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一巡目(二〇二二)
第018匙 神田須田町のティックトック:トプカ(A15)
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この日、書き手は夕方に秋葉原に行く用事があった。
そこで、秋葉原付近で、日曜日の夕方に営業をしている、という基準で訪れる店を探す事にしたのだった。
東京メトロの丸の内線を利用して、淡路町駅の須田町側の改札を出てから、〈A3〉出口の階段を上がると靖国通りがある。
この辺りから秋葉原方面に向かう場合には、靖国通りを右にみて、歩道橋の先にある〈U〉字の分かれ道のうち、右の靖国通りではなく、左の細道に入り、白壁に〈BIG APPLE〉と書かれている建物を正面に見て、秋葉原の目抜き通りである中央通りに出るまで、ひたすら真っすぐに進んでゆくことになる。
とまれかくまれ、A3を出てすぐの細い道をとって、しばらく行くと、その進行方向左手にある店の扉の左側に、コック帽を被り、カイゼル髭をたくわえた、こう言ってよければ、ドワーフのような、独特な雰囲気のある小柄なオジサンの像が目に留まるのだ。
それが、カリー専門店トプカを象徴している人形なのである。
日曜のトプカの営業は十八時までで、ラスト・オーダーは十七時四十五分、そして、書き手が淡路町駅に到着したのが十七時半だったので、書き手は、閉店直前にまさに滑り込むように入店したのであった。
秋葉原に隣接している神田界隈で、カレーを食べるならばこの店だろ、といった代表的な店が何軒かあって、そのうちの一つとして〈トプカ〉を推す人が何人もいる。
そんなトプカが提供しているカレー・ソースは、欧風カレーとインド風カレーの二種類である。
冊子の店紹介頁や、店の公式サイトによれば、マイルドな「欧風カリーは、契約農家からの大量のリンゴやこだわりあるバター」「白ワインなどを使ってあめ色になるまで炒めたタマネギに、20種類以上のスパイスと鶏スープを加え12時間煮込んで作って」いるとの事であった。
また、刺激的なインド風カリーは、「北インドの伝統的なカレーにフランス料理の要素を加え」、「シナモンやカルダモン、クミンなどで香りや辛さを引き立て」、「数々のスパイスが調和するように」「手間と時間をおしまない」との事であった。
カレー・ソースはインド風と欧風の、わずか二種類のように思えてしまうが、驚愕したのは、「注文があってから、一皿一皿、フライパンで調理し」、加えて、「具によってベースになるルーを使いわけ、具材から抽出したブイヨンを加え、一つ一つ違う風味を感じてもらえるように」仕上げているという点だ。
実際、ホームページには、「欧風エビカリー」や「キマカリー」、そして「カツカリー」の調理動画がアップされていた。
トプカのホームページによれば、メニューは以下の如くである。
インド風カリーは、ムルギカリー、インド風ポークカリー、インド風エビカリー、マトンカリー、そして、キマカリーの五種類である。
欧風カリーの方は、純野菜カリー、牛すじ煮込みカリー、牛すじ野菜カリー、欧風ポーク野菜カリー、チーズカリー、欧風エビカリー、欧風ポークカリー、欧風チキンカリー、コロッケカリー、メンチカリー、カツカリーの十二種類だ。
ソースと具次第で、上記のような数のメニューがある分けだから、その数だけ別々の味が楽しめる、という事になろう。
さて、どっちのソースで、いったい何を注文するべきか、それが問題だ。
トプカは、店の入口のレジにて、対面で事前に注文するスタイルで、そこにいた受付の店員さんによると、閉店間際なので、チキンは既に終わっている、という話であった。
書き手は、メニュー一覧の中で、インド風カレーの具で「ムルギ」という名称を耳にしたことがなかった。
そしてこの時、知らないモノに挑戦してみよう、という気がムクムクっと起ち上がってきて、通ぶって、「それじゃ、ムルギカリー」をお願いします、と注文してしまったのである。
すると、店員さんはこう返してきた。「だから、チキンはありませんよ」
「???!!!!」
そこで、書き手は、〈ムルギ〉ではなく、インド風ポークカリーを注文したのであった。
気になって、後で調べてみたところ、ムルギとは、ヒンディー語で鶏肉の事であった。
なんで、鳥だけ、現地語を使ってんだよ、と思いつつも、次にインドカレーを食べる機会がある時には、赤っ恥をかかないように、しっかりと覚えて帰ろうと、書き手は思ったのであった。
それにしても、である。
ここの店名の「トプカ」は、自店の味に自信を抱いているのであろう、店名は「トップ・クオリティ・オブ・カリー」の頭文字をとったものであるらしい。
ここから、書き手がつい発想してしまったのは、〈西洋〉は英語で〈オクシデント〉だし、「トップ・インド・カリー」にして「トップ・オクシデント・カリー」でもあるこの店を、「TicToc(ティックトック)」という別称で呼んでもよいかもな、って。
〈訪問データ〉
トプカ 神田本店:神田・淡路町
A15
八月二十八日・日曜日・十七半
インド風ポークカリー:九八〇円(現金)
〈参考資料〉
「トプカ 神田本店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、三十一ページ。
〈WEB〉
『カリー専門店トプカ』、二〇二二年九月十三日閲覧。
そこで、秋葉原付近で、日曜日の夕方に営業をしている、という基準で訪れる店を探す事にしたのだった。
東京メトロの丸の内線を利用して、淡路町駅の須田町側の改札を出てから、〈A3〉出口の階段を上がると靖国通りがある。
この辺りから秋葉原方面に向かう場合には、靖国通りを右にみて、歩道橋の先にある〈U〉字の分かれ道のうち、右の靖国通りではなく、左の細道に入り、白壁に〈BIG APPLE〉と書かれている建物を正面に見て、秋葉原の目抜き通りである中央通りに出るまで、ひたすら真っすぐに進んでゆくことになる。
とまれかくまれ、A3を出てすぐの細い道をとって、しばらく行くと、その進行方向左手にある店の扉の左側に、コック帽を被り、カイゼル髭をたくわえた、こう言ってよければ、ドワーフのような、独特な雰囲気のある小柄なオジサンの像が目に留まるのだ。
それが、カリー専門店トプカを象徴している人形なのである。
日曜のトプカの営業は十八時までで、ラスト・オーダーは十七時四十五分、そして、書き手が淡路町駅に到着したのが十七時半だったので、書き手は、閉店直前にまさに滑り込むように入店したのであった。
秋葉原に隣接している神田界隈で、カレーを食べるならばこの店だろ、といった代表的な店が何軒かあって、そのうちの一つとして〈トプカ〉を推す人が何人もいる。
そんなトプカが提供しているカレー・ソースは、欧風カレーとインド風カレーの二種類である。
冊子の店紹介頁や、店の公式サイトによれば、マイルドな「欧風カリーは、契約農家からの大量のリンゴやこだわりあるバター」「白ワインなどを使ってあめ色になるまで炒めたタマネギに、20種類以上のスパイスと鶏スープを加え12時間煮込んで作って」いるとの事であった。
また、刺激的なインド風カリーは、「北インドの伝統的なカレーにフランス料理の要素を加え」、「シナモンやカルダモン、クミンなどで香りや辛さを引き立て」、「数々のスパイスが調和するように」「手間と時間をおしまない」との事であった。
カレー・ソースはインド風と欧風の、わずか二種類のように思えてしまうが、驚愕したのは、「注文があってから、一皿一皿、フライパンで調理し」、加えて、「具によってベースになるルーを使いわけ、具材から抽出したブイヨンを加え、一つ一つ違う風味を感じてもらえるように」仕上げているという点だ。
実際、ホームページには、「欧風エビカリー」や「キマカリー」、そして「カツカリー」の調理動画がアップされていた。
トプカのホームページによれば、メニューは以下の如くである。
インド風カリーは、ムルギカリー、インド風ポークカリー、インド風エビカリー、マトンカリー、そして、キマカリーの五種類である。
欧風カリーの方は、純野菜カリー、牛すじ煮込みカリー、牛すじ野菜カリー、欧風ポーク野菜カリー、チーズカリー、欧風エビカリー、欧風ポークカリー、欧風チキンカリー、コロッケカリー、メンチカリー、カツカリーの十二種類だ。
ソースと具次第で、上記のような数のメニューがある分けだから、その数だけ別々の味が楽しめる、という事になろう。
さて、どっちのソースで、いったい何を注文するべきか、それが問題だ。
トプカは、店の入口のレジにて、対面で事前に注文するスタイルで、そこにいた受付の店員さんによると、閉店間際なので、チキンは既に終わっている、という話であった。
書き手は、メニュー一覧の中で、インド風カレーの具で「ムルギ」という名称を耳にしたことがなかった。
そしてこの時、知らないモノに挑戦してみよう、という気がムクムクっと起ち上がってきて、通ぶって、「それじゃ、ムルギカリー」をお願いします、と注文してしまったのである。
すると、店員さんはこう返してきた。「だから、チキンはありませんよ」
「???!!!!」
そこで、書き手は、〈ムルギ〉ではなく、インド風ポークカリーを注文したのであった。
気になって、後で調べてみたところ、ムルギとは、ヒンディー語で鶏肉の事であった。
なんで、鳥だけ、現地語を使ってんだよ、と思いつつも、次にインドカレーを食べる機会がある時には、赤っ恥をかかないように、しっかりと覚えて帰ろうと、書き手は思ったのであった。
それにしても、である。
ここの店名の「トプカ」は、自店の味に自信を抱いているのであろう、店名は「トップ・クオリティ・オブ・カリー」の頭文字をとったものであるらしい。
ここから、書き手がつい発想してしまったのは、〈西洋〉は英語で〈オクシデント〉だし、「トップ・インド・カリー」にして「トップ・オクシデント・カリー」でもあるこの店を、「TicToc(ティックトック)」という別称で呼んでもよいかもな、って。
〈訪問データ〉
トプカ 神田本店:神田・淡路町
A15
八月二十八日・日曜日・十七半
インド風ポークカリー:九八〇円(現金)
〈参考資料〉
「トプカ 神田本店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、三十一ページ。
〈WEB〉
『カリー専門店トプカ』、二〇二二年九月十三日閲覧。
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