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メイミーの取り扱い

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「私の気になった主たるポイントは3点。

まずマーガレット様の体内に魔王が封印されていること、次にそれを討伐するのがエドワード殿下とブリジット様であること、

そしてそのご両名ともに王家の秘術を用いて魔法を使えるように操作された存在であるということです。」

ヘンメルは紙から顔をあげてジェイムズにそう告げた。

「うむ、私も概ね同じだ。あと2点追加すれば、なぜ私がマーガレットを疎みルイーザが距離を取るのかということと、ウィリアム王子が亡くなるというのはなぜかということか。」

ジェイムズが自分のメモに丸をつけた点を指差し見ながら付け加えた。

「これは、私の根拠に乏しい推論ですが。」

ヘンメルがそう言うと、

「いや、問題ない。この話自体が根拠など無いものなのだから。」

ジェイムズがそう答えた。

「では。あの映像の中でタカータという者が説明するには、マーガレット様の父親は魔術師団長で王宮勤めなので、お嬢様は8つの時から領地経営の仕事をされていた、と言っておりました。」

ジェイムズがえ?っという顔をしてヘンメルを見る。

「ですから、の中のマーガレット様とブリジット様のお父上はアーサー様ではないか、と。」

ヘンメルが一区切りつけた途端にジェイムズは言葉を被せた。

「では、距離を取った母はサラ王女か!」

「いいえ、残念ながらサラ王女ではなくルイーザ様だと思われます。
旦那様はどこまで見られたか解りかねますが、私が見た映像でブリジット様が光の乙女になるのは、ルイーザ様の血筋からとありました。

ルイーザ様の家系は一番最後に王家以外から魔力を発現した者が魔法師団へと入団し、その後代々魔法使いとして爵位を継ぐ家系。
元々の血筋が400年前、人里に隠れ住んでいたエルフと人とが為した子が起源だそうなのです。
その先祖帰りでブリジット様は光の乙女になるのだ、と。」

ジェイムズが知らない情報がヘンメルからもたらされた。
あの映像には続きがあったようだ。

「エドワード殿下とブリジット様の婚姻式の映像ではアーサー様とルイーザ様の姿がありました。逆に、王家の側の出席者の映像はパーティメンバーのユーゴーとセベス、そしてその婚約者たち。

偶々かもしれませんが、エドワード殿下をワザワザ後継に担ぎ出すほど人材不足だったとしたら、どうでしょうか。」

ヘンメルが言葉を選びながらそう言った。

「どういう意味だ。」
ジェイムズが固い声をあげた。

「エドワード殿下に王家の禁術で魔力を捧げた王妃殿下のように、ブリジット様もどなたからか魔力を捧げられたはずです。

サラ王女の配偶者であったアーサー様がルイーザ様と再婚されているならば、サラ王女は、どうなったのでしょう。

少なくとも、国王陛下崩御という映像はなかったので、居られるのでしょうが、王太子の婚姻に国王が立ち会わないなど聞いたことがありません。

同じように叔母であるサラ王女もアダム王子も、先王弟ダニエル王子も見られなかった。王位継承権を放棄するギリギリでエドワード王子は魔力を得る。そこに、他の王族の反対は無かったのでしょうか?」

「つまり、何が言いたい。」

ジェイムズが厳しい顔でヘンメルに尋ねた。

「例え、国王陛下であれ、他の王族であれ、反対できないほどアーサー様の権力がお強いのではないか、と愚慮致します。」

ヘンメルは言葉とは裏腹に力強く言い切った。

「なるほど。その点、私も思うところがあったのだ。今後内偵を進めよう。さて、で、メイミーの様子はどうだ、まだ映像は流れてくるのか?」

ヘンメルの進言を重く受け止めると共に、どうしてもメイミーにことの次第を確かめなければならない。傷ついた幼子とはいえ、あの極限状態で必要な情報を告げる胆力、とても3才児とは思えなかった。

「いえ、意識がハッキリするようになると一切の映像が流れなくなりました。そして、それからの受け答えはとても幼児とは思えません。メイミーに問いかけをするのであれば、ジェイムズ様がなされる方がよろしい、かと。

そして、あの力はハミルトン家にとって決して無用な物にはなりますまい。他家に知られぬよう注意深く隠匿し、当家として保護することを進言します。出来ましたら、その役目、このヘンメルへとお言い付け頂ければ幸いです。」

「そうだな、では、今晩。メイミーと面談しよう。怪我人の上、幼子だ。昼間たっぷりと寝かしておいてくれよ。」

ジェイムズはそう言い付けると、職務へと戻るのだった。



一方その頃、ベッドの上でメイミーはじっとしていた。

おそらくあの誘拐犯に蹴り上げられ瀕死の重症をおった時に、前世の力が甦ったのだろう、そう思った。

骨折による熱にうなされながら、メイミーは過去の自分を思い出していた。
自分の最期となるミッション、ゲーム会社でのこと。
開発していた、ゲームの内容。

その制作過程で、チームと話し合ったゲームの設定について。

熱が下がり、目を開けると、見知らぬ部屋に寝ていた。
広く、重厚な家具が設えてある、窓の無い部屋。

揺れるほの暗い、ランプの灯り。

メイミーのベッドの横で、姿勢正しくメモを取る男性・・・ああ喉が乾いた・・・

「あ、気がつきましたか。どうですか苦しいとこはありますか?少し水を飲みましょうね。」

その男性は懐にメモをしまうと、サイドテーブルにある吸い飲みをメイミーの口に寄せてくれた。

「あ、あの・・・」

戸惑い勝ちに男性の顔を覗き込むと、いつも公爵の後ろに控えている家令だと気がついた。

「そうです、ハミルトン公爵の家令、ヘンメルと言います。あなたのお世話をするようにと、ジェイムズ様から申し付けられておりますので、なんでも言って下さい。」

その瞬間、メイミーはバッと赤面したのだった。

(あ、自分の意識が漏れだしている!)

「大丈夫です、この付近には私しかおりません。あなたの心を覗いてしまったのは私とご主人様だけです。」
そう言うと、もう一度水を口に含ませて、退室していったのだった。

きっと、公爵に俺が気がついたと知らせに行ったに違いない。

あの様子だと俺が夢でみていた前世の記憶も見たのだろう。

思い起こせば、ここはルミナール王国。

そして、俺の母が乳母をしているのがマーガレット・ハミルトン公爵令嬢。
その妹がブリジット・ハミルトン公爵令嬢。

どうやら、あの潜入捜査で入国した日本で流行っていた異世界転生を俺自身がしてしまったらしい・・・
落ち着け、落ち着け俺。

もう一度、順を追って考えよう。


俺は潜入捜査の詰めでしくじり、黒幕が自然発火バイロキネシスの超能力を使うと知らずに爆発の道連れにされて死んだ。

そうして、自分のチームが作ったゲームの世界に転生を果たし生まれ変わった。

俺は、主人公の元婚約者でラスボス魔王を体内に封印している公爵令嬢 マーガレットハミルトンの乳母の息子、メイミー。グレイ男爵家の嫡男、齢3才。

テレパシー制限が上手く出来ずに自分の考えが盛れ出してしまう。
つまり、逆説的にいうと、超能力を持っている。

あれ?そんな設定のキャラクターで居たかな?乳母の息子、乳兄弟か。

・・・

マーガレットが魔王になるきっかけの首を切られる下男の方か!!!
確かマーガレットに関係した事件に巻き込まれて乳母の母親が死んでしまうんだよね、(驚愕)ここで父親の男爵と田舎に帰って、次はマーガレットが幽閉されてから出てくる、モブ!それが、俺!

転生って、不自由

どうすべきか、(今世の)母さん助けられなくてゴメン。
もう少し前に、記憶が戻っていたら助けられたのに。

ああ、記憶は戻ったけど、以前の超能力捜査官として俺じゃないから、悲しくて涙が出てしまうのか。

おかあさん、おかあさーん、ごめんよ、かあさん・・・グスングスン。



「大丈夫ですよ、男爵夫人は軽い脳震盪を起こしましたが命に別状はなく、もう乳母の仕事に戻っておりますよ。」

気づけば、音もなくベッドの横に立って顔を見つめている家令がそう声をかけたのだった。




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