48 / 147
一巡目(二〇二二)
第045匙 茶水では抹茶だろ:RESTAURANT 1899 OCHANOMIZU(D13)
しおりを挟む
水曜日の夜、書き手が訪れた「RESTAURANT 1899 OCHANOMIZU」は、店の名にある〈お茶の水〉が表わしているように、本郷通りに面したお茶の水界隈に位置している。
この店名には、その空間関連の語以外にも、「1899」という時間もまた刻まれているのだが、それは、このレストランの経営母体が、十九世紀末の一八九九年、明治三十二年創業のホテル「龍名館(りゅうめいかん)」であるからだ。
現在「ホテル龍名館お茶の水本店」がある場所は、その創業の地で、このホテルの一階に入っているのが、「RESTAURANT 1899 OCHANOMIZU」なのである。
老舗中の老舗ホテル龍名館のレストラン〈1899〉は人気店であるようで、以前、書き手が昼時にフラッと立ち寄った際には、有閑マダムで一杯で入店できなかった。だから、書き手は、仕事帰りの夜の時間帯にやって来たのである。
このレストランは、母体であるホテルのコンセプトと同様に、〈日本らしさ〉を打ち出しており、だからなのか、〈1899〉は、なんと「お茶料理専門店」なのである。
お茶料理専門店である店のホーム・ページを参照してみたところ、ディナー・メニューにあったのは、「お茶ソーセージ盛り合わせ」、「煎茶ローストビーフ」、「お茶フレーバーのポテトフライ」、「鯛茶漬け」、「茶美豚丼」、「1899抹茶ポタージュ和え麺」、「茶蕎麦」のような、様々なお茶を使った料理であった。
もちろん、こういったお茶料理にそそられなかった分けではないのだが、今の書き手の選択は、迷うことなく「1899和出汁キーマカレー」一択である。ちなみに、〈1899〉のカレー系のメニューは、このキーマカレーだけである。
しかしながら、他の皿とは違って、どのへんが、お茶料理専門店ならではのカレーなのかは謎であった。
ま、とりま、給仕さんを呼ぼうと思った時に、書き手は、はたっと考えてしまった。
たしかに、このレストラン〈1899〉には、カレー・スタンプ・ラリー目的で来店したのは事実だ。
しかし、である。
お茶料理専門店に来ていて、何一つお茶関連の品を注文しないのは、いかがなものか、と、そう思いながら、カレー以外のお茶料理のメニューにも目を走らせた。
このスタンプ・ラリーでは、ここまで、〈カレー&アウェイ〉をする事が多く、目当てのカレーを食べたら即座に店を後にしてきた書き手ではあったが、あるメニューに目が釘付けになってしまい、しばし悩んだ後、〈お茶〉の誘惑に抗えずに、デセールとして、「1899酒茶ケーキ」を頼む事にしてしまった。
かくして、書き手は、「和出汁キーマカレー」と「酒茶ケーキ」を注文したのだが、その際に、甘味であるケーキは最後に出してくれるようにお願いした。
やがて、先に「和出汁キーマカレー」が提供されたのだが、カレーを口に一匙運んだ時、カレーに負けず、魚系の〈和出汁〉がしっかりと存在感を示している、という印象を抱いた。
これは、ガイドブックの店紹介ページにおいて説明されていたのだが、〈1899〉のキーマカレーには、この店ならではの「和の技法を盛り込んでいる」との事であった。
この店のキーマは「鶏ひき肉のそぼろ」なのだが、書き手が感じた、主張が強い和出汁は「鰹と昆布」であるらしい。書き手の最初の印象は、あながち大外れではなかったようだ。
さらに、このキーマカレーには、和の香辛料として「有馬山椒」が加えられているそうだ。
なるほど、とことんまで、和の風味で攻めているようである。
この店のカレーを注文する前、そして口にした時には、〈和〉のコンセプトは、出汁などで分かった。しかし、お茶料理専門店のアドヴァンテージである〈お茶性〉はと何処にあるのか、思っていのだが、紹介ページには、「ほうじ茶で香ばしさを醸し、碾茶で彩りと旨味を出す」、このように二種のお茶が、このキーマカレーには使われている、と書かれていた。
なんと、そんな即座に気付けぬ所に、お茶が使われていたなんてっ!
その〈和〉のテイスト満載のキーマカレーを食した後に運ばれてきたのが、書き手が欲望に逆らえず頼んでしまった「酒茶ケーキ」である。
これは見た目も味も、すぐにお茶性に気付くことができる。
ちなみに、「酒茶ケーキ」は、抹茶、ほうじ茶、紅茶から一種を選ぶようになっているのだが、そこは、やはり、書き手は緑の抹茶を選んだ。
だって、この〈1899〉は、お茶の水に位置するレストランだ。
お茶の水は、江戸時代に徳川将軍家に献上された茶の湯が湧き出ていた事に由来している地名だし、このレストランで緑の抹茶以外を選ぶ分けにはいかないように書き手には思えたのであった。
〈訪問データ〉
RESTAURANT 1899 OCHANOMIZU:淡路町・お茶の水
D13
十月五日・水曜日・十九時
1899和出汁キーマカレー+1899酒茶ケーキ(抹茶):一四〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「RESTAURANT 1899 OCHANOMIZU」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、七十三ページ。
〈WEB〉
「龍名館の歴史」、『龍名館』、二〇二二年十二月十九日閲覧。
この店名には、その空間関連の語以外にも、「1899」という時間もまた刻まれているのだが、それは、このレストランの経営母体が、十九世紀末の一八九九年、明治三十二年創業のホテル「龍名館(りゅうめいかん)」であるからだ。
現在「ホテル龍名館お茶の水本店」がある場所は、その創業の地で、このホテルの一階に入っているのが、「RESTAURANT 1899 OCHANOMIZU」なのである。
老舗中の老舗ホテル龍名館のレストラン〈1899〉は人気店であるようで、以前、書き手が昼時にフラッと立ち寄った際には、有閑マダムで一杯で入店できなかった。だから、書き手は、仕事帰りの夜の時間帯にやって来たのである。
このレストランは、母体であるホテルのコンセプトと同様に、〈日本らしさ〉を打ち出しており、だからなのか、〈1899〉は、なんと「お茶料理専門店」なのである。
お茶料理専門店である店のホーム・ページを参照してみたところ、ディナー・メニューにあったのは、「お茶ソーセージ盛り合わせ」、「煎茶ローストビーフ」、「お茶フレーバーのポテトフライ」、「鯛茶漬け」、「茶美豚丼」、「1899抹茶ポタージュ和え麺」、「茶蕎麦」のような、様々なお茶を使った料理であった。
もちろん、こういったお茶料理にそそられなかった分けではないのだが、今の書き手の選択は、迷うことなく「1899和出汁キーマカレー」一択である。ちなみに、〈1899〉のカレー系のメニューは、このキーマカレーだけである。
しかしながら、他の皿とは違って、どのへんが、お茶料理専門店ならではのカレーなのかは謎であった。
ま、とりま、給仕さんを呼ぼうと思った時に、書き手は、はたっと考えてしまった。
たしかに、このレストラン〈1899〉には、カレー・スタンプ・ラリー目的で来店したのは事実だ。
しかし、である。
お茶料理専門店に来ていて、何一つお茶関連の品を注文しないのは、いかがなものか、と、そう思いながら、カレー以外のお茶料理のメニューにも目を走らせた。
このスタンプ・ラリーでは、ここまで、〈カレー&アウェイ〉をする事が多く、目当てのカレーを食べたら即座に店を後にしてきた書き手ではあったが、あるメニューに目が釘付けになってしまい、しばし悩んだ後、〈お茶〉の誘惑に抗えずに、デセールとして、「1899酒茶ケーキ」を頼む事にしてしまった。
かくして、書き手は、「和出汁キーマカレー」と「酒茶ケーキ」を注文したのだが、その際に、甘味であるケーキは最後に出してくれるようにお願いした。
やがて、先に「和出汁キーマカレー」が提供されたのだが、カレーを口に一匙運んだ時、カレーに負けず、魚系の〈和出汁〉がしっかりと存在感を示している、という印象を抱いた。
これは、ガイドブックの店紹介ページにおいて説明されていたのだが、〈1899〉のキーマカレーには、この店ならではの「和の技法を盛り込んでいる」との事であった。
この店のキーマは「鶏ひき肉のそぼろ」なのだが、書き手が感じた、主張が強い和出汁は「鰹と昆布」であるらしい。書き手の最初の印象は、あながち大外れではなかったようだ。
さらに、このキーマカレーには、和の香辛料として「有馬山椒」が加えられているそうだ。
なるほど、とことんまで、和の風味で攻めているようである。
この店のカレーを注文する前、そして口にした時には、〈和〉のコンセプトは、出汁などで分かった。しかし、お茶料理専門店のアドヴァンテージである〈お茶性〉はと何処にあるのか、思っていのだが、紹介ページには、「ほうじ茶で香ばしさを醸し、碾茶で彩りと旨味を出す」、このように二種のお茶が、このキーマカレーには使われている、と書かれていた。
なんと、そんな即座に気付けぬ所に、お茶が使われていたなんてっ!
その〈和〉のテイスト満載のキーマカレーを食した後に運ばれてきたのが、書き手が欲望に逆らえず頼んでしまった「酒茶ケーキ」である。
これは見た目も味も、すぐにお茶性に気付くことができる。
ちなみに、「酒茶ケーキ」は、抹茶、ほうじ茶、紅茶から一種を選ぶようになっているのだが、そこは、やはり、書き手は緑の抹茶を選んだ。
だって、この〈1899〉は、お茶の水に位置するレストランだ。
お茶の水は、江戸時代に徳川将軍家に献上された茶の湯が湧き出ていた事に由来している地名だし、このレストランで緑の抹茶以外を選ぶ分けにはいかないように書き手には思えたのであった。
〈訪問データ〉
RESTAURANT 1899 OCHANOMIZU:淡路町・お茶の水
D13
十月五日・水曜日・十九時
1899和出汁キーマカレー+1899酒茶ケーキ(抹茶):一四〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「RESTAURANT 1899 OCHANOMIZU」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、七十三ページ。
〈WEB〉
「龍名館の歴史」、『龍名館』、二〇二二年十二月十九日閲覧。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説



会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる