60 / 93
第四章 都市防衛戦の波乱
神殿の攻略4【ラン&カルマ編】
しおりを挟むいつの間にか60話達成してました。この前50だったのにもう60ですよ。このまま100話を目指すのも悪くないですね。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
◇scene ~ラン~
兄貴とボルガルトは数時間ほどカードゲームに勤しみ。俺達は面を食らって呆然と眺めることしかできなかった。
……仕方ないだろ、戦闘が始まると思ったらルールも分からないカードバトルが始まったんだから、誰でも呆然とするに決まってる。
てか兄貴のテンションのギアが上がりまくって怖いんだけど……高笑いしながら遊んでるんだけどちょっとヤバくね?
「カルマが壊れた。」
「お兄ちゃんのネジが何処かに吹っ飛んだね。」
「あれは……ちょっと見ていられませんわね。」
うん。どうやら俺以外も思っていたようだ。
いつもの兄貴はもっと落ち着いてるはずなんだけど……ん?
「なぁ、お前らさ。兄貴の頭の上に星が回ってるように見えるんだけど」
俺が兄貴を観察していると何やら兄貴の頭上にクルクルと星が回っていた。気のせいか兄貴の目も回ってるような………もしかしてだけどあれって。
俺と同じ考えに至ったらしいユリと顔を見合わせて頷き合うと二人同時に走り出す。
ユリは兄貴の背後に回り、俺は正面から兄貴を殴ろうとする……が俺の拳はカードを持っていない手で受け止め足払いされて転んでしまう。
その隙にユリが複製クリムゾンダガーを投擲しながら兄貴の後頭部を狙い拳を振るう。
どうやら今の兄貴には見えざる盾を使う余裕がないようで短剣を弾くがユリの接近を許してしまう。
俺も体制を整えて兄貴の頭を殴る。注意を怠っていたのか見事にユリの拳を避けようとした兄貴の後頭部にクリーンヒットし兄貴は「あぐっ」という声を漏らしながら地面で悶えていた。
『……一体何をしとるのだ。』
「何故か付いていた状態異常の混乱を剥がすためにショックを与えただけだ。」
そう兄貴はいつの間にか混乱の状態異常に掛かっていたのだ。混乱は急にハイテンションになったりして行動が出来なくなるもので本来なら精神力の高い兄貴には精神系状態異常である混乱にかからないはずなのだ。
例外としては相当強い精神攻撃を受けた場合だろうか、ちなみに強いアンデットはよく精神攻撃を使うのだとか。
俺の目が細められていくのを感じつつ大太刀の鯉口を切りながらボルガルトに話しかける。
「アンタさ、うちの兄貴に精神攻撃をしただろ。」
『何を根拠に──』
「そもそも兄貴の精神力は強靭だ。並の精神攻撃を受けてもびくともしないだろう。しかしだ、何事にも例外はある。それが高位のアンデットが使う確か……精神魔術だったか?それを使えば幾ら精神力の高い兄貴でもステータスの差で負けてしまい状態異常にかかる。」
暇な時に見ていた掲示板の情報を掘り返しつつ考えを纏める。
プレイヤーで精神魔術を手に入れた人の話ではスキルレベル1のマインドショックは周りの敵に混乱の状態異常を付与するのだとか。
「アンタは精神魔術のマインドショックを兄貴に範囲を絞って当ててたんじゃないか?」
お前が何をしたのか分かってるぞと威圧を掛けながら睨み付ける。
ボルガルトは赤い光を揺らめかしながらこちらを何も言わずに静観していた。
「うぅ、一体何が……何ですかこの状況は?」
俺がボルガルトと話しているうちに悶えていた兄貴が復帰したようだ。
◇scene ~カルマ~
何故か頭が痛い。というか何で私はカードゲームしてたんでしょうか。
別に対戦相手に困っていたわけでもそこまでハマってた訳でもないんですけど……取り敢えず状況把握に勤しむことにした方が良さそうですね。
さてと薄らとだが一応記憶はある。何故だかカードゲームに熱狂していたのは置いておいてランが言っていた。私が状態異常である混乱にかかっていたということはもう分かっている、それとランが怒ってることも。
私は立ち上がるといつの間にかクリムが隣に立っていた。
驚く声を出すのを堪えつつ何故だか頭を撫でて欲しそうにしてたので濡烏色の髪を梳くように絹のような滑らか撫でて髪の毛を撫でると本人は気持ち良さそうに目を細めていた。
……小動物みたいなせいか心が落ち着きますね。これがアニマルセラピーというものでしょうか?
和やかな雰囲気が私達から出てるのを感じ取ったのか、ランが怒鳴ってくる。
「こっちが真面目にシリアスしてるのに何で桃色空間を作り出してるんだよ!」
『我輩も言うのはシリアスだし控えてたけど、流石にここでそれは無いと思うぞ!』
ええ……理不尽な。
二人の言葉を受け流しつつ手は止まらない、手触りが気持ち良いからね。仕方ないね。
この娘は多分魔性ですね。ええまさか私が魅了の状態異常に陥るとは……でもまぁ可愛いから良いですね、
『カルマよ!お主は何故にその小娘を撫でる手を止めぬ!?というか小娘も小娘で抵抗しろ!』
「そうだぞ!兄貴もクリムも何でこの緊張が高まっていた空間でイチャつけるんだよ!」
何でって言われてもただ頭を撫でているだけだし、私達は顔を見合わせて首を傾げる。
「ああぁぁ!兄貴が美少女なせいで可愛いと思ってしまった!」
『落ち着くのだ!深呼吸をして気持ちを落ち着かせろ!』
「そ、そうだな!すぅーはぁー……。」
……二人とも、私が言うのも何ですが仲良いですね。まるで漫才を見てる気分ですよ。
何だか楽しくなって来ました。さすがの私も気分が高揚します。
撫でながら近くにあった黒い椅子に座って膝にクリムを乗せる。ここだと丁度髪が頭の位置にくるので女子特有の良い匂いがする。
もしかすると私って髪フェチなのかもしれませんね。呑気に考えているとランとボルは額に怒りマークを浮かべながら叫ぶ。
「何でゆったりしているんだよ!ここは一応ダンジョンなんだよ!リラックスできる場所じゃないんだ!」
『我輩たちがしていたシリアスを返せ!』
そんなこと言われても……ん?
本が振動したので左手で撫でつつステータスを開くと【特殊行動を達成しました。撫でるスキルを解放します。】などと言う表示が出た。
これはノーカテゴリという新たなカテゴリに分類されてどうやら撫でるのが上手くなるようだ。スキルレベルはないみたいでそれ以上に上手くなることはないようだ。
「ふにゃ~」
おやおやそんな緩み切った声を出しては男に襲われますよ?
本当に可愛いですね。頬が緩むのが自覚できるほどに可愛いです。
「クリムちゃん!?女の子がしてはいけない顔をしてるよ!?」
「あぁ、何でしょう。カルマ様の聖母のような笑みを見ていると何故だか……。」
「アリス!?しっかりして!なんで鼻血だしてるの!?ここゲームだよ!?」
「……もう、疲れたよパ○ラッシュ。」
『おい!変なことを言って死んだような顔をするな!というか口から魂が漏れ出てないか!?ランと言ったか!それ以上でると命に危険性が!』
実にカオスな場所ですね。ふむこのガヤガヤ感も意外と良いものです。
私は落ち着いた表情でクリムの頭を撫でながら一人呟く。
『あぁ、もう!滅茶苦茶だ!あ!おいランよ!もう少しで取り返しのつかぬことに!』
【Tips】シリアスとは。極めて真面目な様。本格的なさま、事態などの深刻なさま等の意味。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
【スケジュール】
10月30日金曜日 18時投稿
11月1日日曜日 18投稿予定
【ニャルの一言】
シリアスだと思った?ねぇねぇシリアスだと思った?残念!コメディーさんでした!
いやぁ、今回はランだけじゃなくカルマの視点も入ってたけど見ないうちに天然やらなんやらのスキルが上がったんじゃないかな。
ふむ。ボクもあそこに混じってこようかな?
あ、今回は質問返しはなしだよ。質問がゼロだったからね。
それよりも聞いてくれるかい?何とこの質問コーナーがボクの力によりパワーアップしたのさ!
何と何とボク以外のキャラクターにも質問が送れるようになったのだよ!
これはボクがそのキャラの精神に……ってこんな話はどうでも良いか。
とにかくカルマやランとかこの作品に出た。ほぼ全てのキャラに対応してるからぜひぜひ送ってくれたまえ。
さてと露骨なコメント稼ぎをしたところで今回はここまでだ。次回もよろしくね!
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる