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一巡目(二〇二二)
第041匙 ご注文はなんですか?:Beans on Beans(A21)
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書き手は、これまでパキスタン、ネパール、インドといった三軒の南西アジア系のレストランを訪れてきた。
『外務省』のホームページによれば、南西アジアには、インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブの七か国が属しているのだが、つまるところ、現時点において、書き手は、未だ三か国の南西アジア系のレストランにしか行ってはおらず、たしかに、日本におけるアジアン・レストランとはいえども、まだまだ全然、多種類の香辛料を併用して味付けした料理、すなわち、南西アジアのカレーを体験できていない分けなのだ。
香辛料の組み合わせは、それこそ無限で、具材もまた、地域や宗教などの違い故の国ごとの特徴が認められる。だからこそ、〈○○カレー〉のように、国名がカレーの前に付いているのであろう。
書き手は、インド料理店に関しては既に一軒、淡路町・お茶の水界隈の「ガンディーマハル」を訪れていた。この店は、その店名である「ガンディー」が示唆しているように、おそらく〈マハトマ・ガンディー〉の名に由来している店であろう。
ガンディーは、インド北西部のグジャラート州の出身で、この州の州都は、ガンディーから名をとって〈ガンディーナガル〉という都市名なのだが、ここから察するに、その店「ガンディーマハル」は、おそらく、北インド、より正確に言うと、北西インド系の店と考えられよう。そして、この店で、書き手は、二種類のインド・カレーをナンで食したのであった。
しかし、である。しばし待て。
インドは広く、かつ、約十四億人と人口も多い。
また、言語も、ヒンディー語、ベンガル語、テルグ語、マラーティー語、タミル語、ウルドゥー語、グジャラート語、マラヤーラム語、カンナダ語、オリヤー語、パンジャーブ語、ビハール語、ラージャスターン語、アッサム語、ビリー語、サンタル語、カシミール語などと多岐に渡り、宗教も、もっとも割合が多いのはヒンドゥー教なのだが、ヒンドゥー教以外にも、イスラム教、キリスト教、シーク教、仏教、ジャイナ教などがインド国内では信仰されている。
つまり、インドという一国の中でも、これだけ言語も宗教も異なっている分けだから、食文化に関しても、一概に〈インド・カレー〉と言っても、宗教や地域によって違いが生じているのは至極当然の事なのである。
インドは、北と南では全く異なっており、南インドは、地理的には、当然、インドの南部なのだが、具体的には、アーンドラ・プラデーシュ州、テランガーナ州、ゴア州、カルナータカ州、ケーララ州、タミル・ナードゥ州、ラクシャドヴィーパ連合区、パーンディッチェーリ連合区、アンダマン・ニコバル諸島連合区が南インドに相当し、語族的には、タミル語、テルグ語、カンナダ語、マラヤーラム語、トゥル語、トーダ語、コータ語などを使うドラヴィタ族が多く在住している。
食文化に関しては、小麦中心の北インドに対して、南インドでは米作が盛んで、主食は米であり、さらに、よく知られている、長細い〈インディカ米〉だけではなく、米の種類は実に多種多様なので、いかなる米を選んでいるかで、そこに、店の特徴を認める事ができるにちがいない。
*
この日、十月の訪問一店目として書き手が訪れたのは、神田駅南口近くの「南インド食堂 Beans on Beans(ビーンズ オン ビーンズ)」であった。
グルメ情報サイトによれば、ビーンズ・オン・ビーンズは、たしかに、南インド・レストランではあるものの、日本人の来客のニーズにも柔軟に応じているらしく、南インドの料理をメインとしながらも、北インドの料理も提供しているそうだ。つまり、インド・カレーといったらナンでしょ、という日本人が実際に多いので、なんにでも対応できるように配慮しているのであろう。
店の外側に置かれていたメニュー一覧のポスターには、ランチメニューとして、「カレーのセット」、「マサラドーサ」、「ビリヤニ」、「ミールス」などが掲示されていた。
ちなみに、ドーサとは〈米で作られたクレープ〉みたいな物で、ビリヤニは〈炊き込みご飯〉、そして、ミールスとは、多種多様なカレーによって構成されている、いわゆる〈定食〉である。
この日の書き手は、カレーのセットを何とはなしに注文する事にして、店に入った。
店に足を踏み入れて、カレーのセットを希望したところ、「ご注文はなんですか?」と問われた。
どうやら、二種類のカレーを選べる「Aセット」、三種類のカレーの「Bセット」、Bにタンドリーチキンが付く「Cセット」があるようで、書き手は「B」にし、ココナッツチキン、きのこマトン、牡蠣カレー、カボチャ&豆という四つの選択肢の中から、きのこマトン、牡蠣カレー、カボチャ&豆を選んだのであった。
ランチのサービスであるドリンクとしてラッシーが、先に提供されたのだが、甘いラッシーは、カレーが辛かった場合の口直しにしたいので、書き手は、これに口をつけずに、グッと堪え、料理が出てくるのをジッと待った。
程なくして、提供された銀の大きな皿には、野菜と三種類のカレーが入った四つの銀の小鉢と、ナンが置かれていた。
えっ! なんナン?
店内のメニューをよくよく見てみると、「ナン・ライスおかわり自由」と書かれていたので、実は、セットの主食は、ナンかライスのうちから選べるようになっていたのだが、書き手はあまりメニューをよく見ずに、カレーの選択肢だけに目を向けてしまっていたようだ。
しかし、南インドのカレーという点に拘るのならば、南インドの主食は米なので、この店では、小麦が材料のナンではなく、米を、あるいは、米で作ったドーサを、書き手は注文すべきであったのだ。
だがしかし、である。
記憶は定かではないのだが、たしか……、書き手はカレー・セットを注文し、「ご注文はなんですか?」と訊かれ、三種のカレーを告げた。
だが、もしかしたら、店員の問いは、「ご注文はナンですか?」だったのかもしれない。
〈訪問データ〉
南インド食堂 Beans on Beans:神田・神田駅南口
A21
十月三日・月曜日・十三時十五分
Bセット 3種類カレー:一〇〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「南インド食堂 Beans on Beans」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、三十二ページ。
〈WEB〉
「南西アジア地域」、『外務省』、二〇二二年十二月十五日閲覧。
『外務省』のホームページによれば、南西アジアには、インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブの七か国が属しているのだが、つまるところ、現時点において、書き手は、未だ三か国の南西アジア系のレストランにしか行ってはおらず、たしかに、日本におけるアジアン・レストランとはいえども、まだまだ全然、多種類の香辛料を併用して味付けした料理、すなわち、南西アジアのカレーを体験できていない分けなのだ。
香辛料の組み合わせは、それこそ無限で、具材もまた、地域や宗教などの違い故の国ごとの特徴が認められる。だからこそ、〈○○カレー〉のように、国名がカレーの前に付いているのであろう。
書き手は、インド料理店に関しては既に一軒、淡路町・お茶の水界隈の「ガンディーマハル」を訪れていた。この店は、その店名である「ガンディー」が示唆しているように、おそらく〈マハトマ・ガンディー〉の名に由来している店であろう。
ガンディーは、インド北西部のグジャラート州の出身で、この州の州都は、ガンディーから名をとって〈ガンディーナガル〉という都市名なのだが、ここから察するに、その店「ガンディーマハル」は、おそらく、北インド、より正確に言うと、北西インド系の店と考えられよう。そして、この店で、書き手は、二種類のインド・カレーをナンで食したのであった。
しかし、である。しばし待て。
インドは広く、かつ、約十四億人と人口も多い。
また、言語も、ヒンディー語、ベンガル語、テルグ語、マラーティー語、タミル語、ウルドゥー語、グジャラート語、マラヤーラム語、カンナダ語、オリヤー語、パンジャーブ語、ビハール語、ラージャスターン語、アッサム語、ビリー語、サンタル語、カシミール語などと多岐に渡り、宗教も、もっとも割合が多いのはヒンドゥー教なのだが、ヒンドゥー教以外にも、イスラム教、キリスト教、シーク教、仏教、ジャイナ教などがインド国内では信仰されている。
つまり、インドという一国の中でも、これだけ言語も宗教も異なっている分けだから、食文化に関しても、一概に〈インド・カレー〉と言っても、宗教や地域によって違いが生じているのは至極当然の事なのである。
インドは、北と南では全く異なっており、南インドは、地理的には、当然、インドの南部なのだが、具体的には、アーンドラ・プラデーシュ州、テランガーナ州、ゴア州、カルナータカ州、ケーララ州、タミル・ナードゥ州、ラクシャドヴィーパ連合区、パーンディッチェーリ連合区、アンダマン・ニコバル諸島連合区が南インドに相当し、語族的には、タミル語、テルグ語、カンナダ語、マラヤーラム語、トゥル語、トーダ語、コータ語などを使うドラヴィタ族が多く在住している。
食文化に関しては、小麦中心の北インドに対して、南インドでは米作が盛んで、主食は米であり、さらに、よく知られている、長細い〈インディカ米〉だけではなく、米の種類は実に多種多様なので、いかなる米を選んでいるかで、そこに、店の特徴を認める事ができるにちがいない。
*
この日、十月の訪問一店目として書き手が訪れたのは、神田駅南口近くの「南インド食堂 Beans on Beans(ビーンズ オン ビーンズ)」であった。
グルメ情報サイトによれば、ビーンズ・オン・ビーンズは、たしかに、南インド・レストランではあるものの、日本人の来客のニーズにも柔軟に応じているらしく、南インドの料理をメインとしながらも、北インドの料理も提供しているそうだ。つまり、インド・カレーといったらナンでしょ、という日本人が実際に多いので、なんにでも対応できるように配慮しているのであろう。
店の外側に置かれていたメニュー一覧のポスターには、ランチメニューとして、「カレーのセット」、「マサラドーサ」、「ビリヤニ」、「ミールス」などが掲示されていた。
ちなみに、ドーサとは〈米で作られたクレープ〉みたいな物で、ビリヤニは〈炊き込みご飯〉、そして、ミールスとは、多種多様なカレーによって構成されている、いわゆる〈定食〉である。
この日の書き手は、カレーのセットを何とはなしに注文する事にして、店に入った。
店に足を踏み入れて、カレーのセットを希望したところ、「ご注文はなんですか?」と問われた。
どうやら、二種類のカレーを選べる「Aセット」、三種類のカレーの「Bセット」、Bにタンドリーチキンが付く「Cセット」があるようで、書き手は「B」にし、ココナッツチキン、きのこマトン、牡蠣カレー、カボチャ&豆という四つの選択肢の中から、きのこマトン、牡蠣カレー、カボチャ&豆を選んだのであった。
ランチのサービスであるドリンクとしてラッシーが、先に提供されたのだが、甘いラッシーは、カレーが辛かった場合の口直しにしたいので、書き手は、これに口をつけずに、グッと堪え、料理が出てくるのをジッと待った。
程なくして、提供された銀の大きな皿には、野菜と三種類のカレーが入った四つの銀の小鉢と、ナンが置かれていた。
えっ! なんナン?
店内のメニューをよくよく見てみると、「ナン・ライスおかわり自由」と書かれていたので、実は、セットの主食は、ナンかライスのうちから選べるようになっていたのだが、書き手はあまりメニューをよく見ずに、カレーの選択肢だけに目を向けてしまっていたようだ。
しかし、南インドのカレーという点に拘るのならば、南インドの主食は米なので、この店では、小麦が材料のナンではなく、米を、あるいは、米で作ったドーサを、書き手は注文すべきであったのだ。
だがしかし、である。
記憶は定かではないのだが、たしか……、書き手はカレー・セットを注文し、「ご注文はなんですか?」と訊かれ、三種のカレーを告げた。
だが、もしかしたら、店員の問いは、「ご注文はナンですか?」だったのかもしれない。
〈訪問データ〉
南インド食堂 Beans on Beans:神田・神田駅南口
A21
十月三日・月曜日・十三時十五分
Bセット 3種類カレー:一〇〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「南インド食堂 Beans on Beans」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、三十二ページ。
〈WEB〉
「南西アジア地域」、『外務省』、二〇二二年十二月十五日閲覧。
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