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第3章・炎帝龍の山

二十九話・ウマ耳茸とシモタレ草

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稀代の魔術師と水龍帝の話をするのかと思っていたら…
イレさんが下の方を見て…

「あ、もう…そろそろ、逢さんがいないのに彼らが気づいてしまいそうです。」

どうやら、オレには見えないがイレさんには、足も下に広がる光景が見えるようだ。

え?今このタイミングで話を止めちゃうの?
イレさんが一方的に喋っていたから
まだ、神界ここに来て話したい事を言ってないんだけど?
彼らの事とか、彼らの仲間と合流しても良いのか?
他にも色々と話したい事あったんだけど?
そう思っていたら…

『アイ殿、聞こえてますか?アイ殿?』
「え?うん!聞いてるよ?」

考え事していて、全く聞こえてなかった。
神界から帰って来てからボルドーが1人で、リオさんの仲間の元へと向かった
だが、その間にただ待つのもは、勿体無い気がして
薬草や食べられそうな物を探していた。
しかし、その最中にオレは、また考え事をしてしまったのだ。
そして…今、話しかけていたのは、モッカイトだ。

『アイ殿、聞いてませんでした…よね?』
『無理よ、アイ様が考え事をしている時に話しかけてもダメよ』

う…
確かに考え事していると周りを聞いたり、見てない…

「ゴメン!聞いてなかった。それで、どうしたの?」
『今アイ殿が採っているそれも、中々無いものです。採取しましょう』

そう言われて、オレは手元を見た。

「な、何コレ⁇キノコ⁇」

地面の所々に馬の耳みたいなのが生えている。
その一つをオレは毟り取って握り締めていた。

『それは、確か…シモタレ草、じゃなかったかしら?』
『左様です。シモタレ草です。』

シモタレ草?
なんか、嫌なネーミングなんだけど?

「コレ全部?」
『違いますよ?アイ殿が手に持っているのだけが、シモタレ草です。』
『そうみたいね~』
「え??」

コレだけ?
え?見た目全く一緒だよ?どういう事⁉︎
交互に目を向けていたら…

「こっちがウマ耳茸で、アイが持ってるのだけが、シモタレ草らしいよ?」

声のした方を見ると…
右目が青、左目が緑のオッドアイがよく似合っている金髪の子
その子が本を開いて見せてくれている。
この子は…

「ヴァン君、調べてくれたの?ありがとう。」

この子は、ヴァン君
リオさんの息子さんだ。
リオさんの奥さんは、もうこの世にはいないんだそうだ。

「調べたって言っても、この本をただ開いただけ…だけどね。」

そう言って、ヴァン君は手に持っている本を指差して笑った。
この本は、ボルドーがアイテムボックスから取り出して渡してくれた本だ。

「でも、この本スゴイね。調べたい事を考えてこうやって」

そう言いながら本を…

「開くだけで調べたい事について書いてあるページが出てくる」

開いては、嬉しそうにそのページを眺めている。
その様子を見ていると…

「あ!ゴメン!シモタレ草とウマ耳茸だったよね?」

そう言って、慌てて本を開き直した。

「うん、ありがとう。」

オレは、再びヴァン君に礼を言って、本を覗き込んだ。

ウマ耳茸
ウマ耳茸は、馬の耳に似た形をしたキノコ。
煮ても焼いても非常に美味である。
その為このキノコを求めて、多くの人々が山や森に入っては、採取し食する。

「へ~このキノコ、美味しいんだ。うん?」
「どうした?」
「まだ続きがある…えっと」


うん?

ウマ耳茸は、非常に美味では

アレなんか、嫌な予感…

このキノコは、有であり、多量に摂取すると中毒症状が現れる

は?有毒⁉︎このキノコって、人気あるんだよね⁇

その量は
成人で、1日に20本
子供の場合は、その半分以下
極めて危険…

「え~!!なんだよ!!このキノコ!!」
「え⁉︎どうかした?」
『アイ殿どうしました?』
『そんなに大声出して、どうしたの?』

みんながオレの側に近寄って来た。

「ここ、読んで!!このキノコ、毒キノコだって!!」

オレは、みんなに本を見せる。

「そ、そんな、バカな!!みんな好きで、このキノコを食べるんだけど⁉︎」

ヴァン君が目を丸くして、本を見ている。
空いている方の手で、しきりに頭を掻いている。
しかし、オレはある事に気がついた。
そんなに風に食べている割には、毒キノコだという事を知らない様だ。
なぜだろう?
すると、カーディナルが

『アイ様、シモタレ草のページ見てみてくれないかしら?』
「え?シモタレ草?何で?」

オレは、疑問を感じながら
シモタレ草のページを見た。

シモタレ草
このキノコを口にした者には皆、強烈な腹痛が襲う
そして、すぐに猛烈な便意(下痢)を催す。

やっぱり、このキノコは、下痢を誘発するのか?
恐ろしいキノコだ。

シモタレ草は、ありとあらゆるキノコに擬態している
その擬態を容易には、判別する事は出来ない。

擬態するキノコ⁇
まだ続きがあるな
何々えっと~

ただし…
それは、のみである。

うん?毒キノコにだけ擬態するのか?

有毒なキノコに擬態する理由は、である。

え?解毒⁉︎

シモタレ草が擬態する有毒なキノコは、極めて毒性が高い品種で、食べると高確率で死に至る。
しかし、人々の間にはその知識はない。
食べてしまった者は死ぬ為に認知されにくい。
多くの犠牲者を出さないための救済処置である。
強い解毒の作用により、体内に蓄積されている毒素を分解排出するが…

何だ。このキノコスゴイな
うん?まだ続きがあるな
えーと…

しかし、例え一口でも摂取するとその副作用の腹痛下痢の症状が強烈に出るので、シモタレ草と呼ばれる。
シモタレ草の解毒の作用は、全く認知されていない。
しかし、シモタレ草の解毒の効果は絶大。
優秀な解毒薬の材料になります。
ただし、その解毒薬は極めて強力な為
使用の際には、十分に注意が必要です。
大人に使用する際にも、千倍以上に希釈する事
子供の場合には、さらに希釈して使用する事
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