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47、初の野営

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 野営の準備のために頑丈な布を敷いてその上に毛布を出し、枕がわりになりそうな小さな布を設置した。もちろんスラくんとユニーのための寝床も布で作ってあげる。

「こんな感じで良い?」
「うん。やっぱりアイテムバッグがあると違うね。ダンジョンの中でこんな快適に過ごせるなんて」
「褒美をもらった時はこんなにもらえないって思ったけど、もらっておいて良かったな」
「本当だね」

 リラとそんな会話をしながら、布の上に腰を下ろして伸びをする。ユニーにずっと乗っているのは、体が固まって割と疲れるのだ。

「さっそく夜ご飯にする?」
「そうだね。夜は時間があるし料理をしようか」
「やった、準備するよ。何を出せば良い?」

 俺が勝手にやるとほぼ確実に美味しくないものが出来上がるので、リラの指示通りに動こうと決めて夕食作りの準備をした。
 
「まずは干し肉といくつか野菜を出してくれる? それから木の板とナイフに、料理用の魔道具も。後は鍋と調味料かな。それから卵も焼こうか。フライパンと卵もお願い」
「了解」

 指示されたものを取り出すと、リラはさっそく作業を開始した。まずは魔道具で作り出した水を使って野菜を洗い、一口サイズに切り分けていく。
 めちゃくちゃ手際が良くてびっくりだ。料理が上手な人って良いよな……俺も頑張って練習するかな。

「リョータ、鍋に水を入れて火にかけてくれる?」
「分かった。水ってどのぐらいの量?」
「スープにするから、鍋の四分の一ぐらいで良いかな」

 四分の一ってことは……このあたりまでか。俺が水を注ぐと、そこにリラが野菜を次々に入れていった。そして最後に細かく切り分けた干し肉を入れて、スープを煮込んでいく。

「干し肉を入れると塩を入れなくても美味しいんだよ。肉の旨みも出るから、他には調味料もいらないんだ」
「へぇ~、便利なんだな」
「そうなの。じゃあスープを煮込んでる間に、卵焼きを作っちゃうね。そうだ、あとパンを少し焼いて食べようか。確かバターがあったよね?」
「うーん、これかな」
「そうそう! じゃあリョータはパンを食べやすいように切り分けておいてね」

 リラはそう言うと、アイテムバッグから器を取り出して卵を割り入れ、フォークでかき混ぜてからフライパンに流し入れた。
 俺はそんなリラの手際の良さに感心しつつ、フランスパンのような硬めのパンにナイフを入れる。

「リラは二枚で良い?」
「うん。ユニーちゃんとスラくんは食べるかな?」
「二人とも食べるか?」

 俺のその問いかけにスラくんは細かく震えて否定を示したけど、ユニーはパンと卵焼きを鼻で示して食べたいというように顔を擦り付けてきた。

「ユニーは卵焼きとパンを食べるんだな」
「ヒヒンッ」
「ということだから、ユニーの分の卵焼きも頼んで良い? パンもユニーの分を追加で切るよ」
「はーい。ユニーちゃん、美味しく作るから待っててね」

 それからリラは甘い香りがする、ふわふわな見た目の卵焼きを作り上げてくれた。そして卵を焼き終わったら今度はフライパンにバターを溶かして、その上にパンを載せていく。

「めちゃくちゃ良い匂い……」
「パンはそのままよりもバターで焼いたほうが美味しいからね。……このぐらいで良いかな?」

 そう言ってリラがフライパンからお皿に移したパンは、空腹を刺激するとても美味しそうな香りを発していて、少し焦げ目がついた見た目も最高だった。
 俺はさっきまではそこまで感じていなかった空腹を急に感じて、ごくりと息を呑む。

「ふふっ、私の料理は意外と上手いでしょ?」

 俺はリラのその問いかけに何度も首を縦に振った。俺からしたら上手いなんてものじゃない、天才だ。

「本当にありがとう。リラと一緒に活動できて良かった」
「大袈裟だよ。じゃあ食べようか」

 それからは俺がフライパンなどの片付けをして、その間にリラが料理を並べてくれた。

「あっ、魔物が来た」
「本当だ。止まれ!」
「ファイヤーボール! リョータ、カトラリーも出してくれる?」
「もちろん」

 たまにやってくる魔物を流れ作業で魔石に変えつつ食事の準備を進めると、地面に敷いた布の上にはダンジョンの中とは思えないほどに豪華な食事が並んだ。ユニーの果物とスラくんの魔石も、初の野営ということで多めにあげている。

「さっそく食べようか」
「うん!」

 まずはパンからということで、まだ熱いパンを手に取って口に運ぶと……サクッという最高の食感の後に、口の中にバターとパン特有の独特な香りが広がった。
 めちゃくちゃ美味いな。こうして焼くと、日本にあったパンよりこの世界のパンの方が美味しい気がする。

「よく出来てるね!」
「めちゃくちゃ美味いよ。この卵焼きとか最高」

 卵焼きはどう焼いたらこの仕上がりになるんだろうって不思議なほどにふわふわだ。少しだけ甘みがあり、バターが香るパンとよく合う。
 スープはどうだろう……うわ、何これ。簡単に作ったとは思えないほどに複雑な味がする。干し肉からここまで味が出るのか。

「やっぱり干し肉って凄いね」
「こんなに美味いなんて驚いたよ。干し肉ってさ、保存食としてじゃなくて料理への味付けにも使われるの?」
「うん。よく使われるかな。宿で食べてたご飯にもかなりの頻度で入ってたと思うよ。基本的にはみじん切りにして入れるんだ」

 俺が想像してる塩漬けした干し肉とは違うのかもしれないな。味が複雑だし、いろんな香辛料で味付けしてるのか、肉自体が複雑な味がするのか。どちらにせよ美味しいことは確かだ。
 
「ユニーとスラくんも美味しい?」
「ヒヒンッ」

 俺の問いかけにユニーは満足げな表情で鳴いて、スラくんはぷるんっぷるんっと大きく揺れて肯定を示した。
 そうしてそれからも皆で美味しい食事を堪能し、全員が食べきったところで片付けをして寝る準備をすることにした。
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