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第23幕 開かずの番人
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その後現場検証のため、鑑識が来て黄色いテープが貼られた。
俺達は千葉県警の刑事から尋問を受けた。
「それであなた方は金庫を発見し、血が流れてるのを見て通報したと?」
「そうです……。」
武が答えた。
ごめん、武。
俺は何も話せそうにない。
学のお母さんはずっと泣いてる。
「今、鑑識に細かく調べてもらってますが、酷い有様です。」
「トンカチか何かで骨を粉々にして、金庫に入れられたみたいです。」
学のお母さんは余計に泣きだし、こちらを睨んだ。
「……あなた達のせいよ。」
「あなた達が朝まで学を連れ回して、家まで送らなかったから…。」
俺達は何も言えない。
「あなた達が死ねばよかったのよぉぉぉぉ。」
学のお母さんが隣にいた武に掴みかかった。
「ちょっと奥さん!落ち着いて!」
刑事が止めに入った。
「あなた達が………。」
「あなた達がぁぁぁぁぁぁぁ。」
学のお母さんが泣き崩れた。
「申し訳ございません…。」
俺と武は頭を下げる。
俺も武も、それ以外の言葉がでない。
早く解散していれば……。
俺も一緒に学を送っていれば……。
そもそも俺が落ち込んでなければ、飲みに行こうってならなかったかもしれない……。
後悔の念が俺を締め付ける。
武も後悔しているだろう。
俺が最後まで送っていればって…。
それに、俺らに優しかった学のお母さんの言葉が辛かった。
これが彼女の本音なのだと思うと、悲しくなる。
その時、2人組がこちらに近づいてくる。
最悪だ……。
なんでこの2人が千葉にいるんだ?
管轄とかあるんじゃないのか?
「どうも~。警視庁の小山と大鷲です。」
2人で千葉県警の刑事に手帳を見せる。
「お疲れ様です。警視庁の方々がどうされたんですか?」
少し嫌そうな顔してる。
「いや~。それが私達が追ってる事件に関連してるんじゃないかってことで、この事件は私達が見ることになったんですよ!」
「な……。そんな勝手に。」
「勝手にじゃないですよ~。」
「これは上からの命令なんです。」
「気に入らないのであれば、直談判してみては?」
誰に対しても嫌味なんだなこいつは。
「ぐ………分かりました。あとはよろしくお願いします。」
「ちなみにあなた方が追ってる事件とは?」
千葉県警の刑事は気になったみたいだ。
「おやおや~。あなたはニュースを見ないんですか?」
「今回の事件の猟奇性、東京で起こった2件の事件に似てませんか?」
「み、見てますよ。確かに似てますね。」
震えてる。
頭にくるのも無理はない。
民間でいうと、別のグループ会社の社員から嫌味を言われるようなものだ。
「そうでしょー。」
「ノータリンの結婚式、運命 最終楽章、現場に残された物語の名前で報道されてるんですよ。」
「ほんとに犯人のネーミングセンスの無さにはびっくりです!」
「がはははははは。」
「え、ええ…そうですね。」
「今回の事件も、物語のような内容が書かれた紙が見つかってます。」
「被害者の額にホチキスで止められてました。」
こんなことをして……。
絶対に許さない。
「とういうことで!あとは我々に任せてください!」
「わかりました。ただ一点だけ……」
千葉県警の刑事が小山に近づき、俺らに背を向け話をしてる。
「はいはい……。」
「わかりましたよ。」
話が終わり、千葉県警の刑事は去って行った。
「大鷲。お前は別のところでこちらの奥さんを、俺はこの2人に話を聞く。」
「了解しました。奥さんこちらへ。」
学のお母さんは立ち上がり、大鷲と別の場所へ移った。
さっきの話は学のお母さんが取り乱したことだろう。
一緒にさせては話にならないと判断したようだ。
「いやー。こんな早くまたお会いできるとは思いませんでしたよ!小田さん。」
小山がニヤケてる。
その顔をやめてくれ。
綾葉のことを社員に広められた時の皆の顔が、フラッシュバックする。
明らか俺を疑う顔だ。
「すみません。俺達はいなくなった学が心配になってたまたま来ただけです。」
「何もやましいことはしていません。」
ありがとう、武。
そう言ってくれて……。
「心配になるのはわかりますが、なぜわざわざ使われなくなった倉庫に?」
「佐藤さんが倉庫に引きこもってると思ったんですか?」
「それは…。」
武が言葉を詰まらせる。
俺が突然言い出したことで、特に理由も伝えてなかったからだ。
「………俺が言ったんです。」
つぶやくような声で俺は言った。
「へ?俺が殺ったんですって?」
小山が俺に耳を近づける。
「俺が行こうって言ったんです!」
腹が立って声を荒げた。
「びっくりした!」
「急に大きな声を出さないでくださいよ~。」
「ちょっとした聞き間違いです。」
聞き間違いでも、言って良いことと悪いことはあるだろ。
「何故あなたはこの倉庫に行こうと思ったんですか?」
形だけでも謝るってことはしないのか?
「学生時代に学がギターを練習する場所って知ってましたから………。」
「最近の出来事を思い出して嫌な予感がしたので………。」
「殺されてるかもしれないって思ったんですな。」
「ちなみにそちらの方は……」
武の方に目を向ける。
「豪元武です。学や友和の高校時代の同級生です。」
「ほぉ。ご友人でしたか。」
「ちなみに大沢綾葉さんのことはご存じで?」
「はい……自分達は友人でもあり、バンドのメンバーでした。」
「なんと!そうでしたか。」
「あなたもさぞお辛いでしょうね。」
「友人2人を亡くされて。」
心がこもっていない。
「ちなみに里部翔馬さん、木原美喜男さん、木原魚月さん。この3人と接点はありますか?」
他の被害者達だ。
「ありません…。」
そう……。
共通してるのは俺と接点がある人ばかりということ。
ただ、今回の学は違う。
俺には動機がない。
「そうですか。わかりました。」
「先程鑑識に聞いてきたんですけど、死亡推定時刻は7月3日の朝頃だったとか。」
嘘だろ…。
俺らと飲みに行った後じゃないか…。
「これもまた酷い。」
「トンカチかなんかで体中の骨を砕いてますね。頭蓋骨が砕けてそれが脳までいき、死亡したと。」
「睾丸まで潰されていたとか……。」
「男からしたら痛いで済む話じゃないですね~。」
一言余計なんだよ。
クソオヤジ………。
「頭が最初だったみたいですね。その次に睾丸。」
「倉庫に誘い込み、何度もトンカチで殴って殺した。」
「その後放置してから、骨を粉々にして金庫に入れたようですな。」
「わざわざ殺した後に戻って骨を砕くなんて正気ではない。ねぇ小田さん?」
俺がイカれてると言ってるのか?
「その通りだと思います。」
死人を弄ぶようなことをして……。
正気じゃない。
「そうですよねぇー?」
「まっ!とりあえず確認なんですけど、飲みに行って解散した後、お二人はどちらで何をしていましたか?」
「俺が送る筈でしたが、本人からもう大丈夫って言われてそのまま別れてしまいました。」
「自分はホテルに戻って、少し寝た後にお昼前にはホテルを出て東京へ帰りました。」
「チェックアウトした時間と電車に乗る時に使ったICカードの履歴が残っているので、調べてみてください。」
「なるほど。ホテルの名前は?」
「近くにあるホテル1408っていう名前です。」
「わかりました。小田さんは?」
「自分は実家に戻った後、部屋にいました。夕方頃に妹と帰りました。」
「ずっと部屋にいたんですか?何をされてたんです?」
嫌な流れだ。
「布団の中で……。」
「横になってました。」
「証明できる人は?」
「多分……家族が。」
「多分?ずっと部屋にこもってたんですか?」
「お風呂と数回トイレに行ったぐらいです。」
「それではアリバイは無いってことですな。」
「こっそり抜け出して家族に気づかれなかった……という可能性がある。」
「ちょっと待ってください!親友を殺されてるんですよ!」
「あなたも人間ですよね?」
「人の気持ちがわからないんですか?」
声を荒げた。
「とも……。」
「落ち着け。」
武に宥められる。
「わかりますよ~!痛いほどね。」
「だからこそあなたが怪しいんですよ。」
「何を訳の分からないことを!」
「あなたがよく知ってるんじゃないんですか?
佐藤さんのことを。」
「知ってるさ!真面目で友達や家族思いの良いやつだ。それ以上の以下でもない。」
「そうですか~。」
「いやー、私は気づいていると思ってるんですけどね~。事実を。」
「事実?」
「私にそこまで言わせますか~?まあ良いでしょう!」
なんのことだ?
「大沢さんと里部さんが殺害された直後、2人の知人に話を聞いてたんですよ。」
「あなたにも聞きに行きましたよね?」
「はい。」
朝早くから迷惑だったな。
「あの時朝早くから申し訳ないと思ってたんですがね~。」
「丁度このあたりで泊まって、朝帰るときにタイミング合うと思ったんですよ。」
ん?
なんで小山達が千葉に?
「あなたの家に伺った日の前日に、佐藤さんとお話ししたんですよ。」
まさか……。
学に色々と相談をしていた。
会社のことも綾葉のことも…。
なんで小山がこんなに詳しいのか疑問に思ってた。
もしかして学が発信源だったのか?
ただおかしい…。
なんで小山は学にたどり着いたんだ?
「なんで学の家に……?」
俺は恐る恐る聞いた。
「またまた~。これも私の口から言うんですか?」
「仕方ないですね~。」
「早く答えてください!」
俺は怒鳴った。
いい加減我慢の限界だ!
「はいはい。」
「大沢さんは携帯を2台持っていてね。お店用と私用に分けていたんです。」
「お店用の携帯にはそこそこLemonとかのSNSで繋がってたみたいですけど、お客さんやお店の従業員ですね。」
「逆に私用の方はかなり少ない!」
「あまりご友人もいなかったみたいですね~。」
「調べた時あなたのはありませんでしたが…。」
全部ブロックして消したんだろう…。
「その時学さんにたどり着いたわけです。」
「しかもただの友人同士ではなかったようですし……。」
「はい……。3年間一緒に音楽をやってきた仲間でしたから…。」
「違いますって!」
「そういう意味じゃなくて………。」
「これも見せなきゃあかんのか?」
カバンの中から何枚も紙の入ったクリアケースを取る。
「えーとこれのほうがいいかな?」
小山が1枚のA4サイズの紙を渡す。
これは……Lemonでの学と綾葉のやりとりだ。
学
『今日楽しかったよ❗️ありがと!」
『あたしも楽しかった❣️』
『ご飯ごちそうさま🍕』
学
『あそこのイタリアンめっちゃ美味かったな😁』
『また行こうぜ!』
『うん!』
『あのさ、学ってけっこう大きかったんだね~
意外すぎる笑』
学
『そうか?普通だろ笑』
『そんなことないって笑
しょーまくんより大きかった!』
学
『マヂで?笑』
『うん』
『しょーまくん顔はいいんだけど~小さいんだよね🤣』
『久しぶりに気持ちよかった!』
学
『俺も~!』
『興味本位で聞くけど友和のはどうなの?笑笑笑笑笑笑笑』
ここで途切れてた。
日付は2年前のものだった。
俺と付き合ってるときから…。
きっとまだあるんだろう。
でも……もう見たくない。
「………おかえしします。」
「他はいいですか?」
「遠慮します。」
「……まあセフレってやつですな!」
「メッセージの最後のほうは揉めてたみたいですし、それでここにきたんですよ」
もう何も聞きたくない。
「そしたら佐藤さん。焦ってましたよ~。自分が疑われてると思って。」
「そしたらベラベラとお話ししてくれましたよ。」
「あなたのこと……住所や電話番号、綾葉さんとの関係や職場でストレスを溜めてることをね。」
「…………」
「最後に言った言葉は、あいつが犯人に決まってるってね。」
学………。
お前まで………。
「ただねぇ。今までの事件は条件証拠はあるのに物的証拠が無いんですよ。」
「指紋や毛髪等も出てないし、今回の金庫は今のところ出どころは不明…。」
「お手上げ状態です!」
「犯人ですって名乗り出てくれる人がいたら楽なんですけとね~。」
「ね?小田さん。」
「それで私に犯人であってほしいと…?」
「いえいえ!とんでもない。」
「そこまで言ってないじゃないですか~。」
「あなたの言葉はそう聞こえますが?」
武が口を開いた。
「ともにどうしてほしいんです!」
「親友が死んで……。」
「実は裏切られてたなんて……。」
「それを知ったともの気持ちを……あなたにはわからないんですか?」
武が力強く言った。
「んー。私も鬼ではないんでね。わからなくもないですよ。」
「じゃあ…」
「まあ自分自身で選ぶ人間を間違えたとしか言えませんな。」
俺は………。
そこも間違ってたんだ。
「な……!」
「人の心の中は読めない。当たり前のことですが…。」
「だから人間には少しでも疑うっていう心があるわけです。」
「全てを信用しすぎた。」
「裏切られた人の負けなんですよ。」
「あなたは少し信じるってことを学んだほうがよろしいのでは!」
「がははははは!そうですな。」
「頭の片隅にでも入れときましょう。」
「この……。」
武が殴りかかりそうだった。
俺は武の手を掴み、止めた。
「とも…!いいのか?こんなに言われて」
「いいんだよ………何もかも。」
声を振り絞ってだす。
「小山さん………申し訳ないんですが、私は何も関係ありません。」
「勝手にあいつらが殺されただけです。」
「私は何も………知らない」
「そろそろ帰っていいですか?なんか疲れてしまったので…。」
もうずっと横になっていたい。
「はぁーー。」
「あと最後にこれだけは伝えますが。」
まだ……何かあるのか?
早く帰りたい。
「佐藤さんですが手足に数字が刻まれてましてね……。」
「右手に9、左手に3、右足に17、左足に14。」
「ダイヤル式の金庫は右に4回、左に3回、右に2回、左に1回で数字を合わせて開けるんですよ。」
どうでもいい。
金庫の開け方なんて。
「実際に各部分がこの回数分捻られてましてね。」
「右手から順に数字を合わせると……」
「それがパスワードだったんですよ!」
「口の中に鍵が入ってました。」
「まさか金庫に鍵とパスワードがあるとは、開かずの金庫状態ですな。」
学が鍵か……。
実際に人の心を開いてくれるキーマンだと思っていた。
学に心を開いた俺は…………。
この有様だ。
「あと血文字で書かれていたsafe or dangerousは、安全か危険という意味だそうです。」
「扉の裏にsafeと書かれていたんで、金庫の中は安全だと示しているようですな。」
安全か……。
学は安全な場所でずっと俺を嘲笑っていたんだ。
そう思うと、余計に悲しくなってくる。
「それとこれが……」
紙を1枚見せられる。
また例の物語のような内容だ。
開かずの番人
私はここの番人
ずっと宝物を守っている。
この宝物は誰にも渡さない。
渡してはいけないのだ。
それが私の使命だから。
私はこの仕事に誇りを持っている。
この扉は誰にも開けられないのだ。
どんな高名な悪魔が来たとしても、私と宝に触れることもできない。
そろそろ時間だ。
これを鳴らそう。
だが、九つ撞いてはいけない。
そう言いつけられているから。
でもあの方はもう来ないだろう。
私1人をここにおいて……。
私が信用できるのはひとつだけとなった。
「股のあたりに小さい鐘が置いてありまして…。」
「それが宝物らしいですな。」
どうでもいい…。
「………。」
「こんなの見せられてもわかりません。」
「私はもう失礼します。」
俺は紙を返した。
「………」
「ではまた、何かありましたらよろしくお願いします。」
俺は無視して武と外にでる。
外に出た瞬間、タバコに火をつけた。
「とも………。」
「俺……なんていえばいいかわかんないけど。」
「笑えばいいんじゃないか?」
俺は笑いながら言った。
「俺はただのピエロだよ!」
「自分の不幸で人を幸せにする……。」
「武も本音は面白がってんだろ!」
肩を思い切り掴まれる。
「そんなわけないだろぉ!」
「学は確かにお前を裏切ったかもしれない…。」
「だからって全部終わったわけじゃない。」
「だから………。」
「そんな悲しいこと言うなよぉぉぉ。」
肩を掴みながら下を向いてる。
泣いてるのか?
「武は………俺のこと裏切らないのか?」
「ああ!」
「俺はお前が犯人じゃないって信じてる!」
「これからもお前のことは裏切らない。」
「ありがとう…」
さっき酷いこと言ってしまったな。
「さっきは……ごめん。」
「色々とショックで。」
「当たり前だ。」
「俺だってショックだったんだから、ともなんてもっと辛いよな?」
「ああ…」
「今日は早く横になりたい。」
「そうだな!早く帰るか。」
帰り道、特に会話はなかった。
話す気力がないからだ。
武もそれを察してくれたようだ。
武は途中ホテルで泊まるといい、帰っていった。
ひとりぼっちになった。
「寂しいなぁ。」
ぽつりと一言呟いた。
小山から言われたことを思い出す。
父さんからも、昔同じようなことを言われていた。
友達は選べよって。
だからそうしたんだ。
間違いだらけだ。
俺の選んだ道は……。
俺は1人寂しく、実家に向かった。
俺達は千葉県警の刑事から尋問を受けた。
「それであなた方は金庫を発見し、血が流れてるのを見て通報したと?」
「そうです……。」
武が答えた。
ごめん、武。
俺は何も話せそうにない。
学のお母さんはずっと泣いてる。
「今、鑑識に細かく調べてもらってますが、酷い有様です。」
「トンカチか何かで骨を粉々にして、金庫に入れられたみたいです。」
学のお母さんは余計に泣きだし、こちらを睨んだ。
「……あなた達のせいよ。」
「あなた達が朝まで学を連れ回して、家まで送らなかったから…。」
俺達は何も言えない。
「あなた達が死ねばよかったのよぉぉぉぉ。」
学のお母さんが隣にいた武に掴みかかった。
「ちょっと奥さん!落ち着いて!」
刑事が止めに入った。
「あなた達が………。」
「あなた達がぁぁぁぁぁぁぁ。」
学のお母さんが泣き崩れた。
「申し訳ございません…。」
俺と武は頭を下げる。
俺も武も、それ以外の言葉がでない。
早く解散していれば……。
俺も一緒に学を送っていれば……。
そもそも俺が落ち込んでなければ、飲みに行こうってならなかったかもしれない……。
後悔の念が俺を締め付ける。
武も後悔しているだろう。
俺が最後まで送っていればって…。
それに、俺らに優しかった学のお母さんの言葉が辛かった。
これが彼女の本音なのだと思うと、悲しくなる。
その時、2人組がこちらに近づいてくる。
最悪だ……。
なんでこの2人が千葉にいるんだ?
管轄とかあるんじゃないのか?
「どうも~。警視庁の小山と大鷲です。」
2人で千葉県警の刑事に手帳を見せる。
「お疲れ様です。警視庁の方々がどうされたんですか?」
少し嫌そうな顔してる。
「いや~。それが私達が追ってる事件に関連してるんじゃないかってことで、この事件は私達が見ることになったんですよ!」
「な……。そんな勝手に。」
「勝手にじゃないですよ~。」
「これは上からの命令なんです。」
「気に入らないのであれば、直談判してみては?」
誰に対しても嫌味なんだなこいつは。
「ぐ………分かりました。あとはよろしくお願いします。」
「ちなみにあなた方が追ってる事件とは?」
千葉県警の刑事は気になったみたいだ。
「おやおや~。あなたはニュースを見ないんですか?」
「今回の事件の猟奇性、東京で起こった2件の事件に似てませんか?」
「み、見てますよ。確かに似てますね。」
震えてる。
頭にくるのも無理はない。
民間でいうと、別のグループ会社の社員から嫌味を言われるようなものだ。
「そうでしょー。」
「ノータリンの結婚式、運命 最終楽章、現場に残された物語の名前で報道されてるんですよ。」
「ほんとに犯人のネーミングセンスの無さにはびっくりです!」
「がはははははは。」
「え、ええ…そうですね。」
「今回の事件も、物語のような内容が書かれた紙が見つかってます。」
「被害者の額にホチキスで止められてました。」
こんなことをして……。
絶対に許さない。
「とういうことで!あとは我々に任せてください!」
「わかりました。ただ一点だけ……」
千葉県警の刑事が小山に近づき、俺らに背を向け話をしてる。
「はいはい……。」
「わかりましたよ。」
話が終わり、千葉県警の刑事は去って行った。
「大鷲。お前は別のところでこちらの奥さんを、俺はこの2人に話を聞く。」
「了解しました。奥さんこちらへ。」
学のお母さんは立ち上がり、大鷲と別の場所へ移った。
さっきの話は学のお母さんが取り乱したことだろう。
一緒にさせては話にならないと判断したようだ。
「いやー。こんな早くまたお会いできるとは思いませんでしたよ!小田さん。」
小山がニヤケてる。
その顔をやめてくれ。
綾葉のことを社員に広められた時の皆の顔が、フラッシュバックする。
明らか俺を疑う顔だ。
「すみません。俺達はいなくなった学が心配になってたまたま来ただけです。」
「何もやましいことはしていません。」
ありがとう、武。
そう言ってくれて……。
「心配になるのはわかりますが、なぜわざわざ使われなくなった倉庫に?」
「佐藤さんが倉庫に引きこもってると思ったんですか?」
「それは…。」
武が言葉を詰まらせる。
俺が突然言い出したことで、特に理由も伝えてなかったからだ。
「………俺が言ったんです。」
つぶやくような声で俺は言った。
「へ?俺が殺ったんですって?」
小山が俺に耳を近づける。
「俺が行こうって言ったんです!」
腹が立って声を荒げた。
「びっくりした!」
「急に大きな声を出さないでくださいよ~。」
「ちょっとした聞き間違いです。」
聞き間違いでも、言って良いことと悪いことはあるだろ。
「何故あなたはこの倉庫に行こうと思ったんですか?」
形だけでも謝るってことはしないのか?
「学生時代に学がギターを練習する場所って知ってましたから………。」
「最近の出来事を思い出して嫌な予感がしたので………。」
「殺されてるかもしれないって思ったんですな。」
「ちなみにそちらの方は……」
武の方に目を向ける。
「豪元武です。学や友和の高校時代の同級生です。」
「ほぉ。ご友人でしたか。」
「ちなみに大沢綾葉さんのことはご存じで?」
「はい……自分達は友人でもあり、バンドのメンバーでした。」
「なんと!そうでしたか。」
「あなたもさぞお辛いでしょうね。」
「友人2人を亡くされて。」
心がこもっていない。
「ちなみに里部翔馬さん、木原美喜男さん、木原魚月さん。この3人と接点はありますか?」
他の被害者達だ。
「ありません…。」
そう……。
共通してるのは俺と接点がある人ばかりということ。
ただ、今回の学は違う。
俺には動機がない。
「そうですか。わかりました。」
「先程鑑識に聞いてきたんですけど、死亡推定時刻は7月3日の朝頃だったとか。」
嘘だろ…。
俺らと飲みに行った後じゃないか…。
「これもまた酷い。」
「トンカチかなんかで体中の骨を砕いてますね。頭蓋骨が砕けてそれが脳までいき、死亡したと。」
「睾丸まで潰されていたとか……。」
「男からしたら痛いで済む話じゃないですね~。」
一言余計なんだよ。
クソオヤジ………。
「頭が最初だったみたいですね。その次に睾丸。」
「倉庫に誘い込み、何度もトンカチで殴って殺した。」
「その後放置してから、骨を粉々にして金庫に入れたようですな。」
「わざわざ殺した後に戻って骨を砕くなんて正気ではない。ねぇ小田さん?」
俺がイカれてると言ってるのか?
「その通りだと思います。」
死人を弄ぶようなことをして……。
正気じゃない。
「そうですよねぇー?」
「まっ!とりあえず確認なんですけど、飲みに行って解散した後、お二人はどちらで何をしていましたか?」
「俺が送る筈でしたが、本人からもう大丈夫って言われてそのまま別れてしまいました。」
「自分はホテルに戻って、少し寝た後にお昼前にはホテルを出て東京へ帰りました。」
「チェックアウトした時間と電車に乗る時に使ったICカードの履歴が残っているので、調べてみてください。」
「なるほど。ホテルの名前は?」
「近くにあるホテル1408っていう名前です。」
「わかりました。小田さんは?」
「自分は実家に戻った後、部屋にいました。夕方頃に妹と帰りました。」
「ずっと部屋にいたんですか?何をされてたんです?」
嫌な流れだ。
「布団の中で……。」
「横になってました。」
「証明できる人は?」
「多分……家族が。」
「多分?ずっと部屋にこもってたんですか?」
「お風呂と数回トイレに行ったぐらいです。」
「それではアリバイは無いってことですな。」
「こっそり抜け出して家族に気づかれなかった……という可能性がある。」
「ちょっと待ってください!親友を殺されてるんですよ!」
「あなたも人間ですよね?」
「人の気持ちがわからないんですか?」
声を荒げた。
「とも……。」
「落ち着け。」
武に宥められる。
「わかりますよ~!痛いほどね。」
「だからこそあなたが怪しいんですよ。」
「何を訳の分からないことを!」
「あなたがよく知ってるんじゃないんですか?
佐藤さんのことを。」
「知ってるさ!真面目で友達や家族思いの良いやつだ。それ以上の以下でもない。」
「そうですか~。」
「いやー、私は気づいていると思ってるんですけどね~。事実を。」
「事実?」
「私にそこまで言わせますか~?まあ良いでしょう!」
なんのことだ?
「大沢さんと里部さんが殺害された直後、2人の知人に話を聞いてたんですよ。」
「あなたにも聞きに行きましたよね?」
「はい。」
朝早くから迷惑だったな。
「あの時朝早くから申し訳ないと思ってたんですがね~。」
「丁度このあたりで泊まって、朝帰るときにタイミング合うと思ったんですよ。」
ん?
なんで小山達が千葉に?
「あなたの家に伺った日の前日に、佐藤さんとお話ししたんですよ。」
まさか……。
学に色々と相談をしていた。
会社のことも綾葉のことも…。
なんで小山がこんなに詳しいのか疑問に思ってた。
もしかして学が発信源だったのか?
ただおかしい…。
なんで小山は学にたどり着いたんだ?
「なんで学の家に……?」
俺は恐る恐る聞いた。
「またまた~。これも私の口から言うんですか?」
「仕方ないですね~。」
「早く答えてください!」
俺は怒鳴った。
いい加減我慢の限界だ!
「はいはい。」
「大沢さんは携帯を2台持っていてね。お店用と私用に分けていたんです。」
「お店用の携帯にはそこそこLemonとかのSNSで繋がってたみたいですけど、お客さんやお店の従業員ですね。」
「逆に私用の方はかなり少ない!」
「あまりご友人もいなかったみたいですね~。」
「調べた時あなたのはありませんでしたが…。」
全部ブロックして消したんだろう…。
「その時学さんにたどり着いたわけです。」
「しかもただの友人同士ではなかったようですし……。」
「はい……。3年間一緒に音楽をやってきた仲間でしたから…。」
「違いますって!」
「そういう意味じゃなくて………。」
「これも見せなきゃあかんのか?」
カバンの中から何枚も紙の入ったクリアケースを取る。
「えーとこれのほうがいいかな?」
小山が1枚のA4サイズの紙を渡す。
これは……Lemonでの学と綾葉のやりとりだ。
学
『今日楽しかったよ❗️ありがと!」
『あたしも楽しかった❣️』
『ご飯ごちそうさま🍕』
学
『あそこのイタリアンめっちゃ美味かったな😁』
『また行こうぜ!』
『うん!』
『あのさ、学ってけっこう大きかったんだね~
意外すぎる笑』
学
『そうか?普通だろ笑』
『そんなことないって笑
しょーまくんより大きかった!』
学
『マヂで?笑』
『うん』
『しょーまくん顔はいいんだけど~小さいんだよね🤣』
『久しぶりに気持ちよかった!』
学
『俺も~!』
『興味本位で聞くけど友和のはどうなの?笑笑笑笑笑笑笑』
ここで途切れてた。
日付は2年前のものだった。
俺と付き合ってるときから…。
きっとまだあるんだろう。
でも……もう見たくない。
「………おかえしします。」
「他はいいですか?」
「遠慮します。」
「……まあセフレってやつですな!」
「メッセージの最後のほうは揉めてたみたいですし、それでここにきたんですよ」
もう何も聞きたくない。
「そしたら佐藤さん。焦ってましたよ~。自分が疑われてると思って。」
「そしたらベラベラとお話ししてくれましたよ。」
「あなたのこと……住所や電話番号、綾葉さんとの関係や職場でストレスを溜めてることをね。」
「…………」
「最後に言った言葉は、あいつが犯人に決まってるってね。」
学………。
お前まで………。
「ただねぇ。今までの事件は条件証拠はあるのに物的証拠が無いんですよ。」
「指紋や毛髪等も出てないし、今回の金庫は今のところ出どころは不明…。」
「お手上げ状態です!」
「犯人ですって名乗り出てくれる人がいたら楽なんですけとね~。」
「ね?小田さん。」
「それで私に犯人であってほしいと…?」
「いえいえ!とんでもない。」
「そこまで言ってないじゃないですか~。」
「あなたの言葉はそう聞こえますが?」
武が口を開いた。
「ともにどうしてほしいんです!」
「親友が死んで……。」
「実は裏切られてたなんて……。」
「それを知ったともの気持ちを……あなたにはわからないんですか?」
武が力強く言った。
「んー。私も鬼ではないんでね。わからなくもないですよ。」
「じゃあ…」
「まあ自分自身で選ぶ人間を間違えたとしか言えませんな。」
俺は………。
そこも間違ってたんだ。
「な……!」
「人の心の中は読めない。当たり前のことですが…。」
「だから人間には少しでも疑うっていう心があるわけです。」
「全てを信用しすぎた。」
「裏切られた人の負けなんですよ。」
「あなたは少し信じるってことを学んだほうがよろしいのでは!」
「がははははは!そうですな。」
「頭の片隅にでも入れときましょう。」
「この……。」
武が殴りかかりそうだった。
俺は武の手を掴み、止めた。
「とも…!いいのか?こんなに言われて」
「いいんだよ………何もかも。」
声を振り絞ってだす。
「小山さん………申し訳ないんですが、私は何も関係ありません。」
「勝手にあいつらが殺されただけです。」
「私は何も………知らない」
「そろそろ帰っていいですか?なんか疲れてしまったので…。」
もうずっと横になっていたい。
「はぁーー。」
「あと最後にこれだけは伝えますが。」
まだ……何かあるのか?
早く帰りたい。
「佐藤さんですが手足に数字が刻まれてましてね……。」
「右手に9、左手に3、右足に17、左足に14。」
「ダイヤル式の金庫は右に4回、左に3回、右に2回、左に1回で数字を合わせて開けるんですよ。」
どうでもいい。
金庫の開け方なんて。
「実際に各部分がこの回数分捻られてましてね。」
「右手から順に数字を合わせると……」
「それがパスワードだったんですよ!」
「口の中に鍵が入ってました。」
「まさか金庫に鍵とパスワードがあるとは、開かずの金庫状態ですな。」
学が鍵か……。
実際に人の心を開いてくれるキーマンだと思っていた。
学に心を開いた俺は…………。
この有様だ。
「あと血文字で書かれていたsafe or dangerousは、安全か危険という意味だそうです。」
「扉の裏にsafeと書かれていたんで、金庫の中は安全だと示しているようですな。」
安全か……。
学は安全な場所でずっと俺を嘲笑っていたんだ。
そう思うと、余計に悲しくなってくる。
「それとこれが……」
紙を1枚見せられる。
また例の物語のような内容だ。
開かずの番人
私はここの番人
ずっと宝物を守っている。
この宝物は誰にも渡さない。
渡してはいけないのだ。
それが私の使命だから。
私はこの仕事に誇りを持っている。
この扉は誰にも開けられないのだ。
どんな高名な悪魔が来たとしても、私と宝に触れることもできない。
そろそろ時間だ。
これを鳴らそう。
だが、九つ撞いてはいけない。
そう言いつけられているから。
でもあの方はもう来ないだろう。
私1人をここにおいて……。
私が信用できるのはひとつだけとなった。
「股のあたりに小さい鐘が置いてありまして…。」
「それが宝物らしいですな。」
どうでもいい…。
「………。」
「こんなの見せられてもわかりません。」
「私はもう失礼します。」
俺は紙を返した。
「………」
「ではまた、何かありましたらよろしくお願いします。」
俺は無視して武と外にでる。
外に出た瞬間、タバコに火をつけた。
「とも………。」
「俺……なんていえばいいかわかんないけど。」
「笑えばいいんじゃないか?」
俺は笑いながら言った。
「俺はただのピエロだよ!」
「自分の不幸で人を幸せにする……。」
「武も本音は面白がってんだろ!」
肩を思い切り掴まれる。
「そんなわけないだろぉ!」
「学は確かにお前を裏切ったかもしれない…。」
「だからって全部終わったわけじゃない。」
「だから………。」
「そんな悲しいこと言うなよぉぉぉ。」
肩を掴みながら下を向いてる。
泣いてるのか?
「武は………俺のこと裏切らないのか?」
「ああ!」
「俺はお前が犯人じゃないって信じてる!」
「これからもお前のことは裏切らない。」
「ありがとう…」
さっき酷いこと言ってしまったな。
「さっきは……ごめん。」
「色々とショックで。」
「当たり前だ。」
「俺だってショックだったんだから、ともなんてもっと辛いよな?」
「ああ…」
「今日は早く横になりたい。」
「そうだな!早く帰るか。」
帰り道、特に会話はなかった。
話す気力がないからだ。
武もそれを察してくれたようだ。
武は途中ホテルで泊まるといい、帰っていった。
ひとりぼっちになった。
「寂しいなぁ。」
ぽつりと一言呟いた。
小山から言われたことを思い出す。
父さんからも、昔同じようなことを言われていた。
友達は選べよって。
だからそうしたんだ。
間違いだらけだ。
俺の選んだ道は……。
俺は1人寂しく、実家に向かった。
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