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一巡目(二〇二二)
第81匙 粉物カレー、シン・カレー零号:お好み焼 ねぎ焼 十々(E12)
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十一月十四日の月曜日、出向先の都合で、この日の午前中の仕事が無くなったため、書き手は、昼時に時間が使えた。そういった事情もあって、書き手は、この日のランチ・タイムに、可能な限り数多くのカレー提供店を巡って、スタンプ数を稼ぐ計画を立てた。
その戦略の基軸は、軽いメニューを連荘で、である。
こういった方針の下、一軒目に選んだのが、神保町・お茶の水の〈デルタゾーン〉に位置している「お好み焼 ねぎ焼 十々」だったのだ。
今回のイヴェントに参加しているカレー提供店の多くが、主食に、ライス、ナン、あるいは、うどんを据えているのに対して、この店「十々」は、その店名に付いている修飾語句が表わしているように、お好み焼きやねぎ焼きの店であり、当然、粉物をカレー味にしている点にこそ、その独自性がある。
そして十々が、このイヴェントにおいて提供しているカレーメニューこそが、『シン・エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』、あるいは『シン・仮面ライダー』の如き名称のカレー味のお好み焼き、「シンカレー玉」なのである。
ちなみに、このカレーお好み焼きは、平日のランチ・タイムと、夕方の五時から六時四十五分にしか提供されておらず、さらに、カレーが無くなり次第提供終了といった限定メニューであるため、昼時の早い時間帯に行くのが吉であり、そういった意味において、書き手は、平日の十二時少し前に訪店した次第なのだ。
この店、十々は、そもそも、関西風のお好み焼き専門店で、だからこそ、〈出汁〉がその味の特徴であるようだ。
ガイドブックの店紹介ページや、店のホームページによると、この店のお好み焼きは、「名古屋コーチンの鶏ガラと8種類の野菜から丁寧に8時間かけた」鶏ガラスープを摂って、これに、北海道の「日高昆布と鹿児島県産の鰹節で引いた香り高い出汁を合わせたW出汁」が特徴であるらしい。
そして〈生地〉に使っている小麦粉は、北海道産の小麦をメインに、三種類の小麦粉を配合した物なのだそうだ。
つまるところ、北や南、名古屋の食材を使って、関西風の調理法で仕上げている点が実に興味深い。
最後に、その独特の生地を鉄板に流し込んだら、「豚肉を全面に敷き詰め大葉をトッピング」している、との事であった。
通常、十々のお好み焼きは、この出汁と生地を使って焼き上げた粉物に、ソースとマヨネーズを塗って提供されるそうなのだが、特別メニューの「シンカレー玉」は、ソースの代わりにカレーが用いられている。
書き手の来店時にはワンオペで運営されており、さらに、一人一人の来客に対して一枚一枚丁寧に焼いてゆくため、注文品の提供までには時間を要するのだが、こうした待ち時間ゆえに、この関西風お好み焼きに対する書き手の期待感がいやがうえにも高まっていった。
やがて、注文した「シンカレー」が、木の板に載せられて提供された。
シンカレーは、ねぎ焼きではなく、〈お好み焼き〉で、生地の表面全体にカレーが敷き詰められていた。
そのお好み焼きの生地は、こう言ってよければ、ステーキのウェルダンのように、しっかりと焼かれているのではなく、その触感はレアで、トロットロな感触であった。
これをステンレスのヘラで切り分け、小皿に移しながら少しずつ食してゆくのだが、生地がトロトロであるが故に、その軟らかな生地とカレーが口内で交じり合い、米やナンと一緒に食す時とは違った味わいが醸し出されるのだ。
もしもこれが、生地がもう少し固く焼かれていたとしたら、その味わいは全く違ったものになっていたであろう。
〈追記〉
年が明けてから、また、この食感を体感するために、書き手は再び十々を訪れたのだが、その際に、スタッフに尋ねてみたところ、カレー・メニューは、スタンプラリーの時期だけの特別メニューとの事であった。
つまり、シンカレーを再び味わうには、スタンプラリーのような特別な期間を待たねばならないのだ。
そこで、この時の書き手は、お好み焼きではなく〈ねぎ焼き〉を注文したのであった。
ねぎ焼きとは、大阪で生まれた粉物品で、キャベツの代わりに〈青ねぎ〉を使い、味付けも、ソースではなく「醤油とレモン」を使ったメニューで、書き手は「京都九条ネギ」を使った「ぶたねぎ焼き」を注文したのであった。
このねぎ焼き、本当に、生地がネギで一杯であった。
このネギで満ち満ちた粉物を食しながら書き手はこう思った。
キャベツを使ったお好み焼きを〈シンカレー零号〉とするのならば、もし仮に、次の機会に、ねぎ焼きのカレー味が提供されたとしたら、それは〈シンカレー初号〉と呼ぶべき品であり、それは一体どのような味わいになるのであろうか、と。
〈訪問データ〉
お好み焼 ねぎ焼 十々:神保町・お茶の水
E12
十一月十四日・月・十二時
シンカレー玉 ランチ:九九〇円(現金)
〈再訪〉
二〇二三年二月十三日・月曜日・十二時
ぶたねぎ焼き*京都九条ネギ使用:八五〇円(QR)
〈参考資料〉
「お好み焼 ねぎ焼 十々」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十五ページ。
〈WEB〉
「十々の美味しさのヒミツ」、『お好み焼 ねぎ焼 十々』、二〇二三年二月十五日。
その戦略の基軸は、軽いメニューを連荘で、である。
こういった方針の下、一軒目に選んだのが、神保町・お茶の水の〈デルタゾーン〉に位置している「お好み焼 ねぎ焼 十々」だったのだ。
今回のイヴェントに参加しているカレー提供店の多くが、主食に、ライス、ナン、あるいは、うどんを据えているのに対して、この店「十々」は、その店名に付いている修飾語句が表わしているように、お好み焼きやねぎ焼きの店であり、当然、粉物をカレー味にしている点にこそ、その独自性がある。
そして十々が、このイヴェントにおいて提供しているカレーメニューこそが、『シン・エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』、あるいは『シン・仮面ライダー』の如き名称のカレー味のお好み焼き、「シンカレー玉」なのである。
ちなみに、このカレーお好み焼きは、平日のランチ・タイムと、夕方の五時から六時四十五分にしか提供されておらず、さらに、カレーが無くなり次第提供終了といった限定メニューであるため、昼時の早い時間帯に行くのが吉であり、そういった意味において、書き手は、平日の十二時少し前に訪店した次第なのだ。
この店、十々は、そもそも、関西風のお好み焼き専門店で、だからこそ、〈出汁〉がその味の特徴であるようだ。
ガイドブックの店紹介ページや、店のホームページによると、この店のお好み焼きは、「名古屋コーチンの鶏ガラと8種類の野菜から丁寧に8時間かけた」鶏ガラスープを摂って、これに、北海道の「日高昆布と鹿児島県産の鰹節で引いた香り高い出汁を合わせたW出汁」が特徴であるらしい。
そして〈生地〉に使っている小麦粉は、北海道産の小麦をメインに、三種類の小麦粉を配合した物なのだそうだ。
つまるところ、北や南、名古屋の食材を使って、関西風の調理法で仕上げている点が実に興味深い。
最後に、その独特の生地を鉄板に流し込んだら、「豚肉を全面に敷き詰め大葉をトッピング」している、との事であった。
通常、十々のお好み焼きは、この出汁と生地を使って焼き上げた粉物に、ソースとマヨネーズを塗って提供されるそうなのだが、特別メニューの「シンカレー玉」は、ソースの代わりにカレーが用いられている。
書き手の来店時にはワンオペで運営されており、さらに、一人一人の来客に対して一枚一枚丁寧に焼いてゆくため、注文品の提供までには時間を要するのだが、こうした待ち時間ゆえに、この関西風お好み焼きに対する書き手の期待感がいやがうえにも高まっていった。
やがて、注文した「シンカレー」が、木の板に載せられて提供された。
シンカレーは、ねぎ焼きではなく、〈お好み焼き〉で、生地の表面全体にカレーが敷き詰められていた。
そのお好み焼きの生地は、こう言ってよければ、ステーキのウェルダンのように、しっかりと焼かれているのではなく、その触感はレアで、トロットロな感触であった。
これをステンレスのヘラで切り分け、小皿に移しながら少しずつ食してゆくのだが、生地がトロトロであるが故に、その軟らかな生地とカレーが口内で交じり合い、米やナンと一緒に食す時とは違った味わいが醸し出されるのだ。
もしもこれが、生地がもう少し固く焼かれていたとしたら、その味わいは全く違ったものになっていたであろう。
〈追記〉
年が明けてから、また、この食感を体感するために、書き手は再び十々を訪れたのだが、その際に、スタッフに尋ねてみたところ、カレー・メニューは、スタンプラリーの時期だけの特別メニューとの事であった。
つまり、シンカレーを再び味わうには、スタンプラリーのような特別な期間を待たねばならないのだ。
そこで、この時の書き手は、お好み焼きではなく〈ねぎ焼き〉を注文したのであった。
ねぎ焼きとは、大阪で生まれた粉物品で、キャベツの代わりに〈青ねぎ〉を使い、味付けも、ソースではなく「醤油とレモン」を使ったメニューで、書き手は「京都九条ネギ」を使った「ぶたねぎ焼き」を注文したのであった。
このねぎ焼き、本当に、生地がネギで一杯であった。
このネギで満ち満ちた粉物を食しながら書き手はこう思った。
キャベツを使ったお好み焼きを〈シンカレー零号〉とするのならば、もし仮に、次の機会に、ねぎ焼きのカレー味が提供されたとしたら、それは〈シンカレー初号〉と呼ぶべき品であり、それは一体どのような味わいになるのであろうか、と。
〈訪問データ〉
お好み焼 ねぎ焼 十々:神保町・お茶の水
E12
十一月十四日・月・十二時
シンカレー玉 ランチ:九九〇円(現金)
〈再訪〉
二〇二三年二月十三日・月曜日・十二時
ぶたねぎ焼き*京都九条ネギ使用:八五〇円(QR)
〈参考資料〉
「お好み焼 ねぎ焼 十々」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十五ページ。
〈WEB〉
「十々の美味しさのヒミツ」、『お好み焼 ねぎ焼 十々』、二〇二三年二月十五日。
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