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一巡目(二〇二二)
第049匙 我、夜ゆえに太陽を求める:ソレイユ(B07)
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太陽が照っている昼、そして、太陽が沈んだ夜、つまり、ランチにもディナーにも、可能な限りカレー店を訪れなければ、実のところ、スタンプ・ラリー・一二四店のコンプリートは難しい。
しかしながら、カレー提供店の中には、昼のみ営業の店や、ランチにだけカレーを提供している店、あるいは、ランチとディナーとで料金が異なる店などがあり、要するに、適当にカレー店に行っているようでは、スタンプ・ラリーのマスを埋めるという点では、実に効率が悪いのだ。
翻ってみると、夜、太陽が沈んでから行くカレー店に関しては、数は少ないながらも、夜のみ営業の店か、昼と夜とで料金が同じ店というのが、スタンプ・ラリーにおけるカレー店巡りの基本戦略となる。
火曜日における夕方の書き手は、出先からの帰りも、田園都市線・半蔵門線を利用するので、太陽が沈んでから訪れるカレー提供店は、半蔵門線一本で行けて、かつ、昼と夜とで料金が同じ店が望ましい。
ネット・サーフィンをしたところ、書き手は、この条件に合致する店を半蔵門界隈に見付けたのであった。
しかも、「神田カレー街食べ歩きスタンプラリー」参加の一二四店の中で、半蔵門線の半蔵門駅、あるいは、有楽町線の麹町駅からアクセスできる店は一軒しかなく、それが〈欧風カレー ソレイユ〉なのである。
事前に店のホーム・ページを参照してみたところ、メニューのラインナップには、「ビーフカレー」、「牛タンカレー温野菜添え(1日限定5食)」、「チキンカレー」、「海老カレー」、「帆立カレー」、「シーフードミックスカレー(海老・帆立・イカ)」、「チーズカレー」、「ドライカレー」が並び置かれており、ランチ・メニューとディナー・メニューのウィンドウを並列させて比べてみたところ、料理も価格も完全に同じであった。どうやら、ランチとディナーの違いとは、アルコールを提供するかいなか、という点であるらしい。
とまれかくまれ、書き手の目的はカレーなので、アルコールの提供が、夜にこの店を訪れる積極的な理由にはならない。
そもそもの話、ソレイユには、昼時にこそ訪れるべきなのかもしれない。
というのも、ソレイユとは、〈シルク・ド・ソレイユ〉の〈ソレイユ〉と同じく、フランス語で〈太陽〉を意味する語なので、この店名に敬意を表するのならば、太陽が照っているうちにこそ店に行くべきであるようにも思えてくる。
否、しばし待て。
太陽が沈んだ後、夜にソレイユに赴くのは、もはや空には存在しない〈太陽〉を求める行為だとみなせるかもしれない。
そんな事を考えながら、暗い坂道を下って、店に向かっていた書き手なのだが、この時既に、ソレイユで頼むべき品を心に秘めていた。
ガイド・ブックで推されていたのは、「ビーフカレー」「ドライカレー」、あるいは、一日限定五食の「牛タンカレー」だったのだが、この「五食限定」という語の響きに完全に気持ちを持っていかれてしまっていたのである。
しかし、だ。
店に入って、メニューを開いたところ、数量限定の「牛タンカレー」以外にも、〈秋限定〉のメニュー、「7種類のきのこカレー」という品があるのに、書き手は気付いてしまった。
しかも、この七種類のきのこカレーは、販売期間が十月三十一日までであり、まさに、十月のこの時期にしか食べられないカレーなのだ。
その七種のきのことは、〈花びら茸〉〈たもぎ茸〉〈丹波しめじ〉〈平茸〉〈生きくらげ〉〈エリンギ〉〈ブラウンマッシュルーム〉で、その中でも特に、〈花びら茸〉〈たもぎ茸〉は、メニューの説明書きによると、珍しいキノコであるそうだ。
ちなみに、花びら茸はアジサイのような形で、一方、〈たもぎ茸〉は、上が円形で下が細くなっている漏斗(ロウト)のような形のキノコで、色は、まるで太陽のような黄色である。
とまれ、数量限定とはいえども、牛タンカレーの方は、開店凸をすれば、秋以外の他の時期にも食べられそうだが、きのこカレーの方は、十月末までしか食せない。
この提供時期だけでも、このきのこカレーに魅力を覚えたのだが、さらに、店の机に置かれていたメニューには、このきのこカレーが、ディナー・タイムのみの提供である事が書かれていた。
つまり、時期も提供時間も限定的なのだ。
そうかっ!
書き手が、太陽の意味の〈ソレイユ〉に、太陽が沈んでから来店したのは、太陽のような黄色い〈たもぎ茸〉を具材に使っている、秋限定にして、ディナー・タイム限定の、この「7種類のきのこカレー」を食べるためであったにちがいない。
〈訪問データ〉
欧風カレー ソレイユ:半蔵門
B07
十月十一日・火曜日・十九時
7種類のきのこカレー:一六〇〇円(クレカ)
〈参考資料〉
「欧風カレー ソレイユ」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、二十二ページ。
〈WEB〉
「Menu」「about」、『欧風カレー ソレイユ』、二〇二二年十二月二十二日閲覧。
「ハナビラタケ」「タモギタケ」「ヒラタケ」「キクラゲ」「エリンギ」、『きのこ図鑑』、二〇二二年十二月二十二日閲覧。
しかしながら、カレー提供店の中には、昼のみ営業の店や、ランチにだけカレーを提供している店、あるいは、ランチとディナーとで料金が異なる店などがあり、要するに、適当にカレー店に行っているようでは、スタンプ・ラリーのマスを埋めるという点では、実に効率が悪いのだ。
翻ってみると、夜、太陽が沈んでから行くカレー店に関しては、数は少ないながらも、夜のみ営業の店か、昼と夜とで料金が同じ店というのが、スタンプ・ラリーにおけるカレー店巡りの基本戦略となる。
火曜日における夕方の書き手は、出先からの帰りも、田園都市線・半蔵門線を利用するので、太陽が沈んでから訪れるカレー提供店は、半蔵門線一本で行けて、かつ、昼と夜とで料金が同じ店が望ましい。
ネット・サーフィンをしたところ、書き手は、この条件に合致する店を半蔵門界隈に見付けたのであった。
しかも、「神田カレー街食べ歩きスタンプラリー」参加の一二四店の中で、半蔵門線の半蔵門駅、あるいは、有楽町線の麹町駅からアクセスできる店は一軒しかなく、それが〈欧風カレー ソレイユ〉なのである。
事前に店のホーム・ページを参照してみたところ、メニューのラインナップには、「ビーフカレー」、「牛タンカレー温野菜添え(1日限定5食)」、「チキンカレー」、「海老カレー」、「帆立カレー」、「シーフードミックスカレー(海老・帆立・イカ)」、「チーズカレー」、「ドライカレー」が並び置かれており、ランチ・メニューとディナー・メニューのウィンドウを並列させて比べてみたところ、料理も価格も完全に同じであった。どうやら、ランチとディナーの違いとは、アルコールを提供するかいなか、という点であるらしい。
とまれかくまれ、書き手の目的はカレーなので、アルコールの提供が、夜にこの店を訪れる積極的な理由にはならない。
そもそもの話、ソレイユには、昼時にこそ訪れるべきなのかもしれない。
というのも、ソレイユとは、〈シルク・ド・ソレイユ〉の〈ソレイユ〉と同じく、フランス語で〈太陽〉を意味する語なので、この店名に敬意を表するのならば、太陽が照っているうちにこそ店に行くべきであるようにも思えてくる。
否、しばし待て。
太陽が沈んだ後、夜にソレイユに赴くのは、もはや空には存在しない〈太陽〉を求める行為だとみなせるかもしれない。
そんな事を考えながら、暗い坂道を下って、店に向かっていた書き手なのだが、この時既に、ソレイユで頼むべき品を心に秘めていた。
ガイド・ブックで推されていたのは、「ビーフカレー」「ドライカレー」、あるいは、一日限定五食の「牛タンカレー」だったのだが、この「五食限定」という語の響きに完全に気持ちを持っていかれてしまっていたのである。
しかし、だ。
店に入って、メニューを開いたところ、数量限定の「牛タンカレー」以外にも、〈秋限定〉のメニュー、「7種類のきのこカレー」という品があるのに、書き手は気付いてしまった。
しかも、この七種類のきのこカレーは、販売期間が十月三十一日までであり、まさに、十月のこの時期にしか食べられないカレーなのだ。
その七種のきのことは、〈花びら茸〉〈たもぎ茸〉〈丹波しめじ〉〈平茸〉〈生きくらげ〉〈エリンギ〉〈ブラウンマッシュルーム〉で、その中でも特に、〈花びら茸〉〈たもぎ茸〉は、メニューの説明書きによると、珍しいキノコであるそうだ。
ちなみに、花びら茸はアジサイのような形で、一方、〈たもぎ茸〉は、上が円形で下が細くなっている漏斗(ロウト)のような形のキノコで、色は、まるで太陽のような黄色である。
とまれ、数量限定とはいえども、牛タンカレーの方は、開店凸をすれば、秋以外の他の時期にも食べられそうだが、きのこカレーの方は、十月末までしか食せない。
この提供時期だけでも、このきのこカレーに魅力を覚えたのだが、さらに、店の机に置かれていたメニューには、このきのこカレーが、ディナー・タイムのみの提供である事が書かれていた。
つまり、時期も提供時間も限定的なのだ。
そうかっ!
書き手が、太陽の意味の〈ソレイユ〉に、太陽が沈んでから来店したのは、太陽のような黄色い〈たもぎ茸〉を具材に使っている、秋限定にして、ディナー・タイム限定の、この「7種類のきのこカレー」を食べるためであったにちがいない。
〈訪問データ〉
欧風カレー ソレイユ:半蔵門
B07
十月十一日・火曜日・十九時
7種類のきのこカレー:一六〇〇円(クレカ)
〈参考資料〉
「欧風カレー ソレイユ」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、二十二ページ。
〈WEB〉
「Menu」「about」、『欧風カレー ソレイユ』、二〇二二年十二月二十二日閲覧。
「ハナビラタケ」「タモギタケ」「ヒラタケ」「キクラゲ」「エリンギ」、『きのこ図鑑』、二〇二二年十二月二十二日閲覧。
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