マリーゴールド

Auguste

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第55幕 宅飲み

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迷っちまって時間掛かったな。
ともの言う通り早めに出ておいて正解だった。

やっと着いた。
三重の表札もあるし間違いないだろ。

それにしても1人で暮らすにしてはでっけぇ家だな。
いいよな金持ちは……。

チャイムを鳴らす。
ギター早く見てぇな。
いやいや、まずはたぬきの情報を探さないとな。
とももさわちゃんも頑張ってんだ。
俺もなんとかしないとな!

ただ証拠か……。
こんなデカい家だと探すのも手間だし、あまりうろちょろしてると怪しまれるからな…。
もし三重が犯人で、いきなり後ろからブスッとか。
考えたくないな…。

「………」
それにしても遅いな。
チャイムを連続2回押す。


「………」
少し待ったが反応がない。
トイレにでも入ってんのか?
明かりはついてるしな。
クソでもしてるのか?
あいつ長そうだからな。


「…………」
ちょっと待てよ。
大鷲の言葉を思い出す。
小山から疑われているともが被害者になるかもしれないと……。
俺は三重が怪しいって思ってきたが……。
まさか……。

ドアノブに手を伸ばす。

鍵が開いてる!
今まで事件の中で……。
明かりがついていて鍵が空いていた…。
俺はドア開けて叫んだ。
「たぬじろうーーー!」



目の前にいた。
「勝手にドア開けて叫ぶなよ。」
「びっくりしただろ。」
無事のようだ。

「よ、よかった~。」
俺は一気に力が抜ける。

「何がよかっただ?」

「そりゃあ心配になるだろ!」
「おせえし、鍵も空いてるし……。」
「不用心すぎるぞ!」

「別に大丈夫だ。」
「心配しすぎだ。」

こいつ肝座ってんな。
ただでさえ俺らの周りで殺しがあったていうのに。

「それに来るなら連絡ぐらいよこせよ。」

「すまんすまん。忘れてた!」
こいつだったら証拠隠滅しそうだからな。

「まあいい。上がれよ。」

「おじゃまします!」
靴を脱ぎ、家に上がった。

「広いし綺麗だな。」
「掃除大変だろ?」

「掃除は家政婦に丸投げしてんだ。」
「僕にはそんな暇ないしめんどくさいからな。」

「いいなー。羨ましいぜ。」
それだけ金があるってことだもんな。

リビングに着くとでかい薄型テレビとその下にディスクプレーヤーがある。
横の棚にDVDやブルーレイがある。

テーブルにパソコン。
仕事してたのか?
あと……。



「ギターだ!」
俺は近づいた。
「生でみるとすげぇな。この輝き!」
「俺もこんなギターで演奏してみたかった。」

「弾いてみるか?」
おじゃるが得意げになってる。

「ありがてぇけど、指がこんなんなっちまってな…。」
指を見せながら言った。

「なんかあったのか?」

「ちょっと家庭のゴタゴタで。」

「へー。災難だな。」
あんまり興味なさそうだな。
あんまり人の気持ちとかわかんなそうだからな。

「だから見るだけで満足だ。」
「でも……。」

「でも?」

「持ってみていいか?」

「いいぜ。汚すなよ。」

「センキュー!」
持ってみたらとても軽い。

「とても軽いな!」
「しかも弾きやすそうだ。」

「だろ?高いギターだしな。」
弾きやすさとかはギターが高かろうと低かろうと人それぞれだけどな。

「もったいねぇよ。」
「やっぱお前もギター始めたほうがいいんじゃないか?」

「まあ時間があったらな。」
やらなそうだな。

「それにしても懐かしいな。」
「俺も学生時代フライングV使っていたんだ。」

「フライングV?」

「ギターの種類だよ。」
「ほら。Vの形してるだろ?」
知らずに勝ったのか?

「これ持って弾いてたら、偶然先端がともの腹ぶっ刺さってな。」
「ともは少し痛そうにしてたけど、こんなことある?って笑ってたな。」
そう……。
あの時のともは普通に笑えていたんだ。
今は自分の笑いすら忘れてしまったようだ。

「………。」
俺は笑いながら話していたが、たぬじろうにはウケなかったみたいだ。
やはりともが嫌いなのか?
話を変えるか。

「それにしてもでっかいテレビだな。」
「すげぇ薄いしよ。」

「いいだろ?」

「めっちゃ羨ましい。」
ん?
テレビは消えてるけど、ディスクプレイヤーの電源は付いてるな。
仕事しながらなんか見てたのか?

「さっきまでなんか見てたのか?」

「あ……ああ。見てたけど………なんだ?」
なんか怪しいな。

「いやらしいやつだろ?」

「はぁ?」

「だからさっき遅かったんじゃねえの?」

「なーに言ってるんだ。」
「お前いつもそんなこと考えてんのかよ。」

「そう!」
「それより…。」

「なんだ?」

「喉乾いた!」

たぬじろうはため息をつきながら
「何がいい?」

「とりあえずビール!」

「居酒屋かよ。ここは。」
とツッコミを入れながら
「まってろ。取ってくる」
と出ていった。

その間俺は、棚を見ながら何かないか探していた。

ホステル、屋敷女、ムカデ人間、食人族、グロテスク、マーターズ……。

映画のディスクが多いな。
最近の事件でアスモデウスを名乗る監督兼脚本家が出てきていた。
何か関係あるのか?

それにしても怖そうなのばかりだな。
俺はアメコミヒーローのほうが好きだ。
こういうのは苦手だ。

ん?
左端のところから何か飛び出てるな。
ダビング用のディスク?
なんでこれだけ?
しかもケースも付けずに…。
あまりにも不自然過ぎる……。

「持ってきたぞー。」
急いで振り返りディスクを後ろに隠し、こっそりとズボンの中に入れた。
何やってんだ俺は…。

「何してんだよ?」

「いやー。いやらしいのないかなって思って。」

「ねぇよ。そんなところに。」

「あるのか?」

「言わん。」
「それよりほら、座れよ。」
ヤバい。
座ったらディスクが割れる。

「ちょ、ちょっとその前にトイレ借りていいか?」

「なんだよ。飲む前に便所かー?」
「トイレはそこでて右のところだ。」

「ありがとよ。」
俺はリビングから出てすぐに、ディスクを鞄に入れた。
俺…。
泥棒じゃん。
でもなんか怪しい匂いがするし…。
もしこいつが犯人だったら何かの手かがりかもしれねぇ。

「…………。」
ヤバい。
トイレどこだっけ?
右だったよな…。

あった。
実際に小便したかったからな。
こっそり他の部屋も見てみるか。


寝室、風呂場、空き部屋。
どの部屋も怪しまれない程度に探したけど、特に目ぼしいものは無かったな。

小便を終えてリビングに戻る。
「遅かったな。大便か?」

「もりもり捻り出してきたぜ!」

「汚ねえな。」
俺はソファに座り、ビールを飲む。

「かーー。うめえビールだな!」
見たことないラベルだな。

「だろ?海外から買ったやつだ。」
「ビールもこだわってるからな。」

「すげぇよな。もうなんでも手に入るんじゃないか?」

「何言ってんだ。」
「うちの会社はまだまだでかくなる。」
「日本中のあらゆる分野にうちのロゴを入れてやる。」
たしかでかく三の文字のやつだな。

「楽しみにしてるよ。」
「そうなる日を……。」
「あとはあの事件が解決するだけだな。」

「あの事件?」
「あれだろ?大沢やゴリラとかが殺された事件。」
「どうせ小田だろ。」
「親にもなんか恨みがあったんじゃねえの?」

俺は頭にきたが堪えれて、
「まだわかんないぞ。」
「ともの親はともかく、恨み買いそうな奴らだったし。」
「それ言ったらお前だって……。」

「はぁー?僕がやるわけないじゃん。」
「そんな暇ないし。」

「そうか…。」

「まあどちらにしろ死んで清々した連中ばかりだったがな。」
ダメだ。
堪えろ。

「まあ別に犯人なんて見つからなければいいんじゃないか?」 
「もし小田だったら最高だがな。」 
「ぶひゃひゃひゃひゃ。」
もうダメだ。
殴りたい。

「どうした?」
「手が震えてるぞ。」

「あ……。」
「こ、ここ寒くねぇか?」
「冷房強すぎるような…。」
なんとか誤魔化す。

「そうか?」
「僕は丁度いいんだがな。」

「ま、まあ今は夏だしな。」

俺は残りのビールを一気に飲みながら
「そろそろ俺帰るわ。」
「ビールごちそうさん。」
ともには悪いが、身が持たない。
こいつを殴り飛ばしそうだ。

「ああ。」
俺らは扉まで向かう。

「そういえば、今何やってるんだ?」

「ライブハウスのスタッフやりながら作曲活動してる。」

「へー。それ今度詳しく聞かせてくれよ。」
「音楽業界にも興味あるからよ。」
強欲なやつだな。

「ああ。機会があったらな。」
「またな。」

「じゃあな。」
俺は扉を閉めた。
お前と音楽やることは一生無い。
しかも一緒に音楽やるとしたら既に決まってるんだ。

ともにLemonで連絡する。
『たぬきの家出たところ』
『今からともの家行っていいか?』

しばらくして返信があった。
『了解』
『今、沙和子も来てる。』

さわちゃんも何か手かがり見つけたようだな。

「……………」
このディスクは一体なんなんだ?
何か手かがりなのか、それとも……。

まあ違くてもまた他を考えて探せばいい。
早くともの家行こう。
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