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第四章 都市防衛戦の波乱

神殿の攻略4【ラン&カルマ編】

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いつの間にか60話達成してました。この前50だったのにもう60ですよ。このまま100話を目指すのも悪くないですね。


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◇scene ~ラン~


 兄貴とボルガルトは数時間ほどカードゲームに勤しみ。俺達は面を食らって呆然と眺めることしかできなかった。
……仕方ないだろ、戦闘が始まると思ったらルールも分からないカードバトルが始まったんだから、誰でも呆然とするに決まってる。
てか兄貴のテンションのギアが上がりまくって怖いんだけど……高笑いしながら遊んでるんだけどちょっとヤバくね?

「カルマが壊れた。」

「お兄ちゃんのネジが何処かに吹っ飛んだね。」

「あれは……ちょっと見ていられませんわね。」

 うん。どうやら俺以外も思っていたようだ。
いつもの兄貴はもっと落ち着いてるはずなんだけど……ん?

「なぁ、お前らさ。兄貴の頭の上に星が回ってるように見えるんだけど」

 俺が兄貴を観察していると何やら兄貴の頭上にクルクルと星が回っていた。気のせいか兄貴の目も回ってるような………もしかしてだけどあれって。
俺と同じ考えに至ったらしいユリと顔を見合わせて頷き合うと二人同時に走り出す。
ユリは兄貴の背後に回り、俺は正面から兄貴を殴ろうとする……が俺の拳はカードを持っていない手で受け止め足払いされて転んでしまう。
その隙にユリが複製クリムゾンダガーを投擲しながら兄貴の後頭部を狙い拳を振るう。
どうやら今の兄貴には見えざる盾を使う余裕がないようで短剣を弾くがユリの接近を許してしまう。
俺も体制を整えて兄貴の頭を殴る。注意を怠っていたのか見事にユリの拳を避けようとした兄貴の後頭部にクリーンヒットし兄貴は「あぐっ」という声を漏らしながら地面で悶えていた。

『……一体何をしとるのだ。』

何故か・・・付いていた状態異常の混乱を剥がすためにショックを与えただけだ。」

 そう兄貴はいつの間にか混乱の状態異常に掛かっていたのだ。混乱は急にハイテンションになったりして行動が出来なくなるもので本来なら精神力MNDの高い兄貴には精神系状態異常である混乱にかからないはずなのだ。
例外としては相当強い精神攻撃を受けた場合だろうか、ちなみに強いアンデットはよく精神攻撃を使うのだとか。
 俺の目が細められていくのを感じつつ大太刀の鯉口を切りながらボルガルトに話しかける。

「アンタさ、うちの兄貴に精神攻撃をしただろ。」

『何を根拠に──』

「そもそも兄貴の精神力は強靭だ。並の精神攻撃を受けてもびくともしないだろう。しかしだ、何事にも例外はある。それが高位のアンデットが使う確か……精神魔術だったか?それを使えば幾ら精神力の高い兄貴でもステータスの差で負けてしまい状態異常にかかる。」

 暇な時に見ていた掲示板の情報を掘り返しつつ考えを纏める。
プレイヤーで精神魔術を手に入れた人の話ではスキルレベル1のマインドショックは周りの敵に混乱の状態異常を付与するのだとか。

「アンタは精神魔術のマインドショックを兄貴に範囲を絞って当ててたんじゃないか?」

 お前が何をしたのか分かってるぞと威圧を掛けながら睨み付ける。
ボルガルトは赤い光を揺らめかしながらこちらを何も言わずに静観していた。

「うぅ、一体何が……何ですかこの状況は?」

 俺がボルガルトと話しているうちに悶えていた兄貴が復帰したようだ。


◇scene ~カルマ~


 何故か頭が痛い。というか何で私はカードゲームしてたんでしょうか。
別に対戦相手に困っていたわけでもそこまでハマってた訳でもないんですけど……取り敢えず状況把握に勤しむことにした方が良さそうですね。

 さてと薄らとだが一応記憶はある。何故だかカードゲームに熱狂していたのは置いておいてランが言っていた。私が状態異常である混乱にかかっていたということはもう分かっている、それとランが怒ってることも。


 私は立ち上がるといつの間にかクリムが隣に立っていた。
驚く声を出すのを堪えつつ何故だか頭を撫でて欲しそうにしてたので濡烏色の髪を梳くように絹のような滑らか撫でて髪の毛を撫でると本人は気持ち良さそうに目を細めていた。
……小動物みたいなせいか心が落ち着きますね。これがアニマルセラピーというものでしょうか?

 和やかな雰囲気が私達から出てるのを感じ取ったのか、ランが怒鳴ってくる。

「こっちが真面目にシリアスしてるのに何で桃色空間を作り出してるんだよ!」

『我輩も言うのはシリアスだし控えてたけど、流石にここでそれは無いと思うぞ!』

 ええ……理不尽な。
二人の言葉を受け流しつつ手は止まらない、手触りが気持ち良いからね。仕方ないね。
この娘は多分魔性ですね。ええまさか私が魅了の状態異常に陥るとは……でもまぁ可愛いから良いですね、

『カルマよ!お主は何故にその小娘を撫でる手を止めぬ!?というか小娘も小娘で抵抗しろ!』

「そうだぞ!兄貴もクリムも何でこの緊張が高まっていた空間でイチャつけるんだよ!」

 何でって言われてもただ頭を撫でているだけだし、私達は顔を見合わせて首を傾げる。

「ああぁぁ!兄貴が美少女なせいで可愛いと思ってしまった!」

『落ち着くのだ!深呼吸をして気持ちを落ち着かせろ!』

「そ、そうだな!すぅーはぁー……。」

 ……二人とも、私が言うのも何ですが仲良いですね。まるで漫才を見てる気分ですよ。
何だか楽しくなって来ました。さすがの私も気分が高揚します。
撫でながら近くにあった黒い椅子に座って膝にクリムを乗せる。ここだと丁度髪が頭の位置にくるので女子特有の良い匂いがする。
もしかすると私って髪フェチなのかもしれませんね。呑気に考えているとランとボルツッコミは額に怒りマークを浮かべながら叫ぶ。

「何でゆったりしているんだよ!ここは一応ダンジョンなんだよ!リラックスできる場所じゃないんだ!」

『我輩たちがしていたシリアスを返せ!』

 そんなこと言われても……ん?
本が振動したので左手で撫でつつステータスを開くと【特殊行動を達成しました。撫でるスキルを解放します。】などと言う表示が出た。
これはノーカテゴリという新たなカテゴリに分類されてどうやら撫でるのが上手くなるようだ。スキルレベルはないみたいでそれ以上に上手くなることはないようだ。

「ふにゃ~」

 おやおやそんな緩み切った声を出しては男に襲われますよ?
本当に可愛いですね。頬が緩むのが自覚できるほどに可愛いです。

「クリムちゃん!?女の子がしてはいけない顔をしてるよ!?」

「あぁ、何でしょう。カルマ様の聖母のような笑みを見ていると何故だか……。」

「アリス!?しっかりして!なんで鼻血だしてるの!?ここゲームだよ!?」

「……もう、疲れたよパ○ラッシュ。」

『おい!変なことを言って死んだような顔をするな!というか口から魂が漏れ出てないか!?ランと言ったか!それ以上でると命に危険性が!』

 実にカオスな場所ですね。ふむこのガヤガヤ感も意外と良いものです。
私は落ち着いた表情でクリムの頭を撫でながら一人呟く。

『あぁ、もう!滅茶苦茶だ!あ!おいランよ!もう少しで取り返しのつかぬことに!』


【Tips】シリアスとは。極めて真面目な様。本格的なさま、事態などの深刻なさま等の意味。


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【スケジュール】
10月30日金曜日 18時投稿
11月1日日曜日 18投稿予定

【ニャルの一言】

シリアスだと思った?ねぇねぇシリアスだと思った?残念!コメディーさんでした!

いやぁ、今回はランだけじゃなくカルマの視点も入ってたけど見ないうちに天然やらなんやらのスキルが上がったんじゃないかな。
ふむ。ボクもあそこに混じってこようかな?

あ、今回は質問返しはなしだよ。質問がゼロだったからね。
それよりも聞いてくれるかい?何とこの質問コーナーがボクの力によりパワーアップしたのさ!
何と何とボク以外のキャラクターにも質問が送れるようになったのだよ!
これはボクがそのキャラの精神に……ってこんな話はどうでも良いか。

とにかくカルマやランとかこの作品に出た。ほぼ全てのキャラに対応してるからぜひぜひ送ってくれたまえ。

さてと露骨なコメント稼ぎをしたところで今回はここまでだ。次回もよろしくね!

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