石とビー玉

3

「そういえばさぁ最近部活大変なの？」
十分に温められたシチューを口へ運びながら彼が問いかける。
「うんテニスなんてしたこと無いし…忙しいし」
「頑張ってるね」
気がついたように漆黒の瞳の下にある隈を撫でる隼人。
 「…ありがとう」
頬に熱が浮かぶのを感じて、隠すように手をかざした。
 「隼人は新しい薬局どう？」
 彼の新しい職場について訊いてみる。
 「うーん女の人多いからちょっと大変かな」

聞き捨てならない。
 確かに隼人は異国の血が入ってるだけあって所謂イケメンだ。
それに日本人の平均身長である171cmの俺と比べてもかなりデカい。
そりゃ普段歩いてるだけで女が視線を向ける男だから、きっと職場でもモテてるんだろう。
 しかし彼氏としてはスルーできない案件である。
 少しの不安に駆られ、今日の本題に話を変えた。
「俺達が出逢ったのも薬局だったよね」
「あれから一年かぁ」
「こんな仲になるなんて考えられなかったよ」
「ひどくね」
吹き出したように笑う隼人に急いで弁解する。
「いやだって最悪な出会いだったし」
「確かにあれはなぁ」
納得したようにあの晩の事を思い出してるようだ。
「俺のこと、見捨てないでくれてありがとう」
「まあ仕事だし」
意地悪そうに返されたが、あの時の優しい行動を思い返すと口だけなのが分かる。
 一年前の春、俺達は出逢った。
綺麗な初対面では無かったけど。