ハリネズミ君の不器用な恋

紫苑

文字の大きさ
上 下
2 / 29
出会い

1

しおりを挟む

「ねぇ、貴方!今度、家族で遊園地にいかない?」

「おぉ!いいな!家族で行くのは久しぶりだな」

「わーい!やったー!楽しみ!まさかとは思うけどあいつも連れて行くの?」

「あいつ?何を言っているの叶多…家族はお母さんとお父さんと叶多の3人だけでしょ?」

「そっか!あんなやつ家族でもなんでもないもんね!」

「あんな子が私たちの家族なわけないじゃない」
「叶多ったら本当に変なこと言うんだから」

『あんな子』

「そうだぞ叶多」

「そうだったわ、ごめんごめん」

あはは




聞こえてるし…
俺はリビングから聞こえる楽しげな会話や笑い声を聞きながら先ほどの会話を思い出した。



『あんな子』…ね



どうやら俺は元から家族ですらないらしい
笑える


お前の子どもだし、だいたいそんなに嫌ならなんで産んだんだよって聞いてみたいけど聞いたところでなんの解決にもならないし、むしろ自分が傷つくだけだと思うから気にしないようにしいている。



愛されていないのは分かってた



小学校の頃から両親も弟も俺をよく除け者にしてた

旅行だって3人で行って
俺は1人で留守番とかね…



褒めて欲しくて満点のテストも取ったし、授業も頑張って受けて高成績でも褒めてくれなかったし、見てもくれなくて…あの時は部屋でずっと泣いていた





叶多(カナタ)というのは俺より3歳年下の弟だ
名前は願いを多く叶えられるような、そんな可能性に満ち溢れた意味だ
そんな叶多は俺と違い名前の通りなんでもできてしまう天才肌で、弟のはずなのに俺をあっという間に追い越してしまった
そうすると周りは俺と叶多を比べ始め、俺がいくら頑張っても「出来て当たり前」と言う目で見られるようになり、次第に「何もできない落ちこぼれ」と言う烙印を押されるようになった。
叶多のことを恨んだり妬んだりしたことも勿論あったが、そんな事をしたって両親が俺に関心を向けてくれる訳でも好きになってくれる訳でもなく落ち込むだけなので早々に辞めて受け入れるようにした。
いや、そんなのはいい訳で現実を受け止める事が怖くてそう思い込むようにしたのだ






「ははっ…」





1人の部屋は虚しい



寂しいよ、愛してほしい、どうして?なんて愚問だ…



必死にしがみついていたって意味が無い


諦めるしかない



俺は期待してはいけないということを幼い時からこの家で学んだ
それほどまでに俺の存在価値はこの家にはないらしい










そんな俺が生きている意味はあるのだろうか











こんな俺のこと必要としてくれる人
こんな出来損ないの俺を愛してくれる人
こんな俺を【生まれて来て良かった】と思ってくれる人
こんな俺が死んだら悲しんでくれる人

なんているのだろうか…



いつの日か来るかもわからない捨てきれない希望を心の奥底に隠しながら今日も俺は











息をする



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

愉快な生活

白鳩 唯斗
BL
王道学園で風紀副委員長を務める主人公のお話。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

処理中です...