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マーガレット誘拐事件
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相変わらずアーサーとサラがブリジットを乳母と共に王宮の別邸へと魔力強化の為などと言って連れていき、ジェイムズが連れ戻すを繰り返して一年、もうすぐ誕生の祝いをするのだからと乳母と共にやっと公爵邸へと戻って来たところである。
両親、とくに母のルイーザはやっと体調も戻り、これからはブリジットを母としてしっかりと公爵邸で育てなければと気合いを入れていた。
王女であるルイーザであるが、自分自身が魔力量の多い魔法師団員であり、稀なことと言われている魔法師団員同士の婚姻で魔力の多い嫡男を産んでいたブリジットの乳母は、ルイーザのことを当然のことのように侮っていた。
だからルイーザは自分の娘のはずなのに、抱くこともままならない。
今日も今日とて、目の前にいる娘を触らせてもらえないでいた。
そんなブリジット、というか、ルイーザと乳母のやりとりに、珍しく公爵邸内はどこか浮わついたような空気が漂っていた。
そんなことは露知らず、マーガレットの部屋ではマーガレットの乳母と乳兄弟がいつものように遊んでいた。
おやつも食べ、積木を積んだり本を読んだりと過ごす中、マーガレットはうつらうつらと船を漕ぎだした。
「あらあら、おねむですわね。あらあら、メイミーの服を掴んでしまって離さないわ、フフフ」
「そーっと、そーっと」
メイミーが一本一本マーガレットの指を丁寧に外していった、その時
ボン!という破裂音が窓辺から聞こえたか否か、次の瞬間数名の男が入って来ると乳母の手を捻り寝ていたマーガレットを取り上げドガッと壁へと投げ捨てた。
一番始めに横にいたメイミーは男に腹を蹴り上げられて、床に倒れていた。
意識が朦朧とする中、メイミーの中の力が身体中を素早く巡った。
メイミーは焦点の合わない目でマーガレットの位置を確認すると、音もなく飛び上がりマーガレットを掴んで、消えた。
そして、次の時公爵の執務室、ジェイムズの膝の上へと二人が突然現れたのだった。
「な、なんだ!」
驚きながらも落ちないように抱き止めた公爵に、息も絶え絶え
「マーガレット様の部屋に曲者3名、誘拐未遂、裏戸にいるメイドが手引き・・・」
そう告げると、メイミーは意識を手放したのだった。
「どういうことだ!ルイーザとブリジットの安全を最優先!とにかく、すぐに捕まえろ!あと、医師を呼べ!」
「ハッ」
「ハイ」
執務室にいた家令と護衛騎士が素早く動き出した。
公爵邸内に曲者あり、メイドが間者ということで、誰かに預けて自身が駆けつけることはできない。
「マーガレット、大丈夫かマーガレット」
声をかけるが返事が無い、どこか打ったか!大丈夫かと焦るが、顔は穏やかでどう見ても寝ているようにしか見えない。
いや、拐われるところだったのだぞ、メイミーの痛々しい姿から騒がしかったはずだ!
それなのに、穏やかな寝顔を見せる娘をジェイムズは見つめることしか出来なかった。
程無くして、公爵家の騎士によって裏口にいたメイドも、マーガレットの部屋で突然子供が目の前から消えて驚いて騒いでいた3人の曲者も捕縛され、壁に投げ捨てられ頭を強く打って気を失った乳母も救出されたのだった。
同じ2階にある公爵夫人の部屋で過ごしていたルイーザたちは、子供部屋でそんな騒ぎがあったことを全く知らないと言ったが、無事であった。
公爵邸内中の捜査をする間、マーガレットとメイミーは公爵の執務室の奥、公爵の秘密の部屋で治療をされることとなった。
「マーガレット様は寝ております。なにも問題が無い。怪我もありません。」
医師が脈をとり、呼吸を確認した結果、そう告げた。
「この少年は肋骨が3本折れており、肩の骨が外れておりました。たぶん激痛であったでしょう。今は鎮痛剤を投与して寝かせてあります。」
「そうか。して、乳母はどうだ。」
公爵が尋ねる。
乳母は騎士に救出されてすぐに、家令に連れられたこの医師によって診察がなされていた。
「はい、脳震盪でございます。ただし、今晩は様子をみて急変がなければ問題ないかと。」
「夫人は現在、騎士による捜査の終わった奥の客間で寝ております。グレイ男爵にも知らせを出したので、すぐ来られると思います。」
家令がそう答えると、ジェイムズは苦い顔をうかべ、
「そうか、乳母には申し訳ないことをした。公爵の屋敷に昼間襲撃があるなど、前代未聞だ!しっかり改めるように。敷地内隅々まで調べろ。いいな!」
そう号令をだしたのだった。
公爵家の騎士団は面目丸潰れである。
蟻一匹も見逃すな!と厳戒体制で捜査にあたった。
その結果、広い公爵邸とは言え、同じ階にあり比較的近くにあるマーガレットの部屋の騒動が公爵夫人の部屋まで聞こえないというおかしな現象が見つかった。
「幼児とは言え、あれほどひどい怪我をするほど蹴りつけられたのです。乳母も壁に投げ捨てられ、普通はドンドンと、二度か三度、大きな衝撃音が聞こえるはずです。それなのに、公爵夫人は全く音など聞こえなかった、と。まるで消音魔法でもかけていたようなできごとですな。」
公爵家騎士団長のヒューイがそう報告した。
公爵邸内の不穏分子の洗いだしが早急に行われることとなった。
両親、とくに母のルイーザはやっと体調も戻り、これからはブリジットを母としてしっかりと公爵邸で育てなければと気合いを入れていた。
王女であるルイーザであるが、自分自身が魔力量の多い魔法師団員であり、稀なことと言われている魔法師団員同士の婚姻で魔力の多い嫡男を産んでいたブリジットの乳母は、ルイーザのことを当然のことのように侮っていた。
だからルイーザは自分の娘のはずなのに、抱くこともままならない。
今日も今日とて、目の前にいる娘を触らせてもらえないでいた。
そんなブリジット、というか、ルイーザと乳母のやりとりに、珍しく公爵邸内はどこか浮わついたような空気が漂っていた。
そんなことは露知らず、マーガレットの部屋ではマーガレットの乳母と乳兄弟がいつものように遊んでいた。
おやつも食べ、積木を積んだり本を読んだりと過ごす中、マーガレットはうつらうつらと船を漕ぎだした。
「あらあら、おねむですわね。あらあら、メイミーの服を掴んでしまって離さないわ、フフフ」
「そーっと、そーっと」
メイミーが一本一本マーガレットの指を丁寧に外していった、その時
ボン!という破裂音が窓辺から聞こえたか否か、次の瞬間数名の男が入って来ると乳母の手を捻り寝ていたマーガレットを取り上げドガッと壁へと投げ捨てた。
一番始めに横にいたメイミーは男に腹を蹴り上げられて、床に倒れていた。
意識が朦朧とする中、メイミーの中の力が身体中を素早く巡った。
メイミーは焦点の合わない目でマーガレットの位置を確認すると、音もなく飛び上がりマーガレットを掴んで、消えた。
そして、次の時公爵の執務室、ジェイムズの膝の上へと二人が突然現れたのだった。
「な、なんだ!」
驚きながらも落ちないように抱き止めた公爵に、息も絶え絶え
「マーガレット様の部屋に曲者3名、誘拐未遂、裏戸にいるメイドが手引き・・・」
そう告げると、メイミーは意識を手放したのだった。
「どういうことだ!ルイーザとブリジットの安全を最優先!とにかく、すぐに捕まえろ!あと、医師を呼べ!」
「ハッ」
「ハイ」
執務室にいた家令と護衛騎士が素早く動き出した。
公爵邸内に曲者あり、メイドが間者ということで、誰かに預けて自身が駆けつけることはできない。
「マーガレット、大丈夫かマーガレット」
声をかけるが返事が無い、どこか打ったか!大丈夫かと焦るが、顔は穏やかでどう見ても寝ているようにしか見えない。
いや、拐われるところだったのだぞ、メイミーの痛々しい姿から騒がしかったはずだ!
それなのに、穏やかな寝顔を見せる娘をジェイムズは見つめることしか出来なかった。
程無くして、公爵家の騎士によって裏口にいたメイドも、マーガレットの部屋で突然子供が目の前から消えて驚いて騒いでいた3人の曲者も捕縛され、壁に投げ捨てられ頭を強く打って気を失った乳母も救出されたのだった。
同じ2階にある公爵夫人の部屋で過ごしていたルイーザたちは、子供部屋でそんな騒ぎがあったことを全く知らないと言ったが、無事であった。
公爵邸内中の捜査をする間、マーガレットとメイミーは公爵の執務室の奥、公爵の秘密の部屋で治療をされることとなった。
「マーガレット様は寝ております。なにも問題が無い。怪我もありません。」
医師が脈をとり、呼吸を確認した結果、そう告げた。
「この少年は肋骨が3本折れており、肩の骨が外れておりました。たぶん激痛であったでしょう。今は鎮痛剤を投与して寝かせてあります。」
「そうか。して、乳母はどうだ。」
公爵が尋ねる。
乳母は騎士に救出されてすぐに、家令に連れられたこの医師によって診察がなされていた。
「はい、脳震盪でございます。ただし、今晩は様子をみて急変がなければ問題ないかと。」
「夫人は現在、騎士による捜査の終わった奥の客間で寝ております。グレイ男爵にも知らせを出したので、すぐ来られると思います。」
家令がそう答えると、ジェイムズは苦い顔をうかべ、
「そうか、乳母には申し訳ないことをした。公爵の屋敷に昼間襲撃があるなど、前代未聞だ!しっかり改めるように。敷地内隅々まで調べろ。いいな!」
そう号令をだしたのだった。
公爵家の騎士団は面目丸潰れである。
蟻一匹も見逃すな!と厳戒体制で捜査にあたった。
その結果、広い公爵邸とは言え、同じ階にあり比較的近くにあるマーガレットの部屋の騒動が公爵夫人の部屋まで聞こえないというおかしな現象が見つかった。
「幼児とは言え、あれほどひどい怪我をするほど蹴りつけられたのです。乳母も壁に投げ捨てられ、普通はドンドンと、二度か三度、大きな衝撃音が聞こえるはずです。それなのに、公爵夫人は全く音など聞こえなかった、と。まるで消音魔法でもかけていたようなできごとですな。」
公爵家騎士団長のヒューイがそう報告した。
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