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第030匙 ワイもワイしました:バンコックコスモ食堂(A20)
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神保町駅の〈A4〉を出てから、左側の道を取って、白山通りを水道橋方面に向かって進むと、この通りの左側に位置しているのが、北タイ料理店〈バンコックコスモ食堂〉である。
冊子によると、この店が提供しているのは、タイ北部出身の料理人が作るカレーで、さらに、日本人の口に合うようにアレンジメントが加えられているそうで、そのベースになっているのが、タイ北部の名物料理〈カオソーイ〉である。
カオソーイとは、歴史的には、ミャンマーからラオス北部に、その後、ラオスからタイ北部に広がったらしい。それにゆえに、カオソーイには、地域によって相違があるそうだ。
タイ風のカオソーイとは、ココナッツミルクを加えたカレースープに、揚げた卵麺を入れる麵料理である。
具材に関しては、タイ北部は、イスラームの食文化の影響を強く受けているため、豚肉よりも、牛肉や鶏肉が使われているそうだ。
また、タイ国内では、カオソーイは屋台料理なのだが、それゆえにか、海外のタイ料理レストランでは、あまり提供されない、との事であった。
麺好きの日本人はカオソーイを好む傾向があるらしく、〈バンコックコスモ〉では、ココナッツミルクをカレーに組み合わせて、カオソーイ風のカレー・スープを作ったらしい。
さらに、冊子によると、「柔らかい豚の角切り、ジャガイモ、ニンジンだけのシンプルさが素材を引き立たせ」ている、との事であった。
ということは、〈バンコックコスモ〉は、カレーに豚肉を使っている分けだから、イスラーム影響下にはないカレーなのかもしれない。
ネットには、〈バンコックコスモ〉では、カオソーイそれ自体は、ディナーのみの提供で、しかも、メニューには「カオソーイ」は載ってはおらず、口頭で提供できるかどうかを店員に尋ね、材料があった場合のみ作ってもらえる、という情報が出ていた。
書き手は、来店が夕方で、折角、北タイの料理店に来たので、店の裏メニューかもしれないが、ワンチャン、〈カオソーイ〉を注文してみる事にした。
だがしかし、カオソーイは出せない、と返答され、まことに残念ではあったが、タイ風カレー麺は別の機会にいただく事にした。
それでは、カオソーイの代わりに何を頼むべきか。
メニューには、「ゲーンチェンマイ」という「タイ北部・豚肉と野菜のチェンマイカレー」と、「ゲンキュワーン」という「鶏肉と茄子のグリーンカレー」の二つがあったのだが、この店の料理人はチェンマイ出身らしいので、チェンマイカレーの方を頼む事にした。
提供されたカレーは小さな椀に入っていて、スープカレーに近い感じで、そのカレーは甘かった。この甘さは、ココナッツミルクの甘さなのだろうか? とまれ、その甘さの中に辛味が含まれているような印象であった。
そして具は、ジャガイモ、ニンジン、さらに豚肉がゴロゴロっと入っていて、実に具沢山であった。
一方、ライスの方は、丸く小高い丘のようで、お椀をひっくり返して皿に盛ったような感じであった。
カレーとライスは別々で、カレーは汁気のが強いタイプであった。もしかしたら、カオソーイをヒントというのは、麺なしのカオソーイ、つまり、カレースープに、麺の代わりにライスが付いている、という事なのかもしれない。
そこで、ライスにカレーをかけるべきか、それとも、カレーにライスを入れるべきか、書き手は食べ方に迷ったのだが、ここでは、日本のスープカレー風の食べ方を選択した。というのも、汁気の多いカレーには、その食べ方の方が合っているように思えたからだ。
果たしてこれが、タイカレーの食事マナーに適っているかどうかの確信はなかったのだが……。
*
帰り際に、店員の女性が両の掌を合わせて挨拶をしてきたのだが、書き手も、そのように合掌をするように促された。
このように合掌する挨拶は、タイの伝統的な挨拶で、このお辞儀のことを〈ワイ〉と呼び、相手に敬意を示すためのジェスチャーであるらしい。
後日、調べてみたところ、例えば、目上の人へのワイ、目下の人へのワイといった具合に、〈ワイ〉にも様々な作法があるらしく、正しいやり方や、ワイをする状況など、細かな決まりがあるそうだ。もちろん、仮にタイに行ったと仮定しても、外国人観光客の場合には、特に細かな作法を気にする必要はなく、また、相手も、それを求めてはいないらしい。
とまれ、この店は、神保町・水道橋界隈にあるのは確かなのだが、しかし、店のスタッフは外国人の、いわば、日本の中のタイだとも考えられよう。
要は、郷に入れば郷に従え、だ
だから、ワイもまた、店員さんと同じように、〈ワイ〉してみた次第なのである。
〈訪問データ〉
バンコックコスモ食堂:神保町・水道橋
A20
九月二日・金曜日・二十時半
チェンマイカレー:一〇〇〇円(現金)
〈参考資料〉
「バンコックコスモ食堂」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、三十六ページ。
〈WEB〉
『バンコックコスモ食堂』、二〇二二年十月九日閲覧。
「タイの『ワイ(合掌)』とは!正しいワイの作法」、『タイNavi』、二〇二二年
冊子によると、この店が提供しているのは、タイ北部出身の料理人が作るカレーで、さらに、日本人の口に合うようにアレンジメントが加えられているそうで、そのベースになっているのが、タイ北部の名物料理〈カオソーイ〉である。
カオソーイとは、歴史的には、ミャンマーからラオス北部に、その後、ラオスからタイ北部に広がったらしい。それにゆえに、カオソーイには、地域によって相違があるそうだ。
タイ風のカオソーイとは、ココナッツミルクを加えたカレースープに、揚げた卵麺を入れる麵料理である。
具材に関しては、タイ北部は、イスラームの食文化の影響を強く受けているため、豚肉よりも、牛肉や鶏肉が使われているそうだ。
また、タイ国内では、カオソーイは屋台料理なのだが、それゆえにか、海外のタイ料理レストランでは、あまり提供されない、との事であった。
麺好きの日本人はカオソーイを好む傾向があるらしく、〈バンコックコスモ〉では、ココナッツミルクをカレーに組み合わせて、カオソーイ風のカレー・スープを作ったらしい。
さらに、冊子によると、「柔らかい豚の角切り、ジャガイモ、ニンジンだけのシンプルさが素材を引き立たせ」ている、との事であった。
ということは、〈バンコックコスモ〉は、カレーに豚肉を使っている分けだから、イスラーム影響下にはないカレーなのかもしれない。
ネットには、〈バンコックコスモ〉では、カオソーイそれ自体は、ディナーのみの提供で、しかも、メニューには「カオソーイ」は載ってはおらず、口頭で提供できるかどうかを店員に尋ね、材料があった場合のみ作ってもらえる、という情報が出ていた。
書き手は、来店が夕方で、折角、北タイの料理店に来たので、店の裏メニューかもしれないが、ワンチャン、〈カオソーイ〉を注文してみる事にした。
だがしかし、カオソーイは出せない、と返答され、まことに残念ではあったが、タイ風カレー麺は別の機会にいただく事にした。
それでは、カオソーイの代わりに何を頼むべきか。
メニューには、「ゲーンチェンマイ」という「タイ北部・豚肉と野菜のチェンマイカレー」と、「ゲンキュワーン」という「鶏肉と茄子のグリーンカレー」の二つがあったのだが、この店の料理人はチェンマイ出身らしいので、チェンマイカレーの方を頼む事にした。
提供されたカレーは小さな椀に入っていて、スープカレーに近い感じで、そのカレーは甘かった。この甘さは、ココナッツミルクの甘さなのだろうか? とまれ、その甘さの中に辛味が含まれているような印象であった。
そして具は、ジャガイモ、ニンジン、さらに豚肉がゴロゴロっと入っていて、実に具沢山であった。
一方、ライスの方は、丸く小高い丘のようで、お椀をひっくり返して皿に盛ったような感じであった。
カレーとライスは別々で、カレーは汁気のが強いタイプであった。もしかしたら、カオソーイをヒントというのは、麺なしのカオソーイ、つまり、カレースープに、麺の代わりにライスが付いている、という事なのかもしれない。
そこで、ライスにカレーをかけるべきか、それとも、カレーにライスを入れるべきか、書き手は食べ方に迷ったのだが、ここでは、日本のスープカレー風の食べ方を選択した。というのも、汁気の多いカレーには、その食べ方の方が合っているように思えたからだ。
果たしてこれが、タイカレーの食事マナーに適っているかどうかの確信はなかったのだが……。
*
帰り際に、店員の女性が両の掌を合わせて挨拶をしてきたのだが、書き手も、そのように合掌をするように促された。
このように合掌する挨拶は、タイの伝統的な挨拶で、このお辞儀のことを〈ワイ〉と呼び、相手に敬意を示すためのジェスチャーであるらしい。
後日、調べてみたところ、例えば、目上の人へのワイ、目下の人へのワイといった具合に、〈ワイ〉にも様々な作法があるらしく、正しいやり方や、ワイをする状況など、細かな決まりがあるそうだ。もちろん、仮にタイに行ったと仮定しても、外国人観光客の場合には、特に細かな作法を気にする必要はなく、また、相手も、それを求めてはいないらしい。
とまれ、この店は、神保町・水道橋界隈にあるのは確かなのだが、しかし、店のスタッフは外国人の、いわば、日本の中のタイだとも考えられよう。
要は、郷に入れば郷に従え、だ
だから、ワイもまた、店員さんと同じように、〈ワイ〉してみた次第なのである。
〈訪問データ〉
バンコックコスモ食堂:神保町・水道橋
A20
九月二日・金曜日・二十時半
チェンマイカレー:一〇〇〇円(現金)
〈参考資料〉
「バンコックコスモ食堂」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、三十六ページ。
〈WEB〉
『バンコックコスモ食堂』、二〇二二年十月九日閲覧。
「タイの『ワイ(合掌)』とは!正しいワイの作法」、『タイNavi』、二〇二二年
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