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一巡目(二〇二二)
第066匙 カレーが枯れる、その前に:カーマ(B14)
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十四時、木曜日の昼の仕事が終わるや否や、書き手は急ぎ神保町に向かった。
この日の目的地は〈カーマ〉だ。
この店は、靖国通りに接続している〈錦華(きんか)通り〉を、靖国通りを背にして真っすぐに進んだ、その右手にある。
カーマは、その創業は一九九五年にまで遡る事ができる、神保町の老舗カレー店の一つである。
店内で注文可能なメニューは、小辛の「キーマカレー」で、これは、牛豚のひき肉をふんだんに利用した、北インド流のカレーである。
辛口の「チキンカレー」は、南インド流の「サラサラでヘルシーな」「低カロリー」のカレーであるそうだ。
これらに加えメニューにあるのは、辛口の「やさいカレー」で、これは、チキンカレーに野菜が加えられたもので、チキンなしの純ベジタブルの注文も可能らしいのだが、やさいカレーは一日十五食の限定で、さらに野菜は季節ごとに変わる、との事であった。
カーマは、このように、北インド風も南インド風も提供している、日本人が経営しているインド風カレー店である。
その店長の拘りは、インドカレーを、日本の米に合うように調整している点であるそうだ。
スパイスは、パウダーのものではなく、ホールのスパイスを使用し、さらに、スープも取っているそうで、仕込みには相当な時間をかけているらしい。
だからなのか、あまり多くのカレー・ソースは作れないのかもしれない。
この店は、営業時間は三時間半と短いし、さらにガイド・ブックにも書かれていたのだが、「ソース完売のため予定より早く営業終了すること」もあるそうなのだ。
事実、書き手は、これまで何度かカーマの店の前まで行っていたのだが、ラスト・オーダー直前の到着という事も相まって、「カレー枯れ」によって入店叶わなかったのだ。
しかし、である。
念願かなって、ようやくこの日、書き手はカーマへの入店ができたのであった。
何度目かのチャレンジでようやく店に足を踏み入れた書き手は、さらに、一日十五食限定のやさいカレーが未だ余っているかどうかをスタッフに問うてみた。
すると、である。
ラスト・オーダーぎりぎりの入店だったにもかかわらず、レア中のレアのやさいカレーを頼む事ができたのだった。
やがて、ワンプレーとのカレー・ライスが提供された。
少し深めの白い皿には、サラサラなカレー・ソースに日本の米が殆ど沈むように入っていて、米の上には、様々な野菜が所狭しと乗っかっていた。
十月末のこの時期の野菜は、じゃがいも、かぼちゃ、なす、ピーマン、おくら、トマトなどであった。
閉店まであまり時間がなく、店に迷惑をかけないためにも、大急ぎで出された品を食べようと、書き手は少し焦りもしたのだが、そんな心配は無用であった。
ソースというよりも、サラサラで、もはや、スープと呼んで差支えのないカレーは、スルスルっと、あっという間に書き手の喉を通っていったからである。
今度、いつ来られるかは分からないが、次の機会には、北インド風のキーマを食べてみたいものである。
*
これは、後日談になるのだが、カーマの営業日と営業時間は、ここしばらく、日・月・祝日を除く、火曜から土曜日の十一時半から十五時(十四時四十五分ラスト・オーダー)までであった。
しかし、二〇二三年の一月十二日の木曜日より、火・木・土における夜の営業が再開される事が、一月二日付けのホームページのお知らせにおいて発表された。
人気店なので、夜もカレー・ソースが枯れる可能性はあるが、来店のチャンスが増える事になるので、近いうちに機会を見て訪れたい、そう思った書き手であった。
〈訪問データ〉
インドカレー カーマ:神保町・お茶の水
B14
十月二十七日・木曜日・一四時四十五分
やさいカレー:一二〇〇円(現金)
〈参考資料〉
「インドカレー カーマ」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、二十八ページ。
〈WEB〉
『インドカレー カーマ』、二〇二三年一月八日閲覧。
この日の目的地は〈カーマ〉だ。
この店は、靖国通りに接続している〈錦華(きんか)通り〉を、靖国通りを背にして真っすぐに進んだ、その右手にある。
カーマは、その創業は一九九五年にまで遡る事ができる、神保町の老舗カレー店の一つである。
店内で注文可能なメニューは、小辛の「キーマカレー」で、これは、牛豚のひき肉をふんだんに利用した、北インド流のカレーである。
辛口の「チキンカレー」は、南インド流の「サラサラでヘルシーな」「低カロリー」のカレーであるそうだ。
これらに加えメニューにあるのは、辛口の「やさいカレー」で、これは、チキンカレーに野菜が加えられたもので、チキンなしの純ベジタブルの注文も可能らしいのだが、やさいカレーは一日十五食の限定で、さらに野菜は季節ごとに変わる、との事であった。
カーマは、このように、北インド風も南インド風も提供している、日本人が経営しているインド風カレー店である。
その店長の拘りは、インドカレーを、日本の米に合うように調整している点であるそうだ。
スパイスは、パウダーのものではなく、ホールのスパイスを使用し、さらに、スープも取っているそうで、仕込みには相当な時間をかけているらしい。
だからなのか、あまり多くのカレー・ソースは作れないのかもしれない。
この店は、営業時間は三時間半と短いし、さらにガイド・ブックにも書かれていたのだが、「ソース完売のため予定より早く営業終了すること」もあるそうなのだ。
事実、書き手は、これまで何度かカーマの店の前まで行っていたのだが、ラスト・オーダー直前の到着という事も相まって、「カレー枯れ」によって入店叶わなかったのだ。
しかし、である。
念願かなって、ようやくこの日、書き手はカーマへの入店ができたのであった。
何度目かのチャレンジでようやく店に足を踏み入れた書き手は、さらに、一日十五食限定のやさいカレーが未だ余っているかどうかをスタッフに問うてみた。
すると、である。
ラスト・オーダーぎりぎりの入店だったにもかかわらず、レア中のレアのやさいカレーを頼む事ができたのだった。
やがて、ワンプレーとのカレー・ライスが提供された。
少し深めの白い皿には、サラサラなカレー・ソースに日本の米が殆ど沈むように入っていて、米の上には、様々な野菜が所狭しと乗っかっていた。
十月末のこの時期の野菜は、じゃがいも、かぼちゃ、なす、ピーマン、おくら、トマトなどであった。
閉店まであまり時間がなく、店に迷惑をかけないためにも、大急ぎで出された品を食べようと、書き手は少し焦りもしたのだが、そんな心配は無用であった。
ソースというよりも、サラサラで、もはや、スープと呼んで差支えのないカレーは、スルスルっと、あっという間に書き手の喉を通っていったからである。
今度、いつ来られるかは分からないが、次の機会には、北インド風のキーマを食べてみたいものである。
*
これは、後日談になるのだが、カーマの営業日と営業時間は、ここしばらく、日・月・祝日を除く、火曜から土曜日の十一時半から十五時(十四時四十五分ラスト・オーダー)までであった。
しかし、二〇二三年の一月十二日の木曜日より、火・木・土における夜の営業が再開される事が、一月二日付けのホームページのお知らせにおいて発表された。
人気店なので、夜もカレー・ソースが枯れる可能性はあるが、来店のチャンスが増える事になるので、近いうちに機会を見て訪れたい、そう思った書き手であった。
〈訪問データ〉
インドカレー カーマ:神保町・お茶の水
B14
十月二十七日・木曜日・一四時四十五分
やさいカレー:一二〇〇円(現金)
〈参考資料〉
「インドカレー カーマ」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、二十八ページ。
〈WEB〉
『インドカレー カーマ』、二〇二三年一月八日閲覧。
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