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出会い
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しおりを挟む「ねぇ、貴方!今度、家族で遊園地にいかない?」
「おぉ!いいな!家族で行くのは久しぶりだな」
「わーい!やったー!楽しみ!まさかとは思うけどあいつも連れて行くの?」
「あいつ?何を言っているの叶多…家族はお母さんとお父さんと叶多の3人だけでしょ?」
「そっか!あんなやつ家族でもなんでもないもんね!」
「あんな子が私たちの家族なわけないじゃない」
「叶多ったら本当に変なこと言うんだから」
『あんな子』
「そうだぞ叶多」
「そうだったわ、ごめんごめん」
あはは
聞こえてるし…
俺はリビングから聞こえる楽しげな会話や笑い声を聞きながら先ほどの会話を思い出した。
『あんな子』…ね
どうやら俺は元から家族ですらないらしい
笑える
お前の子どもだし、だいたいそんなに嫌ならなんで産んだんだよって聞いてみたいけど聞いたところでなんの解決にもならないし、むしろ自分が傷つくだけだと思うから気にしないようにしいている。
愛されていないのは分かってた
小学校の頃から両親も弟も俺をよく除け者にしてた
旅行だって3人で行って
俺は1人で留守番とかね…
褒めて欲しくて満点のテストも取ったし、授業も頑張って受けて高成績でも褒めてくれなかったし、見てもくれなくて…あの時は部屋でずっと泣いていた
叶多(カナタ)というのは俺より3歳年下の弟だ
名前は願いを多く叶えられるような、そんな可能性に満ち溢れた意味だ
そんな叶多は俺と違い名前の通りなんでもできてしまう天才肌で、弟のはずなのに俺をあっという間に追い越してしまった
そうすると周りは俺と叶多を比べ始め、俺がいくら頑張っても「出来て当たり前」と言う目で見られるようになり、次第に「何もできない落ちこぼれ」と言う烙印を押されるようになった。
叶多のことを恨んだり妬んだりしたことも勿論あったが、そんな事をしたって両親が俺に関心を向けてくれる訳でも好きになってくれる訳でもなく落ち込むだけなので早々に辞めて受け入れるようにした。
いや、そんなのはいい訳で現実を受け止める事が怖くてそう思い込むようにしたのだ
「ははっ…」
1人の部屋は虚しい
寂しいよ、愛してほしい、どうして?なんて愚問だ…
必死にしがみついていたって意味が無い
諦めるしかない
俺は期待してはいけないということを幼い時からこの家で学んだ
それほどまでに俺の存在価値はこの家にはないらしい
そんな俺が生きている意味はあるのだろうか
こんな俺のこと必要としてくれる人
こんな出来損ないの俺を愛してくれる人
こんな俺を【生まれて来て良かった】と思ってくれる人
こんな俺が死んだら悲しんでくれる人
なんているのだろうか…
いつの日か来るかもわからない捨てきれない希望を心の奥底に隠しながら今日も俺は
息をする
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