上 下
5 / 93
第一章 混沌の目覚め

降り立つ世界

しおりを挟む








 視界が正常になると私は噴水のある広場に立っていた。水の滴る音や頬を撫でる風、人々の喧騒、その情報はここが現実だと言われても驚かないほどに凄まじかった。
 街並みは中世ヨーロッパかと思ったらビルのような建物や何故か森林があると言う混沌カオスっぷりだった。散策している最中さいちゅうにNPCもとい、住人と話をしたのだが全員中身に人間が入っているとしか思えなかった、あと全員女扱いして来た、ツライ

ちなみに私の今の服装は【上質な服】だそうだ、装備画面を見たらそう言う名前だと分かった。
そのついでに掲示板も覗いてみたのだがどうやら都市によって初期の服装が違うらしい。性能は【成長加速+5%】というもの、このゲームに防御力という単語は存在しないようだ。

 あと、このゲームにレベルアップは無い、ならばどうやって成長するかと言うとその分野に合わせた訓練をするのだ、訓練と言っても簡単で重い剣を持ってればSTRは上昇する。LUKは……よく分かっていない

そして新たなスキルの取得は3つあり1つは【技能取得試験所】と言う場所でお金を払う事により手に入る。
他の方法では独学で剣などを振う事で我流剣技が取得出来るようだが余り強く無いらしい。
ただ特定のスキルはかなり強いとか、まぁギャンブル性のある取得方法だ。
最後の取得方法だが特殊な住人に教えて貰うと言うものだ、これは実に面倒臭いお使いクエストが連発するが中々に便利なスキルを取得出来るらしい(技能取得試験所では取得不可。)


 まぁ色々な場所を散策しつつマップを見ると、探索者ギルドと言う物を見つけた。

「冒険者じゃ無いのですか……」

冒険者ギルドを検索機能を使っても該当無し、
多分探索者ギルドが冒険者ギルドの代わりなのだろう
多少の嫌な予感はするのだが行ってみない事には分からない、と言う事で探索者ギルドの前にやって来た。

 外観は中世くらいの建物だがよく見るとかなり古い建物のようで、きっと昔からここに建っているのだろう。一眼見た時に何か違和感を感じた気がしたのだがきっと気のせいだろう。
 ギルド内に入ると中は外観とは違い空調が効いて涼しくなっており、見渡すと何か掲示板に載せている紙を見ている人達や受付らしき場所で何かを話す者、私が入って来た事で一瞬騒ついた気がしたが気のせいだ。


 私が堂々と受付らしき場所まで辿り着き受付の人に話しかける。受付の人は営業スマイルを貼り付けながら私に要件を聞いてきた。

「探索者ギルドへようこそ、ここでは探索者登録やクエスト受注、クエストを頼む事も出来ます。」

「探索者登録を頼みます。」

「了解しました。では此処にお名前と職業をお書き下さい。」

 そう言って契約書のような物とボールペンを渡してきた……ボールペン……ファンタジーとは一体、まぁ使いますが
契約書の内容を確認し、小さい字が無いかなどを確認すると私の名前プレイヤーネーム職業ジョブの信仰者を書いた。

「確認します……カルマ・マグナス様ですね。
職業は……信仰者ですか、何の神を信仰しているのですか?」

「え?」

 神を信仰? そもそもこのジョブ信仰者はスキルの回復と神聖を取れるようになるからなので別に何かの神を信仰している訳ではないのだが、世間話で聞いてきたであろうギルド職員の言葉でロールプレイをしてみるのは良いのではないかと思いついた。
テーマは信心深い若者としようか、まぁ直ぐに忘れてしまうだろうが

「……あぁ、私はーー(ちょっと待てよ? 私はこの世界の神の名を知らない、いやマイナーな神だと言えば良いか。誰にするか……よし、これで良いな)

ーーナイアーラトテップを信仰しております。」

「ナイアーラトテップですか……知らない神様ですね。」

「ええ、私の宗教はマイナーなもので」

「あぁ!すみません、失礼な事を」

「いえいえ、良いですよ本当のことですしね。」

「本当にすみません……」

 ちなみにこの会話は私の契約書の手続きをしながらで本当に世間話なのである。しばらくすると別の職員からカードのような物を渡された。

「これは探索者登録証、これがあるとクエストの受注やお金の管理も可能です。」

「これが」

見た目はクレジットカードのようだが私の名前と職業と謎の『10th』と言う文字のみが書かれたものである。

「この『10th』と言う文字は階級と呼ばれる評価でこの階級が上がれば割引などのサービスがあります。
階級を上げるには一定回数のクエストクリアと信用出来るかなどの規定を達成すれば上がります。何か質問はありますか?」

「えっと、最大何個までクエスト受注は出来るのですか?」

「クエストの最大受注回数は5つまでですね。
ただし、クエストには常駐クエストと期間クエストがあります。常駐クエストは常にあるので問題ありませんが期限クエストはその名の通り時間制限があるので受ける際にはお気をつけ下さい」

「では、プレイヤーと呼ばれる者達を知っていますか?」

気になったので口に出してみたのだが受付の職員は少し考え込むような素振りで「プレイヤー……」と呟くと

「えぇと、プレイヤー…………あぁ、訪問者ですか」

「訪問者?」

「ええ、曰く別世界から突如として現れた存在で、仮初の命を持っており、死んでも生き返る能力と成長しやすいと言う特性がある者です。」

「ありがとうございます。ついでにクエストを受けて行っていいですか?」

「どうぞ、そこにあるクエストボードからお取りください。」


なるほど、住民からは私達は別世界から来た観光客みたいなものだと認識しつつ、クエストボードの前まで歩いて行く

常駐討伐依頼 対象ゴブリン 報酬:500C
説明:近くの森でゴブリンを5匹倒して下さい。

初心討伐依頼 対象ウルフ 報酬:武器交換券・初心
説明:近くの草原でウルフを5匹倒して下さい。

初心討伐依頼 対象ロックル 報酬:初心回復薬×5
説明:近くの岩場でロックルを3匹倒して下さい。

と言った紙が目に入って来た、これはウルフの討伐依頼を受けた方が良い。同じ草原で出来るクエストをいくつか見繕うと私はギルドを後にした。








【Tips】カオスのNPCには好感度というものが存在する、これは個別に存在しており人によって『信用』『好感』など種類がある。特殊なものとしてギルドはギルドとしての好感度がある。




––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


ナイアーラトテップはニャルラトホテプの別称です。そしてカルマはTRPGを友人達とたまにやるのでその名前を知っていました。

あと質問などがあったら、感想で送って下さい。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夢精獣

junhon
SF
男性達の間にある奇病が広がりつつあった。 それは何故か夜中に毎晩夢精してしまうというもの!? その原因は男性の生殖器に寄生する寄生生物――マラサイトによるものだった! 誰も知らないその事実を知った一人の少女、新野泉はマラサイトを滅ぼす為に今日も戦い続ける!

奴隷市場

北きつね
ライト文芸
 国が少子高齢化対策の目玉として打ち出した政策が奴隷制度の導入だ。  狂った制度である事は間違いないのだが、高齢者が自分を介護させる為に、奴隷を購入する。奴隷も、介護が終われば開放される事になる。そして、住む場所やうまくすれば財産も手に入る。  男は、奴隷市場で1人の少女と出会った。  家族を無くし、親戚からは疎まれて、学校ではいじめに有っていた少女。  男は、少女に惹かれる。入札するなと言われていた、少女に男は入札した。  徐々に明らかになっていく、二人の因果。そして、その先に待ち受けていた事とは・・・。  二人が得た物は、そして失った物は?

クリスマスプレゼント

奈落
SF
TSFの短い話です

性転換ウイルス

廣瀬純一
SF
感染すると性転換するウイルスの話

ドール

奈落
SF
TSFの短い話です 目覚めると、その部屋の中は様々なアンティークドールに埋め尽くされていた。 身動きの取れない俺の前に、男が運んできた鏡に映された俺の姿は…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...