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第34幕 逆の可能性
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俺らは駅に向かう。
「ここちゃんもたぬきも元気そうでよかったな。」
武……もう完全に名前じゃなくて動物呼びに……。
もういいや。
「そうだな。」
また知りたくないことを知ってしまったが。
「とも。元気だそうぜ。」
「嫌なこと聞いちまったけどよ。」
「いいこともわかったじゃねえか。」
「いいこと?」
「そう!」
「キャバ嬢3人は学と接点は無いっぽいけど、それ以外はあったろ?」
「そうか?三重と部長に関しては学を殺した動機がわからなかったけど…。」
「たぬきは前から学のこと嫌ってたって聞いたことがある。」
「そうなのか?」
「ああ。自分は金持ちなのに、顔や性格でみんなから人気がある学に嫉妬してたみたいだ。」
金はもっててもあの性格と体型じゃ無理だろう…。
「お前に対してもだけどな。」
「俺?」
「ポイされたあいつからしたら気に食わなかったんだろ。」
「綾葉とずっといたお前が。」
だから俺に嫌味を言ってきたのか。
「部長は?学と接点無かったけど。」
「ここちゃん言ってただろ?」
「学の話聞いて怒ってたって。」
「自分のお気に入りのキャバ嬢が酷い目に合わされて、学も殺してやろうって思ったとかありそうだろ?」
「そうか?考えすぎじゃないか?」
「部長はちかを指名してたし……。」
「あんなにビンビンだったろ!」
「あれすごかったな!笑い堪えるのも大変だったぜ!」
2人で少し笑った後
「まああくまで可能性の話だ。」
と武が言った。
そしたら三重、大神、部長の3人には動機があるな…。
物的証拠はないが……。
「ん?あれは……。」
武が前の人を見て言った。
大鷲だ。
「小田さんと豪元さんじゃないですか?」
「飲みに……行かれてたんですか?」
少しふらふらの武を見ながら言う。
「そうっす!可愛いおねぇちゃんと飲んでました!」
恥ずかしい…。
「そ、そうですか。楽しそうで何より。」
少しひきぎみだ。
その後、複雑そうな顔で
「小田さん。上司が毎回失礼な態度で申し訳ないです。」
と俺に頭を下げた。
俺は少し慌てて
「頭を上げてください。私は気にしてませんから……。」
毎回小山に注意しては怒られてる大鷲に、頭を下げてもらうのは逆に申し訳ない。
「あの人も……必死なんです。色々と。」
「だからって条件証拠だけであんなに追い詰めていい理由になりませんが………。」
小山にも色々とあるみたいだ。
何があってもあの取り調べはどうかと思うが……。
「何かわかったこととかあるんですか?」
俺は聞いた。
そうであってほしい。
「いや。やはり証拠が見つからないですね。」
「どの事件も指紋や毛髪が出ていません。」
「以前の金庫もあのタイプはかなり前のもので、出どころがわからなかったです。」
「最初の事件であった指輪は?」
指輪だったら出どころとかわかるんじゃないのか?
「それは2人が元々持ってたペアリングのようです。」
「他の事件も、盗難品や元々被害者の家にあった物を使用されてるので……。」
「学が持っていたという警棒は?」
あれは流石に学が持っていたものではないはず。
「それはネットで佐藤さんご自身で購入したものなんです。」
「なっ……。」
武は言葉を失った。
俺も何も言えなかった。
付き合ってた人に暴力を振るっていた……。
まさか警棒で……。
「何故持っていたか不明ですが……。」
さっきの話を聞いてた俺らからしたら、聞きたくなかった情報だった。
学がそこまで女性に対して暴力を振るっていたと思うと……。
しかし何故なんだろう?
こんな派手に犯行を行ってるのに、指紋や毛髪等の証拠が出ないのか?
老人の家からも盗みを働いてるわけだし。
大鷲が紙に何か書いて
「よかったらこれを。」
携帯番号が書かれた紙を俺と学に渡した。
「ありがとうございます。」
と言い、俺らは紙を受け取る。
「小山さんのあの態度だと言いづらいこともあると思いまして……。」
「些細なことでもいいんです。」
「何かわかりましたらご協力をお願いします。」
頭を下げた。
とことん小山の部下であることが可哀想になってくる。
「小山さんは小田さんのことを疑ってますが、私は逆の可能性を危惧してます。」
「逆の可能性?」
「小田さんが被害者になる可能性です。」
「もちろん豪元さんも。」
俺はぞっとした。
今まで俺が犯人だと疑われてたから、そんなこと考えてなかった。
自分があんなエグい方法で殺されたら……と思うと怖くなってくる。
武も顔が固まっている。
「どちらかというと私はあなた方を守りたいと思ってます。」
「ありがとうございます。」
俺は深々と頭を下げた。
疑われたり罵倒されてばかりだからか、その守りたいっていう言葉が嬉しく思う。
「ありがとうございます!」
武がお礼を言いながら
「さっきわかったことをお伝えできればと思うんですけど、今大丈夫ですか?」
大鷲が「はい。」と頷き、武がキャバクラでのことを説明して、俺も補足で伝えられることを話した。
「なるほど。三重二郎丸さん、日東潮《ウシオ》さん、大神心さんですね。」
大鷲がメモをとる。
「ご協力ありがとうございます。」
「私のほうでも色々調べてみますね。」
とても助かる。
この人が仕切ってくれてれば、本当はもっと早く解決できたのではないだろうか?
「こちらこそありがとうございます。」
俺と武は御礼を言い、大鷲は最後「お気をつけて」と帰っていき、俺らは駅に向かった。
「ここちゃんもたぬきも元気そうでよかったな。」
武……もう完全に名前じゃなくて動物呼びに……。
もういいや。
「そうだな。」
また知りたくないことを知ってしまったが。
「とも。元気だそうぜ。」
「嫌なこと聞いちまったけどよ。」
「いいこともわかったじゃねえか。」
「いいこと?」
「そう!」
「キャバ嬢3人は学と接点は無いっぽいけど、それ以外はあったろ?」
「そうか?三重と部長に関しては学を殺した動機がわからなかったけど…。」
「たぬきは前から学のこと嫌ってたって聞いたことがある。」
「そうなのか?」
「ああ。自分は金持ちなのに、顔や性格でみんなから人気がある学に嫉妬してたみたいだ。」
金はもっててもあの性格と体型じゃ無理だろう…。
「お前に対してもだけどな。」
「俺?」
「ポイされたあいつからしたら気に食わなかったんだろ。」
「綾葉とずっといたお前が。」
だから俺に嫌味を言ってきたのか。
「部長は?学と接点無かったけど。」
「ここちゃん言ってただろ?」
「学の話聞いて怒ってたって。」
「自分のお気に入りのキャバ嬢が酷い目に合わされて、学も殺してやろうって思ったとかありそうだろ?」
「そうか?考えすぎじゃないか?」
「部長はちかを指名してたし……。」
「あんなにビンビンだったろ!」
「あれすごかったな!笑い堪えるのも大変だったぜ!」
2人で少し笑った後
「まああくまで可能性の話だ。」
と武が言った。
そしたら三重、大神、部長の3人には動機があるな…。
物的証拠はないが……。
「ん?あれは……。」
武が前の人を見て言った。
大鷲だ。
「小田さんと豪元さんじゃないですか?」
「飲みに……行かれてたんですか?」
少しふらふらの武を見ながら言う。
「そうっす!可愛いおねぇちゃんと飲んでました!」
恥ずかしい…。
「そ、そうですか。楽しそうで何より。」
少しひきぎみだ。
その後、複雑そうな顔で
「小田さん。上司が毎回失礼な態度で申し訳ないです。」
と俺に頭を下げた。
俺は少し慌てて
「頭を上げてください。私は気にしてませんから……。」
毎回小山に注意しては怒られてる大鷲に、頭を下げてもらうのは逆に申し訳ない。
「あの人も……必死なんです。色々と。」
「だからって条件証拠だけであんなに追い詰めていい理由になりませんが………。」
小山にも色々とあるみたいだ。
何があってもあの取り調べはどうかと思うが……。
「何かわかったこととかあるんですか?」
俺は聞いた。
そうであってほしい。
「いや。やはり証拠が見つからないですね。」
「どの事件も指紋や毛髪が出ていません。」
「以前の金庫もあのタイプはかなり前のもので、出どころがわからなかったです。」
「最初の事件であった指輪は?」
指輪だったら出どころとかわかるんじゃないのか?
「それは2人が元々持ってたペアリングのようです。」
「他の事件も、盗難品や元々被害者の家にあった物を使用されてるので……。」
「学が持っていたという警棒は?」
あれは流石に学が持っていたものではないはず。
「それはネットで佐藤さんご自身で購入したものなんです。」
「なっ……。」
武は言葉を失った。
俺も何も言えなかった。
付き合ってた人に暴力を振るっていた……。
まさか警棒で……。
「何故持っていたか不明ですが……。」
さっきの話を聞いてた俺らからしたら、聞きたくなかった情報だった。
学がそこまで女性に対して暴力を振るっていたと思うと……。
しかし何故なんだろう?
こんな派手に犯行を行ってるのに、指紋や毛髪等の証拠が出ないのか?
老人の家からも盗みを働いてるわけだし。
大鷲が紙に何か書いて
「よかったらこれを。」
携帯番号が書かれた紙を俺と学に渡した。
「ありがとうございます。」
と言い、俺らは紙を受け取る。
「小山さんのあの態度だと言いづらいこともあると思いまして……。」
「些細なことでもいいんです。」
「何かわかりましたらご協力をお願いします。」
頭を下げた。
とことん小山の部下であることが可哀想になってくる。
「小山さんは小田さんのことを疑ってますが、私は逆の可能性を危惧してます。」
「逆の可能性?」
「小田さんが被害者になる可能性です。」
「もちろん豪元さんも。」
俺はぞっとした。
今まで俺が犯人だと疑われてたから、そんなこと考えてなかった。
自分があんなエグい方法で殺されたら……と思うと怖くなってくる。
武も顔が固まっている。
「どちらかというと私はあなた方を守りたいと思ってます。」
「ありがとうございます。」
俺は深々と頭を下げた。
疑われたり罵倒されてばかりだからか、その守りたいっていう言葉が嬉しく思う。
「ありがとうございます!」
武がお礼を言いながら
「さっきわかったことをお伝えできればと思うんですけど、今大丈夫ですか?」
大鷲が「はい。」と頷き、武がキャバクラでのことを説明して、俺も補足で伝えられることを話した。
「なるほど。三重二郎丸さん、日東潮《ウシオ》さん、大神心さんですね。」
大鷲がメモをとる。
「ご協力ありがとうございます。」
「私のほうでも色々調べてみますね。」
とても助かる。
この人が仕切ってくれてれば、本当はもっと早く解決できたのではないだろうか?
「こちらこそありがとうございます。」
俺と武は御礼を言い、大鷲は最後「お気をつけて」と帰っていき、俺らは駅に向かった。
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