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ヨネの祝言の日 ~デッカイぼた餅~
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昭和二十一年 三月吉日
吉竹 寅造 二十七才 ヨネ子 二十歳
芝山村の吉竹家にて
三間の大広間の襖を外して席をつくる。
神棚の下に、山神社の神主が仕度をして、左右に両家に連なる者が座り三三九度の三献の儀を執り行う。
仲人代わりは分家の再従兄弟夫婦にお願いした。トラの大叔父、再従兄弟の子供たちも出席している。
ヨネ子の側は両親のみだった。
ヨネ子は一人っ子だし、両親は高齢、トラの亡くなった父親よりも一回りも上である。
固めの杯をして、恙無く式を終えた。
そして、広い吉竹家の庭に一同が出ると、準備を終えて待っていた写真屋が写真を撮った。
新郎新婦の写真、七緒とヨネの親と一緒の写真、出席者全員の写真と写真を撮った。
写真屋はヨネの親が隣町から連れてきた。
ヨネの花嫁衣装は、黒引き振り袖で、その黒地は結構立派な物で年老いた両親が一人娘を嫁に出すその意気込みのようなものが見てとれた、ヨネは気がついていないようなのだが。
トラも紋付き袴をきっちりと着て、二人で並んだ写真はお似合いな若夫婦の姿だった。
そして、組合の女衆が朝から作った祝言のご馳走を食べ、酒を飲み交わし、宴会は続くのだった。
吉竹家は芝山村の西口地区と呼ばれている部落にあり、トラはそこの農家の本家の長男である。
しかし、両親も既に鬼籍に入っており、身内は妹の七緒と隣に住む分家一家くらいだ。
「うちは元々身内が少ないでね、代々短命の家系だ。」
そんな縁起でもないことを、トラは飄々と言う。
「トラちゃんは長生きするよ!だって戦地から国に戻ってきたじゃない!」
(もう!結婚したばかりの新妻にいう言葉じゃないよ、そんなこと)
と、ヨネは心の中で叫んだ。
元来、ヨネ子は物をハッキリ言う。
名古屋の周りの友達はそうじゃなかったけど、ヨネの母親もチャキチャキ物言うタイプであり、父親が許してたのでこれまでそうしてきた。
けれど婚礼の前日、母親に
「良いかい、ヨネ、良く聞きな。田舎の農家に嫁ぐんだ、旦那を立てなきゃいけないよ。言いたいことの半分は心にしまっときな、口に出すのは半分だけだよ。わかったね。今ここで、お母ちゃんに誓いな、ほら、さあ。」
そう言われ誓った手前、嫁に行った早々である、ヨネはちゃんと言葉の半分を飲み込んだのである。
吉竹家の菩提寺は西口地区の家と同じ、西口日願寺だ。
自宅から坂を下って下って、下って下ったら、田んぼの間の道を小高い丘を遠くに見ながら歩く。
「この上だから。頑張ってな。」
トラが石段の先を指差して、そう言った。
「と、トラちゃんは脚が強いわねぇ・・・」
トラが指差した先を見ながら、ヨネは背中の今下ってきた道のりを思っていた。
(ここを上って、帰り道は来た道を上って戻るのねぇ・・・)
考えただけで、もうゲンナリしたが、弱音は心ので吐くのである、母との約束だ。
途中の階段はトラに手をに引いてもらって、はあはあ息が上がり、ヘロヘロの体で菩提寺についた。
「ごめんください」
「はーい」
入り口の戸を少し開けてトラが声をかけると、奥からお寺の奥さんが出てきて、中に招いてくれた。
ご住職が呼ばれて奥さんにお茶を出して頂いて向かい合った。
「私、この度良いご縁がありまして、所帯を持ちました。」
「あれまあ、それはおめでたい。」
ご住職さまと奥さんが顔を見合わせて微笑んだ。
「こちらが嫁のヨネ子です。」
「はじめまして、どうぞ色々教えて下さい。」
ヨネが姿勢を正してそういうと、二人で頭を下げた。
「こちらこそ、これからもよろしくね。トラちゃん良かったわね。」
「はい。」
出されたお茶を頂いて、少し喋ってお寺を出ると、裏の墓地へと向かう。
吉竹家の墓地は広かった。
(代々続く大きな農家なんだなー)
と、墓石の溶岩石の数々を見ながら思った。
広い墓の草取りを二人でした。
(あー夏になったらどれだけかかるのか)
と、また愚痴を心の中で盛大に溢しつつ草を抜く。
家から持ってきた花を生けて、お線香上げてお参りをした。
それから、また、トラには普通でもヨネには、それは長い長い道のりを歩いて家まで戻った。
やっとのことで、家につくと台所からいい匂いがしてきた。
急いで割烹着に着替えて出ていくと、七緒が豆を煮ていた。
「あ、ナナちゃん、ありがとう。火にかけといてくれたんだ。」
ヨネが昨晩から水につけて元に戻した小豆を、七緒が竈にかけた大鍋でくつくつ煮ていた。
餅米とうるち米を半分ずつの飯も炊いている。
小豆は利き手の小指と親指ですんなり潰れるくらい柔らかくなったら、砂糖を2度に分けて入れる。
(ちょっと前は食べ物と言えば、すいとんばかりだったのに、ここいら辺は本当に食べ物が有るんだね)
そう思うと、甘い豆の匂いに胸が踊る。
「いい匂いね、ナナちゃん!」
とにかく食べるのが大好きなヨネである。
台所に一杯に広がる甘い匂いを、鼻からスススーーーと胸一杯吸い込む。
「ネエサンったら。ふふ」
鼻の穴を広げて深呼吸し、うっとりとするヨネの姿に七緒が笑う。
焦げないように煮つめて火から上げると、擂り粉木で豆を潰す。
しゃもじで全体をネチャネチャ混ぜると、甘い甘いつぶ餡の出来上がり。
今度は炊き上がった飯をまた擂り粉木で潰す。
「ナナちゃん、ぼたもちの飯は半殺しっていってね、ちょっと粒が残った位にするんだよ。」
「はい、ネエサン!」
それを大きな皿に丸めてあんこを絡めたのと、砂糖たっぷりにちょこっと塩いれたきな粉をまぶしたのと半々に並べて、出来上がり。
ヨネのぼた餅はとても大きい、大人の拳固くらいもある。
食いしん坊のヨネである、握り飯もいなり寿司もぼた餅も何でも大きくなってしまうのだ。
仏壇と神棚に小皿に一つずつ大きなぼた餅を上げて、手を合わせる。
「ネエサン、すごい美味しい」
「ヨネ、上手いよ!」
濃いめのお茶を入れて、座敷のちゃぶ台に皿を並べて三人で食べた。
「ふふ、ぼた餅はね、うちのお母ちゃんが得意でね、毎年彼岸には必ず作るものだから、私も子供の時から手伝っててね。でも戦争が激しくなって、小豆も砂糖も手に入らなくて、ここ数年は作れなかったから、久しぶりに作れて本当に嬉しいよ。」
ヨネが大きな口にぼた餅を頬張りながらそう言った。
「そういえば、お袋が亡くなってから俺も食べて無かったなぁ。」
トラもしんみりしたと思ったら、大口開けてぼた餅を口に入れた。
「一杯あるから!たくさん食べよう。ナナちゃん口の回りあんこついてるよ、へへへ。」
ヨネが明るい口調でそう言った。
「ヨネもついてるよ、口の端に、ほら。」
トラがヨネの口を首に巻いていた手拭いで拭ってやる。
「あ、トラちゃんはあんこときな粉でお化粧みたいになってるよ!」
今度はヨネが自分の手拭いを手に持って、トラの顔を拭う。
あははと笑いながらみんなで、顔を拭きあった。
「また秋も作るよ。」
ヨネが胸を叩いてそう言った。
「ああ、頼むよ。俺は、これから毎年、小豆も餅米もたっぷり作るから、毎回彼岸にぼた餅作ってな。」
トラがヨネを優しい眼差しで見つめながらそう言った。
「もちろん!これから何回でも何十回でも作るから、だから長生きしてねトラちゃん!」
ヨネがそう言って口を弧の字にした。
大皿いっぱい作ったぼた餅を三人で腹一杯食べた、そんな初めての彼岸の美味しいお話。
吉竹 寅造 二十七才 ヨネ子 二十歳
芝山村の吉竹家にて
三間の大広間の襖を外して席をつくる。
神棚の下に、山神社の神主が仕度をして、左右に両家に連なる者が座り三三九度の三献の儀を執り行う。
仲人代わりは分家の再従兄弟夫婦にお願いした。トラの大叔父、再従兄弟の子供たちも出席している。
ヨネ子の側は両親のみだった。
ヨネ子は一人っ子だし、両親は高齢、トラの亡くなった父親よりも一回りも上である。
固めの杯をして、恙無く式を終えた。
そして、広い吉竹家の庭に一同が出ると、準備を終えて待っていた写真屋が写真を撮った。
新郎新婦の写真、七緒とヨネの親と一緒の写真、出席者全員の写真と写真を撮った。
写真屋はヨネの親が隣町から連れてきた。
ヨネの花嫁衣装は、黒引き振り袖で、その黒地は結構立派な物で年老いた両親が一人娘を嫁に出すその意気込みのようなものが見てとれた、ヨネは気がついていないようなのだが。
トラも紋付き袴をきっちりと着て、二人で並んだ写真はお似合いな若夫婦の姿だった。
そして、組合の女衆が朝から作った祝言のご馳走を食べ、酒を飲み交わし、宴会は続くのだった。
吉竹家は芝山村の西口地区と呼ばれている部落にあり、トラはそこの農家の本家の長男である。
しかし、両親も既に鬼籍に入っており、身内は妹の七緒と隣に住む分家一家くらいだ。
「うちは元々身内が少ないでね、代々短命の家系だ。」
そんな縁起でもないことを、トラは飄々と言う。
「トラちゃんは長生きするよ!だって戦地から国に戻ってきたじゃない!」
(もう!結婚したばかりの新妻にいう言葉じゃないよ、そんなこと)
と、ヨネは心の中で叫んだ。
元来、ヨネ子は物をハッキリ言う。
名古屋の周りの友達はそうじゃなかったけど、ヨネの母親もチャキチャキ物言うタイプであり、父親が許してたのでこれまでそうしてきた。
けれど婚礼の前日、母親に
「良いかい、ヨネ、良く聞きな。田舎の農家に嫁ぐんだ、旦那を立てなきゃいけないよ。言いたいことの半分は心にしまっときな、口に出すのは半分だけだよ。わかったね。今ここで、お母ちゃんに誓いな、ほら、さあ。」
そう言われ誓った手前、嫁に行った早々である、ヨネはちゃんと言葉の半分を飲み込んだのである。
吉竹家の菩提寺は西口地区の家と同じ、西口日願寺だ。
自宅から坂を下って下って、下って下ったら、田んぼの間の道を小高い丘を遠くに見ながら歩く。
「この上だから。頑張ってな。」
トラが石段の先を指差して、そう言った。
「と、トラちゃんは脚が強いわねぇ・・・」
トラが指差した先を見ながら、ヨネは背中の今下ってきた道のりを思っていた。
(ここを上って、帰り道は来た道を上って戻るのねぇ・・・)
考えただけで、もうゲンナリしたが、弱音は心ので吐くのである、母との約束だ。
途中の階段はトラに手をに引いてもらって、はあはあ息が上がり、ヘロヘロの体で菩提寺についた。
「ごめんください」
「はーい」
入り口の戸を少し開けてトラが声をかけると、奥からお寺の奥さんが出てきて、中に招いてくれた。
ご住職が呼ばれて奥さんにお茶を出して頂いて向かい合った。
「私、この度良いご縁がありまして、所帯を持ちました。」
「あれまあ、それはおめでたい。」
ご住職さまと奥さんが顔を見合わせて微笑んだ。
「こちらが嫁のヨネ子です。」
「はじめまして、どうぞ色々教えて下さい。」
ヨネが姿勢を正してそういうと、二人で頭を下げた。
「こちらこそ、これからもよろしくね。トラちゃん良かったわね。」
「はい。」
出されたお茶を頂いて、少し喋ってお寺を出ると、裏の墓地へと向かう。
吉竹家の墓地は広かった。
(代々続く大きな農家なんだなー)
と、墓石の溶岩石の数々を見ながら思った。
広い墓の草取りを二人でした。
(あー夏になったらどれだけかかるのか)
と、また愚痴を心の中で盛大に溢しつつ草を抜く。
家から持ってきた花を生けて、お線香上げてお参りをした。
それから、また、トラには普通でもヨネには、それは長い長い道のりを歩いて家まで戻った。
やっとのことで、家につくと台所からいい匂いがしてきた。
急いで割烹着に着替えて出ていくと、七緒が豆を煮ていた。
「あ、ナナちゃん、ありがとう。火にかけといてくれたんだ。」
ヨネが昨晩から水につけて元に戻した小豆を、七緒が竈にかけた大鍋でくつくつ煮ていた。
餅米とうるち米を半分ずつの飯も炊いている。
小豆は利き手の小指と親指ですんなり潰れるくらい柔らかくなったら、砂糖を2度に分けて入れる。
(ちょっと前は食べ物と言えば、すいとんばかりだったのに、ここいら辺は本当に食べ物が有るんだね)
そう思うと、甘い豆の匂いに胸が踊る。
「いい匂いね、ナナちゃん!」
とにかく食べるのが大好きなヨネである。
台所に一杯に広がる甘い匂いを、鼻からスススーーーと胸一杯吸い込む。
「ネエサンったら。ふふ」
鼻の穴を広げて深呼吸し、うっとりとするヨネの姿に七緒が笑う。
焦げないように煮つめて火から上げると、擂り粉木で豆を潰す。
しゃもじで全体をネチャネチャ混ぜると、甘い甘いつぶ餡の出来上がり。
今度は炊き上がった飯をまた擂り粉木で潰す。
「ナナちゃん、ぼたもちの飯は半殺しっていってね、ちょっと粒が残った位にするんだよ。」
「はい、ネエサン!」
それを大きな皿に丸めてあんこを絡めたのと、砂糖たっぷりにちょこっと塩いれたきな粉をまぶしたのと半々に並べて、出来上がり。
ヨネのぼた餅はとても大きい、大人の拳固くらいもある。
食いしん坊のヨネである、握り飯もいなり寿司もぼた餅も何でも大きくなってしまうのだ。
仏壇と神棚に小皿に一つずつ大きなぼた餅を上げて、手を合わせる。
「ネエサン、すごい美味しい」
「ヨネ、上手いよ!」
濃いめのお茶を入れて、座敷のちゃぶ台に皿を並べて三人で食べた。
「ふふ、ぼた餅はね、うちのお母ちゃんが得意でね、毎年彼岸には必ず作るものだから、私も子供の時から手伝っててね。でも戦争が激しくなって、小豆も砂糖も手に入らなくて、ここ数年は作れなかったから、久しぶりに作れて本当に嬉しいよ。」
ヨネが大きな口にぼた餅を頬張りながらそう言った。
「そういえば、お袋が亡くなってから俺も食べて無かったなぁ。」
トラもしんみりしたと思ったら、大口開けてぼた餅を口に入れた。
「一杯あるから!たくさん食べよう。ナナちゃん口の回りあんこついてるよ、へへへ。」
ヨネが明るい口調でそう言った。
「ヨネもついてるよ、口の端に、ほら。」
トラがヨネの口を首に巻いていた手拭いで拭ってやる。
「あ、トラちゃんはあんこときな粉でお化粧みたいになってるよ!」
今度はヨネが自分の手拭いを手に持って、トラの顔を拭う。
あははと笑いながらみんなで、顔を拭きあった。
「また秋も作るよ。」
ヨネが胸を叩いてそう言った。
「ああ、頼むよ。俺は、これから毎年、小豆も餅米もたっぷり作るから、毎回彼岸にぼた餅作ってな。」
トラがヨネを優しい眼差しで見つめながらそう言った。
「もちろん!これから何回でも何十回でも作るから、だから長生きしてねトラちゃん!」
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