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一巡目(二〇二二)
第74匙 ハーフサイズじゃモッタイナイ:APRON The Diner(A22)
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それは、十一月七日・月曜日の昼時であった。
十一月は、この日十一月七日を含めて、残り二十四日、そして、神田カレー街スタンプラリーの最終日は十二月十五日なので、つまるところ、カレー・スタンプラリーは残り〈三十九日〉であった。
だがしかし、である。
この時点において、書き手が既に来店済みのカレー提供店は七十三軒、達成率約六割に過ぎなかった。
スタンプラリーへの参加店は、一二四店(本来は一二五店だったのだが一軒が企画中に閉店)なので、書き手がコンプリートのために巡るべきカレー店は、残り五十一軒もある。
単純計算、昼と夜に毎日カレーを食べれば七十八店に行けるので、余裕でクリアできそうなのだが、都合によりカレー店巡りができない日もあるので、事態はそれ程、簡単ではない。
だから、である。
時間とお腹に余裕がある時にはカレー店をハシゴする、という〈戦略〉を採らねばならないのだ。
月曜日は、午前中と夕方の仕事の間に、カレー店を二軒以上巡れるだけの時間がとれる曜日なので、十一月七日の昼、書き手は、カレー店のハシゴを決行する事にしたのであった。
短時間でカレー店をハシゴする際の〈戦術〉上のポイントは、一食目のサイズを、ミニやハーフにする点である。ということは、一軒目の条件は、少ない量のカレーを提供している店という事になる。
そして二つ目のポイントは、一軒目から二軒目の移動に時間がかからない、という点だ。
そういった観点から、この日の書き手が足を運んだのは、神田駅北口からほど近い、一〇〇メートルもない短い路地にカレー提供店がひしめき合っている〈神田ふれあい通り〉にある〈APRON The Diner〉であった。
ここは、神田北口カレー街の店なので、次の店への移動に時間がかからないという条件を満たし、さらに、ハーフ・サイズのカレーも提供している店なのだ。
ちなみに、この店は、アパホテルの一階に入っているので、店は実に見付け易かった。
APRON The Dinerは、カテゴリー的には、イタリアン・レストランに分類されているのだが、この店が、二〇二二年のカレー・グランプリに参加するための特別メニューとして提供していたのが〈レモンクリームチキンカレー〉であった。ちなみに、ネット情報によると、前年、二〇二一年は、エビ風味の〈神田エビスカレー〉を提供していたそうなので、このレモンチキンカレーは、期間限定で、今しか食べられない一品であるようだ。
このカレー、ノーマル・サイズもあるのだが、女性に人気のイタリアン・レストランらしく、ハーフ・サイズも提供されていて、書き手は、カレー提供店をハシゴするための戦術的な理由から、ハーフで食す事にしたのであった。
ランチタイムに入店してみたところ、たしかにOLが多く、オシャンティーな雰囲気だったのだが、おそらく、書き手と同好の士であるカレー・ラヴァーらしき男性もチラホラと認められた。
ここは本来はイタリアンなので、パスタやリゾットなど、メニューの数もそれなりにあったのだが、カレーのハーフ・サイズと、目的がはっきりしていたので、着座と同時に書き手は注文を秒で済ませたのであった。
前菜のスープの後に、程なくして、レモン・クリーミー・チキン・カレーとサラダ、そして、グレープフルーツ・ジュースが提供された。
一見して、やはりライスの量は少なめで、それに応じてカレーの量も少なかった。
そのカレー・ソースは、ガイド・ブックによると、「生クリームとバターでまろやかに仕立てたルーにレモンの酸味と香りをプラスし」、スパイスとクリーミーな味わいが混ざっている「爽快な口当たりが魅力」であるそうだ。
まずは、スプーンで一口すくってカレーの味を試してみたのだが、前情報にあった生クリームにバターだと、ちょっとくどいかも、と予想していたのだが、思っていた程には重くはない印象であった。なるほど、それは確かに「爽快な口当たり」であった。
白い皿の上には、白いライスが置かれ、カレー・ソースは白米にはかからないように周囲を囲っていた。そのレモン・クリームのカレーの色は、レモン色が混じっているのか、色味は普通の茶色よりも薄めであった。
そして、そのカレーの中には、割と大きなチキンが、ドンと入れられていた。
このチキンは、タンドリー・チキンであるらしい。
ガイドブックによると、このチキン、「数種類のスパイスに48時間漬け込んで焼き上げた」ものであるそうだ。
そのチキンを切り取って口に運んでみると、肉はもの凄く柔らかく仕上げられていた。
カレー店ハシゴのための戦術とはいえ、ハーフでは物足りなさを覚えるほどの美味さであったので、いずれ、イヴェントとは関係なしに、普通のサイズで食べてみたいものだと思いつつ、書き手は、次の店に向かうべく、その店、APRON The Dinerを後にしたのであった。
〈訪問データ〉
APRON The Diner
A22
十一月七日・月曜日・十三時四十五分
レモンクリームチキンカレー(ハーフ):八〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「APRON The Diner」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十五ページ。
十一月は、この日十一月七日を含めて、残り二十四日、そして、神田カレー街スタンプラリーの最終日は十二月十五日なので、つまるところ、カレー・スタンプラリーは残り〈三十九日〉であった。
だがしかし、である。
この時点において、書き手が既に来店済みのカレー提供店は七十三軒、達成率約六割に過ぎなかった。
スタンプラリーへの参加店は、一二四店(本来は一二五店だったのだが一軒が企画中に閉店)なので、書き手がコンプリートのために巡るべきカレー店は、残り五十一軒もある。
単純計算、昼と夜に毎日カレーを食べれば七十八店に行けるので、余裕でクリアできそうなのだが、都合によりカレー店巡りができない日もあるので、事態はそれ程、簡単ではない。
だから、である。
時間とお腹に余裕がある時にはカレー店をハシゴする、という〈戦略〉を採らねばならないのだ。
月曜日は、午前中と夕方の仕事の間に、カレー店を二軒以上巡れるだけの時間がとれる曜日なので、十一月七日の昼、書き手は、カレー店のハシゴを決行する事にしたのであった。
短時間でカレー店をハシゴする際の〈戦術〉上のポイントは、一食目のサイズを、ミニやハーフにする点である。ということは、一軒目の条件は、少ない量のカレーを提供している店という事になる。
そして二つ目のポイントは、一軒目から二軒目の移動に時間がかからない、という点だ。
そういった観点から、この日の書き手が足を運んだのは、神田駅北口からほど近い、一〇〇メートルもない短い路地にカレー提供店がひしめき合っている〈神田ふれあい通り〉にある〈APRON The Diner〉であった。
ここは、神田北口カレー街の店なので、次の店への移動に時間がかからないという条件を満たし、さらに、ハーフ・サイズのカレーも提供している店なのだ。
ちなみに、この店は、アパホテルの一階に入っているので、店は実に見付け易かった。
APRON The Dinerは、カテゴリー的には、イタリアン・レストランに分類されているのだが、この店が、二〇二二年のカレー・グランプリに参加するための特別メニューとして提供していたのが〈レモンクリームチキンカレー〉であった。ちなみに、ネット情報によると、前年、二〇二一年は、エビ風味の〈神田エビスカレー〉を提供していたそうなので、このレモンチキンカレーは、期間限定で、今しか食べられない一品であるようだ。
このカレー、ノーマル・サイズもあるのだが、女性に人気のイタリアン・レストランらしく、ハーフ・サイズも提供されていて、書き手は、カレー提供店をハシゴするための戦術的な理由から、ハーフで食す事にしたのであった。
ランチタイムに入店してみたところ、たしかにOLが多く、オシャンティーな雰囲気だったのだが、おそらく、書き手と同好の士であるカレー・ラヴァーらしき男性もチラホラと認められた。
ここは本来はイタリアンなので、パスタやリゾットなど、メニューの数もそれなりにあったのだが、カレーのハーフ・サイズと、目的がはっきりしていたので、着座と同時に書き手は注文を秒で済ませたのであった。
前菜のスープの後に、程なくして、レモン・クリーミー・チキン・カレーとサラダ、そして、グレープフルーツ・ジュースが提供された。
一見して、やはりライスの量は少なめで、それに応じてカレーの量も少なかった。
そのカレー・ソースは、ガイド・ブックによると、「生クリームとバターでまろやかに仕立てたルーにレモンの酸味と香りをプラスし」、スパイスとクリーミーな味わいが混ざっている「爽快な口当たりが魅力」であるそうだ。
まずは、スプーンで一口すくってカレーの味を試してみたのだが、前情報にあった生クリームにバターだと、ちょっとくどいかも、と予想していたのだが、思っていた程には重くはない印象であった。なるほど、それは確かに「爽快な口当たり」であった。
白い皿の上には、白いライスが置かれ、カレー・ソースは白米にはかからないように周囲を囲っていた。そのレモン・クリームのカレーの色は、レモン色が混じっているのか、色味は普通の茶色よりも薄めであった。
そして、そのカレーの中には、割と大きなチキンが、ドンと入れられていた。
このチキンは、タンドリー・チキンであるらしい。
ガイドブックによると、このチキン、「数種類のスパイスに48時間漬け込んで焼き上げた」ものであるそうだ。
そのチキンを切り取って口に運んでみると、肉はもの凄く柔らかく仕上げられていた。
カレー店ハシゴのための戦術とはいえ、ハーフでは物足りなさを覚えるほどの美味さであったので、いずれ、イヴェントとは関係なしに、普通のサイズで食べてみたいものだと思いつつ、書き手は、次の店に向かうべく、その店、APRON The Dinerを後にしたのであった。
〈訪問データ〉
APRON The Diner
A22
十一月七日・月曜日・十三時四十五分
レモンクリームチキンカレー(ハーフ):八〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「APRON The Diner」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十五ページ。
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