カレイなる日々

隠井迅

文字の大きさ
上 下
73 / 147
一巡目(二〇二二)

第070匙 ネパーリラーメン、何それ、美味しいの?:プルナ(E09)

しおりを挟む
 十月最後のこの日、書き手は、夜に行くべきカレー店を、カレー・ガイドブックとニラメッコしながら探していた。
 月曜日の夜は、仕事の関係上、二〇時以降でなければ身体が開かないので、二十時半以降がラスト・オーダーか閉店時刻になっている店が対象になる。
 これを基準に見付けた店が、神保町からも淡路町からもアクセス可能な、小川町のネパール料理店〈プルナ〉であった。

 カレー・ガイドブックによると、この店は十年前の二〇一二年に開店した、インド・アジアン・レストランで、「シェフはネパールの5つ星ホテル『エベレスト』で10年間修行」したらしい。
 この店、プルナのオススメは「毎朝仕込む日替わりカレー」で、さらに、一番人気のメニューは「小川町ターリー」であるそうだ。

 ターリーとは、そもそも〈大皿〉の意味で、そこから派生して、多くの場合、銀色の大皿にまとめられて、ワンプレートで提供されるタイプの料理形式の事を意味する。要するに、ターリーとは定食と考えれば、我々日本人にも分かり易いかもしれない。
 つまるところ、「小川町ターリー」とは、〈小川町定食〉の事になるであろう。だがしかし、ターリー(定食)に、「小川町」という店が位置する町名が付いているだけなので、具体的に、その定食がどんな内容の料理なのか、書き手には想像がつかなかった。

 つまるところ、五つ星の凄さがどれ程かも、小川町定食の内容も分からなかったので、書き手は、ネットでプルナの事を調べてみる事にした次第なのだ。
 店自体が運営しているホームページはなかったのだが、幾つかのグルメサイトに、店のレビューが投稿されていた。

 だがしかし、である。

 書き手の目を釘付けにしたのは、日替わりカレーや小川町ターリーではなく、ガイドブックには記載されていなかった〈ネパーリラーメン〉というメニューであった。

 ネパーリラーメン自体は、料理として未知であっても、その名から容易く想像できるように、これは、ネパール風のカレーラーメンで、もはや、書き手は、これ以外のメニューを注文する気がなくなってしまった。

 店に着くと、その入り口には、「プルナ一押!」が売り文句となった、ネパーリラーメンの貼り紙さえあった。
 そして、貼り紙には、「あったか!」という文句も添えられていて、もしかしたら、このラーメンは、寒くなってから提供される冬限定のメニューなのかもしれない。
 さらに、その貼り紙には、「チキンと目玉焼き、たくさんの野菜 ピリ辛スープが旨い! ネパールの煮込みラーメンです。鶏ガラとカレースパイスのスープは最後の一滴まで飲みほして下さい。体にも良く、おいしいですヨ! あたたまります」と料理の具体的な説明書きがあって、これを読んだ書き手の食欲は、いやが上にも高められたのであった。

 入店して、予定通りに件のメニューを注文しようとしたのだが、ネパーリラーメンは煮込み料理なので、提供には少し時間がかかるとの事であった。だが、ここまで来て、多少の待ち時間など何する物でもない。

 やがて提供されたのは、カレーラーメンと言うよりも、ぐっつぐっつと煮立った、カレー煮込み〈ラーメン〉と呼ぶに相応しい料理であった。
 料理は、熱々に煮立っていたため、口の中が熱くなるだけではなく、喉を通った後は、身体の内側から暑くなったので、おそらく、かなりスパイスが効いて、身体の表と裏、両側からあっためるようになっているのであろう。

 まだ十月の末日で、本格的に寒くなってくるのはこれからなのだが、このネパーリラーメン、冬の日本に ぴったりな一品であるように、書き手には感じられたのであった。

〈訪問データ〉
 インド・アジアン料理 プルナ (PURNA):淡路町・小川町
 E09
 十月三十一日・月曜日・二〇時半
 ネパーリラーメン:八九〇円(QR)

〈参考資料〉
 「インド・アジアン料理 プルナ (PURNA)」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、二十七ページ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...