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一巡目(二〇二二)
第77匙 ありそでなさそなオムカレー:エスぺリア(E10)
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火曜日の昼は、乗り換えの都合上、ランチを九段下で摂る事にしている書き手なのだが、この日は、九段下駅から少しだけ足を延ばして、神保町エリアの縁にある〈エスペリア〉を訪れたのであった。
エスペリアの創業は〈一九七二年〉にまで遡る。この老舗の洋食店の、その店内は、落ち着いた、シックな雰囲気を醸し出している。
カレー・ガイドブックによると、エスペリアでは、残念ながら「カレーは平日ランチのみの提供となります」との事なので、昼にしか、カレーは食べられないらしい。
この老舗洋食レストランが昼のみ提供しているカレー・メニューのラインナップは、店のホームページによると、「150gのチキンカツのせスパイシーカレー」、「メンチカツのせカレー」、「茄子とひき肉のスパイシーカレー(温玉付)」、「オムカレー」などで、どれもこれも、これぞ、日本の洋食屋のカレーと言わんばかりのメニューだったのだが、これらカレー一覧の中でも、ひときわ、書き手の注意を引いたのが「オムカレー」であった。
オムカレーとは、その料理名が端的に言い表わしているように、オムライスに、ケチャップやデミグラスソースではなく、その代わりに、カレー・ソースをかけた料理であろう。
オムライスにカレー、この組み合わせは、誰かが発想しそうなコラボレーションなのだが、しかし、書き手の記憶が正しければ、未だ一度も、カレー・オムライス、あるいは、オムライス・カレーなる料理を食べた経験が書き手にはなかった。
戯れに、「オムライスにカレーをかける」というフレーズで検索してみたところ、とある質問箱のページに「オムライスの上にカレーをかけるのっておかしいですか?」という質問が上がっていたので、つまるところ、オムライスとカレーのコラボは、さして一般的な組み合わせではないのかもしれない。
翻ってみると、他店ではめったにお目にかかれないが、エスペリアでは食べられるレアなオムカレー、この料理が俄然楽しみになった書き手であった。
この日の昼、九段下駅から徒歩で店へと向かい、歩道に面した店の入り口の前まで来ると、パネルには、店のおすすめメニューが掲示されていた。
それらが、「エスペリア風キーマカレー」、「ポークカツカレー」、そして、「オムライス✕カレー 人気の組合せ」というキャッチコピーが付いた「オムカレー」であった。
店内に案内されてから、座席でメニューをもっとよく見てみると、さらに「ハンバーグカレーソース」というメニューさえあった。
ゴクリ
どれもこれも魅力的なメニューなのだが、今日は「オムカレー」一択である。
やがて黒く四角いお盆に乗せられたセットメニューが提供されたのだが、その内容は、サラダ、福神漬け、スープ、そして、メインディッシュのオムカレーであった。
オムカレーは、白い皿に盛りつけられていた。
店に来る前は、黄色いオムライスの上に、ケチャップやデミグラスソースの代わりに、カレーが少し掛かっている物を書き手は想像していたのだが、出された料理には、オムライスの黄色い要素はほんの僅かに、まさに垣間見える程度しかなかった。
つまり、白い皿一面は、茶色のキーマカレーの湖になっていて、そのカレーの下にオムライスの島は沈められていたのだ。そして、沈んだオム島の一番高い所に、赤く小さなトマトが顔を出していた。
オムライス・カレーというよりも、完全にカレーが主軸になった料理という印象である。
書き手は、このような二つ以上の品が組み合わされた料理の場合、例えば、カツカレーなどは、カツだけ、カレーだけ、そしてカツカレーとして、といった三様の食べ方をする事が多いのだが、このエスペリアのオムカレーのように、オムライスがカレーの中に沈んでいる場合には、オムライスを単品として食すことは先ず不可能で、カレーと一緒という形でしかオムライスを食べられない。しかし、これはこれで、実に興味深い食し方だ。
かくして、書き手は、キーマカレーを一口味わったその後で、カレーと一体となったオムライスを堪能したのである。
このオムカレーにおける薄焼きされた黄色い卵が包んでいるのは、赤いケチャップライスで、その赤と黄色に、茶色いカレーソースが掛かっているのだが、そのように赤・黄・茶にように色味が混じっているだけではなく、味も、ケチャップ、卵、カレーが混然一体となって実に面白い味わいであった。
きっと、都内、否、日本全国で様々なカレー提供店を巡っていれば、どこかで、オムライスにカレーを足した、オムライス〈・〉カレーに出会える可能性もあろう。
だがしかし、この二つの料理が掛け合わされ、一体化した〈オムカレー〉は、もしかしたら、このエスペリアのオンリーワンな一皿であるのかもしれない。
〈訪問データ〉
エスぺリア:九段下・神保町
E11
十一月八日・火曜日・十三時十五分
オムカレー:一〇〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「エスぺリア」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、ページ。
〈WEB〉
『エスぺリア』、二〇二三年二月三日閲覧。
「オムライスにカレーをかける」、『Yahoo!知恵袋 』、二〇二三年二月三日閲覧。
エスペリアの創業は〈一九七二年〉にまで遡る。この老舗の洋食店の、その店内は、落ち着いた、シックな雰囲気を醸し出している。
カレー・ガイドブックによると、エスペリアでは、残念ながら「カレーは平日ランチのみの提供となります」との事なので、昼にしか、カレーは食べられないらしい。
この老舗洋食レストランが昼のみ提供しているカレー・メニューのラインナップは、店のホームページによると、「150gのチキンカツのせスパイシーカレー」、「メンチカツのせカレー」、「茄子とひき肉のスパイシーカレー(温玉付)」、「オムカレー」などで、どれもこれも、これぞ、日本の洋食屋のカレーと言わんばかりのメニューだったのだが、これらカレー一覧の中でも、ひときわ、書き手の注意を引いたのが「オムカレー」であった。
オムカレーとは、その料理名が端的に言い表わしているように、オムライスに、ケチャップやデミグラスソースではなく、その代わりに、カレー・ソースをかけた料理であろう。
オムライスにカレー、この組み合わせは、誰かが発想しそうなコラボレーションなのだが、しかし、書き手の記憶が正しければ、未だ一度も、カレー・オムライス、あるいは、オムライス・カレーなる料理を食べた経験が書き手にはなかった。
戯れに、「オムライスにカレーをかける」というフレーズで検索してみたところ、とある質問箱のページに「オムライスの上にカレーをかけるのっておかしいですか?」という質問が上がっていたので、つまるところ、オムライスとカレーのコラボは、さして一般的な組み合わせではないのかもしれない。
翻ってみると、他店ではめったにお目にかかれないが、エスペリアでは食べられるレアなオムカレー、この料理が俄然楽しみになった書き手であった。
この日の昼、九段下駅から徒歩で店へと向かい、歩道に面した店の入り口の前まで来ると、パネルには、店のおすすめメニューが掲示されていた。
それらが、「エスペリア風キーマカレー」、「ポークカツカレー」、そして、「オムライス✕カレー 人気の組合せ」というキャッチコピーが付いた「オムカレー」であった。
店内に案内されてから、座席でメニューをもっとよく見てみると、さらに「ハンバーグカレーソース」というメニューさえあった。
ゴクリ
どれもこれも魅力的なメニューなのだが、今日は「オムカレー」一択である。
やがて黒く四角いお盆に乗せられたセットメニューが提供されたのだが、その内容は、サラダ、福神漬け、スープ、そして、メインディッシュのオムカレーであった。
オムカレーは、白い皿に盛りつけられていた。
店に来る前は、黄色いオムライスの上に、ケチャップやデミグラスソースの代わりに、カレーが少し掛かっている物を書き手は想像していたのだが、出された料理には、オムライスの黄色い要素はほんの僅かに、まさに垣間見える程度しかなかった。
つまり、白い皿一面は、茶色のキーマカレーの湖になっていて、そのカレーの下にオムライスの島は沈められていたのだ。そして、沈んだオム島の一番高い所に、赤く小さなトマトが顔を出していた。
オムライス・カレーというよりも、完全にカレーが主軸になった料理という印象である。
書き手は、このような二つ以上の品が組み合わされた料理の場合、例えば、カツカレーなどは、カツだけ、カレーだけ、そしてカツカレーとして、といった三様の食べ方をする事が多いのだが、このエスペリアのオムカレーのように、オムライスがカレーの中に沈んでいる場合には、オムライスを単品として食すことは先ず不可能で、カレーと一緒という形でしかオムライスを食べられない。しかし、これはこれで、実に興味深い食し方だ。
かくして、書き手は、キーマカレーを一口味わったその後で、カレーと一体となったオムライスを堪能したのである。
このオムカレーにおける薄焼きされた黄色い卵が包んでいるのは、赤いケチャップライスで、その赤と黄色に、茶色いカレーソースが掛かっているのだが、そのように赤・黄・茶にように色味が混じっているだけではなく、味も、ケチャップ、卵、カレーが混然一体となって実に面白い味わいであった。
きっと、都内、否、日本全国で様々なカレー提供店を巡っていれば、どこかで、オムライスにカレーを足した、オムライス〈・〉カレーに出会える可能性もあろう。
だがしかし、この二つの料理が掛け合わされ、一体化した〈オムカレー〉は、もしかしたら、このエスペリアのオンリーワンな一皿であるのかもしれない。
〈訪問データ〉
エスぺリア:九段下・神保町
E11
十一月八日・火曜日・十三時十五分
オムカレー:一〇〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「エスぺリア」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、ページ。
〈WEB〉
『エスぺリア』、二〇二三年二月三日閲覧。
「オムライスにカレーをかける」、『Yahoo!知恵袋 』、二〇二三年二月三日閲覧。
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