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第四章 交易発展編
163、他国は別世界 前編(ノバック国王視点)
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「少し歩きますが、よろしいでしょうか?」
「もちろんだ」
フィリップ・ライストナーと名乗った男が部屋を出てから、すぐに我々も兵士達に誘導されて部屋を出た。先ほどの男、まだ幼いようだったが宰相補佐と言っていたな。しかも公爵家の人間のようだった。
この街に辿り着いたことはかなりの幸運だったかもしれないな……何とか助けてもらえたら良いが。
「……この街は、とても綺麗ですね」
「本当だな。ノバック王国とは比べ物にならない」
我らのことを興味深げに見ている人々は小綺麗だ。水を潤沢に使える証だろう。さらに餓死寸前の者もいないようで、皆がふくよかでがっしりと筋肉がついていて、食事も十分にあることが伺える。
……なぜ隣の国でここまで差があるのか、その理由も教えてもらいたいな。
「こちらがライストナー公爵家のお屋敷です」
兵士がそう言って門を開けると、その先にはとても綺麗に整えられた庭があり、奥には大きな屋敷があった。
屋敷のエントランスから中に入ると、エントランスには絨毯が敷かれていて花が飾られている。
「こちらにお越しください。まずは湯浴みをしていただきます」
兵士から従者の男達に引き継がれた俺たちは、監視として残った兵士にじっと動きを見つめられながら柔らかな絨毯の上を歩いた。そして一つの部屋の中に入ると、そこには大きな木製の桶があって、中には湯気を立ち昇らせているお湯がたっぷりと入っている。
「凄いな……」
「これは、飲んでも良いのでしょうか?」
ダビドが聞いたその言葉に喉が渇いているということが分かったのか、一人の従者がすぐにコップに入れた水を持ってきてくれた。
それをありがたく受け取って口にすると……ここ数年で一番美味しい水だった。こんなにも不純物がない水など、ここしばらく飲んでいなかったな。
「ありがとう。生き返った」
「いえ、こちらの配慮が足りず申し訳ございません。何かありましたら遠慮せずにおっしゃってください。では服を脱いでいただけますか?」
「もちろんだ」
私とダビドがすぐに服……とすでに呼べないようなものを剥ぎ取ると、温かいお湯を頭からかけられた。そして何度も何度も丁寧に洗い流してくれる。
汚れを流したら怪我をしている部分には処置をしてくれて、清潔な服まで貸してもらえた。
こんなに厚待遇だとは思わなかったな……何だか死んで夢でも見ているのかと思うほどだ。
「陛下、これは夢でしょうか……」
「ははっ、今私も同じことを考えていた」
「ラスカリナ王国とは、豊かで素晴らしい国ですね」
「本当だな。ノバック王国もこの豊かさに近づけるよう力を尽くそう」
服を着るとまた別の部屋に連れて行かれ、鏡の前にある椅子に座らされた。髪を布で拭いて乾かすのかと思ったら……従者が取り出したのは、よく分からない模様が刻まれた青石だった。
「それはなんだ?」
「こちらは魔道具でございます。髪を乾かしますので、動かずにいてください」
魔道具とはなんだ? そう思いながらも従者の要望に従って前を向くと……青石から、突然温かい風が吹いてきた。
「な、なんだこれは!?」
「魔道具というものです。フィリップ様からご説明があると思いますので、それまでお待ちください」
「……そうか、分かった」
そういえばさっきから屋敷の中がかなり明るいが、天井についているあの光る何かが明るい理由だろう。あれもその魔道具? というやつなのだろうか。
それから髪を乾かしてもらい身だしなみを整えてもらって、数年振りどころか人生で初めての綺麗な格好で部屋を出た。
そして次に案内されたのは、食堂だ。中にはフィリップ・ライストナー、いやフィリップ様と呼ぶべきだな。フィリップ様がいて、私たちのことをにこやかに出迎えてくれる。
「ご不便はありませんでしたか?」
「はい。とても高待遇で、感謝してもしきれません」
「それは良かったです。……そういえば、怪我の治癒を忘れていましたね。こちらの椅子に腰掛けていただけますか?」
フィリップ様はそう仰ると、従者の男に椅子を移動させた。そして怪我はもう対処してもらったが……と思いつつも素直に腰掛けると、フィリップ様が私たちの全身をじっと見つめる。
「ノバック国王陛下は足の怪我と頬の怪我だけですか?」
「はい。そうです」
「そちらのダビドさんは頭と腕と足が全体、さらには肩もですね。他に痛い場所はありますか? 遠慮せずに全てを述べてください」
「……魔物に背中から突進を受け、背中が全体的に痛みます」
「見せてください。えっと……この布に寝てください」
え、今どこから布を出した? あの青石から出てきたように見えたが、気のせいだろうか……
「……よろしいのでしょうか?」
「ダビド、フィリップ様のおっしゃる通りに」
「かしこまりました」
躊躇っているダビドに声をかけると、ダビドはすぐ布に横になった。するとフィリップ様がダビドの横に膝をついて、怪我の様子を確認していく。
そしてしばらくダビドに質問を繰り返し……突然、宙によく分からない模様を描き始めた。なんだこれは、本当に同じ世界なのか?
何が起きているのか全く分からないうちに、ダビドの体が光り輝き……
「なっ……い、痛みが、なくなりました……」
「良かったです。これは魔法陣魔法の治癒というもので、怪我などを治すことができます。ダビドさんの方が怪我が酷いようでしたので、先に治させていただきました。ノバック国王陛下も治しますね」
それから私もよく分からない模様の後に体が光って……痛みが完全に消えた。先ほど巻いてもらった布を取ってみると、傷跡も綺麗になくなっている。
「もちろんだ」
フィリップ・ライストナーと名乗った男が部屋を出てから、すぐに我々も兵士達に誘導されて部屋を出た。先ほどの男、まだ幼いようだったが宰相補佐と言っていたな。しかも公爵家の人間のようだった。
この街に辿り着いたことはかなりの幸運だったかもしれないな……何とか助けてもらえたら良いが。
「……この街は、とても綺麗ですね」
「本当だな。ノバック王国とは比べ物にならない」
我らのことを興味深げに見ている人々は小綺麗だ。水を潤沢に使える証だろう。さらに餓死寸前の者もいないようで、皆がふくよかでがっしりと筋肉がついていて、食事も十分にあることが伺える。
……なぜ隣の国でここまで差があるのか、その理由も教えてもらいたいな。
「こちらがライストナー公爵家のお屋敷です」
兵士がそう言って門を開けると、その先にはとても綺麗に整えられた庭があり、奥には大きな屋敷があった。
屋敷のエントランスから中に入ると、エントランスには絨毯が敷かれていて花が飾られている。
「こちらにお越しください。まずは湯浴みをしていただきます」
兵士から従者の男達に引き継がれた俺たちは、監視として残った兵士にじっと動きを見つめられながら柔らかな絨毯の上を歩いた。そして一つの部屋の中に入ると、そこには大きな木製の桶があって、中には湯気を立ち昇らせているお湯がたっぷりと入っている。
「凄いな……」
「これは、飲んでも良いのでしょうか?」
ダビドが聞いたその言葉に喉が渇いているということが分かったのか、一人の従者がすぐにコップに入れた水を持ってきてくれた。
それをありがたく受け取って口にすると……ここ数年で一番美味しい水だった。こんなにも不純物がない水など、ここしばらく飲んでいなかったな。
「ありがとう。生き返った」
「いえ、こちらの配慮が足りず申し訳ございません。何かありましたら遠慮せずにおっしゃってください。では服を脱いでいただけますか?」
「もちろんだ」
私とダビドがすぐに服……とすでに呼べないようなものを剥ぎ取ると、温かいお湯を頭からかけられた。そして何度も何度も丁寧に洗い流してくれる。
汚れを流したら怪我をしている部分には処置をしてくれて、清潔な服まで貸してもらえた。
こんなに厚待遇だとは思わなかったな……何だか死んで夢でも見ているのかと思うほどだ。
「陛下、これは夢でしょうか……」
「ははっ、今私も同じことを考えていた」
「ラスカリナ王国とは、豊かで素晴らしい国ですね」
「本当だな。ノバック王国もこの豊かさに近づけるよう力を尽くそう」
服を着るとまた別の部屋に連れて行かれ、鏡の前にある椅子に座らされた。髪を布で拭いて乾かすのかと思ったら……従者が取り出したのは、よく分からない模様が刻まれた青石だった。
「それはなんだ?」
「こちらは魔道具でございます。髪を乾かしますので、動かずにいてください」
魔道具とはなんだ? そう思いながらも従者の要望に従って前を向くと……青石から、突然温かい風が吹いてきた。
「な、なんだこれは!?」
「魔道具というものです。フィリップ様からご説明があると思いますので、それまでお待ちください」
「……そうか、分かった」
そういえばさっきから屋敷の中がかなり明るいが、天井についているあの光る何かが明るい理由だろう。あれもその魔道具? というやつなのだろうか。
それから髪を乾かしてもらい身だしなみを整えてもらって、数年振りどころか人生で初めての綺麗な格好で部屋を出た。
そして次に案内されたのは、食堂だ。中にはフィリップ・ライストナー、いやフィリップ様と呼ぶべきだな。フィリップ様がいて、私たちのことをにこやかに出迎えてくれる。
「ご不便はありませんでしたか?」
「はい。とても高待遇で、感謝してもしきれません」
「それは良かったです。……そういえば、怪我の治癒を忘れていましたね。こちらの椅子に腰掛けていただけますか?」
フィリップ様はそう仰ると、従者の男に椅子を移動させた。そして怪我はもう対処してもらったが……と思いつつも素直に腰掛けると、フィリップ様が私たちの全身をじっと見つめる。
「ノバック国王陛下は足の怪我と頬の怪我だけですか?」
「はい。そうです」
「そちらのダビドさんは頭と腕と足が全体、さらには肩もですね。他に痛い場所はありますか? 遠慮せずに全てを述べてください」
「……魔物に背中から突進を受け、背中が全体的に痛みます」
「見せてください。えっと……この布に寝てください」
え、今どこから布を出した? あの青石から出てきたように見えたが、気のせいだろうか……
「……よろしいのでしょうか?」
「ダビド、フィリップ様のおっしゃる通りに」
「かしこまりました」
躊躇っているダビドに声をかけると、ダビドはすぐ布に横になった。するとフィリップ様がダビドの横に膝をついて、怪我の様子を確認していく。
そしてしばらくダビドに質問を繰り返し……突然、宙によく分からない模様を描き始めた。なんだこれは、本当に同じ世界なのか?
何が起きているのか全く分からないうちに、ダビドの体が光り輝き……
「なっ……い、痛みが、なくなりました……」
「良かったです。これは魔法陣魔法の治癒というもので、怪我などを治すことができます。ダビドさんの方が怪我が酷いようでしたので、先に治させていただきました。ノバック国王陛下も治しますね」
それから私もよく分からない模様の後に体が光って……痛みが完全に消えた。先ほど巻いてもらった布を取ってみると、傷跡も綺麗になくなっている。
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