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7、街中へ

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 この中で一番役職が上なのだろう、ギルドマスターと呼ばれている白髪の老人の下に向かうと、その人は俺の正体を見極めようとするように全身をくまなく観察した。

「改めて宮瀬涼太です。よろしくお願いします」

 今までは混乱しすぎて敬語を使うことも忘れてたけど、やっと落ち着いてちゃんと挨拶をし直した。

「なんだ、敬語が使えるのか」
「今までは混乱して忘れてて、すみません」
「別に敬語なんぞ使わなくても良い。とりあえずスキル封じが効くのは三十分だ。早く冒険者ギルドに行くぞ」
「分かりました。あの、あなたの名前は……?」
「ん、言ってなかったか? わしはアンドレだ。ランドサイル王国の辺境である、ここルリーユの街の冒険者ギルドマスターをしている」

 アンドレだな、ちゃんと覚えよう。冒険者ギルドマスターがアンドレさん。そして状態異常無効のスキル持ちで俺のスキルを封じてくれるのがリラだ。
 あとこの国はランドサイル王国、そしてこの街はルリーユ。とりあえず……街の名前だけは覚えておこう。

「とりあえず色々と話したいことはあるが、まずはギルドに行ってからだ。わし達について来い。逃げたりするんじゃないぞ」
「もちろんです。逃げるなんて絶対にしません」

 こんなところで逃げたって行くあてもないんだ。リラがいなかったら人に近づけもしないし。

「じゃあ行くぞ。お前達、一応リョータを囲んでいけ」
「了解」
「分かりましたー」

 アンドレさんの言葉によって周りにいた数人の男達が俺の周りを取り囲み、連行されるような形で街に向かうことになった。まだ信用されてないんだろうな。まあそれも当然か。俺でさえ自分のことを相当怪しいって思うし。
 でもスラくんとユニーを連れていくことは認めてくれたから、そこまで酷い人達じゃないと思う。

 街に入るには門を通り抜けないといけないみたいで、門番にはアンドレさんが話を通してくれたようだ。かなり睨まれはしたものの、街中に入ることはできた。

「うわっ……凄い」

 街並みを見て本気で驚いた。目の前に広がっていたのは、日本とは似ても似つかない異国情緒漂う街並みだったのだ。整備された石畳の道路の両脇には、背が高い石造の建物が所狭しと並んでいる。

 歩いてる人達の服装はゲームの世界かという感じで、武器を携帯している人もかなり多いみたいだ。さらに驚くことに……頭に動物の耳を付けた獣人? みたいな人もそこかしこに見ることができる。荷車のようなものを引く見たことのない動物もいるし、俺のスラくんとユニーのように、動物を連れ歩いている人もたくさんいる。

 どう見ても地球じゃないよな……認めたくないけど、ここは異世界なのだろう。

「何にそんな驚いてるんだ。早く行くぞ」

 思わず足を止めて魅入っていたら、俺を取り囲む男達に急かされた。この街並みは特別驚くような作りではないってことなんだろう。

「この街って大きい方?」
「いや、ここは辺境だしそんなに栄えてるわけじゃないな。冒険者は多いが」
「そういえば、その冒険者ってなんなんだ?」

 今まで何度も話に出てきたけどずっとスルーしていた。日本で読んだ漫画で聞いたことがある言葉だけど、それと同じなのかは分からないし。

「はぁ? お前冒険者を知らないとか、どんな田舎出身なんだよ」
「田舎……というか異世界?」
「なんだその異世界って」
「こことは別の世界……だと思うんだけど、俺もよく分からない」
「なんだそれ、変なやつだな」

 まあそう言われるよな……俺でも変なやつだって思ってるから。でもそれ以外に説明のしようがないんだから仕方がない。頭がおかしいやつだから牢屋に入れとけとか、そんなことにならないよな……不安すぎる。でも俺の力じゃ何もできないし、この人達を頼るしかない。

 男達と少し話しながら街中を歩いていると、十分ぐらいで大きな建物の前に辿り着いた。看板によると、ここが冒険者ギルドみたいだ。俺達は正面の扉から入って、すぐに二階の奥にある広い応接室に向かった。

「そこのソファーに座れ。ユニコーンはソファーの横だ。お前達はとりあえず外に出ててくれるか?」

 アンドレさんが俺の周りを取り囲んでいた男達に視線を向けてそう言うと、男達は素直に頷いた。

「りょーかい。でもあとで詳細を教えてくれよ? ここまで関わったら気になって仕方がねぇ」
「分かっている」

 男達が応接室から出ていき部屋の中に残ったのは、俺とスラくんとユニー、アンドレさんとリラ、それから元々この部屋の中にいた綺麗な女性だけだ。ユニーは部屋にギリギリ入るサイズだったので窮屈そうだけど、俺のことが心配なのか外で待たずについて来てくれた。

「はぁ……なんで辺境には厄介ごとが舞い込んで来るんだか」
「ここは深淵の森に接していて、隣国との境界でもありますから仕方がありませんよ。しかし今回の厄介ごとはいつもとは違うようですが」

 アンドレさんが嘆いた言葉に綺麗な女性がそう返す。この人はアンドレさんの助手? 秘書? 的な人なのかな。

「いつもよりも厄介だ。はぁ……リョータ、とりあえず紹介する。この女性はここルリーユの街の冒険者ギルド、副ギルドマスターだ」
「ナタリアと申します。よろしくお願いいたします」
「宮瀬涼太です。よろしくお願いします」

 俺が挨拶をすると、ナタリアさんはにっこりと笑みを浮かべてくれた。とりあえず凄く嫌われてるとか、そういう感じじゃなさそうで良かった。

「まずは何から聞けば良いのか……いや、その前にスキル封じはまだ効果が切れないか?」
「そうですね、あと五分ほどです。また掛けておきますか?」
「そうだな、よろしく頼む」

 アンドレさんがリラに残り時間を聞き、もう一度スキル封じを掛けてもらうことになった。とりあえず連続で掛けることもできるみたいで良かった。

「リラ、本当にありがとう。いや、リラさんって呼んだほうが良いかな?」
「いえ、私の方が年下ですし今まで通りで良いですよ」
「そっか。本当にありがとう……もし君がいなかったらと思うと絶望だよ」
「お役に立てて良かったです」

 リラはそう言って明るい笑みを浮かべてくれた。この子って本当に良い子だよな……リラがいる街の近くに俺が現れたことだけは、不幸中の幸いだ。

「じゃあ早速だが……まずリョータ、お前はどこから来たんだ? そして何者だ?」

 俺はアンドレさんのその質問を受けて、どこから話せば良いのかとこの世界に来てからのことを思い浮かべた。包み隠さず最初から話すしかないかな……
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