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第四章 交易発展編
156、カルフォン伯爵領
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次の日の朝。いつもより早めに起きて準備をした俺は、さっそく転移板を使って王都に向かった。転移板が設置されている王宮の一室を出て、まず向かったのはファビアン様とマティアスがいるだろう執務室だ。
もう仕事が始まっている時間なので、中に入るといつも一緒に働く皆が忙しそうに書類を手にしていた。
「あれ、フィリップどうしたの?」
「マティアス、突然ごめん。ちょっと報告があって」
まず気づいてくれたのはマティアスだった。その会話によって他の皆も気づいたようで、俺に皆の視線が集まる。その中からファビアン様が声を掛けてくれた。
「何かトラブルか?」
「いえ、ヴィッテ部隊長からの報告は読まれましたか?」
「もちろん読んだ。もう新たな特産品となるものが見つかったとか」
「そうなんです。なので私が直接行って確かめて来ようかと思いまして、カルフォン伯爵領に向かう前にご報告をと寄りました」
俺のその言葉を聞いて納得したファビアン様は、俺を奥のソファーに誘導してくれた。
「ホワイトカウに酷似した魔物が捕まえられたんだったな」
「それってフィリップが見つけてたやつだよね?」
「そうなんです。もし本当にホワイトカウならば、その育て方など色々と伝達すべき知識がありますので、数週間は伯爵領に滞在するかもしれません」
ホワイトカウからミルクが採れたら、色々と作って欲しい料理がたくさんあるんだよな。シチューとか大好きだったんだ。コメにシチューを掛けて食べたい……!
「分かった。頻繁にではなくても良いので進捗を報告してほしい。交易についても頼んだぞ」
「もちろんです。その魔物から私が予想しているミルクが取れたならば、その流通についても体制を構築しようと思います。ミルクは昼間の暑い時間だとダメになりやすいので、製氷器で氷を作って冷やしながらの流通となります。製氷器の入手に関して難しいようならば、カルフォン伯爵領に優先して融通しても良いでしょうか?」
「そうだな……許可しよう」
「ありがとうございます」
「魔道具工房にも伝えておくよ。事前に知ってた方がスムーズだろうし」
「マティアス、ありがとう」
それからもいくつかの事柄をファビアン様とマティアスと話し合い、俺は執務室を出て王宮の入り口に向かった。ティナとはここで待ち合わせをしているのだ。
「あっ、もう来てたんだ。待たせたかな」
「私もちょうど着いたところですので、大丈夫です」
「それなら良かった」
ティナは既に王宮に着いていたようで、メイドと護衛の女性達と一緒に談笑しながら待ってくれていたようだ。
「急に連絡してごめんね。昨日ヴィッテ部隊長から連絡が来て」
「いえ、私も誘ってくださってありがとうございます。とても楽しみにしていました」
そう言って微笑んだティナは本当に嬉しそうで、俺も自然と笑顔になった。
「こちらこそ一緒に来てくれてありがとう。じゃあさっそく行こうか。向こうで皆が待ってるはずだから」
「はい。もう準備は整っております」
それから俺とティナは一緒に転移板を設置してある王宮の一室に向かった。そして二回に分かれて転移を終えると……カルフォン伯爵領では、伯爵と夫人自らが俺の迎えに来てくれていた。
伯爵領でも転移板は外壁の中に設置したようで、まずは普段は兵士達が使うのだろう休憩室に案内される。
「こんなところで申し訳ございません。未だ休憩室の整備が間に合っておらず……」
「構わないよ。まだ転移板を設置してからそんなに日が経ってないからね」
「そう言っていただけると助かります」
「じゃあさっそくだけど、発見した魔物のところに案内してもらえるかな」
俺はホワイトカウを早く見てみたくて、色々と貴族が行う長い挨拶を飛ばしてさっそく本題に入った。カルフォン伯爵とはそのぐらいの気安い間柄になっているのだ。ティナと話をするために、屋敷にかなり通ったからね……
「もちろんでございます。ではこちらへ。ティナも一緒に来なさい」
「かしこまりました」
「ティナ、元気にしていましたか?」
「お養母様、問題なく過ごしておりました」
後ろでティナと伯爵夫人が話をしているのを聞きつつ伯爵に続いて外に出ると、そこには馬車が準備されていた。
「魔物ですので街の郊外に捕らえてありますゆえ、馬車での移動をお願いいたします」
「もちろん。準備をありがとう」
馬車に乗って街の様子を何気なく眺めると、街の作りはライストナー公爵領とあまり変わらないみたいだ。街の人達は窓から外を眺める俺を見て、誰だろうと首を傾げている。
「魔物は何匹捕らえたの?」
「三匹でございます。しかし他にも森の中にはいるようで、あとはフィリップ様の指示を仰いでから捕えるとヴィッテ部隊長が申しておりました」
「分かった。じゃあ早く魔物を見てこれからのことを決めないとね」
それから街の様子を眺めながらしばらく馬車に揺られていると、民家がなくなって……馬車が止まった。窓の外には魔法陣魔法で作ったのだろう高さのある土製の柵があり、その周りには見知った顔がある。
~お知らせ~
次回の更新はお休みさせていただき、次は2月4日の更新になります。よろしくお願いいたします。
いつも読んでくださってありがとうございます。楽しんでいただけているのであればとても嬉しいです!
それから余談ですが、アルファポリス様のアプリの方で新機能が追加され、皆様が作者にエールを送れるようになったそうです。もしよろしければエールをお願いいたします!
改めましていつもありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。
蒼井美紗
もう仕事が始まっている時間なので、中に入るといつも一緒に働く皆が忙しそうに書類を手にしていた。
「あれ、フィリップどうしたの?」
「マティアス、突然ごめん。ちょっと報告があって」
まず気づいてくれたのはマティアスだった。その会話によって他の皆も気づいたようで、俺に皆の視線が集まる。その中からファビアン様が声を掛けてくれた。
「何かトラブルか?」
「いえ、ヴィッテ部隊長からの報告は読まれましたか?」
「もちろん読んだ。もう新たな特産品となるものが見つかったとか」
「そうなんです。なので私が直接行って確かめて来ようかと思いまして、カルフォン伯爵領に向かう前にご報告をと寄りました」
俺のその言葉を聞いて納得したファビアン様は、俺を奥のソファーに誘導してくれた。
「ホワイトカウに酷似した魔物が捕まえられたんだったな」
「それってフィリップが見つけてたやつだよね?」
「そうなんです。もし本当にホワイトカウならば、その育て方など色々と伝達すべき知識がありますので、数週間は伯爵領に滞在するかもしれません」
ホワイトカウからミルクが採れたら、色々と作って欲しい料理がたくさんあるんだよな。シチューとか大好きだったんだ。コメにシチューを掛けて食べたい……!
「分かった。頻繁にではなくても良いので進捗を報告してほしい。交易についても頼んだぞ」
「もちろんです。その魔物から私が予想しているミルクが取れたならば、その流通についても体制を構築しようと思います。ミルクは昼間の暑い時間だとダメになりやすいので、製氷器で氷を作って冷やしながらの流通となります。製氷器の入手に関して難しいようならば、カルフォン伯爵領に優先して融通しても良いでしょうか?」
「そうだな……許可しよう」
「ありがとうございます」
「魔道具工房にも伝えておくよ。事前に知ってた方がスムーズだろうし」
「マティアス、ありがとう」
それからもいくつかの事柄をファビアン様とマティアスと話し合い、俺は執務室を出て王宮の入り口に向かった。ティナとはここで待ち合わせをしているのだ。
「あっ、もう来てたんだ。待たせたかな」
「私もちょうど着いたところですので、大丈夫です」
「それなら良かった」
ティナは既に王宮に着いていたようで、メイドと護衛の女性達と一緒に談笑しながら待ってくれていたようだ。
「急に連絡してごめんね。昨日ヴィッテ部隊長から連絡が来て」
「いえ、私も誘ってくださってありがとうございます。とても楽しみにしていました」
そう言って微笑んだティナは本当に嬉しそうで、俺も自然と笑顔になった。
「こちらこそ一緒に来てくれてありがとう。じゃあさっそく行こうか。向こうで皆が待ってるはずだから」
「はい。もう準備は整っております」
それから俺とティナは一緒に転移板を設置してある王宮の一室に向かった。そして二回に分かれて転移を終えると……カルフォン伯爵領では、伯爵と夫人自らが俺の迎えに来てくれていた。
伯爵領でも転移板は外壁の中に設置したようで、まずは普段は兵士達が使うのだろう休憩室に案内される。
「こんなところで申し訳ございません。未だ休憩室の整備が間に合っておらず……」
「構わないよ。まだ転移板を設置してからそんなに日が経ってないからね」
「そう言っていただけると助かります」
「じゃあさっそくだけど、発見した魔物のところに案内してもらえるかな」
俺はホワイトカウを早く見てみたくて、色々と貴族が行う長い挨拶を飛ばしてさっそく本題に入った。カルフォン伯爵とはそのぐらいの気安い間柄になっているのだ。ティナと話をするために、屋敷にかなり通ったからね……
「もちろんでございます。ではこちらへ。ティナも一緒に来なさい」
「かしこまりました」
「ティナ、元気にしていましたか?」
「お養母様、問題なく過ごしておりました」
後ろでティナと伯爵夫人が話をしているのを聞きつつ伯爵に続いて外に出ると、そこには馬車が準備されていた。
「魔物ですので街の郊外に捕らえてありますゆえ、馬車での移動をお願いいたします」
「もちろん。準備をありがとう」
馬車に乗って街の様子を何気なく眺めると、街の作りはライストナー公爵領とあまり変わらないみたいだ。街の人達は窓から外を眺める俺を見て、誰だろうと首を傾げている。
「魔物は何匹捕らえたの?」
「三匹でございます。しかし他にも森の中にはいるようで、あとはフィリップ様の指示を仰いでから捕えるとヴィッテ部隊長が申しておりました」
「分かった。じゃあ早く魔物を見てこれからのことを決めないとね」
それから街の様子を眺めながらしばらく馬車に揺られていると、民家がなくなって……馬車が止まった。窓の外には魔法陣魔法で作ったのだろう高さのある土製の柵があり、その周りには見知った顔がある。
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改めましていつもありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。
蒼井美紗
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