カレイなる日々

隠井迅

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一巡目(二〇二二)

第80匙 ハワイアン・スタイルでカレモコ:cafe & dining jimbocho(E11)

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 十一月半ばの金曜日の昼、東京メトロの淡路町駅・新御茶ノ水駅、そして都営線の小川町駅の共有地下通路から出た書き手は、武道館方面に向かって靖国通りの左側の歩道を取って、しばし歩を進めた。そして、〈三省堂書店〉を過ぎたところで、次の通りを左に曲がったのだが、その辺りには、今回の「神田カレー街食べ歩きスタンプラリー」への参加店が軒を連ねている。こう言ってよければ、そこは、小川町のカレーエリアなのである。

 この〈エリア小川町〉に関しては既に、書き手は、十月の初めに、ネパール料理店の「Gravy」を訪れていたのだが、一か月ぶりにこのエリアに来た書き手が訪問したのは、その「Gravy」と同じ建物の上の階に位置している、カフェ&レストランで、その名も「jimbocho」であった。

 店のホームページによると、この店の特徴は、「ハワイアン・スタイル」であるらしい。
 だからなのであろう、その店内の調度品などは、白や薄い青が基調になっていて、まるで、太陽、空と海、白い砂浜を想起させるような明るい雰囲気を醸し出していた。

 この店は、A(一四三〇円)、B(一一八〇円)、C(一〇八〇円)の三タイプのランチ・セットメニューを提供していて、それらの違いは、Aが「選べるメイン+サラダバー+スープ飲み放題+ドリンク+ミニポキ丼orミニデザート」、Bが「選べるメイン+サラダバー+スープ飲み放題+ドリンク」、Cが「選べるメイン+サラダバー」だったのだが、書き手は、セットに関しては、最もシンプルなCセットを選んだ。
 そして選べるメインに関しては、ロコモコ、ポキ丼、チーズリゾット、鶏の照り焼き丼 、週変わりメニュー、本日のパスタから一品を選ぶ形式であった。
 この店のハワイアンな雰囲気に合わせるのならば、選ぶべきは「ロコモコ」であろう。
 〈ロコモコ〉とは、そもそもハワイ語で、〈地域〉の意味の〈ロコ〉、〈混ぜる〉の意味の〈モコ〉の合成語で、これは、ごはんの上にハンバーグやグレイビーソースをかけた料理で、いわばハワイのソウルフードなのだ。
 だがしかし、である。
 書き手の来店の目的は、あくまでもカレー・スタンプラリーなので、今回はイヴェントの特別メニューである「特製キーマカレー」をメインにしたのであった。

 ガイドブックの店紹介ページや、店のメニューに書かれていた「特製キーマカレー」についての説明によると、この特製カレーは、野菜ベースのキーマカレーの上に、「トロトロに赤ワインで煮込んだ豚バラ肉」、さらにその上に、「温泉卵と自家製燻製オイル、レモンの皮をかけた」品であるそうだ。

 なんとも食欲をそそる、楽しみなカレー・メニューである。

 やがて、紹介文に書かれていた通りの料理が白い皿に載せられて運ばれてきた。
 白い米飯の上には、焦げ茶色のカレーに牛豚肉、そして、料理の真ん中、いわば頂点に半熟卵が置かれていた。

 書き手は、まずは、卵を崩さないようにサイドから食を進めてゆき、最後の最後に、頂点の卵を崩して、それを豚肉カレーと混ぜ混ぜした。

 あっ! なるほど。

 今回注文した選べるメインは、ハワイのソウル・フードである〈ロコモコ〉でなかったのは確かなのだが、書き手は、ほとんど無意識に、卵とカレーを混ぜ(モコ)ていた。
 カレーを混ぜたという事、これは、いわば〈カレ・モコ〉だ。
 こう言ってよければ、書き手は、ハワイアンスタイルで、カレーをモコして食した分けなのである。

〈訪問データ〉
 cafe & dining jimbocho:神保町・小川町
 E11
 十一月十一日・金・十二時
 豚バラ肉の赤ワイン煮込みをのせた特製キーマカレー(Cセット):一〇八〇円(QR)

〈参考資料〉
 「cafe & dining jimbocho」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十七ページ。
〈WEB〉 
 『cafe & dining jimbocho』、二〇二三年二月十三日閲覧。
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