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ソファーに沈むように項垂れていた俺を、彼は時々カウンターの奥から覗いては踵を返した。
光を遮断させようと腕で目元を抑えていると、スイッチの音と共に頭上の蛍光灯が少し暗くなる。
そんな彼がくれる安心感に、ゆっくりとまぶたを閉じた。
薬が胃の不快感を麻痺させる頃。
時計の針は12時を差そうとしていた。
事務室で作業していた、ここの代表であろう歳の行った薬剤師も帰ったようだ。
いつの間にか掛けられていたブランケットを畳み、ソファーの端へ置く。
「ご迷惑かけました、俺…」
財布から数枚を掴んだ俺に、彼は焦ったように目を丸くした。
「いやいやいや!そういうつもりじゃないんで」
「でもやっぱり申し訳無いですし…」
「うーんそうだなぁ」
そう言いかけた彼は事務所の奥へと引っ込んでしまった。
あまりにも頑なな自分に、善意の行動を否定されたようで嫌になってしまったのかもしれない。
優しい行為を素直に受け取れないのは昔からだった。
"可愛らしさがない"と散々周りから言われた言葉を思い出し、胸がキリキリと傷む。
これ以上醜態を晒さないうちに帰ろう、と胃薬代とせめてもの迷惑料として数枚のお札を隣のガラステーブルに置き、革靴を履き直してドアへ向かう。
「宇野さん!」
光を遮断させようと腕で目元を抑えていると、スイッチの音と共に頭上の蛍光灯が少し暗くなる。
そんな彼がくれる安心感に、ゆっくりとまぶたを閉じた。
薬が胃の不快感を麻痺させる頃。
時計の針は12時を差そうとしていた。
事務室で作業していた、ここの代表であろう歳の行った薬剤師も帰ったようだ。
いつの間にか掛けられていたブランケットを畳み、ソファーの端へ置く。
「ご迷惑かけました、俺…」
財布から数枚を掴んだ俺に、彼は焦ったように目を丸くした。
「いやいやいや!そういうつもりじゃないんで」
「でもやっぱり申し訳無いですし…」
「うーんそうだなぁ」
そう言いかけた彼は事務所の奥へと引っ込んでしまった。
あまりにも頑なな自分に、善意の行動を否定されたようで嫌になってしまったのかもしれない。
優しい行為を素直に受け取れないのは昔からだった。
"可愛らしさがない"と散々周りから言われた言葉を思い出し、胸がキリキリと傷む。
これ以上醜態を晒さないうちに帰ろう、と胃薬代とせめてもの迷惑料として数枚のお札を隣のガラステーブルに置き、革靴を履き直してドアへ向かう。
「宇野さん!」
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