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第五章 都市旅行の魔力
【生産都市】遺跡奥にある資料
しおりを挟む遺跡の奥には本棚があった。
カルマらは本を引き抜こうとするがとある二冊以外は抜けなかった。
埃を被り、古ぼけた本にはこう書いてあった。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
【聖書らしき古ぼけた本】
かなりボロボロな本、表紙に書いてあった題名は擦れて消えてしまっており、題名は不明。
内容からして例の邪神ソーナルラを崇めていた教団のものとされる。
『降臨の儀式(要約)』
我らが神を下ろすためには生贄が必要だ。
毎日、一人ずつ女子を祭壇に捧げた上で■■■■(文字が掠れて読めない)と神の器が必要だ。
『ソーナルラ伝説1(断片)』
かつてこの世には無数の神々と怪物がいた。
神々と怪物はお互いに干渉せず、それぞれの生活を送っていた。しかしその均衡を破る者がいた、それが■■■■■である。
彼は争いなき世界に違和感を覚え、だんだんとこの世界が退屈に思えてきた。誰かを自身の力で壊してしまうのはどうだろう、近場の岩を破壊し尽くした彼はそう考えた。
そうしてとある気に入らなかった神を殺した。すると高揚感と共に力が湧き上がり、他の神々や怪物よりも一段階上の力を手に入れた。
それに気を良くした彼はさらに暴虐な限りを尽くした。神を殺し、怪物を殺し、殺し尽くした。
ついにはその世界に生きる者は居なくなってしまった。これで終わりかと嘆き、彼は並行世界への扉を開いた。
しかし彼はすべてを殺してはいなかった、一人だけ怪物を殺し損ねたのだ。
怪物は彼よりも先に並行世界へと飛び立ち、彼を倒す仲間を募った。何回も失敗したがその度に旅をする仲間が増え、別の並行世界に行くときには怪物は一人ではなかった。
だが彼を殺すことは叶わなかった。彼は怪物が仲間を集めているとき、更なる力を手にしていたのだ。
もうダメかと怪物は絶望した、手は尽くしたがあのバケモノを倒すには至らなかったと、怪物が死を覚悟したとき奇跡が起こる。
彼の攻撃を受け止める、もう一人の彼そっくりの神が現れたのだ。名をソーナルラと言う彼女は容易に彼を退け、その世界に平和を齎した。
【生贄の手記】
○月×日
どーやら、あたしが生贄に選ばれたらしい。生贄になる日は明日、もう少し心の準備ってもんが欲しい。
別に生贄になるのには構わない、救世主たる彼女を呼び出すためならばあたしはなんだってしてやろう。
○月×日
今回は俺が選ばれたようだ……ったく、女とは言え狩猟において俺が一番強いのに……いやだからか、俺が疎ましくて選んだのかねぇ、実に浅はかな考えだな。
前のやつが手記を書いてたから俺も書かせてもらったぜ、案外心の整理がつくから書いてみるといい。
(ページが破れていて見れない)
○月×日
私が最後の生贄になるらしい。ホントアホらしいよ……なんで私が顔も知らないやつの生贄にならなきゃいけないの? なんでみんなそんな笑顔で送り出すの? 怖いよ、助けて……なんでお母さんまでそんな顔で「おめでとう」っていうの、みんな怖い。
昔からおかしいとは思ってた、他の里も何かを信仰してるらしいけどこんな最悪な風習はない。
狭い牢獄に閉じ込められてわんわん泣いたって助けてくれない。時には私よりも年下の子が生贄になることもあった。
物事の判別が付かないほど小さな子まで……一体、どんなクソ野郎なのか扉を向こうを覗いてみようと思う。
(文字らしきものが綴られているが解読不可)
私はなんとか正気を取り戻した……あれはダメ。
なによりも嫌悪するべきもので憎悪すべきもの、なんで里のみんなあんなのを信仰してるの……怖いよ、あんなのの生贄にされたくないよ。
もう、嫌だ。
(ここから先には白紙のページしかなかった)
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