22 / 29
家族って何?
21
しおりを挟む犬宮から逃げた俺は急いで階段を駆け下り、誰も来ない階段裏で膝を抱えながら早まる鼓動を落ち着かせていた。
な、何だよあいつ…
勝負に負けたってことはあいつはまた俺に近づいてくるのだろう
一体何がしたいんだ?
本当に俺なんかと仲良くしたい…のか?
いや、そんな訳ない
だってアイツと俺はついこの間初めて話したばっかりだぞ?
そんなやつといきなり仲良くなりたいなんて思うか?
あり得ないだろう
ましてや、愛想がいいわけでも何かに利用できるわけでもない
金持ちとか、人気者とかじゃなくただの不良だ
仲良くしても何もないしむしろ白い目で見られて後ろ指を刺されるのだろう。
これまで生きてきた中で俺を必要とする人に会ったことがないし、俺と仲良くしようと思う奴なんていなかったのだ
そんな中でいきなり俺に近づいてきたイレギュラーな存在の犬宮に動揺が止まらない。
しかも、アイツは生徒会長様だぞ?
何で学校の人気者が俺に構うんだよ
珍しいもの見たさか?それとも何かのゲーム?
罰ゲームでもしているのだろうか
考えれば考えるほど意味がわからず一人で悶々と悩ませる
俺は忙しなく動く鼓動を階段を駆け下りたからだと言い聞かせて目を背けた
変な期待をするな
毎回傷つくのが目にみえてるでしょ?
そんな声が俺の心の奥底から聞こえてくる
分かってる
俺は考えるのをやめて校舎から出る
だってこのまま校舎に残っていたらまた犬宮に会うかもしれない
もう一度あったらどんな反応をすればいいのかわからない
俺は特に行きたいところもないからと家に帰ることにした
____________________________________________________
俺の嫌いな家についた
家に帰らない方が気持ち的にはいいのだが、この何かわからない感情を今すぐ消したくて家に帰ることにしたのだ
そうすればいつもの俺に戻れるから
さっきまで熱かった頬も家を見れば熱が冷めていくのが分かる
あぁ…何でこの家はこんなにも冷え切っているように見えるのだろう
きっと側から見れば家族仲が良い温かい家庭に見えるのだろう
そこに俺はいないが
ガチャ
「…」
最後にただいまという声をかけたのは何年前だったか
家に入って声掛けても返事が来ないのがわかってるし、今更仲良しごっこがしたいわけじゃないからわざわざもう言わないことにしている
意味がないから
家に帰ればやはり気分が落ちる…
俺は靴をすぐに脱ぎ自分の部屋へと向かった
自分の部屋といっても部屋と呼べるかも微妙なところだ
ベットと小さな箱、洋服の入っている箱と小さな折りたたみ式の机があるだけの4畳ほどの屋根裏部屋だ
元は荷物置きとなっていた埃っぽい部屋
部屋に灯りがないため間接照明で夜は過ごしている
唯一いい点と言えば窓があるいう点ぐらいだ
まぁ寝床と自分の部屋と言えるスペースがあるだけいいほうだ
俺はご飯がないので家族が俺を呼びに来ることもないためとても静かだ
まるでここだけどこかに忘れ去られたようなそんな感じだ
犬宮という男はさぞ家族から愛されて幸せに過ごしているのだろう
そんなふうに他人の幸せを羨む自分が浅ましく感じてしまう…
やだなぁ
こんな気持ちが下がるくらいなら犬宮にあっていた方が気が紛れて楽だったかも…
犬宮に会いたいかも…
冷え切った部屋に一人
布団をかぶって眠りにつく
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る
黒木 鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。
王太子殿下は悪役令息のいいなり
白兪
BL
「王太子殿下は公爵令息に誑かされている」
そんな噂が立ち出したのはいつからだろう。
しかし、当の王太子は噂など気にせず公爵令息を溺愛していて…!?
スパダリ王太子とまったり令息が周囲の勘違いを自然と解いていきながら、甘々な日々を送る話です。
ハッピーエンドが大好きな私が気ままに書きます。最後まで応援していただけると嬉しいです。
書き終わっているので完結保証です。
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。
薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。
アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。
そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!!
え?
僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!?
※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。
色んな国の言葉をMIXさせています。
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。
竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。
自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。
番外編はおまけです。
特に番外編2はある意味蛇足です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる