上 下
13 / 88
第1章・始まりの森

十一話・セーフスペースの祠

しおりを挟む
セーフスペースの中に入るのが怖い…
がどんな事になってるのか?
想像力を働かせるのが怖い…
何故って?
あの木の成長速度をこの目にしたから
オレとボルドーは、二人で頭を抱えながら外に出て
入り口と一緒にあの木への思考を閉ざしたからだ。
しかし、いずれは…
いや、早急にだった
夜には、セーフスペースに入らないといけない理由がある。
入り口を開け中を確認せねばならない。
先延ばしは止めよう。
オレは、ボルドーに告げる決意をした。

「ボルドー、覚悟を決めて中に入ろう」

ボルドーがオレの方に勢いよく、こっちに振り向いた。

『アイ様⁉︎正気ですか?』

明らかに動揺している。

「オレは、セーフスペースに夜には、なんだよ?」

夜にはっという言葉に
ボルドーも、大事な事を思い出したようだ。

『そうでした。イレ様に言われましたね…。』

そう…
オレは、この世界イレベリアの主神のイレさんに、別れ際言われたのだ。
神界から去る少し前の事だ。

~~・~~・~~・~~・~~

「そろそろ、旅立たれるのですか?」
「そうですね。この世界イレベリアで生きるなら、旅をして、傷を治さないといけないですから」

そう、オレには、召喚の際に負った傷がある。
それを治さないなければ、ならないんだ。

「分かりました。ですが、この旅をする上で逢さんに、絶対に注意してもらいたい点が1つあります。」

オレが絶対に注意するべき点?
何だろう?
強盗とかの犯罪系かな?
けど、それって地球でも、普通な事じゃないか?
だったら何だろうか?
ダメだ、分からない。
そう思って、考えていると
イレさんに声をかられた。

「やはり、分かりませんか?」

オレが分からないのを見透かされたようだ。
やはり、神様には隠し事は出来ないな。

「そうですね。イレさん、オレが旅する上で注意するべき点とは、何でしょうか?」

そのオレの問いに対して、イレさんの顔が曇った。
とても言いにくそうに口を開く。

「逢さん」

オレ名を呼び、目を見つめて来た。

「それには、私が貴方に隠していた事を告げねばなりません。」
「隠していた事?」

言いにくそうだけど、一体何だろう?

「実は、私が貴方に掛けた術は、完全なものではありません。一日しか保ちません。」
「はい?」

その時のオレの顔は、さぞ間抜け顔だった事だろう。
神様の術が不完全⁉︎
イレさんが話の続きをしてくれた。

「貴方は、不完全な異世界召喚術のせいで、私達の加護と言った。ものがありません。」

そう、オレには、神様の加護やスキルとかの異世界召喚術をされた者が当然のように受ける物がない。
それは、前に聞いたけど?
それと関係あるのかな?
イレさんの話が続く

「私達の術は、この世界イレベリアにいる方を対象に発動します。ですが、貴方は、そうであって、そうではない。」

そうであって、そうではない。
そうだ。
この世界イレベリアに居るが、召喚が不完全で、完全には召喚されていない。
それが、オレが傷を負った原因だ。
神様の加護やスキルといった物を持っていない理由でもある。

「神である私達の力が届く場所の近くに貴方が居れば、術を継続し続ける事が出来ますが、その範囲から出でしまうと貴方を見つけられないんです。」

申し訳なさそうに、オレにそう告げた。

「見つけられない?」

オレには、疑問にしか思えなかった。
この世界イレベリアを管理している神様に、同じこの世界イレベリアに居るオレを見つけられない
なんて、事があるのだろうか?
イレさんが更に話を続けた。

「貴方の負った傷は、この世界イレベリアに歪みを与えています。極めて、局所的にですがその歪みの中心に居る貴方は、神界から全く、見えません。」

そう、いくら神様でも自分の目に見えない者に対して
その力を届かせるのは、至難の技だった。
神界や聖域といった、神様の領域ならばまだ見える。

「なら、オレに掛かってる術は、いずれ解ける?」
「そうです。そして、解けたらまた掛け直せる保証はありません。」

それって、もし一度でも解けたら
オレの命はないって事か…
ヤバい、現実味がないけどさ
そう思うと怖い…
視線が下がってしまう。
視線に自分の手が見えた
オレの手が震えていた。
その手にさっと、誰かの手が触れた。
イレさんの手だ…
オレの手を優しく、包み込んでくれている。

「大丈夫です。一度でも術が解けたらダメなら、この術が解けないようにすればいいんです。」
「でも、旅をしながら、ずっと神界や聖域に居る事なんて、できるんでしょうか?」

そうだ。
聖域に居たり、神界にいたら
世界を旅なんてとても、出来ない。

「大丈夫。定期的に聖域に居なきゃいけないならば、旅に持っていけばいいんですよ。」
「聖域を持って行く?」

オレの目を見つめて頷いて答えた。
旅に聖域を持って行く?
聖域っていうと神殿とか?
そもそも、神殿なんてないし
どうするんだ?

「厳密に言えば、聖域を聖域にしている物を持って行くんですよ。」
「聖域を聖域にしている物?それは、一体?」

聖域にする物って言ったら御神体かな?
神の奇跡とかの伝承とかが、あるいわれのある物とかかな?

「近くにあります。この神界に来るために使っている祠です。」
「あの祠?」

祠って、あの苔生しているあの祠?
けど、あの祠って太陽の光を浴びてないと
神界と行き来が出来ないからなぁ~
って、よく考えたら
あの祠、スゴイな!!
普通なら行けないハズの神界へ行けるんだから

「そうでしょう?あの祠の周りを聖域にして、貴方に私の力が届くようにしましょう?そうすれば、貴方の術は解けません。」
「イレさん、ありがとうございます。」

~~・~~・~~・~~・~~

そんなこんなで、セーフスペースに祠を入れたのだ。
そして、念のために、一日一回は必ず
祠の前で、神様であるイレさんに祈りを捧げなきゃいけないんだ。
だからこそ、何があっても、セーフスペースに入らないと!!
そうして、オレの指示に従って、ボルドーがセーフスペースの入り口を開けた。
オレ達は、今、セーフスペースに入る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!

つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。 他サイトにも公開中。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

遺された日記帳〜毒をのんだ令嬢〜《完結》

アーエル
ファンタジー
ここに一冊の日記帳がある。 色褪せたそれの持ち主はすでにこの世にはない…… 胸くそ悪い内容です。 ☆他社でも公開中

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

処理中です...