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一巡目(二〇二二)
第026匙 一軒目咖喱場:上等カレー・神田小川町店(E01)
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午前中の早めの時刻に、「神田カレーバディ賞」の認定証を手に入れるために、九段下に来ていた書き手は、そのままホームである仕事場には戻らずに、この日は、カレーの〈食道楽〉に一日を費やす事にした。そのため、なるべく早い時間帯に一皿目のカレーを食したい、と考えた分けなのだ。
だがしかし、神田・神保町界隈で営業をしている飲食店の多くは、十一時半がランチ営業の開始であるため、十時台に入れる店は少なかった。
かくして、十時半に九段下で用事を済ませた書き手が、徒歩で約二十分かけて、十一時少し前に訪店した〈一軒目咖喱場〉は、靖国通りを神田方面に向かって真っすぐに進んだ小川町に在る〈上等カレー・小川町店〉なのであった。
さらに、である。
この日は、最低でも三軒はカレー店を巡る事を望んでいた書き手は、一軒目のカレー店では、腹を一杯にしないために、量が少なめのカレーを注文したい、とも考えていたのだった。
つまるところ、早い時間帯から営業しているだけではなく、量が少なめのカレーを提供している点もまた、一軒目咖喱場として、上等カレーを選んだ理由であった。
ミニカレー、この店では、通常の七割の分量のカレーは〈七分(しちぶ)カレー〉と呼ばれているのだが、その名が示しているように、これは、通常の七割の量のカレーライスであるらしい。
だが、スタンプが目的とはいえども、シンプルな七分カレーの単品だけというのは、いささかもの寂しい。
先日、訪れた秋葉原の上等カレーでは、冊子の店の紹介ページで推されていた「エビカレー」を注文したので、今回の神田小川町店では、冊子でこの店舗が推している「手仕込みトンカツカレー」を頼む事にした。
しかし、残念ながら、上等カレーでは、「手仕込みトンカツカレー」の七分カレーという品は提供されてはいない。
だがそういった場合には、七分カレーに、トッピングでトンカツを追加すれば、あら不思議、ミニサイズのトンカツカレーの出来上がり、となるのだ。
ここまで巡ってきた何件かの店において既に、書き手はカツカレーを食してきたのだが、それらのカツカレーの特徴は、ライスとカレーとカツがバランスよく分離して皿に載せられていて、例えば、カツ単体、ライスとカツとでトンカツ定食、カツとカレーでカレー風味のカツ、さらに、それら三つを一緒に食べる事によるカツカレー、といったように、自分の好みに合わせて、客が好きなように食べる事ができる、いわば、自由度が高い提供法が為されていた。
これに対して、上等カレーのカツカレーは、よい意味で、カツカレーとして、カツとライスとカレーに一体感があった。
まず、白い皿の上に、湖のようなカレーが拡がっていて、その内側に、島のようなライスが浮いている。そのライスには、ほとんど白い部分は見えてはおらず、十分にカレーが、あたかも侵食しているかの如くなのだ。
そして、そのライスの上に、十等分された、食べ易い一口サイズのトンカツが置かれているのだが、このトッピングの上にもカレーが十分にかけられ、切り口にまでたっぷりとカレーが染み込んでいる。
こう言ってよければ、上等カレーのトンカツカレーは、カレーまみれの〈完全なるカツカレー〉なのだ。
上等カレーのカレーは、最初が甘いものの、徐々に辛くなってゆく、そのような〈甘辛カレー〉なのだが、カレー・ライス・トッピングが混然一体となっているのは、たしかに、食べ方に自由度はないかもしれないが、上等カレーのウリである〈カレー〉を存分に味わい給え、というメッセージが、この盛り付け方に込められているのではなかろうか。
〈訪問データ〉
上等カレー・神田小川町店:神保町・小川町
E01
九月一日・木曜日・十時五〇分
七分カレー+トンカツ(トンカツ・ミニカレー):八五〇円(現金)
〈参考資料〉
「上等カレー・神田小川町店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、六十一ページ。
だがしかし、神田・神保町界隈で営業をしている飲食店の多くは、十一時半がランチ営業の開始であるため、十時台に入れる店は少なかった。
かくして、十時半に九段下で用事を済ませた書き手が、徒歩で約二十分かけて、十一時少し前に訪店した〈一軒目咖喱場〉は、靖国通りを神田方面に向かって真っすぐに進んだ小川町に在る〈上等カレー・小川町店〉なのであった。
さらに、である。
この日は、最低でも三軒はカレー店を巡る事を望んでいた書き手は、一軒目のカレー店では、腹を一杯にしないために、量が少なめのカレーを注文したい、とも考えていたのだった。
つまるところ、早い時間帯から営業しているだけではなく、量が少なめのカレーを提供している点もまた、一軒目咖喱場として、上等カレーを選んだ理由であった。
ミニカレー、この店では、通常の七割の分量のカレーは〈七分(しちぶ)カレー〉と呼ばれているのだが、その名が示しているように、これは、通常の七割の量のカレーライスであるらしい。
だが、スタンプが目的とはいえども、シンプルな七分カレーの単品だけというのは、いささかもの寂しい。
先日、訪れた秋葉原の上等カレーでは、冊子の店の紹介ページで推されていた「エビカレー」を注文したので、今回の神田小川町店では、冊子でこの店舗が推している「手仕込みトンカツカレー」を頼む事にした。
しかし、残念ながら、上等カレーでは、「手仕込みトンカツカレー」の七分カレーという品は提供されてはいない。
だがそういった場合には、七分カレーに、トッピングでトンカツを追加すれば、あら不思議、ミニサイズのトンカツカレーの出来上がり、となるのだ。
ここまで巡ってきた何件かの店において既に、書き手はカツカレーを食してきたのだが、それらのカツカレーの特徴は、ライスとカレーとカツがバランスよく分離して皿に載せられていて、例えば、カツ単体、ライスとカツとでトンカツ定食、カツとカレーでカレー風味のカツ、さらに、それら三つを一緒に食べる事によるカツカレー、といったように、自分の好みに合わせて、客が好きなように食べる事ができる、いわば、自由度が高い提供法が為されていた。
これに対して、上等カレーのカツカレーは、よい意味で、カツカレーとして、カツとライスとカレーに一体感があった。
まず、白い皿の上に、湖のようなカレーが拡がっていて、その内側に、島のようなライスが浮いている。そのライスには、ほとんど白い部分は見えてはおらず、十分にカレーが、あたかも侵食しているかの如くなのだ。
そして、そのライスの上に、十等分された、食べ易い一口サイズのトンカツが置かれているのだが、このトッピングの上にもカレーが十分にかけられ、切り口にまでたっぷりとカレーが染み込んでいる。
こう言ってよければ、上等カレーのトンカツカレーは、カレーまみれの〈完全なるカツカレー〉なのだ。
上等カレーのカレーは、最初が甘いものの、徐々に辛くなってゆく、そのような〈甘辛カレー〉なのだが、カレー・ライス・トッピングが混然一体となっているのは、たしかに、食べ方に自由度はないかもしれないが、上等カレーのウリである〈カレー〉を存分に味わい給え、というメッセージが、この盛り付け方に込められているのではなかろうか。
〈訪問データ〉
上等カレー・神田小川町店:神保町・小川町
E01
九月一日・木曜日・十時五〇分
七分カレー+トンカツ(トンカツ・ミニカレー):八五〇円(現金)
〈参考資料〉
「上等カレー・神田小川町店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、六十一ページ。
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