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第三章 愛の形
悲劇の厄災
しおりを挟む何とか書ききった……5000字超えちゃったけど限りの良いところで投稿
あと今回はダイスは振ってません
……別に面倒とか言う理由じゃないよ?
一々技能値調べるのとかダイス振るのとか面倒って思ってないですから
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アマリス……いや悲劇の厄災はトゲが生え所々に薔薇が咲いている細い鞭のような茎を何本も振るう。
その先端は正に音速である上に今は夜、余程運が良くなければ避けることは不可能と言える、しかしここはゲームの中であり彼らにはゲーム補正があるためギリギリ見たり避けることは可能となる。
「うわっ」
「おわっ!」
「ッ……これ、当たったら痛いじゃ済みませんよ」
カルマは地面を見つつ呟く、硬いレンガで出来ているであろう地面は鞭の攻撃で抉れていた。
明らかに当たってはいけない系の攻撃だろうと言うのは見れば分かる。
ランは鞭攻撃を避けると左手で鞘を抑えながら鯉口を切る右手で柄を持ち、いつでも抜刀出来る体制に移行する。
そうして目を瞑ると周りの情報をかき集めだす、化け物が蠢く音、兄や姉の鼓動や温度、自身の吐息、不要な情報を排除し必要な情報を収集する。
ゆっくりと目を開けるランの視界は全てが黒と白で構成された世界となっていた、そしてふと空を見上げると再び鞭が迫っている事に気がつく
気が付いた時点でもう当たっていてもおかしくないのだが鞭はスローモーションで迫って来る。
ランはまだ距離があるにも関わらずに抜刀しつつ技名を呟く
参の太刀“飛影”
それは刀術3になると会得出来る奇怪な技、自身の刀に剣気を込めそれを刃として放出するもはやカルマ並みの変態技術である、ちなみに剣気とはSPと同じものだと認識してほしい。
刀の影を飛ばすという訳の分からない技は凄まじい勢いで鞭へ迫りいとも容易く切断する。
切断と共にランのスローモーションは解除され徐々に色彩や音が戻ってくる、おそらく集中した際に不要な情報と判断されたのだろう。
これがランの能力、異常なまでの集中力である。
カルマが異常な精神力だとするならばランは集中力となるこれのお陰でランは軽く集中するだけでいつでもゾーン状態になれるとか言う本当に異常としか言えない能力を保持している。
なおこの能力はランにより【明鏡止水】と名付けられている、理由はカッコいいからとのこと。
「よっしゃ!斬れた!」
ランが一人で喜んでいるとユリが呆れたような目をしていた。
「(なるほど、あの鞭は攻撃すれば破壊可能と……部位破壊みたいなものでしょう、アマリスの周りに何処から生えてきたのか大量の鞭がありますし破壊しきるのは難しいですね。)」
「ユリ、付与魔術使えましたよね」
「う、うん使えるけどまだスキルレベルが1だから使い物にならないよ?」
「それでもないよりはマシでしょうから使って下さい」
「分かった」
そうしてユリは詠唱を開始する。
こんな呑気に話してて問題無いのかと問われそうだが
「参の太刀“飛影”ッ!参の太刀“飛影”ッ!参の太刀“飛影”ッ!」
と言った具合にランが殲滅してるのでしばらくは安全だろう。
数秒すると詠唱が完了したのか「ブースト」と言うとカルマの身体が淡い赤の光に包まれる。
カルマは少しだけだが身体が軽くなった事に気が付く、これなら……
「ありがとうございます、この魔術の効果時間は?」
「10分だよ、私は鬱陶しい鞭の牽制してるからお兄ちゃんは本体を」
「分かりました」
軽く答えると素早く駆け出す、地面から本体に近づけるものかと鞭が迫り出して音速の攻撃を仕掛けるもスキルの“身軽”や付与魔術のお陰ですばしっこいカルマに避けられてしまう。
それを感知した悲劇の厄災が次なる手をうつ
新たな鞭を数え切れないほど出現させる……否、それは鞭では無かった、その先端部分には半径50cmはあるであろう巨大な薔薇が咲いていた。
そこに歪みが発生する、生前のアマリスが使っていた無属魔術に類似しているが違う、周囲の魔力を吸い取り歪みは成長していく次第に青白い光となり顕現す
カルマはそれに気を向けつつ迫ってくる鞭を避ける、足を狙ってくる物は跳躍しその状態で攻撃してくればクローで斬り裂き、足元から攻撃してくるのにはブーツで踏み付けそれをバネに一気に跳躍する。
もはや悲劇の厄災は眼下にいる、このまま倒し切るだろうと兄を信頼する弟妹ならそう思っただろう、しかしそうはならない、何かをチャージしていた花がそれを放ったのだ。
純粋なる魔力が圧縮され球体になった魔力塊は圧縮を解くとそれは一方向に進む、レーザーとしか言えないであろうそれは一瞬でカルマに穴を開け絶命させた
ように思えた、カルマは攻撃を食らっていないかのようにピンピンしていた。
このトリックは単純である、ただ“陽炎”を使っただけだ、“陽炎”の効果は【3秒間攻撃判定を無効化する】と言う何ともチート染みた性能である。
しかし10分間に一度しか使えない為に緊急回避としてしか使えないので一応バランスは取られてる?はずだ。
攻撃を回避したカルマが何かを呟くと腕と脚が淡い青に包まれる。
再び鞭を踏んで悲劇の厄災に近づく
その頃、カルマに集中砲火していたのを良い事にランは悲劇の厄災の下まで近づいていた。
「太い茎だな……取り敢えず斬ればダメージを与えられるだろ」
という考えのもとランは納刀する、“抜刀”術の使用条件を満たすためである。
残りSPは2、それを回復するためにカルマから貰った丸薬を口に放り込む、その瞬間に口の中に何とも形容し難き苦味が襲い掛かってくる。
吐き出しそうになるも口に手を当てて我慢する。
「んんー!!!」
これは気力の丸薬と言うカルマがガラクタ堂で購入した回復アイテムである、これはポーションよりも苦味が強い代わりに口の中に入れておけば常に回復し効果もポーションよりも強いと言うものだ。
無理矢理口の中の苦味を排除しつつ目の前の巨木のように見える茎を切り裂く準備をする。
刀術アビリティにはちょっとした隠し要素がある、それは数字の順番にアビリティを使用すると威力が高まると言うもの、これを積み重ねれば最後には山を切り崩せるなどと言う眉唾な話があるほどにこの要素は強い。
「すぅーはぁー……壱の太刀“刹那”」
太刀が振るわれる、その刃は一閃を残しつつ茎を斬り裂く
「弐の太刀“落陽”」
抜刀により打ち上がった太刀を両手で持ちまたも斬り裂く
「参の太刀“飛影”」
落陽で下がった太刀をひっくり返して刀の影を飛ばしつつ太刀でも攻撃を仕掛ける。
ランの連撃を食らい茎は今にも折れそうな程に傷付いていた。
ランが茎を斬り裂いているのと同時期
カルマは悲劇の厄災に近づきつつ彼女が弱っているのに気がついた。
その証拠に鞭の勢いが落ちていた、それを好機と思いカルマは鞭を踏みつけ勢いをつけると一気に悲劇の厄災に接近する。
今まで何故接近しなかったかと言うと集中砲火を避けるためである、今は“陽炎”はクールタイム中であり使う事が出来ない、その上あのレーザーは避けることが不可能なために動き回って翻弄するしか無かったのだ。
カルマは見事に花弁の上に着地した、この花弁は見た目以上に丈夫なようでカルマが乗っても折れることはなかった。
カルマが悲劇の厄災に殴りかかろうとした瞬間、視界の端に魔力塊を集めている花が目に入る、それは今にも発射されそうなのだがさらに鈍い輝きを反射させる一本の短剣が茎を裂いてレーザーを無効化する、驚いて後ろを向くとユリがサムズアップしているのが見えた。
カルマもそれを返しつつ、目の前の敵に集中する。
大丈夫、親愛なる妹と弟が道を切り開いてくれたから攻撃なんて来ない。
そう確信しカルマは超近接戦闘を開始する、敵はただのサンドバッグである、さぁ思う存分殴り散らせ、そう誰かがカルマの耳元で囁く
カルマがクローで切り裂こうとすれば障壁のようなものに阻まれる、悪足掻きだろう。
そんなもの関係ないとカルマは爪を立てる、その衝撃に耐えられないのか障壁が変な音を立て始める、それと同時に頑丈なクローの爪にヒビが入る、幾ら再生機能が付いていてもこの修繕は時間が掛かるだろう。
クローが悲鳴をあげているにも関わらずカルマは爪を立て続ける、クローと障壁の攻防戦は
“バキッ”
“パキッ”
壊れつつも主人に突破口を開いたクローに軍配があがった、爪は粉々になってしまったがそれを支える金具があるので攻撃には使える。
彼女を殴る、殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴りまくる。
カルマのラッシュにより悲劇の厄災は綺麗な紅のドレスはボロボロと悲惨な物となり、本体の目からは涙が溢れていた。
「これで!終わりだ!」
その拳は心無しか金色に輝いているように見える。
カルマの決定的な一撃の衝撃に悲劇の厄災は耐えきれなかったらしく萎れていく、どうやら悲劇の厄災を倒し切ったようだ。
勝利を喜ぶのはまだ早い、ランによりボロボロとなった茎はその衝撃のせいで完全に折れてしまう。
「おわっ!」
カルマは茎が倒れる想定外の揺れに耐えきれず、バランスを崩し落下してしまう。
「ランッ!」
「了解だ………ブラスト!」
それを見ていたユリとランは高所から落ちるカルマを救うために暴風魔術のノックバック効果を使い落下速度を緩める。
カルマは風を利用しつつダメージを最小限に抑えて着地に成功する。
「ふぅ……死ぬかと思いました」
流石のカルマも高所からの落下は肝が冷えたらしく珍しく青い顔をしていた。
「無事でよかった……」
「魔術での減速も出来るか分からなかったし一か八かの状況だったな……」
どうやらユリとランにとっても心臓に悪いことだったようでこちらも青い顔をしている。
持ち直したのかカルマが
「一体何だったんでしょうね……あれ」
「確かに……アマリスさんがあんな怪物に変貌するなんて」
「キーワードは兄貴の識別結果の悲劇の厄災、ディザスターとか言うやつだよな」
「ディザスター……災害とか言う意味でしたね、でもそんな大層な名前をしていた癖に弱かったんですけど……」
カルマ達が考察をしていると
「それは彼女が幼体だったからだよ」
何処からか声が聞こえる、それはカルマにとって聞き覚えのある声
カルマが嫌な気配のする方に鋭い視線を向ける、するといつの間にか現代風の服を来た絶世の美女が立っていた。
それに気が付くとユリとランは動揺する、当たり前だろう、人が自身の意識外から出現したのだ、驚かない方がおかしい
「おやおや、そんなに熱い視線を送らないでくれよ照れるじゃないか」
そんな戯言を顔を赤らめずに言うジーニスにカルマは鋭い視線を向けたままジーニスに問いかける。
「何故アナタがここに?」
「う~ん、難しい質問だね……ボクのおもしろ……大切な信者の見守りかな?」
「面白いって言いかけましたよね……」
「あははナンノコトカナ」
やり取りを呆然と見ていたユリは当然の疑問を口にする。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「その女の人だれ?」
「あ」
そうこの場でジーニスの正体を知っているのはカルマだけなのだ、どう説明しようか迷っているとジーニスが先手を打つ
「おっとボクの名前はジーニス、ジーニス・ニャルラだ、君のお兄さんとの関係は……友達だね」
「誰がアナタなんかと友達ですか……」
まるでコントのような掛け合いを見ていたユリは笑いながら「二人が仲が良いことは分かったよ」と言う。
それに対するカルマとジーニスの対応は反対だった。
「誰がこんな根が腐ってそうなやつと……」
「おやおや、ボクはそれなりに仲が良いと思ってたんだけど?」
ジーニスを嫌悪するカルマとカルマに好意?を抱くジーニス、それを見ながら困惑しているランと笑っているユリ、まさにこの場は混沌である。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
【Tips】くんは今日はお休みです。
さてどうでしたでしょうか、今回のバトルシーン
正直自分はバトルシーン書くのが苦手なので改善点があったらどしどし感想下さい(露骨なコメ稼ぎ)
今回は探索中影が薄かったランに活躍してもらいました、その代わりユリの影が薄かったですが彼女は探索型なので仕方無いのです。
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