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第3章・炎帝龍の山

三十三話・二体一神の主審像「後」

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みんなが話し合っているのを横目に、オレは神界へ向かった。
みんなには見えないように隠れ蓑で覆い隠された転移の門を通り抜けて
いつもの様に祠の前で祈りを捧げ、祠の発した光に包まれて目が眩み…
そして再び目を開けると…真っ白な世界
もう、すっかり見慣れた光景だ。

「アイさん、今朝来たばかりですよ?どうかしました?」

声がした方を見ると、いつもと変わらない姿が見えた。
目的の人物、イレさんがそこにいた。
しかし、今のオレには、この人が本当にイレさんか


「こんにちは、イレさん…それとも貴女には、別のお名前があるんですか?」
「な⁉︎何を言っているんですか?」

取り繕っているんだろうが、ダメだ。
オレの目は、もう誤魔化されない…イレさんが明らかに動揺しているのが分かる。

「隠しても無駄ですよ?」
「隠す?何をです?さっきからちょっと、アイさん変ですよ?お疲れなんですか?」

イレさんは、必死に誤魔化そうとしているようだった。
これでは埒があかないだから、オレは核心を突く事にした。

「イレさんには、オレの心を読む事や下界の様子を見る事なんて造作もないんでしょ?」

彼女は、神様しかも…この世界イレベリアの最高位である主神だ。
その力は、オレ…いや、人間の想像力で考えられるモノをはるかに凌ぐんだろう…

「え?確かに私には、出来ます…けど…」
「なら、オレが今言いたい事も勿論、分かりますよね?」

さぁ、どう出ますか?
主神様?貴女が嘘をつき続けるんならいいですけど?
オレ心を見透かされて、コケにされるのは嫌ですからね?

「あの…その…」

あ~しどろもどろしている。
う~ん。確かに、この人美人なんだけどね~

「イレ姉、流石に無理でしょ?」

オレの後ろから声がした。
その声は、目の前に居るイレさんと全く同じだった。

「オレの目の前に居るのがイレさんなら…」

オレはそう言いながら、後ろに振り返る。

「貴女は…貴女の名前は、何て言うんです?」

振り返ったオレの目には、イレさんと瓜二つの女性が立っていた。

「私?私は、イレ姉の妹よ?」

いたずらをしたいって顔に書いてあるような表情で
彼女は、そう答えた。

「リア!!貴女居たの⁉︎」

オレの後ろで、イレさんの驚く声が響いていた。
そう…この人…いや、この人達神様2

オレがそれに気が付いたのは、コーネリアスさんとイライザさんが祈っていたあの像だ。
一つの台座の上に、オレの知ってるイレさんとよく似た女性が2人並んで立っていた。
その2人が微笑み、それぞれ右の像が右手を左の像が左手をそっと差し伸べていた。

もっと早く、気付く事だって出来たはずだ。
オレが居た世界では、太陽を主神とする宗教が数多くある。
世界に恩恵を与えてくれる存在だからだ。
それが太陽だ。
その太陽がこの世界イレベリアには、あるんだ。
だから、主神が2人居ても不思議じゃないんだ。

はぁ~
オレの目の前では、瓜二つの女性が口論している。

「だから、最初に言ったでしょ?無理があるって!!」
「でも~」
「でも、じゃないわよ!!姉さんは、いつもそれよ⁉︎可愛い子ぶっちゃって!!」
「な、何よ!!貴女だってね~!!」
「ハァ⁉︎何よ!!何か言いたいことある訳⁉︎なら、今ここでハッキリ言ってみなさいよ⁉︎」

さっきからこの調子でずっと口論中だ。
オレは、どうやらとんでもない地雷を踏んだらしい。
彼女達の止まらない口論に、オレが口を挟む余地が全くない。
いつ終わるんだろう?…いや、コレって終わるのか?
そうな事を考えていると…

「あの~、人聞きの悪い事を考えるのやめて下さい。」

一方の女神が申し訳なさそうにそう言ってきた。
もう片方は、腕を組んでこちらを見ている。
しかし、この2人の区別はオレには全く出来ない。
この2人の外見は、全く一緒なんだ。
それは、彼女達の顔が瓜二つだからだけじゃない。
身に纏っている服に、髪型とかその全てが全く一緒なのだから

「まぁ、そうでしょうね。私達の区別なんて、他の神ですら出来ないんだからね~」

腕を組んでいる女神がそう言った。
他の神ですら…って、それって人間のオレには、まず無理って事でしょ⁉︎

「まぁ、そうですね~、アイさんには、全く分からないでしょうね~」

腕を組んでいない方…
2人揃ってからだけど
所々だが、若干だけど語尾が伸びている気がする。
でも、それだけじゃ区別はまず無理だ。

「無理よ?私達本当に双子なんだもの」
「そうよね~双子の太陽が私達なんだものね~」

へ?双子⁉︎
恒星の2連星って事⁉︎
二つ同時にできるって言うアレか?

「そうよ?だから外見だけで、私達を見分けるなんて無理なの」
「無理なんです~」

はぁ~確かに無理そうだ。
もう仕方ない。
この際は、それはひとまず置いておいて、本題に入るしない。

「なら、どうして最初からそう言ってくれなかったんですか?」

その問いに、彼女達は、互いの顔を見つめあった。
見つめ合うとニッコリと笑ってこちらを向いた。

「それはね。」
「それは、ですね~」

2人同時に同じような言葉を発した。

の担当が姉さんだからよ?」

は⁉︎こちら側の担当?
この2人は一体、何を言っているんだろう?

「この世界イレベリアには、があるのよ。」
「そうです~があるんです~」

は⁉︎
人間の世界と魔人の世界⁉︎
オレの頭の中は?で一杯だった。

そんな爆弾発言に等しい発言にオレの思考は、固まった。
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