い豚バラ肉が置かれていた。
書き手は、ライスカレーは最後の楽しみにし、また、口内がカレーで覆われる前に蕎麦の風味を味わおう、という意図で、まず〈ミニ蕎麦〉を食す事にしたのであった。
店内に置かれていた説明書きによると、この店のそばは全て、「韃靼(だったん)そば」を使用しているのだそうだ。
韃靼そばには、「普通のそばの100倍と言われるルチン(ポリフェノール)が含まれており、それゆえに、韃靼そばは、生活習慣病、疲労回復にも役に立つ、身体思いの健康食であるらしい。
後日、「韃靼そば」について、書き手は、さらに調べてみる事にした。
『日穀製粉株式会社』のWEBページを参照したのだが、まとめてみると次のようになる。
古来、中国には、〈甘そば〉と〈苦そば〉という二種類の蕎麦があって、我々日本人一般が〈蕎麦〉として食しているのが〈甘そば〉で、それに対して、韃靼そばが〈苦そば〉で、これは、その名の通り、苦みが強いのが味の特徴で、それゆえに、これまで、日本では、苦い〈韃靼そば〉はあまり食べられてこなかったらしい。
しかし最近の健康ブームの流れの中で、より栄養価の高い、つまり、〈甘そば〉の百倍のポリフェノールが含まれている〈苦そば〉、韃靼そばが着目され、苦いながらも、食されるようになったそうなのだ。
ちなみに、ポリフェノールとは、そもそも〈苦み成分〉なのだが、このポリフェノールには、「強い抗酸化作用」があって、「活性酸素などの有害物質を無害な物質に変える作用があり、動脈硬化など生活習慣病の予防に役立」つ、との事であった。
ちなみに、ポリフェノールは自然界に五千種類以上あるそうなので、その機能をより正確に、そして、より深く知るためには、もっと勉強せねばならないのは必然なのだが、〈健康に良い〉という煽りに敏感な現代人が、韃靼そばに着目するようになった心理は納得し易いものである。
ミニ蕎麦とは言えども、韃靼そばである、「煉」の蕎麦は、食感に関しては、少し硬めで歯ごたえがあるような印象を書き手は抱いたのだが、味は思ったほど〈苦々しい〉ものではなかった。
もしかしたら、あまり苦くなり過ぎないように、「煉」では、そのような味付けがなされているのかもしれない。
さて、「煉」の特徴は、蕎麦は、いわゆる〈苦そば〉である〈だったん(韃靼)そば〉なのだが、これに対して、カレー・メニューは、〈タンタン〉カレーになっている点だ。
〈タンタン〉とは、 タンタンメン(担担めん)における、あの〈担担(たんたん)〉である。
担担とは中国四川省発祥なのだが、我々が日本で食べているものは、日本人の味に合わせてアレンジされているものである。とまれかくまれ、タンタンとは、ざっくり言ってしまうと、ピリ辛に味付けされた〈そぼろ〉である。
かくして、煉のタンタンカレーは、その〈タンタン〉がカレーの具になっており、カレーの辛味とタンタンの辛味が混じって、ちょっと面白いマリアージュになっているのだ。
〈追記〉
その後、書き手は、二〇二三年に入ってから二度、「煉」を訪れた。
二〇二三年の二度目の訪問時には、もう一度、最初の時に注文したランチ・メニューを味わいたくなって、「肉タンタンカレーランチ」を注文したのであった。
ちなみに、その三度目にして、直近の訪問日である五月十二日・金曜日は、折しも、四年ぶりに催される〈神田祭〉の前日に当たっていたので、「煉」が面している神田川沿いの〈柳原通り〉は、翌日に控えた神田祭りの準備で賑わいを見せていたのであった。
そして、これに先立つ年明けの二〇二三年最初の訪問は、二月の頭の事だったのだが、この時には、ポリフェノール百倍の「韃靼(だったん)そば」を〈カレーそば〉で食そうと書き手は思い立ち、「肉タンタンカレーそば」を注文したのであった。
この時の書き手は、これって、こう言ってよければ、苦くて辛い〈たんたん・だったんカレー蕎麦〉だな、と思いながら、煉のカレー蕎麦を口に運び続けていたのであった。
〈訪問データ〉
蕎麦ダイニング 煉 神田店;岩本町
B23
十一月二十八日・月・十三時半
タンタンカレーランチ:九〇〇円(QR)
〈再訪1〉
二〇二三年二月八日・月・十一時半
肉タンタンカレーそば:九八〇円(QR)
〈再訪2〉
二〇二三年五月十二日・金・正午
タンタンカレーランチ:九〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「蕎麦ダイニング 煉 神田店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十一ページ。
〈WEB〉
「韃靼そばうんちく話」、『日穀製粉株式会社』、二〇二三年五月十八日閲覧。
そして、短い時間の中でカレー提供店を〈連荘〉するために、一軒目は軽めにしようと考え、岩本町のお蕎麦屋さん「煉(れん)」を訪れる事にした次第なのである。
実は、このお蕎麦屋さんにおいて、カレー・メニューが提供されているのは、ランチ・タイムだけなのだ。
スタンプラリーもコンプリートまで残り二十四店、漏れなく訪店する上でも、カレーの提供が昼だけの店は、行ける時に行くのが、スタンプラリー・コンプのポイントなのだ。
件のガイドブックによると、「ランチタイムは近所の会社の人で賑わう」という情報が書かれていたのだが、書き手が「煉」に到着したのは十三時半頃、時間帯的に、会社員の昼休みが終わっている時間帯だったので、書き手は待つ事なく、すんなりと入店できた。ちなみに、後日、正午に訪問した時には、店の外で待つことになった事を、ここに書き添えておくとしよう。
さて、店の入口には、ランチ・メニュー表が貼り出されていて、それを見てみたところ、通常のランチ・メニュー一覧の他、カレー・メニューだけをピックアップしたカレー専用の一覧表もあって、そこには、「豚バラカレーそば・うどん」、「肉タンタンカレーそば・うどん」、「肉タンタン納豆カレーランチ」、「肉タンタンカレーランチ」といったメニューが認められた。
特に、「肉タンタンカレーランチ」には赤で下線が引かれており、この事は、おそらく、「肉タンタンカレーランチ」が、店のオススメだという事をを意味しているように書き手には思われた。
このランチメニューは、「ごはん系ランチ ミニそば・サラダ・香物付」によって構成されていて、ミニそばが付いてはいるものの、メインは、ライスカレーである。
なるほど確かに、「煉」はお蕎麦屋さんなので、注文すべきは〈カレー蕎麦〉であるように思われる。
だがしかし、店のメニューの赤線でも、ガイドブックでも、「肉タンタンカレーランチ」が推されている。
それゆえに、ハシゴするので軽く蕎麦をと考えていたというのに、書き手は、入り口で大いに悩んでしまったのだが、結局、店の推されメニューであった、この「肉タンタンカレーランチ」を注文する事に決めて、店に足を踏み入れたのであった。
やがて、注文後しばらくして、赤いお盆に載せられた品が提供された。
そこには、四つの器が置かれており、その内容物は、小皿に赤い福神漬け、小さい椀にサラダ、同じく小さい椀に蕎麦、そして、大きな平皿にライスカレーが盛られていた。
ライスカレーは、平たく盛り付けられたご飯を覆い尽くすようにカレー・ソースが掛けられており、皿の縁に、カレーが半分かかった、白味が強い豚バラ肉が置かれていた。
書き手は、ライスカレーは最後の楽しみにし、また、口内がカレーで覆われる前に蕎麦の風味を味わおう、という意図で、まず〈ミニ蕎麦〉を食す事にしたのであった。
店内に置かれていた説明書きによると、この店のそばは全て、「韃靼(だったん)そば」を使用しているのだそうだ。
韃靼そばには、「普通のそばの100倍と言われるルチン(ポリフェノール)が含まれており、それゆえに、韃靼そばは、生活習慣病、疲労回復にも役に立つ、身体思いの健康食であるらしい。
後日、「韃靼そば」について、書き手は、さらに調べてみる事にした。
『日穀製粉株式会社』のWEBページを参照したのだが、まとめてみると次のようになる。
古来、中国には、〈甘そば〉と〈苦そば〉という二種類の蕎麦があって、我々日本人一般が〈蕎麦〉として食しているのが〈甘そば〉で、それに対して、韃靼そばが〈苦そば〉で、これは、その名の通り、苦みが強いのが味の特徴で、それゆえに、これまで、日本では、苦い〈韃靼そば〉はあまり食べられてこなかったらしい。
しかし最近の健康ブームの流れの中で、より栄養価の高い、つまり、〈甘そば〉の百倍のポリフェノールが含まれている〈苦そば〉、韃靼そばが着目され、苦いながらも、食されるようになったそうなのだ。
ちなみに、ポリフェノールとは、そもそも〈苦み成分〉なのだが、このポリフェノールには、「強い抗酸化作用」があって、「活性酸素などの有害物質を無害な物質に変える作用があり、動脈硬化など生活習慣病の予防に役立」つ、との事であった。
ちなみに、ポリフェノールは自然界に五千種類以上あるそうなので、その機能をより正確に、そして、より深く知るためには、もっと勉強せねばならないのは必然なのだが、〈健康に良い〉という煽りに敏感な現代人が、韃靼そばに着目するようになった心理は納得し易いものである。
ミニ蕎麦とは言えども、韃靼そばである、「煉」の蕎麦は、食感に関しては、少し硬めで歯ごたえがあるような印象を書き手は抱いたのだが、味は思ったほど〈苦々しい〉ものではなかった。
もしかしたら、あまり苦くなり過ぎないように、「煉」では、そのような味付けがなされているのかもしれない。
さて、「煉」の特徴は、蕎麦は、いわゆる〈苦そば〉である〈だったん(韃靼)そば〉なのだが、これに対して、カレー・メニューは、〈タンタン〉カレーになっている点だ。
〈タンタン〉とは、 タンタンメン(担担めん)における、あの〈担担(たんたん)〉である。
担担とは中国四川省発祥なのだが、我々が日本で食べているものは、日本人の味に合わせてアレンジされているものである。とまれかくまれ、タンタンとは、ざっくり言ってしまうと、ピリ辛に味付けされた〈そぼろ〉である。
かくして、煉のタンタンカレーは、その〈タンタン〉がカレーの具になっており、カレーの辛味とタンタンの辛味が混じって、ちょっと面白いマリアージュになっているのだ。
〈追記〉
その後、書き手は、二〇二三年に入ってから二度、「煉」を訪れた。
二〇二三年の二度目の訪問時には、もう一度、最初の時に注文したランチ・メニューを味わいたくなって、「肉タンタンカレーランチ」を注文したのであった。
ちなみに、その三度目にして、直近の訪問日である五月十二日・金曜日は、折しも、四年ぶりに催される〈神田祭〉の前日に当たっていたので、「煉」が面している神田川沿いの〈柳原通り〉は、翌日に控えた神田祭りの準備で賑わいを見せていたのであった。
そして、これに先立つ年明けの二〇二三年最初の訪問は、二月の頭の事だったのだが、この時には、ポリフェノール百倍の「韃靼(だったん)そば」を〈カレーそば〉で食そうと書き手は思い立ち、「肉タンタンカレーそば」を注文したのであった。
この時の書き手は、これって、こう言ってよければ、苦くて辛い〈たんたん・だったんカレー蕎麦〉だな、と思いながら、煉のカレー蕎麦を口に運び続けていたのであった。
〈訪問データ〉
蕎麦ダイニング 煉 神田店;岩本町
B23
十一月二十八日・月・十三時半
タンタンカレーランチ:九〇〇円(QR)
〈再訪1〉
二〇二三年二月八日・月・十一時半
肉タンタンカレーそば:九八〇円(QR)
〈再訪2〉
二〇二三年五月十二日・金・正午
タンタンカレーランチ:九〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「蕎麦ダイニング 煉 神田店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十一ページ。
〈WEB〉
「韃靼そばうんちく話」、『日穀製粉株式会社』、二〇二三年五月十八日閲覧。
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