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一巡目(二〇二二)
第000匙 咖喱店朱印蒐集を意識してしまった
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書き手は、初めてカレー・スタンプラリーを巡った〈二〇二二〉年の事を思い起こしていた。
*
それは、八月の初めの事であった。
所用で秋葉原に赴いた時、用事の開始まで、しばし時間があったので、書き手は、食事を済ませてしまう事にした。
秋葉原で食事をする場合、決まったお店に入ることが多く、今や、飲食店に関しては、新規開拓は殆どしないのだが、生憎、いつもの店が休業だったので、目に入ったカレー店に入って、手早く食事を済ませよう、と書き手は考えた。
書き手は、その店の名物であるロースカツカレーを注文した。
カツが揚げ上がるまで少し時間がかかるそうなので、待ち時間の暇つぶしに、テーブルの上に置かれていた一冊のフリー・ペーパーを手に取った。
その冊子は「神田カレー街 公式ガイドブック 2022」と題されており、表紙の真ん中には、次のような文言があった。
「神田カレー街 食べ歩きスタンプラリー」
どうやら、今年、二〇二二年八月一日から、同年の十二月十五日までの四か月半、神田のカレーの〈スタンプラリー〉が催されるらしい。
この日は〈八月六日〉だったので、この企画は、まだ始まったばかりであるようだ。
めくってみると、冊子の中程に、四ページに渡ってスタンプラリーのページがあった。
それは、マス目になっていて、一ページにつき、横・五、縦・七の三十五マス、四ページ目だけが、縦・六の三十、つまり合計で一三五マスとなっていた。
その一三五は、さらに、AからEまでの五つのコースに分かれていて、それぞれのコースは、二十五の店と、一つのJRの駅、一つのメトロの駅の計二十七からなっている。
つまるところ、このカレー・スタンプラリーをコンプリートするためには、一三五箇所でスタンプを押してもらう必要がある。しかし、それは、かなり高い難易度だ。
開催期間は、四か月半の一三七日間なので、参加一二五店を、ほぼ毎日、通わなければコンプできない。
だからであろう。
ラリーは五つのランクに分かれていて、例えば、AからEの何れか一つのコース制覇で無印の「マイスター」、二コース制覇で「ブロンズマイスター」、三コース制覇で「シルバーマイスター」、四コース制覇で「ゴールドマイスター」、そして、全五コース制覇で「グランドマイスター」に成れる。
このように、五つのランクがあるので、それぞれの方針に応じて、いずれかのコースを選んで、二五店を巡れば、少なくとも、無印の「マイスター」の称号は得られるのだ。
実は、このカレー・スタンプラリーは数年前から実施されていて、駅に貼られていたポスターや、街中の店の前に立っているのぼりなどで、この「神田カレーグランプリ」の存在を、書き手は以前から知ってはいた。
いたのだが、このスタンプラリーに自分が参加するという発想がなかったので、意識野に入ってはいなかったのだ。そして、待ち時間にフリー・ペーパーを流し読みしていた際にも、全一二五店、否、一コース・二五店をクリアするだけでも凄いな、と完全に他所事と思っていた。
そうこうしているうちに、注文したロースカツカレーがやってきたので、書き手は、さっそく、カツとカレーを口に運んだ。
!!!!!!!!!!
初めて入った店の、このカツカレー、とてつもなく美味だったので、秋葉原に来る機会があったら、この店を再訪する決意を抱いてしまった。
さらに、である。
どうせ、再びカレー店を訪れるのならば、いっちょ、今年のカレー・スタンプラリーに参加してみよう、という気にもなったのである。
神田界隈のカレー店巡りをするのならば、闇雲に店に入るよりも、こうした企画を一つの切っ掛けにして、様々な店の色々なカレーを知っていくのが良いように思われる。
その中には、未だ書き手が味わったことのない美味なるカレーとの新たな出会いが待っているかもしれない。
そんな事を考えながら、書き手は冊子を鞄に入れたのであった。
*
それは、八月の初めの事であった。
所用で秋葉原に赴いた時、用事の開始まで、しばし時間があったので、書き手は、食事を済ませてしまう事にした。
秋葉原で食事をする場合、決まったお店に入ることが多く、今や、飲食店に関しては、新規開拓は殆どしないのだが、生憎、いつもの店が休業だったので、目に入ったカレー店に入って、手早く食事を済ませよう、と書き手は考えた。
書き手は、その店の名物であるロースカツカレーを注文した。
カツが揚げ上がるまで少し時間がかかるそうなので、待ち時間の暇つぶしに、テーブルの上に置かれていた一冊のフリー・ペーパーを手に取った。
その冊子は「神田カレー街 公式ガイドブック 2022」と題されており、表紙の真ん中には、次のような文言があった。
「神田カレー街 食べ歩きスタンプラリー」
どうやら、今年、二〇二二年八月一日から、同年の十二月十五日までの四か月半、神田のカレーの〈スタンプラリー〉が催されるらしい。
この日は〈八月六日〉だったので、この企画は、まだ始まったばかりであるようだ。
めくってみると、冊子の中程に、四ページに渡ってスタンプラリーのページがあった。
それは、マス目になっていて、一ページにつき、横・五、縦・七の三十五マス、四ページ目だけが、縦・六の三十、つまり合計で一三五マスとなっていた。
その一三五は、さらに、AからEまでの五つのコースに分かれていて、それぞれのコースは、二十五の店と、一つのJRの駅、一つのメトロの駅の計二十七からなっている。
つまるところ、このカレー・スタンプラリーをコンプリートするためには、一三五箇所でスタンプを押してもらう必要がある。しかし、それは、かなり高い難易度だ。
開催期間は、四か月半の一三七日間なので、参加一二五店を、ほぼ毎日、通わなければコンプできない。
だからであろう。
ラリーは五つのランクに分かれていて、例えば、AからEの何れか一つのコース制覇で無印の「マイスター」、二コース制覇で「ブロンズマイスター」、三コース制覇で「シルバーマイスター」、四コース制覇で「ゴールドマイスター」、そして、全五コース制覇で「グランドマイスター」に成れる。
このように、五つのランクがあるので、それぞれの方針に応じて、いずれかのコースを選んで、二五店を巡れば、少なくとも、無印の「マイスター」の称号は得られるのだ。
実は、このカレー・スタンプラリーは数年前から実施されていて、駅に貼られていたポスターや、街中の店の前に立っているのぼりなどで、この「神田カレーグランプリ」の存在を、書き手は以前から知ってはいた。
いたのだが、このスタンプラリーに自分が参加するという発想がなかったので、意識野に入ってはいなかったのだ。そして、待ち時間にフリー・ペーパーを流し読みしていた際にも、全一二五店、否、一コース・二五店をクリアするだけでも凄いな、と完全に他所事と思っていた。
そうこうしているうちに、注文したロースカツカレーがやってきたので、書き手は、さっそく、カツとカレーを口に運んだ。
!!!!!!!!!!
初めて入った店の、このカツカレー、とてつもなく美味だったので、秋葉原に来る機会があったら、この店を再訪する決意を抱いてしまった。
さらに、である。
どうせ、再びカレー店を訪れるのならば、いっちょ、今年のカレー・スタンプラリーに参加してみよう、という気にもなったのである。
神田界隈のカレー店巡りをするのならば、闇雲に店に入るよりも、こうした企画を一つの切っ掛けにして、様々な店の色々なカレーを知っていくのが良いように思われる。
その中には、未だ書き手が味わったことのない美味なるカレーとの新たな出会いが待っているかもしれない。
そんな事を考えながら、書き手は冊子を鞄に入れたのであった。
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