信仰者はVRを突き抜ける。 〜混沌なる世界で 神は微笑む〜

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第四章 都市防衛戦の波乱

孤児院の料理人カルマ

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今回の話は本来、さらなるカルマくんの強化だったのですがあまりにも展開が書くのが面倒……もとい大変なので料理回になりました。
これ書いてたら某いきなり食べるステーキ屋に行きたくなりましたが今日の晩飯はカレーです。

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 喫茶店ブルーマウンテンから徒歩10分ほど歩いたところにあったこじんまりとした教会。
話を聞くと、この世界の宗教を分類すると4つに分かれているらしい。

1つ目はこの都市国家を守護する九体の竜を信仰する守護竜教。かなりメジャーな宗教で大体7割くらいはここに入信してるそうだ。

2つ目は自然信仰の精霊派。これがクーアさんが所属しているところでマイナーなのだとか。

3つ目は星々、天文学的には異界の神々を信仰する異神教。ここは精霊派よりもマイナーで信者も少ないのだが異界の邪神に魅入られたかのように狂信者が多いらしい。

4つ目は雑多にまとめた、いわゆる“その他”と呼ばれるミクスト。数多くの宗教があるためにミクストには教えと言うものが地域によって変わる。

 私は遺憾ながら異神教という分類になる。あいつニャルがこの世界で信者を増やしてないわけがないし、そうじゃなくとも神威に惹かれて信者になるやつなんて山ほどいるだろう。
 私は正直言って棄教したい。加護という名の呪いを捨てて棄教したい……ここ最近、トラブルが多いのはニャルの加護のせいに違いないのだ。
……燃やしたら棄教できないかな、崇拝される存在に仇したとかで棄教できたら最高なのになぁ。


 そんなことを考えてるとクーアさんに提案されて私は孤児院に行く前に礼拝堂を見させてもらうことになった。
少しボロい扉を開けるとそこは木の長椅子が左右に5つほど置かれている。
そして真ん中には何度も踏みつけられたせいか、薄汚くなっているカーペットが敷かれていた。
木でできたアンティークな教壇の上には巨大な木をモチーフにしたステンドグラスがあり、日の光に照らされて実に神聖的な雰囲気を醸し出している。
思わず声を出してしまうくらいに綺麗な光景だった。

「おぉ…」

「ふふ、すごいでしょう? 僕も初めてここを見た時は貴女みたいな反応をしちゃったんだよね。」

「そりゃそうですよ。こんな幻想的というか、神聖的というか……私もここに入信したかったですね。」

「ああ……貴女は異界の邪神に無理矢理、信者にさせられたんだよね。僕も貴女みたいな人が入ってくれると嬉しいなぁ」

 うん、クーアには私のことは話してある。
説明も適当に信者名乗ったら勝手に信者にさせられたし、大体合ってる。
何であそこで邪神の名前なんかだしたんでしょうね。もし過去に戻れるなら過去の自分を殴りたいですね。……まぁ過去になんて戻ったらティンダロスの猟犬わんわんおが永遠に襲ってくるので行けるとしても行きませんが……

閑話休題それはともかく

 礼拝堂を見させてもらった後はその近くにある。聖霊派所属の孤児院に行かせてもらうことになった。
そこは三角屋根とレンガで出来た正に西洋の家という感じの建物とグラウンド的な場所があった。
 そこで子供達が元気良く駆け回っていた。
きゃーきゃーわいわいと賑やかというか、騒がしいというか……

「凄い元気ですね……」

「ええ、本当に、僕も振り回されっぱなしですから」

 クーアはそう言って苦笑いしていた。
うん、凄いよね。実際、他のシスターらしき人も鬼ごっこでもしてるのか、肩で息をしながら子供達を追い掛けている。
 私が若干、遠い目をしていると誰かが袖を引っ張っている感覚があり、そちらを見るとネラちゃんが狙っているのかは知らないが上目遣いと妙にキラキラした瞳で私に

「おねえちゃん!あそぼ!」

と言ってくる。
……こんなの断れる人は相当、良心がない人だと思います。
 ネラちゃんが将来、魔性の女になりそうだなぁと思いながら遊びの輪に加わった私は、子供たちに最初こそ警戒されたが時間が経つにつれて気のいいお姉ちゃんになったらしい。
私が実は女性ではなく男性だと言っても冗談だと受け取られたらしく、みんなが笑っていたがうん、私は別に悲しくなんてない……ないったらないのだ。


 そうして夕方ごろになると遊び疲れてウトウトしてる子達が多くなったので孤児院に戻ることになった。
子供たちの遊びで仲良くなったシスターと話したり、まだ元気が有り余っている子供に揉みくちゃにされつつも夕飯時になると私にも夕飯が提供された。
 その内容は【具材無しのコンソメスープ】【硬い黒パン】【焼きベーコン】のみ
………味は美味しかった。きっと料理スキルを持ってる人が作ったのだろうが幾らなんでも食べ盛りの子供たちには少なすぎる量だ。
辺りを見回すとまだ食べたそうな顔の子供がいた。………仕方がありません。

「すみませんが厨房を貸していただきますか?」

「ええ、いいですけど」

 了承を貰った私は厨房に、家事スキルを上げるために用意した合計で200万Cくらいした調理セットを取り出す。
これには料理がより美味しくなり、量が増えることがあると言う効果がある。

 用意する具材は大量にあるオーク肉を使う。これは高級な豚肉と言った感じで中々に美味しい。
そのロース肉塊を3cmくらいにカットすると包丁の刃のない方で肉を叩いて柔らかくする。

 次に脂身と赤身の間に筋があるのでそのラインに沿って何箇所か、包丁を入れる。この時に包丁を立てると他の部分を傷つけないのでおすすめです。

 柔らかくなったロース肉の両面に塩胡椒を振りかけて味をつけていく。少しに振ると焼いた時に味が少し落ちるので多めにかけていく。
 そして小麦粉をまぶしていく。この時に小麦粉が多すぎると重たい食感になってしまうので注意が必要。

 ついにロース肉を焼いていく。サラダ油をひいて火を付けて十分に温かくなるのを確認してから肉を投入する。
その瞬間、ジュウという美味しそうな音と肉特有の美味しそうな香りがあたりに充満する。
それによって厨房の入り口側になにやら、視線を感じるが一旦無視して次の行程に入っていく。
 弱目の中火でじっくりと両面を焼くのだがこの時に何度も肉を触ると肉汁が逃げてしまうので触るのは必要最低限にしたほうが良いのです。

「これで完成っと」

 名付けて【オークの塩胡椒ロースステーキ】まんまだけど分かりやすいのでいいのです。
実に美味しそうなステーキを切り分けて皿に盛ると厨房の入り口にいる子供たちを手で呼び寄せると

「どうぞ、食べて下さい」

 それを聞いた子供たちはもう一度食べていいのか不安そうな顔で聞いてくるが「せっかく作ったのにこれでは冷めてしまいますね……」と目を伏せて言ったら爪楊枝が刺さっているステーキを食べてくれた。
満面の笑みで食べる子供たちを緩んだ口元を自覚しながら見ているとクーアが申し訳なさそうな雰囲気を出しながら話しかけてくる。

「あの、よかったのですか? オーク肉なんて高級なものを食べさせて……」

「いやぁ、最近はダンジョン巡りをしていたせいで肉が有り余っていたので寧ろこっちが助かってますよ」

「でも、売って仕舞えばかなりの金額に……むぐっ!?」

 四の五の言うクーアの口にステーキを無理矢理、入れてやると、最初は戸惑っていたがとても幸せそうな表情で肉を噛み締めていた。

「私としても美味しく食べてる姿を見たいだけなので利益とかは考えずに、ね?」

 そう言って笑顔を見せると突然クーアが顔を真っ赤にしてしまう。不思議に思って顔を近づけるとボフンと煙を立てながら倒れ込んでしまう。

「ちょ、大丈夫ですか!?」

『………我が友は天然のたらしだったようだな』

「何言ってるんですかボル……あ!クーア、クーアが何か、悟りを開いたような顔をして!メディック!メディーック!!」


 その後は衛生兵シスターに引きずられていったクーアを尻目にステーキを焼いて、誰かが酒を持ってきてとあるシスターが酔っ払ってシルト(金髪緑眼のシスター)が好きだと暴露してシルトの方もそのシスターが好きだと言う超展開が起こったりしたが何も問題はなかった。
ただ少し気になるのは翌日のクーアが妙によそよそしかったこと……私が何か嫌われることしたのでしょうか?

『……あの小娘の恋が実るのは難しそうだな、凶暴犬クリムが守ってるのもあって難関不落だなこれは………精々我が祈っておいてやろうではないか。』

「ん? 何か言いましたか?」

『何も言ってないが? 空耳だろう』



【Tips】住人との恋愛について。住人ことNPCの好感度が一定以上に高まると恋愛度というのが新たに解放される。
これが最大まで貯まるとそのNPCと結婚やらなんやらが出来るとか……理論上、ニャルもNPCとなるので攻略は可能だがお勧めはしない。

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【スケジュール】
12月4日金曜日 18時

【ニャルの語り】

やほやほ、ニャル様だぞう。
最近、ボクと同じ口調の娘が主人公やってるハイファンを再開したらしいけど妖怪ブクマ剥がしが現れないらしい……まぁ厨二病が気がついてないだけな気がするけどね!

さぁてボクに送られてきた質問を返していくぜい!


@にゃる様「はい!じゃあ質問!好きな食べ物と嫌いな食べ物は何ですか?VRだったら好きな食べ物の外見で嫌いな食べ物の味をつけられる気がするんですが!それ食べてほしいです脳が混乱すると思います!」

 おぉう、中々に面白そうな質問だね。
ボクの好きな食べ物、というよりもこの体の好みは魚で嫌いな食べ物はグレープフルーツだね。

ふむふむ……これで厨二病の大の嫌いな魚をアイツの大好物のササミに変えれば……ふふふ。
日頃の恨みを晴らしてくることにするよ、きっと次回はボクのみが登場するからよろしくね!

@ニャル様へ「は?お前僕っ子幼子かよ そっちのあなた様のお名前教えてくださいお願いします」

 ええ……そいつはロリコンでショタコンすぎたが故に肉体を自分好みの幼女にした変態だよ?
ボク達の中でも特異な存在だからね……名前はパーバード、変質者とかそんな意を持つ名前だよ。

@ニャル様へ「え?邪神なのにシスターなの? ありがとうございます」

 それもパーバードの趣味だね……アイツだけ個性持ちすぎじゃないかな。
しかもアイツは自分で自分を崇めてる自己信仰ナルシストだよ? マジで変態だからマジで近づかないのが身のためだからね?

@ニャルへ「お前も幼女になれ そうすりゃシナリオ妨害されても怒んないから」

 キミさぁ、やっと敬称を付けたかと思ったらまた呼び捨てかい?
それにボクに言われてもねぇ。
シナリオ作者か、GMに言えばいいんじゃないかな……そもそもボクはキミ達をかき回す存在だから別に怒ってくれても構わないよ? むしろウェルカムだね!

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