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一巡目(二〇二二)
第012匙 たったひとりの冴えたやりかた:モチヅキカレー(A09)
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この日の秋葉原での用事は、時計の針が天辺を過ぎる直前までの予定だったので、書き手は、夕食も秋葉原界隈で取る事にした。
秋葉原エリアは、地図で上野を上にした場合、上辺を〈蔵前橋通り〉、下辺を〈神田川〉、この上下のラインによって挟まれた地域と考えて、差し支えあるまい。
さらに、このエリアを二つに分割するのならば、JRの線路を挟んで、線路の右側に位置している、JR秋葉原駅の昭和通り口やメトロの日比谷線の秋葉原駅がある方は、いわば〈秋葉原・昭和通り〉エリアであり、もう一方の、線路の左側の、JRの電気街口やメトロの銀座線の末広町があるエリアは、〈秋葉原・末広町〉とみなす事ができよう。
書き手がこの日作業場としていたのは、秋葉原左の〈秋葉原・末広町〉エリア内だったのだが、夕食も作業場を中抜けして、このエリアの中で取ろう、と考えた。
スタンプラリーに参加している店で、秋葉原・末広町エリアに配されている店は、全てのコースで十四軒、そのうち、Dコースの二軒は既にクリア済みで、Aコースの三軒に関しては、昼のカリガリで二軒目となったので、この日の晩は、エリア内コース優先主義で、残り一軒のAコース店である〈モチヅキカレー〉に行くことに決めた。
モチヅキカレーは、上野に向かって中央通りを進んだ後、蔵前橋通りを横断してから左折し、次の、静かな落ち着いた雰囲気の路地を右に曲がってから少し進んだ左手に在る。
それにしても、である。
これは、全くもって奇妙な感覚なのだが、蔵前橋通りを渡る、それだけで、ヲタク的電気街のアキハバラの賑やかな雰囲気から、突然、物静かで落ち着いた湯島界隈の様相へと街は完全に一変するのだ。
この街路の雰囲気を感じると、店が在るのは、〈秋葉原・末広町〉エリアというよりも、〈上野・湯島〉エリア、とみなした方が適切であるようにさえ思えてくる。
注文は、店内にある現金のみの自動券売機で先に食券を購入し、それを、カウンター内にいる店員に渡すタイプで、スタンプもその時に押してもらった。
十九時がラストオーダーで、その直前の入店だったのだが、書き手は未ださしたる空腹感を覚えていなかったので、注文品は、店がスタンプラリー用に提供している「ハーフカレー」の、〈少なめ国産野菜のカレー〉を選んだのだった。
エリア内のAコース優先主義で店を選んだので、実は、店のカレーの特徴を前もって調べずに入店したので、料理が出来上がるのを待つ間に、いつもの如く、冊子とタブレットで、店について調べてみる事にした。
モチヅキカレーの特徴は、「インドカレーと日本カレーのちょうど中間を目指した」、「油と辛さ控えめのインド風オリジナルカレー」で、「インドのスパイス使いに日本の作り方を掛け合わせた」、「まろやかなスパイスでサラッと誰もが食べやすいカレー」との事であった。つまるところ、「インドと日本のいいとこどりの」日本人の口に合うようにアレンジされた、インド風カレーという事なのかもしれない。
そういえば、昼に行ったカリガリのカレーも、タイカレーやインドカレーの日本人向けアレンジ・カレーだったから、結果的に、昼も晩も似たタイプの店を選んでしまったのかもしれない。
今後は、ランチとディナーで一日二咖喱の場合には、昼と夜で違ったタイプのカレーにした方がよいかもしれない。
そんな事を考えているうちに、注文したカレーが完成したようだ。
料理は、カウンターの配膳口から提供され、客自身が皿を取りに行く、というスタイルであった。
注文を受け、自分のような参加者がいる場合はスタンプを押してあげ、調理をし、カウンターから皿を提供、返却口から食べ終わった皿を回収して、その汚れた食器を洗う。
食券を渡した時点では気が付かなかったのだが、この店は、マスターが全部を一人で切り盛りしている、いわゆる〈ワンオペ店〉であるようだ。少なくとも、この時間帯は一人で全てをこなしていた。
こういったタイプの店は入ったその瞬間に、客もまた、お店の一角となる。
セルフ配膳・返却の他の店で、食べ終わった皿を自分で下げずに、テーブルに残したまま帰ってしまう客を割と頻繁に見かけるのだが、その場合、テーブルに皿が残っているので、他の客はテーブルに着けないし、店主がひとりで運営している場合は、店主に、皿を下げさせる負担も増やし、その食器下げに時間をとらせ、結果的に、料理の提供時間を遅らせる事になる。
モチヅキカレーの場合、注文口、水やお茶置き場、配膳口、そして返却口などが、カウンターの各所に配されていて、実にシステマティックになっているように思われた。
こういうのって、店主がワンオペで店を効率的に運営するための、たったひとりの冴えたやり方なのかもしれない、そう思う書き手であった。
〈訪問データ〉
モチヅキカレー:秋葉原・末広町
A09
八月二十三日・火曜日・十九時
少なめ国産野菜のカレー:八五〇円(現金)
〈参考資料〉
「モチヅキカレー」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、七十一ページ。
〈WEB〉
『モチヅキカレー』、二〇二二年九月二日閲覧。
秋葉原エリアは、地図で上野を上にした場合、上辺を〈蔵前橋通り〉、下辺を〈神田川〉、この上下のラインによって挟まれた地域と考えて、差し支えあるまい。
さらに、このエリアを二つに分割するのならば、JRの線路を挟んで、線路の右側に位置している、JR秋葉原駅の昭和通り口やメトロの日比谷線の秋葉原駅がある方は、いわば〈秋葉原・昭和通り〉エリアであり、もう一方の、線路の左側の、JRの電気街口やメトロの銀座線の末広町があるエリアは、〈秋葉原・末広町〉とみなす事ができよう。
書き手がこの日作業場としていたのは、秋葉原左の〈秋葉原・末広町〉エリア内だったのだが、夕食も作業場を中抜けして、このエリアの中で取ろう、と考えた。
スタンプラリーに参加している店で、秋葉原・末広町エリアに配されている店は、全てのコースで十四軒、そのうち、Dコースの二軒は既にクリア済みで、Aコースの三軒に関しては、昼のカリガリで二軒目となったので、この日の晩は、エリア内コース優先主義で、残り一軒のAコース店である〈モチヅキカレー〉に行くことに決めた。
モチヅキカレーは、上野に向かって中央通りを進んだ後、蔵前橋通りを横断してから左折し、次の、静かな落ち着いた雰囲気の路地を右に曲がってから少し進んだ左手に在る。
それにしても、である。
これは、全くもって奇妙な感覚なのだが、蔵前橋通りを渡る、それだけで、ヲタク的電気街のアキハバラの賑やかな雰囲気から、突然、物静かで落ち着いた湯島界隈の様相へと街は完全に一変するのだ。
この街路の雰囲気を感じると、店が在るのは、〈秋葉原・末広町〉エリアというよりも、〈上野・湯島〉エリア、とみなした方が適切であるようにさえ思えてくる。
注文は、店内にある現金のみの自動券売機で先に食券を購入し、それを、カウンター内にいる店員に渡すタイプで、スタンプもその時に押してもらった。
十九時がラストオーダーで、その直前の入店だったのだが、書き手は未ださしたる空腹感を覚えていなかったので、注文品は、店がスタンプラリー用に提供している「ハーフカレー」の、〈少なめ国産野菜のカレー〉を選んだのだった。
エリア内のAコース優先主義で店を選んだので、実は、店のカレーの特徴を前もって調べずに入店したので、料理が出来上がるのを待つ間に、いつもの如く、冊子とタブレットで、店について調べてみる事にした。
モチヅキカレーの特徴は、「インドカレーと日本カレーのちょうど中間を目指した」、「油と辛さ控えめのインド風オリジナルカレー」で、「インドのスパイス使いに日本の作り方を掛け合わせた」、「まろやかなスパイスでサラッと誰もが食べやすいカレー」との事であった。つまるところ、「インドと日本のいいとこどりの」日本人の口に合うようにアレンジされた、インド風カレーという事なのかもしれない。
そういえば、昼に行ったカリガリのカレーも、タイカレーやインドカレーの日本人向けアレンジ・カレーだったから、結果的に、昼も晩も似たタイプの店を選んでしまったのかもしれない。
今後は、ランチとディナーで一日二咖喱の場合には、昼と夜で違ったタイプのカレーにした方がよいかもしれない。
そんな事を考えているうちに、注文したカレーが完成したようだ。
料理は、カウンターの配膳口から提供され、客自身が皿を取りに行く、というスタイルであった。
注文を受け、自分のような参加者がいる場合はスタンプを押してあげ、調理をし、カウンターから皿を提供、返却口から食べ終わった皿を回収して、その汚れた食器を洗う。
食券を渡した時点では気が付かなかったのだが、この店は、マスターが全部を一人で切り盛りしている、いわゆる〈ワンオペ店〉であるようだ。少なくとも、この時間帯は一人で全てをこなしていた。
こういったタイプの店は入ったその瞬間に、客もまた、お店の一角となる。
セルフ配膳・返却の他の店で、食べ終わった皿を自分で下げずに、テーブルに残したまま帰ってしまう客を割と頻繁に見かけるのだが、その場合、テーブルに皿が残っているので、他の客はテーブルに着けないし、店主がひとりで運営している場合は、店主に、皿を下げさせる負担も増やし、その食器下げに時間をとらせ、結果的に、料理の提供時間を遅らせる事になる。
モチヅキカレーの場合、注文口、水やお茶置き場、配膳口、そして返却口などが、カウンターの各所に配されていて、実にシステマティックになっているように思われた。
こういうのって、店主がワンオペで店を効率的に運営するための、たったひとりの冴えたやり方なのかもしれない、そう思う書き手であった。
〈訪問データ〉
モチヅキカレー:秋葉原・末広町
A09
八月二十三日・火曜日・十九時
少なめ国産野菜のカレー:八五〇円(現金)
〈参考資料〉
「モチヅキカレー」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、七十一ページ。
〈WEB〉
『モチヅキカレー』、二〇二二年九月二日閲覧。
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