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一巡目(二〇二二)
第011匙 ラボメンはカリガリカレーを食べたか:カリガリ(A08)
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八月二十三日、書き手は、一日中、秋葉原にて用事があった。
書き手にとっては、日曜以来のアキバ再訪だったのだが、ランチを取るために、秋葉原の末広町エリアの、どのカレー店を選ぶべきか、少しだけ考えた。
Dコース配置の店舗はクリア済みなので、書き手は、スタンプを〈押し〉進めているAコースから選ぶ事にし、昼食は〈秋葉原カリガリ〉に決めた。
この店を選んだ理由は二つあって、この店の品が、ディナーよりもランチの方が安いからで、もう一つの理由は、先の土曜日に、書き手が気になっている声優が、この店のことをSNSで呟いていたからである。
後者の方が、書き手にとってはより強い動機付けになっているかもしれない。
さらに、もう一つ来店理由を挙げるとすると、カリガリは、二〇一九年の「神田カレーグランプリ」にてグランプリを獲得した店だからなのだ。
それゆえに、であろうか。
書き手が店に着いたのは、ランチタイム・スタートの僅か十分後に過ぎなかったのだが、並ぶ程ではなかったものの、店内は、既にお客で込み合っていたのだった。
書き手は、店に入ってからの注文決めに時間を費やしたくなかったので、事前に、店のホームページのランチタイムメニューのPDFで、注文する品を既に決めていた。
そのPDFには「単品カレーとセット」として、カリガリカレー、インドカレー、2食掛けカレーなどが並んでいたのだが、書き手が選択したのは、「2色掛けカレー」であった。
料理に付けられた説明文によると、その二食掛けカレーは、「カリガリ、インドの2つのカレーを1度に味わえる」ものであるらしく、そこに、書き手はお得感を覚えたのだった。
入店してからの注文後、書き手が料理が出てくるのを待っている間にも、どんどん人が入ってきて、この店の人気ぶりを伺い知ることができた。
やがて五分ほどして、注文した黒い深めの皿が運ばれてきた。
二食掛けカレーは、皿の真ん中に黄色ライスが、あたかも土手のように、ドンと置かれ、その片側に濃い茶色のカレー、もう片側に、薄茶色のカレーが盛られていた。
どちらがインドで、どっちがカリガリか分からなかったので、書き手は、ブックマークしておいたカリガリのホームページにタブレットで再アクセスしてみた。
写真を参照したところ、インドカレーの方が濃い茶色、カリガリカレーの方が薄い茶色であるようだ。
説明文によると、カリガリの「インドカレー」は、「20種類以上のスパイスと大量の玉葱を使った本格的インドカレー」との事であった。
一方の、この店の名が冠された「カリガリカレー」は、「トロリと濃厚な」この店「オリジナルのココナッツカレー」との事であった。
さらに、いつもの冊子の店の紹介頁を見たところ、この店独自のココナッツカレーは「タイカレーを日本風にアレンジした」ものであるそうだ。
ところで、タイカレーの特徴ってどんなものなのだろう、そう思って、書き手はタブレットで調べてみた。
タイカレーの特徴とは、他のタイ料理とは違って、辛いスパイスを控えて、甘口になっているそうだ。
そのマイルドのな風味は、ココナッツミルクに起因しているらしい。
ということは、ココナッツミルクをふんだんに使ってトロッと濃厚になっているのが、カリガリカレーなのだろうか。
書き手は、黒い皿に載っている薄いカレー、カリガリカレーの方を、一口、口に運んでみると、確かに、カリガリは、あたかも、乳製品が入っているかのような印象であった。
それから、インドカレーを一口食べたのだが、真ん中の中之島のような黄色いライスを挟んで、薄茶のカリガリは甘く、焦茶のインドは辛く、色も味も著しいコントラストをなしていた。
そこで、書き手は、先にカリガリの方を食べ切ってしまう事にした。
辛いのを食べてから甘いのを食べると、舌が痺れて、カリガリの味があまり感じられないのではないか、と思ったからである。
食事を進めながら、次に来店する機会があったら、インドだけ、あるいは、カリガリだけの一〈色〉カレーにしてもよいかな、と思う書き手であった。
*
実は、秋葉原のカリガリは、上野方面に向かって中央通りを進んだ後、蔵前橋通りを左折し、この通りの左側の歩道を通って、次の信号の一つ前の路地の曲がり角、蔵前橋通りに面している所に位置している。
この細道は、そう、『シュタゲ』の「未来ガジェット研究所」が在る、あの通りなのだ。
曲がり角のカリガリを後にし、道の左右に在る建物を眺めながら、その路地を歩いていた書き手は、つい思ってしまった。
カリガリと、オカベたちの「未来ガジェット研究所」は、こんなにも近接しているのだから、もしかして、彼らもまたカリガリのカレーを食したかもしれない、と。
たしか、『シュタゲ』の時間的背景は、二〇一〇年、この時、オカベは十八歳で、東京電機大学の一年生であった。
東京電機大学のキャンパスは、かつては、秋葉原に近い、神田の錦町に位置していたのだが、今から十年前に、キャンパスは北先住に移転してしまった。
つまり、そのキャンパス移転は、オカベが大学三年時の事なのだが、大学の場所が変わっても、彼等のラボは果たして、そのままアキバに在ったのだろうか? それとも、場所を移したのであろうか?
二〇一二年以降の虚構内の事実は分からない。
そして、カリガリのホームページによると、カリガリは、二〇〇五年に渋谷に開業した後、二〇一五年に秋葉原でオープンしたらしい。
二〇一五年ということは、この時のオカベは、就職か留学の可能性もあるが、大学院に進学していたら、マスターコースの二年生ということになる。
虚構が現実を参照している、として、確実に言い得ることは、『シュタゲ』のアニメが展開している二〇一〇年には、現実世界において、未だ秋葉原にカリガリは存在していなかったので、彼らがカリガリに行った可能性はゼロだ。
しかし、である。
もしかしたら、二〇一五年以降は、ラボメンが、カリガリに行った可能性はゼロではない。
とまれ、描かれてはいない虚構の設定は藪の中なのだが。
〈訪問データ〉
秋葉原 カリガリ:秋葉原・末広町
A08
八月二十三日・火曜日・十一時四十五分
2食掛けカレー:九〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「秋葉原 カリガリ」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十三ページ。
〈WEB〉
「大学の沿革」、『東京電機大学』、二〇二二年九月一日閲覧。
書き手にとっては、日曜以来のアキバ再訪だったのだが、ランチを取るために、秋葉原の末広町エリアの、どのカレー店を選ぶべきか、少しだけ考えた。
Dコース配置の店舗はクリア済みなので、書き手は、スタンプを〈押し〉進めているAコースから選ぶ事にし、昼食は〈秋葉原カリガリ〉に決めた。
この店を選んだ理由は二つあって、この店の品が、ディナーよりもランチの方が安いからで、もう一つの理由は、先の土曜日に、書き手が気になっている声優が、この店のことをSNSで呟いていたからである。
後者の方が、書き手にとってはより強い動機付けになっているかもしれない。
さらに、もう一つ来店理由を挙げるとすると、カリガリは、二〇一九年の「神田カレーグランプリ」にてグランプリを獲得した店だからなのだ。
それゆえに、であろうか。
書き手が店に着いたのは、ランチタイム・スタートの僅か十分後に過ぎなかったのだが、並ぶ程ではなかったものの、店内は、既にお客で込み合っていたのだった。
書き手は、店に入ってからの注文決めに時間を費やしたくなかったので、事前に、店のホームページのランチタイムメニューのPDFで、注文する品を既に決めていた。
そのPDFには「単品カレーとセット」として、カリガリカレー、インドカレー、2食掛けカレーなどが並んでいたのだが、書き手が選択したのは、「2色掛けカレー」であった。
料理に付けられた説明文によると、その二食掛けカレーは、「カリガリ、インドの2つのカレーを1度に味わえる」ものであるらしく、そこに、書き手はお得感を覚えたのだった。
入店してからの注文後、書き手が料理が出てくるのを待っている間にも、どんどん人が入ってきて、この店の人気ぶりを伺い知ることができた。
やがて五分ほどして、注文した黒い深めの皿が運ばれてきた。
二食掛けカレーは、皿の真ん中に黄色ライスが、あたかも土手のように、ドンと置かれ、その片側に濃い茶色のカレー、もう片側に、薄茶色のカレーが盛られていた。
どちらがインドで、どっちがカリガリか分からなかったので、書き手は、ブックマークしておいたカリガリのホームページにタブレットで再アクセスしてみた。
写真を参照したところ、インドカレーの方が濃い茶色、カリガリカレーの方が薄い茶色であるようだ。
説明文によると、カリガリの「インドカレー」は、「20種類以上のスパイスと大量の玉葱を使った本格的インドカレー」との事であった。
一方の、この店の名が冠された「カリガリカレー」は、「トロリと濃厚な」この店「オリジナルのココナッツカレー」との事であった。
さらに、いつもの冊子の店の紹介頁を見たところ、この店独自のココナッツカレーは「タイカレーを日本風にアレンジした」ものであるそうだ。
ところで、タイカレーの特徴ってどんなものなのだろう、そう思って、書き手はタブレットで調べてみた。
タイカレーの特徴とは、他のタイ料理とは違って、辛いスパイスを控えて、甘口になっているそうだ。
そのマイルドのな風味は、ココナッツミルクに起因しているらしい。
ということは、ココナッツミルクをふんだんに使ってトロッと濃厚になっているのが、カリガリカレーなのだろうか。
書き手は、黒い皿に載っている薄いカレー、カリガリカレーの方を、一口、口に運んでみると、確かに、カリガリは、あたかも、乳製品が入っているかのような印象であった。
それから、インドカレーを一口食べたのだが、真ん中の中之島のような黄色いライスを挟んで、薄茶のカリガリは甘く、焦茶のインドは辛く、色も味も著しいコントラストをなしていた。
そこで、書き手は、先にカリガリの方を食べ切ってしまう事にした。
辛いのを食べてから甘いのを食べると、舌が痺れて、カリガリの味があまり感じられないのではないか、と思ったからである。
食事を進めながら、次に来店する機会があったら、インドだけ、あるいは、カリガリだけの一〈色〉カレーにしてもよいかな、と思う書き手であった。
*
実は、秋葉原のカリガリは、上野方面に向かって中央通りを進んだ後、蔵前橋通りを左折し、この通りの左側の歩道を通って、次の信号の一つ前の路地の曲がり角、蔵前橋通りに面している所に位置している。
この細道は、そう、『シュタゲ』の「未来ガジェット研究所」が在る、あの通りなのだ。
曲がり角のカリガリを後にし、道の左右に在る建物を眺めながら、その路地を歩いていた書き手は、つい思ってしまった。
カリガリと、オカベたちの「未来ガジェット研究所」は、こんなにも近接しているのだから、もしかして、彼らもまたカリガリのカレーを食したかもしれない、と。
たしか、『シュタゲ』の時間的背景は、二〇一〇年、この時、オカベは十八歳で、東京電機大学の一年生であった。
東京電機大学のキャンパスは、かつては、秋葉原に近い、神田の錦町に位置していたのだが、今から十年前に、キャンパスは北先住に移転してしまった。
つまり、そのキャンパス移転は、オカベが大学三年時の事なのだが、大学の場所が変わっても、彼等のラボは果たして、そのままアキバに在ったのだろうか? それとも、場所を移したのであろうか?
二〇一二年以降の虚構内の事実は分からない。
そして、カリガリのホームページによると、カリガリは、二〇〇五年に渋谷に開業した後、二〇一五年に秋葉原でオープンしたらしい。
二〇一五年ということは、この時のオカベは、就職か留学の可能性もあるが、大学院に進学していたら、マスターコースの二年生ということになる。
虚構が現実を参照している、として、確実に言い得ることは、『シュタゲ』のアニメが展開している二〇一〇年には、現実世界において、未だ秋葉原にカリガリは存在していなかったので、彼らがカリガリに行った可能性はゼロだ。
しかし、である。
もしかしたら、二〇一五年以降は、ラボメンが、カリガリに行った可能性はゼロではない。
とまれ、描かれてはいない虚構の設定は藪の中なのだが。
〈訪問データ〉
秋葉原 カリガリ:秋葉原・末広町
A08
八月二十三日・火曜日・十一時四十五分
2食掛けカレー:九〇〇円(QR)
〈参考資料〉
「秋葉原 カリガリ」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、五十三ページ。
〈WEB〉
「大学の沿革」、『東京電機大学』、二〇二二年九月一日閲覧。
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